大腸憩室症と大腸憩室炎(だいちょうけいしつしょう・けいしつえん)
概要
大腸(だいちょう=お腹の中の長い管で、便をつくるところ)の壁の一部が、小さな袋のように外へふくらむことがあります。この袋を「憩室(けいしつ)」といいます。憩室があるだけの状態が「大腸憩室症」で、多くの場合は痛みもなく、健康診断の大腸内視鏡(カメラ)などで偶然見つかります。一方、憩室の中に便がたまったり細菌が増えたりして、その部分に炎症が起こった状態が「大腸憩室炎(けいしつえん)」です。こちらはお腹の痛みや発熱などの症状が出ます。
重要な事実
- 憩室は「腸の壁にできた小さなふくらみ」で、あるだけでは病気ではなく、症状がない人がほとんどです。
- 炎症が起こるのは、たくさんある憩室のごく一部です。すべてが炎症を起こすわけではありません。
- 食物繊維をしっかりとる食事や、便秘をためない生活が、炎症のリスクを下げるのに役立つと考えられています。
はい、よくある状態です。日本では大腸内視鏡を受けた人のおよそ2割前後に憩室が見つかるといわれ、年齢が上がるほど増えていきます。決して珍しいものではありません。
40代ごろから増え始め、60代以上では特に多くなります。食物繊維が少なく脂肪の多い食事、便秘、肥満、運動不足、喫煙のある人に多いとされていますが、若い人や生活習慣に心当たりがない人にも起こります。
症状
- 突然の激しい腹痛で、立っていられない・動けない。
- お腹全体が硬く板のように張り、少し触るだけで痛がる。
- 高熱と冷や汗、顔色が悪い、意識がぼんやりしている。
- 大量の血便や吐血がある。
- 呼吸が苦しい、意識を失いかけた。
- ⚠38℃以上の発熱を伴うお腹の痛みがある。
- ⚠痛みが数時間のうちにどんどん強くなっている。
- ⚠繰り返す嘔吐で、水分がとれない。
- ⚠血便がある、または便に血が混じる。
- ⚠痛みで歩くのがつらい、仕事や家事ができない。
一般的な症状
- 大腸憩室症(憩室があるだけ)は、ほとんど無症状です。
- 大腸憩室炎では、お腹の痛みが出ます。左下腹部(おへその左下)が多いですが、右側のこともあります。
- 発熱(多くは38℃前後)や、悪寒(さむけ)を伴うことがあります。
- お腹の張り、吐き気、食欲がない、だるさ。
- 便秘や下痢、おならが出にくいなど、便通の変化。
- 痛いところを押すと痛む、歩くとはずむような痛みがある。
子供の症状
- 子どもではまれですが、起こらないわけではありません。
- 子どもの場合は、腹痛・発熱・嘔吐などが主な症状です。
- 虫垂炎(もうちょうえん)など他の病気と見分けがつきにくいため、自己判断せず小児科を受診してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では、痛みがはっきりしないことがあります。
- 「なんとなく元気がない」「食欲がない」「熱っぽい」といった変化だけで、炎症が進んでいることがあります。
- 症状が重くなりやすいため、いつもと違うと感じたら早めに受診してください。
原因
主な原因
- 大腸の壁の弱い部分が、腸の中からの圧力で外側へふくらんで憩室ができると考えられています。
- 便秘などで腸の中の圧力が高まることが、憩室ができることに関わっているといわれます。
- 憩室の中に便がたまり、細菌が増えることで炎症(憩室炎)が起こります。
- 食物繊維が少なく、脂肪の多い食事が続くと、リスクが高まると考えられています。
リスク要因
- 年齢(加齢)があがること。
- 食物繊維の少ない食事、脂肪の多い食事。
- 慢性的な便秘。
- 肥満、運動不足。
- 一部の鎮痛薬やステロイド薬など、医師から処方されている薬を使っていること(自己判断でやめず、必ず医師に相談してください)。
- 家族に憩室症の人がいる場合。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱を伴う強いお腹の痛みがある。
- 痛みがどんどん強くなる、痛む範囲が広がる。
- 水分がとれないほどの吐き気・嘔吐がある。
- 血便がある。
- 高齢の方や小さなお子さんで、元気がない・食欲がないといった様子の変化がある。
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や大腸内視鏡で「憩室がある」と言われた。
- お腹の痛みや張り、便通の変化(便秘と下痢を繰り返すなど)が長く続いている。
- 憩室炎を起こしたことがあり、再び気になる症状が出てきた。
- 食生活や便秘について、どう気をつければよいか相談したい。
診断
まず問診(いつから、どこが、どんなふうに痛むか)と、お腹を触る診察を行います。そのうえで血液検査や尿検査、腹部の画像検査を行い、憩室に炎症があるかどうか、ほかに緊急の病気がないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や貧血を調べます)。
- 尿検査(尿路の病気との区別のため)。
- 腹部超音波検査(お腹の上から機械をあてて調べます)。
- 腹部CT検査(体の断面を撮影し、炎症や膿のたまりを詳しく調べます)。
- 大腸内視鏡検査(炎症が落ち着いてから、ほかの病気がないか確認するために行うことがあります)。
診察で予想されること
外来での診察と画像検査で診断がつくことが多いです。痛みや熱が強いときは、その日のうちに検査を受けたり、入院して点滴を受けたりすることがあります。炎症が強い時期には、大腸内視鏡は行わず、落ち着いてから行うのが一般的です。
治療
症状のない大腸憩室症は治療の必要がなく、食事や生活習慣の見直しが中心になります。大腸憩室炎の場合は、軽ければ自宅で安静にしながら食事を工夫して治すことが多く、強い痛みや高熱、合併症があるときは入院して治療します。
自宅でのセルフケア
- 症状が強いあいだは無理をせず、安静にして休みましょう。
- 水分をこまめにとりましょう。
医療治療
憩室炎と診断された場合、医師の判断で細菌を抑える薬(抗菌薬)が使われることがあります。水分や栄養がとりにくいときは点滴で補います。痛みや熱には、症状に合わせた対応が行われます。炎症が落ち着いたあとに大腸内視鏡を行い、ほかの病気がないかを確認することもあります。薬の名前や使い方については、必ず担当の医師や薬剤師の説明に従ってください。自己判断で市販の薬を追加したり、処方された薬をやめたりしないようにしましょう。
手術が検討される場合
膿(うみ)がお腹の中にたまった場合、腸に穴が開いた場合(穿孔)、腹膜炎を起こした場合、出血が止まらない場合、腸が狭くなって通りが悪くなった場合、憩室炎を何度も繰り返して生活に支障がある場合などに、手術が検討されます。緊急で行うこともあれば、炎症が落ち着いてから計画して行うこともあります。
この病気と共に生きる
症状がないときは、ふだんどおりに暮らしてかまいません。いちばん大切なのは、便通を整えて便秘をためないことです。水分と食物繊維を意識してとり、規則正しい生活を心がけましょう。お腹の痛みや発熱が出たら、早めに医療機関を受診してください。
生活習慣のアドバイス
- 野菜・果物・きのこ・海藻・豆類・全粒穀物など、食物繊維を多く含む食品を毎日の食事に取り入れましょう。
- 水分をこまめにとりましょう。
- ウォーキングなど、無理のない範囲の運動を続けましょう。
- 体重が増えすぎないように気をつけましょう。
- 禁煙を心がけましょう。
- 便意をがまんせず、決まった時間にトイレに行く習慣をつけましょう。
- ストレスをためこまず、休息の時間をとりましょう。
食事と運動
食物繊維は少しずつ増やすのがコツです。急にたくさんとるとお腹が張ることがあります。野菜・果物・豆類・きのこ・海藻・玄米や全粒粉のパンなどを、毎食少しずつとりましょう。水分も一緒にとると効果的です。以前は「種やナッツは避けたほうがよい」と言われた時期もありましたが、現在は過度に避ける必要はないと考えられています。運動は、早歩きの散歩など息が少しはずむ程度を、週に数回続けるのがおすすめです。食事や運動の具体的な内容は、管理栄養士やかかりつけ医に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
お腹の痛みを繰り返すと、「また起こったらどうしよう」「外出先で痛くなったら」という不安を抱えやすくなります。食事の制限が続くと、食べることが楽しめなくなり、気分が落ち込むこともあります。つらい気持ちは一人で抱えこまず、家族や友人、医療者に話してみてください。不安や落ち込みが長く続くときは、医療機関で相談しましょう。
予防
憩室ができること自体を完全に防ぐことは難しいですが、憩室炎を起こすリスクを下げることはできます。食物繊維をしっかりとる、水分をとる、便秘をためない、適度に体を動かす、体重を適正に保つ、禁煙する、といった生活習慣が役立つと考えられています。
検診プログラム
日本では、大腸がん検診として便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる検査)を毎年受けることが推奨されており、対象年齢は自治体によって異なります。憩室は、健康診断や大腸内視鏡の際に見つかることがあります。詳しくはお住まいの自治体の案内や、かかりつけ医にご確認ください。
合併症
治療しない場合
- 憩室のまわりに膿(うみ)がたまる(膿瘍)。
- 憩室の壁に穴が開き、腹膜炎(お腹の中に細菌が広がる状態)を起こす。
- 腸が狭くなったり、腸閉塞(腸の内容物が通れなくなる状態)になったりする。
- 出血が続く、または大量になる。
- 膀胱や膣など、近くの臓器とつながってしまう(瘻孔:ろうこう)。
- 憩室炎を繰り返す。
長期的な見通し
ほとんどの場合は軽い症状で、安静と食事の工夫で改善します。炎症を起こすのは憩室全体のごく一部で、再発する人の割合も多くはありません。合併症が起きた場合も、医療機関で適切に対応できます。食事と生活習慣を整えることで、多くの方はふだんどおりの生活を続けられています。心配なことがあれば、いつでもかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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