低身長症(ていしんちょうしょう)——からだが小さいということ
概要
低身長症とは、同じ年齢・性別の人と比べて身長がはっきり低い状態をいいます。医学的には、成長曲線(身長の伸びをグラフにしたもの)で下から3%未満に入る、または標準より大きく下回る場合を目安にします。原因はひとつではなく、遺伝、ホルモン、骨の育ち方など、いろいろな要素が関わります。昔は「小人症」ということばも使われましたが、今は「低身長」や、原因となる病名で呼ぶことが多くなっています。からだが小さいこと自体は病気ではないことも多く、多くの人は健康に暮らしています。
重要な事実
- 低身長は「病気」とは限らず、体質や遺伝によることが多い
- 原因はホルモン、骨の育ち方、遺伝、慢性の病気などさまざまで、検査で見分けられる
- 治療が必要な場合もあり、ホルモンの補充などで成長の伸びが改善することがある
- からだの大きさと、健康や幸せは別のもの。生活の工夫で困りごとは減らせる
低身長の目安に当てはまる子どもは、およそ40人に1人くらい(2〜3%ほど)いると言われています。そのほとんどは病気ではなく、成長の個人差の範囲です。治療が必要な特定の病気が原因のものは、その中のごく一部です。
子どものころに気づかれることが多いですが、大人になってから分かる場合もあります。男女の差はほとんどありません。遺伝によるもの、ホルモンの影響、骨の育ち方の違い、低出生体重だったことなど、背景はさまざまです。
症状
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、息が止まりそう
- 突然の激しい頭痛、何度も吐く、意識がぼんやりする
- けいれんが止まらない
- 首や背中を強く痛がる、手足が動かない、しびれて力が入らない
- ⚠急に身長の伸びが止まった、体重が減り続ける
- ⚠頭痛・視力の低下・吐き気が続く
- ⚠歩きにくい、関節の痛みが強い
- ⚠思春期の兆候が極端に早い、または極端に遅い
一般的な症状
- 同じ年齢の人と比べて背が低い、服のサイズが合いにくい
- 成長曲線のカーブから外れる(伸びが横ばい、または下がっていく)
- 腕や脚の長さのバランスに特徴がある(軟骨無形成症などの場合)
- 関節の動きが制限される、腰や膝が痛む
- 思春期の兆候が早く来る、または遅い
子供の症状
- 1年間の身長の伸びが4〜5cm未満と少ない
- クラスでいつも前から1〜2番目の身長
- 赤ちゃんのころから身長・体重の増え方がゆっくり
- 歩き始めが遅い、足が曲がりやすい
- 頭が大きめで額が出ている、鼻の付け根が低い(軟骨無形成症の特徴)
- 体育や着替えの場面で困りごとが多い
高齢者の症状
- 骨の形の影響で腰や膝、関節が痛む
- 脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく:背骨の中の神経の通り道が狭くなること)による足のしびれや歩きにくさ
- 睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる)やいびき
- 聴力の低下、耳の病気をくり返す
- 肥満や生活習慣病のリスクが高くなることがある
原因
主な原因
- 体質性(家族性)低身長:家族の背が低く、遺伝の影響でゆっくり育つ
- 思春期遅発(成長の遅れ):成長がゆっくりで、あとから追いついてくる
- ホルモンの不足:成長に関わるホルモンや甲状腺(こうじょうせん)のホルモンが足りない
- 骨の育ち方の違い:軟骨無形成症などの骨系統疾患(こつけいとうしっかん)
- 子宮内発育遅延・低出生体重:おなかの中での育ちがゆっくりだった
- 慢性の病気:腎臓、心臓、消化器、アレルギーなどの病気が長く続く
- 染色体や遺伝子の変化:ターナー症候群など
- 栄養不足や心理的なストレス
リスク要因
- 家族に背の低い人がいる、家系に骨の病気がある
- 低出生体重・早産だった
- 慢性の病気を抱えている
- 栄養が足りていない、偏った食事が続いている
- 強いストレスや、つらい養育環境がある
- 特定の遺伝子や染色体の変化がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭痛・視力の低下・おう吐が続く
- 急に成長が止まった、歩きにくい、手足に力が入らない
- けいれん、意識がぼんやりする、呼吸が苦しい
定期受診を予約すべき場合:
- 成長曲線から外れている、毎年の伸びが少ない
- クラスで目立って小さい、服のサイズが合わない
- 思春期の兆候が早い、または遅い
- 足が曲がる、関節の痛みがある、いびきがひどい
- 家族に低身長や骨の病気の人がいる
診断
まず身長・体重を測り、成長曲線の記録を一緒に確認します。家族の身長、生まれたときの様子、これまでの育ち方を聞いたうえで、必要に応じて血液検査やレントゲンなどで原因を調べます。多くの場合は「体質性」または「成長の遅れ」と分かり、治療が必要かどうかを判断します。
行われる可能性のある検査
- 身長・体重・座高の測定と、成長曲線への記入
- 手のレントゲン(骨年齢:骨がどのくらい育っているかを見る)
- 血液検査(ホルモンの値、栄養状態、慢性の病気の有無)
- 甲状腺ホルモンの検査
- 成長ホルモンの分泌をみる検査(必要な場合)
- 染色体検査(女の子の場合など)
- 頭のMRI(ホルモンを作る部分をみる)
- 遺伝子の検査(必要に応じて)
診察で予想されること
検査は一度にまとめてではなく、何回かに分けて行われることが多く、結果が出るまで少し時間がかかります。痛みの少ない検査がほとんどです。はっきりした原因が見つからず「経過を見ましょう」となることもありますが、それは大きな異常がないという意味でもあります。
治療
治療が必要かどうかは、原因と本人の希望、生活への影響をふまえて決めます。体質性の低身長なら治療は不要なことが多く、成長を見守ります。ホルモンが足りない場合は補充を、骨の病気が背景にある場合は専門医と相談しながら進めます。治療の目的は「身長を伸ばすこと」だけでなく、毎日を快適に過ごせるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 母子健康手帳や成長記録をこまめにつける
- 十分な睡眠をとる(成長に関わるホルモンは眠っている間に多く出ます)
- バランスのよい食事を心がける
- 適度に体を動かし、外で遊ぶ
- 姿勢をよくし、重い荷物を無理に背負わない
- つらさをためこまず、誰かに話す
医療治療
原因に合わせた治療を行います。ホルモンが足りない場合の補充、骨の病気の定期的なフォロー、耳の病気や睡眠時無呼吸、関節の痛みなど合併症への対応が中心です。治療の効果や副作用、続ける期間については、必ず担当医と相談してください。この記事では薬の名前や量はお伝えしません。主治医や薬剤師に確認しましょう。
手術が検討される場合
骨の変形が強い場合や、脊柱管狭窄で足のしびれや歩きにくさが強い場合に、整形外科で手術を検討することがあります。脚の長さを伸ばす手術(脚延長術)は、専門の医療機関で、本人と家族が十分に話し合ったうえで判断するものです。すべての人に必要というわけではありません。
この病気と共に生きる
家の中では、手の届く場所や家具の高さを工夫すると、毎日がぐっと楽になります。台所の踏み台、低い位置のスイッチ、取りやすい棚など。学校や職場でも、いすや机の高さ、トイレの設備などを相談して調整できます。背伸びをしなくていい環境をつくることが、いちばんの近道です。
生活習慣のアドバイス
- 家の中の段差や、手の届く範囲を見直す
- 踏み台や柄の長い道具を上手に使う
- 学校・職場に状況を伝え、配慮を相談する
- 耳、睡眠、関節の健康を定期的にチェックする
- 運転する場合はシートやペダルを調整し、必要なら改造を検討する
- 無理のない範囲で体を動かす習慣をもつ
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、成長期はたんぱく質・カルシウム・ビタミンDを意識し、極端なダイエットは避けましょう。運動は水泳やストレッチなど、関節にやさしいものがおすすめです。骨が弱い場合や首に不安がある場合は、ぶつかり合うスポーツの前に医師へ相談してください。
精神的健康と心の健康
周りと見た目が違うことで、子どもも大人も傷ついたり、孤独を感じたりすることがあります。それは本人の弱さではなく、周りの理解や環境の問題です。つらい気持ちが続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ひとりで抱えず、すぐに信頼できる人・学校の先生・スクールカウンセラー・かかりつけ医、または地域の相談窓口や救急(119)に連絡してください。助けを求めることは、とても大切な力です。
予防
多くの低身長は予防できません。遺伝や偶然によるものが大部分です。ただし、栄養不足や慢性の病気による成長の遅れは、早く見つけて対応することで改善が期待できます。妊娠中の健康管理と、子どものころからの成長の記録が大切です。
ワクチン
低身長そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、感染症が長引いて成長に影響することがあるため、年齢に応じた定期接種は受けておきましょう。
検診プログラム
日本では、母子健康手帳の成長曲線と乳幼児健康診査(健診)で、身長・体重を定期的に測ります。学校の健康診断でも測定があります。気になることがあれば、健診のときに遠慮なく相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 日常生活での不便(手が届かない、見えにくい、移動しにくい)
- 関節や腰の痛み、骨の変形
- 睡眠時無呼吸(いびき、日中の強い眠気)
- 耳の病気をくり返す、聴力の低下
- 肥満や生活習慣病のリスクの上昇
- 傷つきや孤独感といった心の負担
- 原因によっては、ホルモンの問題が進むことがある
長期的な見通し
多くの人は健康に、いきいきと暮らしています。見通しは原因によって変わりますが、早めに見つけて必要なサポートを受けることで、生活の質は十分に保てます。背の高さだけが人生の価値を決めるわけではありません。心配なことは、早めに専門家に相談してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.