若年性パーキンソン病(早期発症パーキンソン病)
概要
パーキンソン病は、脳の中で「ドパミン」という、神経の伝わりを助ける物質をつくる細胞が少しずつ減っていくことで、体の動きに変化が現れる病気です。ふつうは50歳以上で発症することが多いのですが、50歳より前に始まったものを「若年性パーキンソン病(早期発症パーキンソン病)」と呼びます。進行はゆっくりで、症状に合わせた治療と生活の工夫を続けながら、長く自分らしい毎日を送ることができます。
重要な事実
- 50歳より前に発症するパーキンソン病を「若年性(早期発症)」と呼びます。
- 手足のふるえよりも、動きのぎこちなさ、肩こり、字が小さくなるなど、目立たない変化から始まることがあります。
- パーキンソン病は厚生労働省の指定難病に指定されており、症状の程度に応じて医療費の助成を受けられる場合があります。
パーキンソン病全体でみると、50歳より前の発症は多くありません。ただし、仕事や子育て、家事など生活の中心となる年代で始まるため、とまどいや不安を感じる方は少なくありません。決してあなただけではない、ということを知っておいてください。
症状
一般的な症状
- 手足がふるえる(特に安静にしているとき)
- 動きが遅くなる、動作を始めるときにきっかけが出にくい
- 筋肉がこわばる、肩こりや肩・腰の痛みが続く
- 字が小さくなる、声が小さくなる、話し方が単調になる
- 歩くときに足が前に出にくい、すり足になる、腕の振りが小さくなる
- 姿勢が前かがみになる、バランスがとりにくい、転びやすい
- 便秘がちになる、においを感じにくくなる
- 睡眠中に体が動いたり声を出したりする、昼間に眠気が強い
- 気分が落ち込む、不安が強い、疲れやすい
原因
主な原因
- 脳の「黒質」という場所で、ドパミンをつくる神経細胞が少しずつ減っていくこと
- 減っていく細胞の中に、異常なたんぱく質がたまる(レビー小体)ことが関係していると考えられています
- 若年性の場合は、生まれもった遺伝子の変化が関わることが比較的多いと言われています。ただし、必ず子どもに遺伝するというものではありません
- 農薬や溶剤などに長期間さらされることが関係するという報告もありますが、はっきりとは分かっていません
リスク要因
- 家族にパーキンソン病の人がいる
- 50歳より前の発症
- 男性であること
- 長期間の環境要因への曝露(報告があります)
- 頭部のけがの経験(関連が指摘されています)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 症状が急に悪くなり、日常生活が保てない
- 転倒後の強い痛みや頭部打撲
- 飲み込みにくさ、むせ、発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 手足のふるえや動きのぎこちなさが数週間以上続く
- 字が小さくなった、声が出しにくくなったと言われる
- 肩こりや関節の痛みが長く続き、動きにくさを感じる
- 歩くときに足が出にくい、最近転びやすくなった
- 便秘、においの感じにくさ、睡眠中の異常な動き、気分の落ち込みが続く
- 家族にパーキンソン病の人がいて、自分の症状が心配
診断
診断は、問診と診察が中心になります。症状がいつから、どのように始まったか、体の動きの様子、薬への反応などを丁寧に確認します。血液検査や画像検査は、似た症状を起こすほかの病気がないかを確かめるために行われます。必要に応じて神経内科などの専門医に紹介されます。
行われる可能性のある検査
- 問診と神経学的な診察(歩き方、手足の動き、筋肉の硬さ、反射など)
- 血液検査(甲状腺の病気やビタミン不足など、似た症状の原因を調べる)
- 頭部MRI・CT(脳梗塞や腫瘍など、ほかの原因がないかを確認する)
- ドパミンを補う働きの薬を試して、反応を見る(診断の手助けになることがあります)
- 必要に応じて専門的な画像検査(受けられる施設は限られます)
診察で予想されること
診断がつくまでに時間がかかることがあります。若年性の場合は、似た症状の出るほかの病気との区別が必要になるためです。診断後は定期的に通院し、症状の変化や生活の悩みを医師と共有していきます。セカンドオピニオンを求めることもできます。
治療
パーキンソン病を根本から治す治療はまだありませんが、症状をやわらげ、生活の質を保つための治療は進歩しています。若年性の場合は、これから長くつきあっていくことを考え、仕事や妊娠・出産などの生活設計も含めて、医師と相談しながら治療を組み立てていきます。
自宅でのセルフケア
- 無理のない範囲の運動を習慣にする(ウォーキング、ストレッチ、バランス運動など)
- リハビリテーションを続ける
- 転びにくい環境を整える(手すり、十分な照明、滑りにくい床、履きやすい靴)
- 水分と食物繊維をとり、便秘をためない
- 睡眠と休養をしっかりとる
- 薬は自己判断で中断したり量を変えたりしない
- 症状や困りごとをメモしておき、受診のときに伝える
医療治療
脳の中で不足するドパミンを補う働きの薬や、その働きを助ける薬などを、症状に合わせて組み合わせて使います。薬の種類や量、飲むタイミングは医師が調整するので、自分で変えずに相談してください。飲み方によって「効いている時間」と「切れている時間」の波が出ることがあり、その調整も治療の一部です。このほか、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などのリハビリテーション、気分の落ち込みへの対応も行われます。
手術が検討される場合
薬の効き方が安定しない、症状の波が強い、といった場合に、脳深部刺激療法(DBS)という、脳に電極を入れて電気刺激で症状を調整する治療が検討されることがあります。若い方では比較的検討されやすいと言われますが、向き不向きがあるため、専門医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
若年性の場合は、仕事、子育て、家事、運転、妊娠・出産など、生活の節目ごとに相談ごとが出てきます。一人で抱えこまず、主治医、職場の産業医、医療ソーシャルワーカー、自治体の相談窓口などを上手に使ってください。症状には良い時期と調整が必要な時期があり、その波に合わせた付き合い方を見つけていくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 楽しめる運動を無理なく続ける
- バランスのよい食事と、十分な水分
- 睡眠の悩みは早めに相談する
- ストレスを一人で抱えず、話せる相手をもつ
- 転倒予防のために、家の中の動線を整える
- 運転を続けてよいかは主治医と相談する
- 治療と仕事の両立支援の制度(休暇、勤務時間の調整など)を確認しておく
食事と運動
特別な食事制限が必要ないことがほとんどです。ただし、たんぱく質のとり方によって薬の効き方に影響が出ることがあるため、自己判断で極端な食事制限をせず、気になるときは医師や管理栄養士に相談してください。運動は、歩く、ストレッチ、バランス運動、太極拳、ダンスなど、自分が楽しめるものを継続するのが一番です。
精神的健康と心の健康
パーキンソン病では、気分の落ち込みや不安が症状の一部として現れることがあります。病気そのものの影響と、生活の変化による不安が重なることも少なくありません。つらいときは、かかりつけ医、精神科・心療内科、心理の専門家、家族などに話してみてください。気持ちがどうにもならないとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに医療機関やお住まいの地域の相談窓口、救急(119)に連絡してください。
予防
現時点で、パーキンソン病を確実に予防する方法は見つかっていません。定期的な運動や健康的な生活習慣が発症リスクと関係するという報告はありますが、確実な予防法として確立したものではありません。遺伝的な要因が気になる場合は、遺伝カウンセリングを相談できる場合があります。
検診プログラム
症状がない段階でパーキンソン病を見つけるための、決まった検査はありません。気になる症状があるときに、早めに医療機関に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 転倒や骨折のリスクが高くなる
- 飲み込みにくさから、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる
- 便秘、血圧の変動、排尿の悩みなどが続く
- 気分の落ち込みや不安が強くなることがある
- 社会とのつながりが減り、孤立しやすくなる
- 仕事の継続が難しくなる場合がある
長期的な見通し
パーキンソン病の進行はゆっくりで、治療と生活の工夫によって長く自分らしい生活を続けることができます。若年性の方は、治療の選択肢が増えてきており、仕事や子育てを続けながら生活している方も多くいます。症状には波があり、良い時期と調整が必要な時期を繰り返しますが、一人で抱えずに相談しながら進めていける病気です。
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最終更新: 2026年10月23日
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