腸内細菌のバランスの乱れ(ディスバイオーシス)
概要
私たちの腸の中には、何百種類もの細菌が住んでいます。これを「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼びます。ディスバイオーシスとは、この腸内細菌の種類や数のバランスが崩れた状態を指す言葉です。特定の「病気」というより、体の状態を表す考え方で、おなかの調子や体全体の具合に影響することがあります。
重要な事実
- 腸内細菌のバランスは、食事・ストレス・睡眠・薬などで日々変化します。
- ディスバイオーシス自体は検査で簡単に確定できるものではなく、症状と生活背景から総合的に考えられます。
- 多くの場合は一時的で、生活の見直しで少しずつ整っていくことが期待できます。
とてもよくある状態です。抗生物質を使った後や、食生活が乱れた時期、強いストレスが続いたときなど、誰にでも起こりえます。
年齢を問わず起こりますが、抗生物質や一部の薬を使った人、食物繊維が少ない食事が続く人、ストレスや睡眠不足が続く人、高齢者、乳幼児、海外旅行の後などに多くみられます。
症状
- 大量の血便や、コーヒー色の吐物がある
- 激しい腹痛で体を丸めても楽にならない
- ぐったりして意識がはっきりしない、呼びかけに反応が弱い
- 尿がほとんど出ない、口の中がひどく乾くなど強い脱水のサインがある
- ⚠38度以上の発熱が続く
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠黒くタール状の便が出た
- ⚠急な体重減少がある
- ⚠下痢や腹痛が2週間以上続く
一般的な症状
- おなかの張りやガスが増える
- 下痢や便秘、またはその繰り返し
- 便のにおいや形、回数の変化
- おなかの軽い痛みや不快感
- なんとなく疲れやすい、すっきりしない
- 肌の調子が悪くなる(関連が指摘されています)
子供の症状
- おなかの痛みや下痢をくり返す
- 食欲が落ちる、機嫌が悪くなる
- 便の回数や形の変化
- 乳幼児では下痢が続くと脱水になりやすいので注意が必要です
高齢者の症状
- 下痢や軟便が長引きやすい
- 食欲低下や体重減少
- 免疫力が落ち、感染性の胃腸炎にかかりやすい
- 水分不足から脱水になりやすい
原因
主な原因
- 抗生物質の使用(善玉菌も一緒に減ることがあります)
- 食物繊維や発酵食品が少なく、加工食品や脂っこい食事が多い
- 強いストレスや睡眠不足
- 感染性の胃腸炎の後
- 加齢による変化
- 手術や入院などによる生活環境の変化
- 喫煙や過度の飲酒
- 運動不足
リスク要因
- ここ最近抗生物質や胃酸を抑える薬などを使用した
- 野菜・豆・海藻などが食卓に少ない
- 不規則な生活、夜更かし、食べすぎ・飲みすぎ
- 強いストレスが長く続いている
- 高齢である、または小さな子どもの世話をしている
- 海外渡航後である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便・黒い便・繰り返す嘔吐・高熱がある
- 強い脱水のサイン(尿が少ない、ぐったり、口が渇く)がある
- 急に体重が減った、痛みが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 下痢や便秘、おなかの張りが2週間以上続く
- 症状がくり返し、仕事や学校、睡眠に支障が出ている
- 食事や生活を整えても改善しない
- 市販薬に頼る日が増えている
診断
多くは問診が中心です。いつから、どんな症状が、どんな生活の変化のあとに始まったかを聞き取り、食事・服薬・ストレスなどを一緒に振り返ります。ディスバイオーシスそのものを測る標準的な検査は一般の診療では限られているため、まずは他の病気(感染性胃腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患など)がないかを確認することが大切です。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状の記録(便の回数や形、食事内容)
- 腹部の診察
- 便検査(感染症や炎症の有無を確認)
- 血液検査(貧血や炎症、栄養状態の確認)
- 必要に応じて腹部の画像検査や内視鏡検査
- 腸内細菌の検査は研究段階・民間サービスが中心で、保険が使えないことが多く、結果の解釈にも注意が必要です
診察で予想されること
診察は10〜15分程度で終わることが多く、症状の経過をメモしていくと話がスムーズです。検査は症状に応じて選ばれ、すべてが必要になるわけではありません。原因が見つからないこともありますが、その場合も症状をやわらげる工夫を一緒に考えることができます。
治療
ディスバイオーシスを直接「治す」特別な治療があるわけではなく、原因になっている生活や薬の見直しと、症状をやわらげる工夫を組み合わせます。腸内細菌のバランスは時間をかけて整っていくので、数週間〜数か月の視点で取り組むとよいでしょう。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(下痢のときは特に)
- 食物繊維(野菜・豆・海藻・きのこ・全粒穀物)を少しずつ増やす
- 発酵食品(ヨーグルト・納豆・みそなど)を日常に取り入れる
- 睡眠時間を確保し、就寝前のスマホやカフェインを控える
- 軽い運動や散歩を習慣にする
- 症状と食事を簡単にメモして、自分の傾向を知る
- 抗生物質は医師の指示どおりに使い、自己判断で使わない
医療治療
医師はまず、症状の原因になっている可能性のある薬(抗生物質など)を中止できるか検討します。そのうえで、下痢や便秘などの症状に応じた薬を必要に応じて処方することがあります。整腸作用をうたう製品や菌を補うサプリメントは種類が多く、効果の感じ方に個人差が大きいため、かかりつけ医や薬剤師に相談しながら選ぶと安心です。具体的な薬の名前や量は、必ず医療者から説明を受けてください。
手術が検討される場合
通常、ディスバイオーシスの治療で手術が必要になることはありません。ただし、別の病気(腸の病気など)が見つかった場合は、その治療方針に沿って手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
おなかの調子は日によって変わります。毎日完璧を目指すより、「今日は少し楽だった」を積み重ねる感覚で過ごしてみてください。症状が強い日は無理をせず、予定を詰め込みすぎないことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 食事の時間をできるだけ一定にする
- よく噛んでゆっくり食べる
- アルコールや強いコーヒー、脂っこい食事はほどほどに
- ストレスをためないように、自分に合った息抜きを持つ
- トイレを我慢しない、朝の時間に余裕を持つ
- 症状の記録をとり、受診のときに見せられるようにする
食事と運動
食事は、野菜・豆・海藻・きのこ・全粒穀物などの食物繊維と、納豆やみそ、ヨーグルトなどの発酵食品を少しずつ組み合わせるのがおすすめです。一度に大きく変えず、1週間に1つずつ増やすとうまく続きます。運動はウォーキングなど軽いもので十分で、腸の動きを助け、ストレス解消にもつながります。
精神的健康と心の健康
腸と脳は密接に関わっているといわれ、おなかの不調が長引くと気分が落ち込んだり、不安が強くなったりすることがあります。それは弱さではなく、よくある反応です。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えずに医療機関や相談窓口を頼ってください。気持ちが追い詰められたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
完全に防ぐことはできませんが、生活の工夫でバランスが崩れにくくすることはできます。食物繊維と発酵食品を意識し、睡眠と運動を確保し、抗生物質は必要なときに正しく使うことが基本です。
ワクチン
ディスバイオーシス自体を防ぐワクチンはありません。ただし、感染性胃腸炎を防ぐことは腸の調子を守ることにつながります。手洗いや食品の管理を心がけ、年齢に応じて受けられるワクチンについてはかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
ディスバイオーシス専用のスクリーニング検査はありません。ただし、おなかの症状が長引くときは別の病気が隠れていることがあるため、年齢に応じた大腸がん検診などの定期健診は受けておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 下痢や便秘、おなかの張りが長引き、生活の質が下がる
- 栄養の吸収が不十分になり、だるさや体重減少につながることがある
- 感染症にかかりやすくなる可能性がある
- 肌の調子や気分の落ち込みに関わることがある
- 別の病気(炎症性腸疾患や過敏性腸症候群など)が隠れていることに気づくのが遅れる
長期的な見通し
多くは深刻なものではなく、食事や生活を少しずつ整えることで改善が期待できます。腸内細菌のバランスは時間をかけて変わるので、数週間〜数か月の視点で焦らず取り組みましょう。症状が続く場合も、医療機関と一緒に原因を探していくことで対処の道はあります。
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最終更新: 2026年10月23日
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