耳の健康と耳のトラブル
概要
耳は、音を聞き取るだけでなく、体のバランスを保つことにも大切な器官です。耳は外側から順に、外耳(耳の穴から鼓膜まで)、中耳(鼓膜の奥の小さな空間)、内耳(音を感じ取る部分とバランスの器官)に分かれています。耳のトラブルには、痛み、聞こえにくさ、耳鳴り、耳だれ、耳が詰まった感じ、めまいなど、さまざまなものがあります。原因はかぜや耳垢、加齢、大きな音などいろいろで、多くは治療や工夫でよくなります。
重要な事実
- 耳の不調は、子どもから高齢者までとてもよく見られるものです。
- 急に聞こえにくくなったときは、早めに受診することが大切です。
- 耳の掃除は、綿棒を奥まで入れず、入口をやさしく拭く程度で十分です。
とてもよくある相談です。子どもの中耳炎は小児科や耳鼻咽喉科で最も多い病気のひとつで、大人でも耳垢が詰まる、耳鳴りがする、聞こえにくいといった相談は珍しくありません。
子どもはかぜをきっかけにした中耳炎が多く、高齢になるほど聞こえの低下や耳鳴りが増えます。大きな音の環境で働く人、アレルギーのある人、耳をよくいじる人もトラブルが起きやすいと言われています。
症状
- 耳から血が止まらず出ている、頭をぶつけた後に耳から出血や透明な液体が出た
- 激しいめまいで立っていられない、意識がもうろうとする
- 耳の痛みとともに顔の片側が動かしにくい、口から水がこぼれる
- 耳にボタン電池などの異物が入って取れない(電池はやけどを起こすため特に危険です)
- 息が苦しい、顔やのどが腫れるなど、強いアレルギー反応が疑われる
- ⚠急に片方の耳が聞こえにくくなった(できるだけ早く、当日から翌日までに受診)
- ⚠強い耳の痛みや発熱がある
- ⚠耳だれが続いている
- ⚠めまいを何度も繰り返す、歩くのが不安定
- ⚠耳のけが、鼓膜が破れたかもしれない
一般的な症状
- 耳が痛い、ずきずきする
- 聞こえにくい、聞き返すことが増えた
- 耳鳴り(キーン、ジーッという音)がする
- 耳だれ(耳から液体が流れる)
- 耳が詰まった感じ、水が入ったような感じ
- 耳のかゆみ
- めまい、ふらつき
- 自分の声が大きく響く、耳がこもる
子供の症状
- 耳をひっぱったり、しきりに触ったりする
- 不機嫌で泣き止まない、夜中に何度も起きる
- 発熱がある
- 呼びかけに反応しにくい、テレビの音が大きい
- 耳だれがある
- 言葉の発達がゆっくりに感じる
高齢者の症状
- 聞き返すことが増えた、会話が聞き取りにくい
- テレビやラジオの音量が大きくなった
- 耳鳴りが気になる
- 耳垢が硬く詰まりやすい
- ふらつきやめまいで転びそうになる
原因
主な原因
- かぜや細菌・ウイルスによる感染(中耳炎、外耳炎など)
- 耳垢がたまって詰まる(耳垢栓塞)
- 加齢による聞こえの低下
- 大きな音や騒音を長く聞くこと
- アレルギーや花粉症に伴う耳のつまり感
- 耳を強くいじる、綿棒の使いすぎ
- 頭や耳へのけが、鼓膜の破れ
- バランスの器官の不調によるめまい
- 一部の薬の影響
リスク要因
- 小さな子ども、集団生活(保育園・幼稚園など)
- かぜをひきやすい、鼻やのどの調子が悪い
- たばこ(本人も周りの煙も)
- 大きな音の環境(音楽、仕事、イヤホンの大音量)
- アレルギー体質
- 耳をよく触る、綿棒で掃除する習慣
- 聞こえの低下を放置している
- 糖尿病などの持病がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に聞こえが悪くなった
- 耳の強い痛み、発熱、耳だれがある
- 顔の動きに左右差がある
- 転倒した、頭をぶつけた後に耳の症状が出た
- 耳に異物が入って取れない
定期受診を予約すべき場合:
- 聞こえにくさを自覚するようになった
- 耳鳴りが続いている
- 耳垢がたまっている気がする、耳がこもる
- めまいやふらつきを繰り返す
- 子どもがテレビの音量を上げる、聞き返すことが増えた
診断
まず、いつから、どんな症状があるか、かぜをひいていないか、大きな音の環境にいないかなどを聞きます。そのうえで耳鏡という器具で耳の穴と鼓膜をのぞき、必要に応じて聴力検査や鼓膜の動きを調べる検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 耳鏡や顕微鏡による観察
- 聴力検査(ヘッドホンで音の聞こえ方を調べる)
- ティンパノメトリー(鼓膜の動きを調べる検査)
- 必要に応じて血液検査
- 必要に応じてCTやMRIなどの画像検査
診察で予想されること
診察は数分から十数分で終わることが多く、痛みはほとんどありません。耳垢を取る処置や耳だれの吸引など、その場でできる処置を行うこともあります。検査の結果によっては、数日後に再診をしてもらうことがあります。
治療
治療は原因によって変わります。感染による炎症、耳垢の詰まり、聞こえの低下、めまいなど、それぞれに合った方法を選びます。多くの場合、通院での治療と自宅でのケアを組み合わせます。
自宅でのセルフケア
- 耳の穴の奥は掃除しない(綿棒を奥まで入れない)
- 耳の入口をぬるま湯で湿らせた布でやさしく拭く
- 鼻をかむときは片方ずつ、強くかまない
- かぜをひいたら早めに休んで治す
- 大音量の音楽やイヤホンの長時間使用を避ける
- 耳を冷やさない、乾燥しすぎないようにする
- 症状が続くときは自己判断で市販の点耳薬などを使わず受診する
医療治療
医師の診察の結果に応じて、炎症をしずめる治療、耳垢を安全に取り除く処置、鼻やのどの状態を整える治療などが行われます。細菌による感染が疑われる場合には、医師の判断で抗菌薬が使われることがあります。めまいには、動き方の指導やリハビリが行われることもあります。聞こえの低下が続く場合は、補聴器などの聞こえを助ける方法が検討されます。薬の名前や量は医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは一部の場合です。鼓膜の奥に液体がたまり続けるときの鼓膜切開や、鼓膜に穴が残ったときの鼓膜形成術、聞こえの低下が高度な場合の人工内耳などがあります。必要かどうかは検査の結果をもとに医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
聞こえにくさや耳鳴りがあると、会話や人とのつながりに疲れを感じることがあります。補聴器や聞こえを助ける道具、静かな環境づくりなど、暮らしに合った工夫を少しずつ試してみましょう。
生活習慣のアドバイス
- 会話のときは顔を見て、ゆっくり話してもらう
- テレビの字幕や音量調節を活用する
- 騒音の大きい場所では耳栓を使う
- 喫煙を避け、周りの煙も防ぐ
- 十分な睡眠と休息をとる
- 耳鳴りが気になるときは、静かすぎる部屋を避け、穏やかな音を流す
食事と運動
特別な食事療法はありませんが、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠は体の抵抗力を保ち、かぜや中耳炎の予防に役立ちます。めまいがあるときは、無理のない範囲でゆっくり体を動かすことが回復を助けることがあります。転倒を防ぐため、足元を明るくするなどの工夫も大切です。
精神的健康と心の健康
耳鳴りや聞こえにくさは、イライラや不安、眠りにくさ、人と会うのがおっくうになるなど、心の負担につながることがあります。これは珍しいことではなく、誰かに話すことで楽になることがあります。つらい気持ちが続くときは、医療機関や地域の相談窓口に早めに話してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに周りの人や救急(119)に助けを求めてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、いくつかの工夫でリスクを下げられます。かぜをひかない、大きな音を避ける、耳の奥をいじらない、禁煙する、といったことが役立ちます。聞こえの変化に早く気づいて相談することも大切です。
ワクチン
季節のワクチン(インフルエンザなど)や、子どもに推奨されるワクチンを接種しておくと、かぜや感染症にかかりにくくなり、中耳炎のリスクを下げる可能性があります。接種の可否はかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
聞こえの検査は、乳幼児健診や健康診断、会社の健診などで行われることがあります。聞き返すことが増えた、テレビの音が大きいと感じたら、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けてみましょう。
合併症
治療しない場合
- 聞こえの低下が進み、会話が難しくなる
- 子どもの場合、言葉の発達や学校での学びに影響することがある
- 中耳の炎症が広がり、まれに重症の感染症につながることがある
- めまいやふらつきによる転倒・けが
- 耳鳴りによる不眠や気分の落ち込み
長期的な見通し
耳のトラブルの多くは、早めに相談することで良くなったり、上手につきあっていけるようになります。聞こえの低下が続く場合も、補聴器や周りの工夫で生活の質を保つことができます。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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