耳硬化症(じかこうかしょう)〜聞こえにくさの原因になることがある耳の病気〜
概要
耳硬化症は、耳の奥の「中耳」にある小さな骨(あぶみ骨)が、少しずつ硬くなって動きにくくなる病気です。音は、鼓膜からこの小さな骨のつながりを通って内耳へ伝わります。あぶみ骨が硬くなると、音の振動がうまく伝わらなくなり、聞こえが悪くなります。このタイプの聞こえの低下を「伝音難聴(でんおんなんちょう)」と呼びます。多くの場合は両耳に起こり、数年から数十年かけてゆっくり進むことが多い病気です。
重要な事実
- 20〜40歳代に聞こえの変化に気づくことが多い病気です。
- 女性にやや多く、妊娠・出産をきっかけに聞こえにくさを感じる方もいます。
- 進行はゆっくりで、両耳に起こることが多いとされています。
- 補聴器や手術で聞こえを助ける方法があります。
- 耳鳴りや耳がふさがった感じを伴うこともあります。
それほど多い病気ではありませんが、大人の「伝音難聴」の原因としては比較的よくみられます。日本では欧米より少ないといわれ、人種による差があることも知られています。
20〜40歳代の大人に多く、女性にやや多くみられます。家族に同じ病気の人がいる方に起こりやすいとされています。小児ではまれで、子どもの聞こえにくさでは別の原因(滲出性中耳炎など)のほうがよくみられます。
症状
- 耳からの出血を伴う頭のけが
- 突然、片耳がほとんど聞こえなくなったうえに、顔の麻痺やろれつの回りにくさ、手足の動かしにくさがある(脳卒中のサインの可能性があります)
- 激しい耳の痛みと高熱があり、首が硬い、意識がぼんやりする
- ⚠急に聞こえが悪くなった(突然の聞こえの低下は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください)
- ⚠耳鳴りが急に強くなった、耳がふさがった感じが続く
- ⚠めまいを伴う聞こえの低下
一般的な症状
- 聞こえが徐々に悪くなる(小声や低い音が聞き取りにくい)
- 両耳に起こることが多いが、片耳から始まることもある
- 耳鳴り(キーン、ゴーという音)
- 静かな場所より、騒がしい場所のほうが会話しにくいと感じる
- 自分の声が大きく響く、耳がふさがった感じがする
- めまいやふらつきを伴うことがある
子供の症状
- 小児ではまれですが、次のような様子があれば耳鼻咽喉科に相談してください。
- 呼びかけに反応しにくい、聞き返すことが多い
- テレビや音楽の音量が大きい
- ことばの発達がゆっくりに感じる
- 学校で先生の話が聞き取りにくいと言う
高齢者の症状
- 加齢による聞こえの低下と重なり、変化に気づきにくいことがあります。
- 会話中に聞き返すことが増え、話すことが負担になる
- 家族や友人との交流が減り、外出がおっくうになる
- 補聴器を使っている場合は、調整が必要になっていることがある
原因
主な原因
- 中耳のあぶみ骨のまわりに新しい骨ができて固くなり、音の振動が伝わりにくくなること
- 遺伝的な体質が関係していると考えられていること
- はっきりとした原因はまだ完全には分かっていません
リスク要因
- 家族に同じ病気の人がいる(遺伝的な要素)
- 女性(妊娠・出産をきっかけに進んだという報告があります)
- 20〜40歳代であること
- 麻疹(はしか)にかかったことがある(関連が報告されています)
- 中耳の炎症を繰り返したことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に聞こえが悪くなった、または耳鳴りが急に始まった
- 耳がふさがった感じが続き、聞こえが戻らない
- 顔の左右の動きが違う、めまいが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 数か月かけて聞こえが悪くなってきた気がする
- テレビの音量が大きくなった、会話で聞き返すことが増えた
- 耳鳴りが気になる
- 家族に耳硬化症の人がいる
- 補聴器を使っていて、聞こえが変わった気がする
診断
まず問診と耳の診察を行い、聞こえの状態を詳しく調べます。鼓膜の奥の様子や、音が骨を通してどのくらい聞こえるかを調べる検査で、「伝音難聴」があるかどうかを判断します。必要に応じて画像検査を行い、他の病気がないかも確認します。
行われる可能性のある検査
- 純音聴力検査(気導と骨導の聞こえを調べる検査)
- 語音聴力検査(ことばの聞き取りやすさを調べる検査)
- ティンパノメトリー(鼓膜の動きやすさを調べる検査)
- 耳小骨筋反射の検査
- 耳鏡・鼓膜の観察
- 側頭骨(耳のまわりの骨)のCT検査
- 必要に応じて血液検査など(他の原因を除くため)
診察で予想されること
聴力検査は防音の部屋で行い、30分から1時間ほどかかることがあります。ヘッドホンで音を聞いたり、骨の後ろに当てた振動子で音を感じたりします。結果をもとに、聞こえのタイプと程度を説明してもらい、経過観察・補聴器・手術などの選択肢を相談します。
治療
耳硬化症の治療は「聞こえを補うこと」が中心です。補聴器と手術が二つの柱になります。進行を確実に止める治療法はまだ確立されていないため、聴力を定期的に確認しながら、生活に合った方法を選んでいくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 補聴器を使う場合は、定期的に調整してもらう
- 会話は静かな場所で、相手の顔を見て話す
- 騒がしい場所では、補聴器の設定を変えるなどの工夫をする
- 耳の奥を綿棒で強くいじらない
- 大きな音を長く聞かないよう、耳を守る
- 睡眠や休息をとり、ストレスをためないようにする(耳鳴りの悪化を防ぐため)
- 聞こえの変化をメモしておき、受診のときに伝える
医療治療
聞こえを補う装具(補聴器)が中心になります。耳鳴りが気になる場合は、音を聞かせて慣れていく方法や、相談・カウンセリングが行われることがあります。進行を抑える目的で内服が試みられる地域もありますが、効果はまだ確立されていません。治療の内容は、聞こえの程度や生活スタイルに合わせて医師と相談して決めていきます。
手術が検討される場合
補聴器で十分に聞こえない、あるいは手術を希望する場合に、あぶみ骨の手術が検討されます。硬くなったあぶみ骨を、小さな人工の部品に置き換える手術です。多くの場合で聞こえの改善が期待できますが、ごくまれに聞こえが悪くなる、めまいがする、味が変わって感じるなどのリスクもあります。年齢や体の状態、両耳の聞こえなどを考慮して、片耳ずつ行うことが多い治療です。詳しくは耳鼻咽喉科の専門医と相談してください。
この病気と共に生きる
聞こえにくさは、毎日の会話や人とのつながりに影響することがあります。補聴器を上手に使うこと、周囲に聞こえにくいことを伝えること、会話の工夫をすることが生活を楽にします。無理をせず、自分のペースで付き合っていくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 補聴器の日常のお手入れと、定期的な点検・調整
- 家族や同僚に「聞こえにくいときがある」と伝えておく
- 映画館や講演では、補聴援助システム(聞こえを助ける設備)を使えるか確認する
- 騒音の大きい場所では耳を守る
- 睡眠とストレス管理を心がける
- 定期的に聴力検査を受ける
食事と運動
耳硬化症に特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と適度な運動は、全身の健康と耳の血流のためにも役立ちます。喫煙は血流に影響するため、控えることが勧められます。骨の健康のためにカルシウムやビタミンDを意識するのは一般的な健康法として良いことですが、耳硬化症の進行を食事で防げるという確かな証拠はありません。
精神的健康と心の健康
聞こえにくさが続くと、会話の疲れ、人と話すことへの不安、外出を控えるなどの変化が起こることがあります。これは自然な気持ちですが、一人で抱え込まないでください。家族や友人、医療者に気持ちを話すことが助けになります。気分の落ち込みや不安が続くときは、医療機関や相談窓口に相談してください。つらい気持ちが強いときは、緊急の相談窓口を利用することも大切です。
予防
耳硬化症には遺伝的な要素が大きく、確実に防ぐ方法はまだ分かっていません。進行を確実に遅らせる方法も確立されていません。ただし、聞こえの変化に早く気づいて相談すること、大きな音から耳を守ること、耳の感染症を放置しないことは大切です。
ワクチン
麻疹(はしか)との関連が報告されているため、麻疹の予防接種は厚生労働省の定期接種の推奨に従って受けておくとよいでしょう。その他の感染症の予防も、耳の健康を守ることにつながります。
検診プログラム
家族に耳硬化症の人がいる場合や、聞こえにくさを感じ始めた場合は、早めに聴力検査を受けてください。自治体によっては高齢者向けの聴覚健診を行っているところもあります。健診の内容はお住まいの自治体に確認できます。
合併症
治療しない場合
- 聞こえが徐々に悪くなり、会話が難しくなることがある
- 耳鳴りが続き、集中しにくくなる
- 人との交流が減り、社会的に孤立しやすくなる
- 高齢の方は、聞こえにくさが認知機能や気分に影響することがある
- まれに内耳にも影響し、より高度の難聴になることがある
- めまいを伴うことがある
長期的な見通し
耳硬化症はゆっくり進むことが多く、すぐに深刻な状態になる病気ではありません。補聴器や手術で聞こえを助ける方法があり、手術で聞こえが改善する方も多くいます。定期的に聴力を確認し、生活に合った方法を選んでいくことで、これまで通りの暮らしを続けることができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.