ダウン症候群(21トリソミー)
概要
ダウン症候群は、体の設計図である「染色体」に通常より1本多く変化があることで生まれる、生まれつきの状態です。人がもつ染色体はふつう46本ですが、ダウン症候群の場合は21番目の染色体が1本多く、47本になります。このため「21トリソミー」とも呼ばれます。染色体の変化は体の成長や発達のさまざまな面に影響しますが、一人ひとりの個性や得意・不得意はとても幅広く、みんなと同じように学び、遊び、働き、地域で暮らしています。
重要な事実
- 生まれつきの染色体の状態で、親の育て方やしつけが原因ではありません。
- 特徴のある顔立ちや筋肉の力の弱さ(筋緊張の低下)、発達のゆっくりさがみられますが、程度は一人ひとり大きく異なります。
- 心臓や耳・目・甲状腺などに合併症が出ることがあるため、定期的な健康チェックが大切です。早期からの支援と療育によって、その子らしい成長をしっかり支えられます。
ダウン症候群は、染色体の変化による状態の中ではもっともよくみられるものです。日本ではおよそ1,000人に1人くらいの割合で生まれるとされています。決してめずらしいものではなく、各地の学校や地域で暮らしています。
性別や人種、家庭環境による違いはなく、どなたのところにも生まれる可能性があります。母親の年齢が高くなるほど起こりやすさは少し上がることが知られていますが、若い方からも生まれます。年齢だけで決まるものではありません。
症状
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼーして顔色が悪い、唇が青っぽい
- ぐったりして反応が弱い、意識がない、呼びかけに答えない
- けいれんが5分以上続く、またはけいれんを繰り返す
- 転倒や事故のあとに首の強い痛み、手足の動きにくさ、歩き方の急な変化がある(首の骨の不安定さが関係することがあります)
- 母乳やミルクをまったく飲めず、おしっこが半日以上出ない、口が乾いて脱水が疑われる
- ⚠38℃以上の発熱が続く、または熱があるのに元気がなくぐったりしている
- ⚠嘔吐や下痢が続き、水分がとれない
- ⚠いつもより眠ってばかりで、起こしてもすぐに眠ってしまう
- ⚠いびきが強くなり、夜中に息が止まっているのを家族が気づいた
- ⚠お腹が張って痛がる、3日以上便が出ない
- ⚠急に聞こえにくそう、耳をよく触る、耳だれがある
一般的な症状
- 目の上が少しつり上がった印象や、鼻の付け根が低いなど、特徴のある顔立ち
- 筋肉の力がやわらかく弱い(筋緊張の低下)ため、抱っこすると体がやわらかく感じる
- 言葉や運動など発達の進み方がゆっくりで、個人差が大きい
- 首すわりや歩き始めなど、成長の節目がゆっくりめ
- 背が低めで、体重が増えにくい時期がある
- 便秘になりやすい、感染症(かぜなど)にかかりやすい
- 耳や目の聞こえ・見えにくさ、甲状腺の働きの低下など、合併症が見つかることがある
子供の症状
- 母乳やミルクを飲む力が弱く、飲むのに時間がかかることがある
- 寝返り・おすわり・歩き始めなどの運動面の発達がゆっくり
- 言葉が出るのが遅めで、発音が聞き取りにくいことがある
- 耳に水がたまりやすい(滲出性中耳炎)などで聞こえが悪くなることがある
- 目のかすみや斜視、遠視・近視などの見え方の問題
- 便秘が続く、睡眠中にいびきや息が止まる(睡眠時無呼吸)ことがある
- 成長に合わせて、学校生活での学び方の工夫が必要になることがある
高齢者の症状
- 聞こえや見えにくさが進み、コミュニケーションが取りにくくなることがある
- 甲状腺の働きの低下が目立ちやすくなる
- 睡眠時無呼吸や肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病に注意が必要になる
- 関節の痛みや変形(股関節・膝など)が出ることがある
- 年齢より早い時期に、もの忘れや判断の変化が現れることがある(認知症との関連)
- 皮膚や歯ぐき、歯のトラブルが増えやすい
原因
主な原因
- 細胞が分かれるときに、21番染色体が1本多く入ってしまうことが主な原因です(21トリソミー)。
- 多くの場合、受精の前後におきた偶然の変化によるもので、親の生活習慣や育て方が原因ではありません。
- ごく一部に、両親のどちらかから染色体の一部が受けつがれる「転座型」というタイプがあります。このタイプは家族にも関係することがあるため、遺伝カウンセリングで相談できます。
- 一部は、細胞の一部だけに余分な染色体がある「モザイク型」で、症状の程度がより軽いことがあります。
リスク要因
- 母親の年齢が高いほど、起こりやすさが少し上がることが知られています。
- ただし年齢だけで決まるものではなく、若い方にも生まれます。
- きょうだいや親族にダウン症候群の人がいる場合、転座型では遺伝の可能性が少しあります(多くは遺伝しません)。
- 妊娠中の過ごし方や食事、薬の使用が原因になるという証拠はありません。ご自分を責める必要はありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱が続く、ぐったりしている、水分がとれないなど、いつもと明らかに様子が違うとき
- 呼吸が苦しそう、夜中に息が止まる、けいれんがあったとき
- 首の痛みや手足の動きの急な変化、転倒後の様子の変化があるとき
- 急に聞こえにくい、見えにくいと感じるとき
定期受診を予約すべき場合:
- 発達の進み方について相談したいとき(首すわり、歩き始め、言葉など)
- 定期的な健康チェック(心臓、耳、目、甲状腺、血液、体重など)の時期になったとき
- 学校や園での生活、療育や支援の利用について相談したいとき
- 便秘、いびき、体重の増え方、皮膚や歯のトラブルが気になるとき
- 将来の生活や、きょうだいを含めた家族の相談をしたいとき
診断
多くは、生まれたときの体の様子(顔立ちや筋緊張のやわらかさなど)から疑われ、染色体を調べる検査で確認されます。妊娠中に、超音波検査や任意の出生前検査で見つかることもあります。妊娠中の検査を受けるかどうかは、ご夫婦でよく相談して決めてよい選択肢です。
行われる可能性のある検査
- 染色体検査(血液を採って、染色体の数や形を調べる検査)
- 心臓の超音波検査(生まれつきの心臓の病気がないか確認)
- 聴覚の検査(聞こえの確認)
- 目の検査(斜視や屈折の異常などの確認)
- 血液検査(甲状腺の働きや貧血などの確認)
- 必要に応じて、首の骨のレントゲン検査や睡眠中の呼吸の検査
- 出生前の検査(超音波検査、母体血清マーカー検査、NIPT など。いずれも希望する場合)
診察で予想されること
染色体検査の結果が出るまでには数日から2週間ほどかかることがあります。結果の説明のときには、これからの健康管理や支援の話も一緒に聞けます。必要に応じて遺伝カウンセリングを受けられ、家族全体で気持ちと情報を整理する時間を持てます。診断はゴールではなく、その子に合った支援を始めるための出発点です。
治療
ダウン症候群そのものを治す治療はありません。大切なのは、一人ひとりの成長に合わせた支援(療育)と、合併症を早く見つけて丁寧にケアしていくことです。小児科を中心に、心臓、耳鼻科、眼科、歯科、リハビリ、相談支援などがチームになって関わります。
自宅でのセルフケア
- 決まった時期の健康チェックを欠かさず受ける(心臓、耳、目、甲状腺、体重、血圧など)
- 予防接種を年齢に合わせて受ける(かかりつけ医と相談しながら)
- 便秘を防ぐために、水分と食物繊維をとり、決まった時間にトイレに座る習慣をつくる
- 睡眠を十分にとり、いびきや息の止まりがないか家族で見守る
- 体を動かす遊びを取り入れ、無理のない範囲で筋力と体力を保つ
- 歯みがきと定期的な歯科受診で、虫歯や歯ぐきの病気を防ぐ
- 言葉かけや読み聞かせなど、コミュニケーションをたくさん楽しむ
医療治療
治療は「合併症への対応」と「発達への支援」の2本柱です。合併症への対応としては、心臓の病気の管理、聞こえや見え方のサポート(眼鏡や補聴器など)、甲状腺の働きが低下している場合の補充療法、睡眠時無呼吸への対応、便秘や感染症のケアなどが、医師の判断で行われます。発達への支援としては、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などのリハビリ、療育センターでの支援、保育所や学校での配慮、必要に応じた福祉サービスの利用があります。くすりの名前や量はここではお伝えしません。かかりつけ医や薬剤師にご相談ください。
手術が検討される場合
生まれつきの心臓の病気や消化管の閉鎖などがある場合は、状態に応じて手術が必要になることがあります。また、いびきや睡眠時無呼吸が強い場合に、扁桃やアデノイドの手術が検討されることもあります。手術が必要かどうかは、専門の医師とよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
毎日の生活では、決まったリズムを大切にすると過ごしやすくなります。起床・食事・排泄・睡眠の時間をある程度そろえ、見通しが持てるように工夫すると、本人も家族も落ち着いて過ごせます。できることを少しずつ増やしていく視点で、着替えや片付けなどにも一緒に取り組んでみましょう。
生活習慣のアドバイス
- 年齢に合った健康チェックの予定をカレンダーに書き、家族で共有する
- 言葉だけでなく、絵や写真、ジェスチャーを使って伝える工夫をする
- 地域の療育センター、保健センター、相談支援事業所などにつながっておく
- 療育手帳や障害者手帳、各種の手当や医療費の助成など、使える制度を早めに確認する
- 学校や園の先生と連絡を取り合い、得意なことや苦手なことを共有する
- 家族が休む時間(レスパイト)を意識してつくる
食事と運動
バランスのよい食事を3食規則正しくとり、食物繊維と水分を多めにして便秘を防ぎましょう。体重が増えすぎると睡眠時無呼吸や生活習慣病のリスクが上がるため、定期的に体重を測って確認します。運動は、散歩、水遊び、ダンスなど、本人が楽しめるものを毎日の習慣にすると続きやすいです。首の骨の不安定さが指摘されている場合は、宙返りや激しい接触のあるスポーツなど首に負担のかかる動きについて、医師に相談してから決めましょう。
精神的健康と心の健康
診断を聞いたときは、驚きや悲しみ、不安など、さまざまな気持ちがわいてくるのが自然です。それはおかしなことでも、弱さでもありません。子育ての中で疲れや孤独を感じたら、それは支えが必要なサインです。家族だけで抱えず、同じ経験をした家族の会や相談支援の窓口、かかりつけ医に話してみてください。きょうだいへの声かけや、ご夫婦それぞれの気持ちの整理も大切です。つらい気持ちが続くときは、医療機関や地域の相談窓口で相談できます。
予防
ダウン症候群は染色体の変化によって起こるため、生活習慣や食事で予防することはできません。ご自分や家族を責める必要はまったくありません。妊娠を考えている方は、遺伝カウンセリングで、年齢による起こりやすさや検査の選択肢について話を聞いておくと安心です。
検診プログラム
妊娠中には、超音波検査や母体血清マーカー検査、NIPT などの出生前検査があります。これらは「受けるかどうかを自分で選ぶ」任意の検査で、結果の意味やその後の選択肢についても事前に説明を受けられます。迷う場合は、産婦人科医や遺伝カウンセラーに相談しながら、ご夫婦で時間をかけて決めてください。出生後は、心臓・耳・目・甲状腺などの定期的なスクリーニングが、合併症の早期発見にとても役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 生まれつきの心臓の病気が、治療や観察を受けずにいると悪化し、呼吸や成長に影響することがあります。
- 聞こえの低下に気づかれないままになると、言葉の発達に影響することがあります。
- 見えにくさ(遠視や斜視など)に気づかれないままになると、生活や学習がしづらくなることがあります。
- 甲状腺の働きの低下を放っておくと、成長や元気さに影響が出ることがあります。
- 睡眠時無呼吸が続くと、日中の集中力や心臓への負担につながることがあります。
- 首の骨(頸椎)の不安定さがあると、まれに神経を傷つける危険があります。
- 便秘や肥満、生活習慣病、歯のトラブルが慢性化することがあります。
- まれですが、血液の病気(白血病)のリスクがやや高いことが知られています。
長期的な見通し
ダウン症候群の人は、かつてよりずっと長く、健やかに暮らせるようになりました。医療や支援が進み、多くの人が学校を卒業し、働き、趣味を楽しみ、地域で人生を歩んでいます。合併症を定期的にチェックし、本人に合った支援を受けながら過ごすことで、生活の質は大きく高まります。成長のスピードや得意なことは一人ひとり違います。目の前のその子のペースを大切にしながら、希望を持って関わっていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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