十二指腸炎(じゅうにしちょうえん)— 胃の次にある「十二指腸」に炎症が起きる病気
概要
十二指腸は、胃から出てきた食べ物が最初に通る、小腸の入り口の部分です。十二指腸炎は、この部分の粘膜(内側のうすい皮)に炎症が起きて、赤くなったり腫れたり、ときにはただれたりする状態をいいます。炎症は胃にも同時に起きていることが多く、みぞおちの痛みや胃の不快感として気づかれることがあります。多くは命に関わる病気ではなく、原因を取り除くことで良くなることが期待できます。
重要な事実
- 十二指腸は胃のすぐ先にある小腸の最初の部分で、長さは大人でおよそ25〜30cmです。
- 胃カメラ(内視鏡)で十二指腸まで観察することで見つかることが多く、自覚症状が乏しい場合もあります。
- ピロリ菌の感染、痛み止めの一部(非ステロイド性抗炎症薬)、アルコールや喫煙などがよく知られた原因です。
十二指腸炎は比較的よくみられる状態です。胃カメラを受けた人の一部に、症状がなくても軽い炎症が見つかることがあります。
年齢や性別を問わず起こりますが、ピロリ菌に感染している人、痛み止めを長く使っている人、飲酒や喫煙の多い人、強いストレスが続いている人に多くみられます。
症状
- 血を吐いた、またはコーヒーのかすのような黒いものを吐いた
- 黒くてタールのようにベトベトした便が出た、または便に血が混じる
- 激しい腹痛で体を動かせない、お腹が板のように硬い
- 冷や汗、ふらつき、意識が遠のく感じ、失神(出血によるショックの可能性)
- ⚠みぞおちの痛みが数日以上続き、食事がとりにくい
- ⚠吐き気や嘔吐を繰り返し、水分もとれない
- ⚠黒っぽい便が続く、または顔色が悪く疲れやすい(貧血の可能性)
- ⚠症状が急に強くなった、または今までと違う痛み方になった
一般的な症状
- みぞおち(胃のあたり)の痛みや不快感。空腹時や夜間に強くなることがあります。
- 胃のむかつき、吐き気、ときに嘔吐
- 食欲が下がる、すぐにお腹がいっぱいになる感じ
- 胸やけ、げっぷ、お腹の張り
- 消化不良のような、なんとなく胃が重い感じ
- 炎症が強い場合、便が黒っぽくなる(消化管からの出血のサイン)
子供の症状
- お腹が痛いと訴えるが、場所をうまく伝えられないことがある
- 繰り返す吐き気や嘔吐、食欲がなくなる
- 元気がなくなる、不機嫌になりやすい、夜に泣いて目を覚ます
- 便の色が黒っぽくないか、顔色が青白くないかを大人がよく見てあげてください
高齢者の症状
- 痛みなどの自覚症状が少なく、気づいたときには貧血や黒い便が出ていることがある
- 食欲低下や体重減少として現れることがある
- 持病の薬(特に痛み止めや血液を固まりにくくする薬)の影響を受けやすい
- 症状がはっきりしない分、気になることがあれば早めに受診が勧められます
原因
主な原因
- ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染による粘膜の炎症
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる種類の痛み止め・解熱剤の長期使用
- アルコールの飲みすぎ、喫煙
- 胆汁(たんのうから出る消化液)が胃から十二指腸へ逆流することによる刺激
- 細菌やウイルスによる感染症(急性の十二指腸炎)
- 強いストレスや、大きなけが・やけど・手術などの体への負担
- クローン病やセリアック病など、他の消化器の病気に伴う炎症
- 食べすぎ、刺激の強い食べ物、不規則な食生活
リスク要因
- ピロリ菌に感染している
- 痛み止め(NSAIDs)や低用量ピル以外の一部の薬を長く飲んでいる
- お酒をたくさん飲む、またはたばこを吸う
- 強いストレスが続いている、睡眠不足がちである
- 過去に胃や十二指腸の潰瘍を経験したことがある
- コーヒーや香辛料など刺激の強い飲食物を多くとる習慣がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐血やコーヒーかすのような嘔吐、黒いタール状の便がある(救急の受診が必要です)
- 激しい腹痛、冷や汗、ふらつき、失神がある(すぐに119番)
- 水分もとれないほどの嘔吐が続く
- 黒い便が続く、または強いだるさ・動悸がある
定期受診を予約すべき場合:
- みぞおちの痛みや胃の不快感が1〜2週間以上続く
- 食後に必ず胃が痛くなる、または夜間に胃の痛みで目が覚める
- 食欲が落ちて体重が減ってきた
- 市販の胃薬でよくならない、繰り返す
- ピロリ菌の検査を受けたことがなく、胃の症状が続いている
診断
まず問診で、痛みの場所やタイミング、飲んでいる薬、飲酒・喫煙の習慣、体重の変化などをうかがいます。その後、必要に応じて胃カメラ(上部消化管内視鏡)を行い、胃と十二指腸の粘膜を直接見て炎症の程度を確認します。ピロリ菌の有無を調べる検査もよく行われます。
行われる可能性のある検査
- 問診と体の診察(痛みの場所、圧痛の有無など)
- 胃カメラ(上部消化管内視鏡):胃と十二指腸の粘膜を観察し、必要なら組織を少し採取して調べる
- ピロリ菌の検査(息を吐く検査、便の検査、血液検査、組織を使う検査など)
- 血液検査:貧血や炎症の有無を確認
- 便の検査:黒い便や血が混じっていないかの確認
- 場合によっては腹部の画像検査(超音波やCTなど)
診察で予想されること
胃カメラは、のどを軽く麻痺させる薬を使って行われ、数分から10分程度で終わることが多い検査です。検査後はしばらく飲食を控える必要があります。結果によっては、ピロリ菌の治療や薬の見直しなど、次のステップを医師と一緒に決めていきます。
治療
十二指腸炎の治療は「原因を取り除くこと」が中心です。ピロリ菌が見つかればその治療を、薬が原因と考えられれば薬の見直しを、飲酒や喫煙が関係していれば生活の調整を行います。あわせて、胃酸の刺激から粘膜を守り、炎症を落ち着かせる治療が行われます。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい時間に、腹八分目を心がけて食事をとる
- コーヒー、強い香辛料、脂っこいもの、炭酸飲料など刺激の強いものを控えめにする
- お酒を減らす、またはしばらく控える。禁煙を心がける
- 空腹で長く過ごさないように、少量ずつこまめにとる
- 睡眠を十分にとり、ストレスを減らす工夫をする
- 市販の痛み止めを長く使っている場合は、医師や薬剤師に相談する(自己判断で急に中止せず、まず相談を)
医療治療
医師は、胃酸の分泌を抑える薬や、粘膜を保護する薬などを使って炎症が落ち着くのを助けることがあります。ピロリ菌が見つかった場合は、それを退治するための治療が行われます。また、原因になっている薬(痛み止めなど)がある場合は、別の選択肢への変更を検討します。具体的な薬の種類や量は、症状や検査結果に合わせて医師が判断します。
手術が検討される場合
十二指腸炎そのものに対して手術が必要になることはほとんどありません。ただし、出血が止まらない、穿孔(穴が開く)が起きた、狭窄(狭くなる)で食べ物が通らないといった合併症がある場合には、外科的な治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
症状が落ち着いても、食生活や飲酒・喫煙の習慣が元に戻ると再び炎症が起きやすくなります。痛みや胃の調子を日々記録しておくと、自分に合わない食べ物や生活パターンに気づきやすくなります。気になる症状があれば、我慢せず早めにかかりつけ医に相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝・昼・夜の食事時間をできるだけ一定にする
- 食べる量を一度に多くせず、ゆっくりよく噛んで食べる
- アルコールは量と回数を減らし、飲まない日をつくる
- 禁煙する、または本数を減らす取り組みを始める
- 睡眠時間を確保し、夜更かしを控える
- 強いストレスが続くときは、休息や気分転換の時間を意識してつくる
食事と運動
食事は、おかゆやうどん、やわらかい野菜、豆腐、白身魚など、胃にやさしいものを中心にしながら、栄養のバランスをとることが大切です。一度にたくさん食べず、少量をこまめにとると負担が少なくなります。運動は、散歩や軽いストレッチなど無理のない範囲で続けることが、ストレス軽減や食欲の調整に役立ちます。激しい運動を始める前には、体調と相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
胃の不調が長く続くと、食事が楽しめない、外出を控えてしまう、イライラする、眠れないなど、心の面でも負担がかかることがあります。これは決して弱さではなく、体の不調が気持ちに影響する自然な反応です。つらい気持ちが続くときや、気分の落ち込みが強いときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の保健所・精神保健福祉センターなどの相談窓口に話してみてください。もし自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、すぐに119番、または身近な人・医療機関に助けを求めてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、原因として知られていることを減らすことで、発症や再発のリスクを下げられる可能性があります。飲酒や喫煙を控える、痛み止めの使い方に気をつける、ピロリ菌の検査を受けて陽性なら治療する、といったことが助けになります。
検診プログラム
ピロリ菌の検査は、胃の症状がある人や胃の病気の家族歴がある人などに対して行われます。症状がなくても気になる場合は、健診やかかりつけ医に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 炎症が長引いて、十二指腸や胃に潰瘍(粘膜が深くえぐれた状態)ができることがある
- 出血して貧血になる、または黒い便が出ることがある
- 炎症が繰り返されて粘膜が傷つき、まれに十二指腸が狭くなって食べ物が通りにくくなることがある
- 非常にまれですが、十二指腸に穴が開く(穿孔)ことがあり、緊急の治療が必要になる
- ピロリ菌が関係する場合、長期間放置すると胃の病気のリスクが高まることが知られている
長期的な見通し
十二指腸炎は、原因を取り除き、必要な治療と生活の見直しを続けることで、多くの方が症状の改善を実感できます。再発を繰り返すこともありますが、その場合も原因を一つずつ確認していくことで対処できます。心配なことがあれば、早めに医療機関に相談しながら、あせらず一歩ずつ進めていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.