耳あかがたまったとき(耳垢栓塞)
概要
耳あか(医学的には「耳垢」といいます)は、耳の穴の入り口近くで作られる、うすい黄色から茶色の自然な分泌物です。外から入ってくるほこりや細菌から耳の中を守り、皮膚をうるおす働きがあります。ふつうは、食事や会話であごを動かすたびに少しずつ外へ運ばれ、自然に落ちていきます。ところが、何らかの理由でこの流れが止まり、耳あかが耳の穴にたまって栓(せん)のように詰まった状態を「耳垢栓塞(じこうせんそく)」といいます。英語では earwax build up と呼ばれます。
重要な事実
- 耳あかは体を守るための自然なもので、まったくないほうがよいというものではありません。
- たまった耳あかは、耳鼻咽喉科(耳・鼻・のどを診る科)で短時間のうちに安全に取り除いてもらえることがほとんどです。
- 綿棒(めんぼう)で耳の奥をそうじすると、かえって耳あかを押し込んで詰まらせてしまうことがあります。
とてもよくある相談です。一般の診療所や耳鼻咽喉科を受診する理由としても珍しくなく、特にお子さん、高齢の方、補聴器を使っている方に多くみられます。
年齢を問わず起こりますが、耳の穴が細い小さなお子さん、耳あかがかたくなりやすい高齢の方、補聴器やイヤホンをよく使う方、耳あかが乾きやすい体質の方に多くみられます。
症状
- 耳から血が出て、押さえても止まらない
- 耳の激しい痛みに加えて、高熱・首の硬さ・意識の変化がある
- 頭や耳を強く打ったあと、耳から出血や透明な液体が出ている、または聞こえなくなった
- 顔の片側が動かしにくい、ろれつが回らない、急な強いめまいで立てないなど、脳卒中の可能性を感じる症状がある
- ⚠急に片方の耳が聞こえにくくなった(突然聞こえなくなったときは、できるだけ早く受診が必要です)
- ⚠耳だれ(膿や液体)が続く
- ⚠耳の痛みが強い、または発熱をともなう
- ⚠耳のつまり感が数日続き、仕事や会話に支障がある
- ⚠耳に虫などが入った可能性がある
一般的な症状
- 耳がふさがった感じがする、綿をつめたような感じがする
- 聞こえにくい、音がこもって聞こえる
- 自分の声がいつもより大きく響くように感じる
- 耳鳴り(キーン、ジーッという音)がする
- 耳のかゆみや軽い痛みがある
- 耳だれ(耳から液体が出る)がある
- めまいや、ふわふわする感じがすることがある
- 補聴器の調子が悪くなる、ピーピーとハウリングしやすくなる
子供の症状
- 耳をよくさわる、引っぱる、こする
- ぐずる、機嫌が悪くなる、夜泣きが増える
- 名前を呼んでも反応が鈍い、聞き返しが増える
- テレビの音量が大きくなる
- ことばの発達がゆっくりに見えることがある(聞こえにくさが原因のこともあります)
- 耳の穴が細いため、大人より詰まりやすい傾向があります
高齢者の症状
- 耳あかがかたくなり、詰まりやすい
- 補聴器を使っている場合、調子が悪くなったりピーピー鳴ったりする
- 聞こえにくさを「年のせい」と思い込み、受診が遅れやすい
- 自分で違和感を伝えるのが難しい場合(認知症などがあるとき)は、周りの方が気づくことが大切です
- 耳のつまりが、ぼんやりした感じや会話の減少につながることがあります
原因
主な原因
- 綿棒や耳かきで耳あかを奥へ押し込んでしまう
- 耳あかが自然に外へ出ていく流れが妨げられている(耳の穴が狭い、曲がっているなど)
- 耳あかが乾いてかたくなる(加齢などで性状が変わる)
- 補聴器・イヤホン・耳栓が耳あかの通り道をふさぐ
- 外耳道(耳の穴の皮膚)の湿疹や炎症、耳の手術のあとの傷あと
- 耳あかの量が多く、排出が追いつかない
リスク要因
- 綿棒や耳かきで耳そうじをする習慣がある
- 補聴器・イヤホン・耳栓をよく使う
- 高齢である
- 認知症など、自分で違和感を伝えにくい状態がある
- 耳の手術を受けたことがある、耳の穴が生まれつき狭い
- 皮膚の湿疹や乾燥肌がある
- 乾いたタイプの耳あかが出る体質である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に聞こえが悪くなった、または聞こえなくなった
- 耳の強い痛み、発熱、耳だれがある
- 耳から出血がある
- 耳に異物が入った可能性がある
- めまいが強く、日常生活が難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 耳のつまり感や聞こえにくさが続いている
- テレビの音量が大きくなった、聞き返しが増えた
- 補聴器の調子が悪い、ハウリングが増えた
- 片方の耳だけ、くり返し耳あかがたまる
- 耳のかゆみが続く、耳の入り口が荒れている
診断
医師が症状といきさつを聞いたうえで、耳鏡(じきょう)や耳内視鏡という器具で耳の穴の中を直接見て診断します。耳あかの量やかたさ、鼓膜(こまく)の様子を確かめます。痛みはほとんどなく、数分で終わります。
行われる可能性のある検査
- 耳鏡・耳内視鏡による耳の穴と鼓膜の観察
- 聴力検査(聞こえの状態を数値で確認する検査)
- 鼓膜の動きを見る検査(ティンパノメトリー)
- 必要に応じて、耳だれの検査や画像検査を行うことがあります
診察で予想されること
診察は短時間で終わることがほとんどです。耳あかを取り除く処置では、くすぐったい感じや、水で洗うときの少しひんやりする感じがあります。処置のあとに一時的に軽いめまいや違和感が出ることもありますが、多くはすぐに落ち着きます。
治療
多くの場合は、耳鼻咽喉科で耳あかを取り除くだけで解決します。無理に自分で取ろうとせず、耳の専門家にまかせることがいちばん安全です。取り除いたあとは、聞こえがすっきり戻ることがほとんどです。
自宅でのセルフケア
- 耳の入り口まわりは、ぬれたタオルやガーゼでやさしく拭く程度にしましょう。
- 綿棒や耳かきを耳の奥に入れないようにしましょう。
- 市販の耳あかをやわらかくする製品を使う場合は、必ず薬剤師や医師に相談してからにしましょう。鼓膜に穴があいているなど、使ってはいけない場合があります。
- 耳に水が入ったときは、頭を傾けてそっと水を出し、無理にほじらないようにしましょう。
- 耳が痛い、耳だれがある、聞こえが急に悪くなったときは、自分で対処せず受診しましょう。
- 補聴器を使っている方は、耳あかがたまりやすいので、定期的に耳の状態を診てもらいましょう。
医療治療
医師は耳の中を観察しながら、吸引器で吸い出す、専用の細い器具で取り出す、体温に近いぬるま湯で洗い流す(耳洗浄)といった方法で耳あかを取り除きます。耳あかがとてもかたい場合は、やわらかくする点耳薬を数日使ってから取り除くこともあります。薬の種類や使い方は医師・薬剤師の指示に従ってください。自分で判断して使うのは避けましょう。
手術が検討される場合
耳あかを取るために手術が必要になることはほとんどありません。ただし、耳の穴がとても狭い、炎症や湿疹で普通の処置が難しい、耳の手術のあとで形が変わっているといった場合は、耳鼻咽喉科での専門的な処置が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
耳あかがたまりやすい方は、定期的に耳鼻咽喉科で耳のそうじをしてもらうと安心です。自分では奥をいじらず、耳の入り口をきれいに保つことだけを心がけましょう。聞こえにくさを感じたら、早めに相談することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 綿棒・耳かき・ヘアピンなどで耳の奥をいじらない
- 補聴器やイヤホンを使うときは、清潔に保ち、長時間つけっぱなしにしない
- 耳に水が入りやすい環境(プールや海)のあとは、やさしく水分を拭き取る
- 耳のかゆみや湿疹があるときは、かきむしらずに皮膚のケアを相談する
- 聞こえにくいと感じたら、周りに伝えて会話の工夫(正面で話す、静かな場所を選ぶ)をする
食事と運動
食事や運動が直接耳あかのつまりを防ぐわけではありませんが、規則正しい生活は皮膚や粘膜の健康を保つ助けになります。水分を適度にとり、乾燥しすぎない環境を心がけるとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
聞こえにくさが続くと、会話が疲れる、聞き返すのが申し訳ない、人との集まりを避けたくなるなど、気持ちの負担につながることがあります。これは決してあなたの努力不足ではありません。つらさが続くときは、かかりつけ医や地域の保健相談窓口など、信頼できる人に話してみてください。気持ちがとてもつらい状態が続く場合は、早めに医療機関や相談窓口を頼ってください。
予防
完全に防ぐことはできませんが、耳あかを奥へ押し込む習慣をなくすことで、詰まりのリスクを下げられます。定期的に耳の状態を診てもらうことも助けになります。
ワクチン
耳あかのつまりを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
耳あかのつまりを見つけるための決まった検査はありませんが、補聴器を使っている方や高齢の方は、聞こえの変化に気づいた時点で耳鼻咽喉科に相談すると安心です。
合併症
治療しない場合
- 聞こえにくさが続き、会話や日常生活に支障が出る
- 耳の閉塞感や耳鳴りが続いて不快感が増す
- 自分で無理に取ろうとして耳の穴や鼓膜を傷つける
- 耳あかがたまった状態が続き、外耳道(耳の穴の皮膚)に炎症を起こすことがある
- 補聴器の調整がうまくいかず、聞こえの改善が妨げられる
- 医師が鼓膜や耳の中を観察しにくくなり、別の病気の発見が遅れることがある
長期的な見通し
とても良い見通しです。耳あかがたまっているだけなら、適切に取り除くことで聞こえは元通りになることがほとんどです。自分で奥をいじらず、気になるときに早めに相談することが、いちばんの近道です。
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最終更新: 2026年10月23日
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