ダウン症候群と健康 ― からだの特徴と、上手につきあっていくために
概要
ダウン症候群(ダウンしょうこうぐん)は、生まれつき体の設計図である「染色体(せんしょくたい)」が1本多い状態のことです。人がもつ染色体はふだん46本ですが、ダウン症候群の場合は21番目の染色体が1本多く、47本になります。そのため「21トリソミー」とも呼ばれます。体の成長のしかたや学び方、健康面にいくつかの特徴が現れることがありますが、一人ひとりの違いはとても大きく、多くの人が地域で学び、働き、暮らしています。「病気」というより、その人固有の体の特徴と考えるとわかりやすいかもしれません。
重要な事実
- 日本では、およそ600〜800人に1人の割合でダウン症候群の赤ちゃんが生まれるといわれています。決してめずらしいものではありません。
- 心臓、耳、目、甲状腺(のどにある、体の調子を整えるホルモンを出す器官)など、定期的にチェックしたいポイントがあります。
- 早い時期から療育(りょういく=子どもの発達を支える訓練や関わり)やさまざまな支援を受けることで、ことばや運動、社会生活の力を無理なく伸ばしていけます。
はい、めずらしいものではありません。日本でも毎年多くの赤ちゃんがダウン症候群をもって生まれています。報告によって数字は少し違いますが、およそ600〜800人に1人程度といわれています。
生まれる前から決まっている状態で、性別や人種、家庭の経済状況などによって起こるものではありません。お母さんの年齢が高くなるほど起こりやすくなるとはいわれていますが、年齢に関係なく生まれることも多くあります。
症状
- ぐったりして反応が弱い、呼びかけても答えない、意識がない
- 息が苦しそう、唇や顔色が青白い・紫色になっている
- けいれんが続いて止まらない
- 首の強い痛みを訴える、首を動かしたがらない、手足のしびれや動かしにくさがある(首の骨の不安定さが原因のことがあります。すぐに受診してください)
- 高熱とぐったりした様子が一緒にある
- ⚠38℃以上の熱が続く、または热が下がっても元気がない
- ⚠嘔吐をくり返す、水分がとれない、おしっこの量が減っている
- ⚠耳の強い痛み、耳だれ、聞こえにくそうにしている
- ⚠いびきがひどい、眠っている間に何度も息が止まっているように見える
- ⚠急に歩き方がおかしくなった、首をかしげたままにしている
- ⚠食べられない状態が続き、ぐったりしてきた
一般的な症状
- 筋力がやわらかめで、関節がやわらかい(「低緊張」といいます。抱っこすると体がやわらかく感じられたり、首すわりがゆっくりだったりします)
- 顔の特徴(目の形がつり上がって見える、鼻の付け根が低め、など)
- 手のひらを横に走る一本のしわがあることがある
- 生まれつき心臓の形に違いがある(およそ半分の人にみられるといわれます)
- 聞こえにくさや見えにくさ(中耳炎をくり返しやすい、近視や遠視など)
- 甲状腺の働きが低下することがある(だるさ、便秘、体重が増えやすいなどのサイン)
- 便秘になりやすい、消化器の形に生まれつきの違いがあることがある
- かぜや肺炎などの感染症にかかりやすい、重症化しやすいことがある
- 睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう=眠っている間に息が短い時間止まってしまうこと。いびきや、眠りの浅さとして現れます)
子供の症状
- 首すわり、おすわり、歩き始め、ことばの出はじまりがゆっくりなことが多い
- 母乳やミルクを飲む力が弱く、飲むのに時間がかかることがある
- 中耳炎をくり返す、耳だれが出る
- 便秘がち、おなかが張りやすい
- 身長・体重の伸びがゆるやか(成長曲線に沿って伸びていれば心配しすぎなくて大丈夫です)
- 歯が生え始めるのが遅い、歯並びの相談が必要になることがある
高齢者の症状
- 体重が増えやすく、肥満になりやすい
- 睡眠時無呼吸が悪化し、日中の眠気や集中力の低下につながることがある
- 甲状腺の働きの低下が進むことがある
- 耳や目の変化(聞こえにくさ、視力の低下)が進みやすいので、定期的な検査が大切
- 歯や歯ぐきの問題(歯周病など)が起こりやすい
- 関節の痛みや、変形性関節症などの整形外科的な相談が増える
- 体の老化がやや早く進むといわれ、40代以降でもの忘れや認知面の変化に気づかれることがある
- 気分の落ち込みや不安など、こころの不調を抱えることがある
原因
主な原因
- 細胞がつくられる過程で、21番目の染色体が1本多く入ってしまうことが原因です。偶然に起こるもので、親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因になるものではありません。
- およそ95%は「標準型(21トリソミー型)」とよばれるタイプです。
- 数%は「転座型」とよばれ、両親のどちらかがもつ染色体の並び方の特徴が関係することがあります(ごく一部です)。
- 一部は「モザイク型」とよばれ、体の細胞の一部だけに染色体の多い細胞が混ざっている状態です。
リスク要因
- お母さんの年齢が高いほど、起こりやすくなることが知られています。
- ただし、年齢に関係なく生まれることも多くあります。若い年齢でも起こります。
- 両親のどちらかに転座型の染色体の特徴がある場合、次の子どもにも関係することがあります(ごくまれです。遺伝カウンセリングで相談できます)。
- それ以外に、確実に防ぐ方法は現在知られていません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- ぐったりして反応が弱い、顔色が悪い、呼吸が苦しそうなとき(119番へ)
- 首の痛みや、手足の動かしにくさがあるとき(すぐに受診してください)
- けいれんが止まらないとき(119番へ)
- 高い熱が続き、水分もとれないとき
- 耳の痛みや耳だれが急に出たとき
- 眠っている間に息が何度も止まっているように見えるとき
定期受診を予約すべき場合:
- 定期的な健康診断(心臓、耳、目、甲状腺、成長の様子などをまとめてチェックします)
- 聞こえの検査・目の検査(乳幼児期から学齢期、大人になっても定期的に)
- 便秘が続く、体重が増えてきた、いびきが気になる
- 歯並び・歯ぐきの相談
- ことばや運動、学校生活・仕事のことで気になることがあるとき
- 本人や家族が疲れている、不安が強いと感じたとき
診断
妊娠中に受ける検査でわかることもありますし、生まれたあとの診察で体の特徴から気づかれることもあります。確定のためには、血液をとって染色体を調べる「染色体検査」を行います。診断はゴールではなく、その子に必要なサポートを早く始めるための出発点です。
行われる可能性のある検査
- 染色体検査(血液をとって、染色体の数や並び方を調べます。結果が出るまで数日〜2週間ほどかかることがあります)
- 心臓の超音波検査(心エコー)
- 聞こえの検査(赤ちゃんでもできる検査があります)
- 目の検査
- 甲状腺の働きをみる血液検査
- 睡眠の様子をみる検査(いびきや無呼吸が疑われるとき)
- 必要に応じて、消化器や首の骨(レントゲン)の検査
- 妊娠中の場合:出生前検査にはいくつかの種類があり、希望する場合には、十分な説明とカウンセリングを行っている医療機関で相談する流れになっています(厚生労働省の指針があります)
診察で予想されること
検査の結果を待つ間は、不安な気持ちになるのが自然です。結果が出たら、医師から詳しい説明と、これからの健康管理の計画が伝えられます。心臓や耳など、生まれた直後から確認しておきたいポイントを一緒に整理してもらいましょう。セカンドオピニオン(別の医師の意見)を求めることもできます。
治療
ダウン症候群そのものを治す治療はありません。大切なのは、一人ひとりの体の状態に合わせて、定期的にチェックしながら、必要な医療と支援を組み合わせていくことです。健康面の課題は、早く見つけて対応すれば十分にコントロールできるものがほとんどです。
自宅でのセルフケア
- 決まった時期の健康診断を欠かさず受ける(心臓・耳・目・甲状腺・成長のチェック)
- 予防接種を計画どおりに受ける(かかりつけ医とスケジュールを相談しましょう)
- 毎日の歯みがきと、定期的な歯科受診
- 便秘対策として、水分と食物繊維を意識してとる
- 体重と睡眠の様子をときどき記録しておく(受診のときに役立ちます)
- 無理のない範囲で体を動かす習慣をつくる
- 首の不安定さが指摘されている場合は、首に負担のかかるスポーツや動きについて医師に相談する
- 本人が自分の体のことを知り、自分で伝えられるように、わかりやすい言葉で一緒に練習する
医療治療
治療は大きく分けて、(1) 体の病気への医療的な対応、(2) 発達を支える療育・リハビリテーション、(3) 生活を支える福祉・教育・就労の支援 の3つを組み合わせて進めます。医療面では、心臓の状態に応じた治療、甲状腺の働きが低下している場合のホルモンを補う治療、感染症の治療、睡眠時無呼吸に対する治療(鼻マスクで空気を送る方法など)が行われます。療育では、理学療法(体の動かし方)、作業療法(手先や日常生活の動作)、言語聴覚療法(ことばやコミュニケーション)などを、その子のペースに合わせて行います。どの治療が必要かは、本人の状態によって大きく異なります。具体的な内容は必ず担当の医師と相談してください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、主に次のような場合です。生まれつきの心臓の形の違いに対して(時期や方法は状態によって異なります)、くり返す中耳炎に対して耳に小さなチューブを入れる処置、いびきや無呼吸の原因となる扁桃(へんとう)やアデノイドが大きい場合の手術、消化器の形の違いに対する手術などです。首の骨の不安定さ(環軸椎不安定症)で手術が検討されることはまれですが、症状がある場合は専門医と相談します。手術が必要かどうかは、必ず専門の医師の判断を聞いて決めましょう。
この病気と共に生きる
毎日の暮らしでは、本人の「できること」を少しずつ増やしながら、家族・学校・職場・支援者で情報を共有することが大切です。決まった時間に起きる、食事・歯みがき・着替えを習慣にするといった、わかりやすいリズムがあると安心して過ごせます。言葉での説明が伝わりにくいときは、絵や写真、短い文で示すと伝わりやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整える(起床・食事・睡眠の時間をできるだけ一定に)
- 定期的な受診をカレンダーに書き込み、忘れないようにする
- 学校や職場、相談支援事業所と連絡を取り合う
- 本人が意思を伝える練習の場をつくる(選ぶ、断る、助けを求める)
- 家族も休息をとる。介護や付き添いを一人で抱え込まない
- きょうだいへの声かけや、きょうだい同士の交流の場も活用する
食事と運動
バランスのよい食事を、決まった時間に、ゆっくりよく噛んで食べることが基本です。便秘予防のために水分と野菜・海藻・きのこなどの食物繊維を意識しましょう。塩分や甘い飲み物は控えめにすると、体重管理にもつながります。運動は、散歩、水泳、ダンス、自転車など、本人が楽しめるものを無理のない範囲で続けるのがおすすめです。首に負担のかかる運動(跳び箱や体操の一部など)については、事前に医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
本人も家族も、不安や疲れ、孤独感を感じることはあります。それは自然なことです。「うまくいかない日があって当たり前」と考え、完璧を目指しすぎないようにしましょう。気分の落ち込みが続く、眠れない、涙が出る、何も楽しめないといった状態が2週間以上続くときは、医療機関や相談窓口に相談してください。つらい気持ちを一人で抱えていると感じたら、地域の相談支援窓口や、下記のような相談先を頼ってください。日本では、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・通話無料)や、救急安心センター事業(#7119、実施地域)などの相談先があります。命に関わる緊急の場合は119番へ連絡してください。
予防
ダウン症候群を確実に防ぐ方法は、現在知られていません。妊娠中の過ごし方や食事が原因で起こるものではないため、本人や家族が「防げなかった」と自分を責める必要はまったくありません。
ワクチン
予防接種は、感染症から身を守るためにとても大切です。かぜや肺炎などの感染症にかかると重症化しやすいことがあるため、定期接種のスケジュールに沿って受けるようにしましょう。インフルエンザなど任意の予防接種については、かかりつけ医と相談して決めてください。
検診プログラム
妊娠中の出生前検査は、希望する場合に、十分な説明とカウンセリングを行っている医療機関で受けることができます(厚生労働省の指針があります)。受けるかどうかは、ご夫婦や家族でよく話し合って決めてよいものです。また、生まれた後も、心臓・聴覚・視力・甲状腺などの定期的なスクリーニング(検査で早期に見つけること)を続けることが、健康を守るうえで大切です。
合併症
治療しない場合
- 心臓の形の違いを放置すると、心不全(心臓が十分に血液を送れなくなる状態)や肺の血圧が高くなる状態につながることがあります。
- 聞こえにくさに気づかれないままだと、ことばの発達や人とのやりとりに影響することがあります。
- 甲状腺の働きの低下を放置すると、だるさや体重増加、学びへの影響などが出ることがあります。
- 睡眠時無呼吸を放置すると、成長や日中の集中力、心臓への負担に影響することがあります。
- 肥満が続くと、糖尿病や心臓の病気のリスクが高まります。
- 首の骨の不安定さ(環軸椎不安定症)がある場合、激しい動きでけがをする危険があります。
- 白血病などの血液の病気は、一般よりやや頻度が高いといわれていますが、絶対数はとても少ないものです。
長期的な見通し
医療と支援の進歩によって、ダウン症候群のある人の人生は大きく変わりました。以前より多くの人が成人し、学校を卒業して働き、地域で長く暮らしています。健康面の課題は早く見つけて対応すればコントロールできるものがほとんどです。一人ひとりの力は伸び続けます。心配なことがあれば、その都度かかりつけ医や支援者に相談しながら、その人らしい人生を一緒に支えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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