ダウン症とアルツハイマー病
概要
ダウン症(ダウン症候群)は、生まれつき21番目の染色体が1本多い状態で、体や学びのペースに特徴が出るものです。アルツハイマー病は、記憶や判断力などが少しずつ変わっていく脳の病気で、認知症の代表的な原因のひとつです。この二つは関係が深く、ダウン症のある人は年を重ねるとアルツハイマー病を発症しやすくなることが知られています。ただし、ダウン症のあるすべての人がなるわけではなく、時期や現れ方にも個人差があります。
重要な事実
- ダウン症のある人では、脳にたまる「アミロイドβ(脳の老廃物の一種)」が作られやすい体質があり、アルツハイマー病の変化が一般の人より早く始まることがあります。
- もの忘れなどの症状は、一般の人より早い40〜50歳代から現れることが多く、ゆっくり進むのが特徴です。
- 本人の様子の変化に早く気づき、かかりつけ医や専門医と一緒に支えていくことが、生活の質を保つうえでとても大切です。
ダウン症は日本でもおよそ600〜800人に1人の割合で生まれるといわれています。ダウン症のある人のうち、年を重ねて認知症(アルツハイマー病など)と診断される人は少なくなく、60歳ごろまでに半数以上という報告もあります。つまり、めずらしいことではなく、これから年を重ねる本人と家族にとって身近なテーマです。
主に成人したダウン症のある人が対象になります。多くは40歳代以降に変化が現れ始め、年齢とともに増えていきます。小児期にアルツハイマー病を発症することは基本的にありません。家族や支援者など、日常を一緒に過ごす人の気づきが早期発見の鍵になります。
症状
- 突然意識を失った、呼びかけに反応しない
- 初めてのけいれんが起きた、またはけいれんが数分以上続く
- 頭を強く打った後に、繰り返す嘔吐や強い眠気がある
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりして動かない
- 急に立てない、歩けない、体の片側が動かしにくい
- ⚠新しいけいれんが短時間で何度も起きる
- ⚠急に食べたり飲んだりできなくなった、むせが増えた
- ⚠急な混乱や強い興奮が続き、落ち着かない
- ⚠発熱や体調不良とともに、いつもと違う強いぼんやり感がある
- ⚠転倒して痛みが続く、足をかばって歩けない
一般的な症状
- 最近の出来事を覚えにくい、同じことを何度も聞く
- やる気が減った、無関心になった、表情が乏しくなった
- 自分から行動しなくなった、誘われても参加しなくなった
- 着替えや身支度など、できていた日常生活の動作が難しくなる
- 日付や場所、いつもの道がわからなくなる
- 言葉が出にくい、会話のやりとりが減る
- 気分の浮き沈みが大きくなる、急に怒りっぽくなる、不安が強くなる
- 睡眠のリズムが乱れる、夜中に起きてしまう
- 歩き方が変わった、足を引きずる、バランスが悪くなる
- 新しいけいれん(ひきつけ)が起きる
- トイレの失敗が増える
子供の症状
- 小児期にアルツハイマー病を発症することは基本的にありません
- 学びのペースやことばの発達について心配がある場合は、小児科や療育の担当者に相談してください
- 思春期以降の急な様子の変化は、体の病気や心の不調が隠れていることもあるため、早めに受診が勧められます
高齢者の症状
- 40歳代以降、もの忘れよりも「やる気の低下」「無関心」「引きこもり」が先に目立つことがあります
- 歩き方の変化やけいれん、トイレの失敗など、脳の別の部位の変化を示す症状が出ることがあります
- もともとの生活の様子(できること・できないこと)からの変化に気づくことが、診断の手がかりになります
- 耳や目の衰え、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸など、別の原因で似た症状が出ることもあるため、検査が大切です
原因
主な原因
- ダウン症では21番染色体が1本多いため、その染色体にある遺伝子の働きで、脳にアミロイドβ(たんぱく質の一種)がたまりやすい状態になります
- アミロイドβが長い年月をかけて脳にたまり、神経の働きが少しずつ障害されることで、アルツハイマー病の変化が進むと考えられています
- 症状の出方や進み方には個人差が大きく、遺伝的な要素だけでは説明できない部分も多くあります
リスク要因
- 年齢(特に40歳代以降)
- てんかん(けいれん)の既往
- 睡眠時無呼吸(いびきや夜間の呼吸の乱れ)
- 甲状腺の病気やビタミン不足などの体の不調
- うつ気分や不安が強い状態が続くこと
- 難聴や視力低下をそのままにしておくこと
- 運動不足、社会とのつながりの少なさ
- 生活リズムの乱れや不規則な睡眠
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めてのけいれんが起きた、またはけいれんが止まらない
- 急に意識がぼんやりして反応が悪い
- 転倒して頭を打った後、嘔吐や強い眠気がある
- 急に歩けなくなった、立てなくなった
- 食事や水分がとれず、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 以前はできていたことが、数か月かけて少しずつできなくなってきた
- やる気の低下や引きこもりが目立つようになった
- 同じことを何度も聞く、物をなくすことが増えた
- 気分の落ち込みや不安、不眠が続いている
- いびきや夜間の呼吸の乱れを家族が気にしている
- 本人・家族のどちらかが「何かが違う」と感じている
診断
ダウン症のある人では、もともとの生活の様子や話し方に特徴があるため、一般の人と同じ方法だけでは診断が難しくなります。そこで、日常を一緒に過ごす家族や支援者から「以前はできていたこと」と「今できること」の変化を丁寧に聞き取り、本人の様子を観察し、体の病気を除外する検査を組み合わせて、総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と生活歴の聞き取り(家族・支援者からの情報がとても重要です)
- 血液検査(甲状腺の働き、ビタミン不足、貧血などを調べます)
- 聴力・視力のチェック
- うつ気分や不安のスクリーニング
- 認知機能の評価(本人に合った方法で、時間をかけて行います)
- 脳の画像検査(CTやMRIで、脳の状態や他の病気を調べます)
- 脳波の検査(新しいけいれんがある場合など)
- 睡眠の検査(いびきや無呼吸が疑われる場合)
診察で予想されること
一度の診察で結論が出ることは少なく、数回に分けて評価することが一般的です。日々の様子を記録したメモ(できたこと・できなくなったこと、睡眠、食事、気分の変化)を持っていくと診断の助けになります。診断は「レッテルを貼るため」ではなく、必要な支援や環境の調整を始めるための目安として使われます。
治療
アルツハイマー病そのものを完全に治す治療はまだありません。しかし、生活のリズムを整え、わかりやすい環境を用意し、体の病気(けいれん、甲状腺、睡眠の乱れ、痛みなど)をきちんと整えることで、本人が安心して過ごせる時間は大きく変わります。治療の目的は「その人らしい生活をできるだけ長く続けられるようにすること」です。
自宅でのセルフケア
- 決まった時間に起きて眠る、規則正しい毎日のリズムをつくる
- 予定や手順を絵や文字で示すなど、目で見てわかりやすい工夫をする
- できることは本人にやってもらい、できたことを一緒に喜ぶ
- 散歩や軽い体操など、無理のない範囲で体を動かす
- 会話や趣味、人と会う時間をできるだけ保つ
- 部屋の明るさや段差、滑りやすい床など、家の中の安全を見直す
- 家族や支援者が一人で抱え込まず、定期的に休息をとる
医療治療
かかりつけ医と、認知症やダウン症に詳しい専門医が協力して関わります。認知機能の低下をゆるやかにするための薬が検討されることがありますが、使うかどうかは本人の状態や持病をふまえて医師が判断します。同時に、てんかん、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸、痛み、便秘、気分の落ち込みなど、生活を乱す要因を一つずつ整えていくことが治療の柱になります。薬の内容や量については、必ず処方した医師・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
通常、この病気のために手術が必要になることはありません。ただし、股関節や頸椎(首の骨)などダウン症に関連する別の病気が見つかった場合は、その治療について専門医と相談することになります。
この病気と共に生きる
「昨日と同じ今日」をできるだけ作ることが、安心につながります。起床・食事・活動・就寝の時間をそろえ、物の置き場所を変えない、声かけの言葉をそろえる、といった小さな工夫が効果的です。できないことよりも、できていることに目を向けて関わると、本人の自信と落ち着きが保たれやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 日中の活動と夜の休息をはっきり分ける
- 人と会う機会、役割や手伝いを続けられるようにする
- 聞こえや見えにくさがあれば、補助具を使って生活しやすくする
- 定期的な健康チェックと歯科の受診を欠かさない
- 家族や支援者が交代で休める体制をつくる
食事と運動
バランスのよい食事を、無理なく食べやすい形でとることが大切です。塩分や甘い飲み物をとりすぎない、水分をこまめにとる、むせやすい場合は食べ方や姿勢を工夫する、といった点に気をつけます。運動は、毎日の散歩や軽いストレッチ、椅子に座ってできる体操などで十分です。転倒を防ぐため、靴や床の状態もあわせて確認しましょう。
精神的健康と心の健康
本人はもちろん、介護する家族や支援者も、不安・疲れ・悲しさを抱えやすくなります。これは自然なことで、気持ちが落ち込むのは弱さではありません。「変わっていく姿を見るのがつらい」「怒ってしまう自分が嫌だ」と感じたら、一人で抱えずに相談してください。眠れない、食べられない、涙が止まらない、何もする気が起きない状態が続くときは、早めにかかりつけ医や地域の相談窓口に連絡を。命に関わる緊急時は119番へ連絡してください。
予防
ダウン症に伴うアルツハイマー病の変化を完全に防ぐ方法は、今のところ見つかっていません。ただし、睡眠の乱れ、聴力・視力の低下、運動不足、社会とのつながりの減少、生活習慣病などを整えることが、脳と体の健康を守る助けになると考えられています。できることを無理なく続けることが大切です。
検診プログラム
40歳を過ぎたころから、日常生活の変化に家族と支援者が一緒に気を配ることが実用的な「気づきの場」になります。厚生労働省も認知症の早期相談・早期支援の大切さを伝えています。健康診断や歯科検診を定期的に受け、気になる変化があればかかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 着替え・入浴・食事などの日常生活の動作が少しずつ難しくなる
- 転倒やけがのリスクが高まる
- 食べ物や飲み物が気管に入りやすくなり、肺炎を起こすことがある
- けいれんが新たに始まったり、回数が増えたりする
- 食欲低下や脱水、栄養不足が進むことがある
- 不安や興奮が強くなり、本人も周囲もつらさを抱えやすくなる
- 介護する家族の疲労や孤立が深まることがある
長期的な見通し
アルツハイマー病はゆっくり進む病気で、進行の速さには大きな個人差があります。早く気づいて環境を整え、体の不調をこまめに治し、人とのつながりを保つことで、穏やかに過ごせる期間は十分にあります。できることが変わっていっても、その人らしさや関係の温かさは失われません。医療と支援を上手に使うことが、これからの毎日を支える力になります。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.