ダウン症候群(21トリソミー)を知る
概要
ダウン症候群は、体の設計図である染色体の数の違いによって生まれる、生まれつきの状態です。通常、人は染色体を2本ずつ持ちますが、ダウン症候群の方は21番目の染色体が1本多く、3本あります(そのため「21トリソミー」とも呼ばれます)。この違いにより、体の発達や学びのペースに特徴が出ることがありますが、一人ひとりの個性や得意・不得意はとても幅広く、みんなと同じ学校や地域で活躍している方も大勢います。
重要な事実
- 生まれつきの状態で、後からうつるものではありません。親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因で起こるものでもありません。
- 健康面で定期的に確認したいポイント(心臓、甲状腺、耳や目の聞こえ・見え方など)がありますが、多くは適切な支援で安心して暮らせます。
- 早期からの療育(発達を支える支援)や教育、周囲の理解によって、その子らしい力がよく伸びていくことが知られています。
ダウン症候群は、染色体の変化による状態の中では比較的よくみられます。日本ではおおよそ数百人に1人程度の割合で生まれるといわれています。
生まれる前から決まる状態で、男の子にも女の子にも同じように起こります。人種や国籍、家庭環境によって偏ることはありません。
症状
- 唇や顔色が青白い、息が苦しそうで呼吸が速い(心臓や肺の緊急事態の可能性)
- けいれんが続く、または意識が戻らない
- ぐったりして反応が乏しい、呼びかけても反応が弱い
- 首の痛みとともに手足が動かしにくい、歩き方が急に変わった(首の骨の不安定さに関わる可能性)
- 大量の出血や、頭を強く打ったあとの意識の変化
- ⚠高い熱が続く、または熱に加えて元気がない
- ⚠耳を痛がる、耳だれがある(耳の感染症を疑うとき)
- ⚠ミルクや食事がとれず、おしっこの量が減っている
- ⚠強い便秘とお腹の張りが続く
- ⚠急に元気がなくなり、いつもの様子と明らかに違う
一般的な症状
- 筋肉の張りが弱く、抱っこしたときに体がやわらかく感じられることがある
- 目の形や鼻の付け根の形など、顔立ちに特徴がみられることがある
- 手のひらのしわや指の形に特徴があることがある
- 身長や体重の増え方がゆっくりめである
- 言葉や運動の発達のペースがゆっくりである
- 口をぽかんと開けやすく、鼻やのどのトラブルが起きやすいことがある
子供の症状
- 首すわり、おすわり、歩きはじめなどの運動の発達がゆっくりなことがある
- 言葉が出るのが遅めで、発音の練習が必要になることがある
- 筋肉がやわらかいため、食べることや飲み込むことが苦手な時期がある
- 便秘になりやすい
- 耳の感染症(中耳炎)をくり返しやすく、聞こえの確認が大切になる
- 目のかすみや斜視など、見え方の問題がみつかることがある
- 先天性の心臓の病気を持って生まれることがある(生後すぐに発見されることが多い)
高齢者の症状
- 年齢を重ねるにつれて、もの忘れや判断の変化が目立つことがある(認知面の変化に気づきやすい)
- 睡眠中にいびきや息が止まる様子(睡眠時無呼吸)がみられやすい
- 甲状腺の働きの変化が起こることがある
- 首や肩の痛み、歩き方の変化など、首の骨の不安定さに関わる症状に注意が必要
- 加齢に伴う聞こえ・見え方の衰えは、生活のしやすさに大きく影響するため定期的な確認が役立つ
原因
主な原因
- 多くの場合、卵子や精子がつくられる過程で染色体の分かれ方に偶然の違いが生じ、21番目の染色体が1本多くなります。
- ごく一部の方では、親から受けついだ染色体の配置の特徴(転座)が関係することがあります。
- 親の健康状態や生活習慣、育て方が原因で起こるものではありません。誰のせいでもありません。
リスク要因
- 母親の年齢が高いほど起こりやすくなる傾向がありますが、若い方でも十分に起こります。
- きょうだいや親族にダウン症候群の方がいる場合は、遺伝カウンセリングで相談できることがあります。
- それ以外に、はっきりと予防できる原因はわかっていません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 生まれたばかりの赤ちゃんが、飲みが悪い、ぐったりしている、呼吸が苦しそう
- けいれん、意識がぼんやりする、反応がにぶい
- 急に歩けなくなった、首を痛がる、手足の動きが左右で違う
- 高い熱が続き、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 発達のペースについて気になるとき(首すわり、言葉、歩行など)
- 聞こえや見え方が気になるとき、耳をよく触る、呼びかけへの反応が弱いと感じるとき
- 便秘が続く、食事の飲み込みが気になるとき
- 体重の増え方が気になるとき、甲状腺の働きの定期チェック
- 成人期に入り、もの忘れや睡眠の様子が気になるとき
- 学校や保育園での支援の相談、療育や福祉サービスについて知りたいとき
診断
ダウン症候群かどうかは、染色体を調べる検査(染色体検査)で確認します。妊娠中に受ける出生前検査で見つかることもありますが、確定のためには染色体の詳しい検査が必要です。出生後に特徴から疑われた場合も、血液を少量使った染色体検査で確認します。
行われる可能性のある検査
- 染色体検査(血液などを用いて染色体の数を調べる検査)
- 出生前に受ける検査(母体血清マーカー検査、超音波検査、NIPT など。いずれも確認のためには追加の検査が必要です)
- 心臓の超音波検査(先天性の心臓の病気がないかの確認)
- 甲状腺の働きをみる血液検査
- 聴力検査、視力・目の検査
- 発達の様子をみる診察や相談(療育の計画づくりのため)
診察で予想されること
診断は一度の診察だけで終わるものではなく、成長に合わせて定期的な健康チェックを続けていく形になります。妊娠中に検査を考える場合は、結果がわかったあとの生活や支援についても事前に説明を受けることが大切です。ご家族が納得して決められるよう、遗传カウンセリング(遺伝について専門家と話す場)を利用できます。気になることは何度でも医師に質問してかまいません。
治療
ダウン症候群そのものを「治す」治療はありません。大切なのは、一人ひとりの健康状態に合わせた定期的な健康管理と、発達を支える支援(療育)を組み合わせていくことです。自治体の乳幼児健診や療育相談、福祉サービスとつながりながら、その子のペースで力が伸びる環境を整えていきます。
自宅でのセルフケア
- 定期的な健康チェック(心臓、甲状腺、耳、目、歯など)を欠かさず受ける
- 予防接種は、かかりつけ医と相談しながら一般的なスケジュールに沿って進める
- 便秘予防のため、水分と食物繊維を意識し、体を動かす習慣をつくる
- 睡眠のリズムを整え、いびきや息の止まりがないか家族で気にかける
- 言葉や運動の練習を、日常生活の中で遊びとして楽しみながら続ける
- ご家族自身の休息も大切にし、頼れる支援を早めに使う
医療治療
治療は、その方に必要な支援を組み合わせる形で行います。具体的には、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などのリハビリテーション、聞こえや見え方への支援(補聴器や眼鏡などの調整)、心臓や甲状腺など内科的な健康管理、食べることや飲み込むことへの支援などです。必要な場合は専門医と連携します。薬が必要な場面はありますが、内容は症状や状態によって変わるため、必ずかかりつけ医の指示に従ってください。
手術が検討される場合
先天性の心臓の病気や、消化器の病気、耳の感染症のくり返しなど、状態によっては手術が必要になることがあります。手術が必要かどうかは、専門医が検査結果をもとに判断します。急に判断を迫られることはほとんどなく、事前に説明を受けて相談できます。
この病気と共に生きる
日常生活では、わかりやすい言葉でゆっくり伝える、予定を絵や写真で示す、できたことを具体的にほめる、といった工夫がとても役立ちます。生活のリズムを整えること、自分でできることを少しずつ増やしていくことも、自信につながります。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に寝起きするなど、生活のリズムを整える
- 体を動かす遊びや運動を取り入れ、筋力と体重管理を助ける
- 絵カードやスケジュール表など、目で見てわかる手がかりを活用する
- 歯みがきや手洗いなど、毎日の習慣を無理なく身につける
- 地域の療育センター、放課後等デイサービス、相談支援事業所などの支援を上手に使う
- きょうだいを含む家族全体で、話し合う時間を定期的にもつ
食事と運動
バランスのよい食事と、毎日の体を動かす時間が大切です。筋肉がやわらかく動きがゆっくりな分、体重が増えやすいことがあるため、間食の量や内容を家族で工夫するとよいでしょう。飲み込みが気になるときは、食べ物の形やとろみを工夫し、必要なら専門家に相談してください。運動は、水泳や散歩、ダンスなど、その子が楽しめるものを続けるのが一番です。
精神的健康と心の健康
ご家族が診断を受けたときに、驚きや悲しみ、不安を感じるのは自然なことです。それは愛情の裏返しでもあります。時間をかけて気持ちが落ち着いていくことが多く、同じ経験をした家族の集まりや相談の場が大きな支えになります。本人も思春期や成人期に、友人関係や将来について悩むことがあります。気持ちがつらいときは、一人で抱えずにかかりつけ医や地域の相談窓口、心理の専門家に話してください。つらい気持ちが続き、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。
予防
ダウン症候群は染色体の偶然の違いによって起こるため、生活習慣や食事で予防することはできません。誰の責任でもありません。妊娠を考えている方は、葉酸を含むバランスのよい食事や禁煙など、妊娠前からの健康づくりが全体の妊娠の安全に役立ちます。
検診プログラム
妊娠中に受けられる出生前検査にはいくつかの種類があり、希望する場合に受けられます。検査の意味や限界、結果がわかったあとの選択肢について、事前に医師や遗传カウンセリングの専門家から十分な説明を受けたうえで、ご夫婦で話し合って決めることが大切です。出生後は、心臓・甲状腺・聴力・視力などの健康チェックを定期的に受けることが、合併症の早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 先天性の心臓の病気が見落とされると、呼吸や成長に影響することがある
- 甲状腺の働きの低下に気づかないままになると、元気のなさや体重の変化が続くことがある
- 聞こえの低下に気づかないと、言葉の発達や人とのやりとりに影響しやすい
- 視力の問題を見過ごすと、生活のしやすさが下がることがある
- 首の骨の不安定さ(環軸椎の不安定症)は、まれに神経の症状を引き起こすことがある
- 成人期以降、睡眠時無呼吸や認知面の変化に気づかれにくいことがある
長期的な見通し
ダウン症候群のある方の多くは、地域で学校に通い、働き、友人や家族とともに長く暮らしています。医療や支援の進歩により、健康に過ごせる期間は年々延びています。一人ひとりの得意を活かせる環境と、まわりの理解があれば、その人らしい人生をしっかり歩んでいけます。
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最終更新: 2026年10月23日
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