摂食障害 家族のためのサポートガイド
概要
摂食障害(せっしょくしょうがい)は、食べることや体重、体型へのこだわりがとても強くなり、心と体の健康に大きな影響が出てしまう病気です。極端に食べる量を減らすタイプ、短時間にまとめて食べてしまうタイプ、食べたものを吐いて帳尻を合わせるタイプなどがあります。大切なのは、これが「わがまま」や「意志が弱いから」ではなく、治療が必要な状態だということです。そして、家族の理解と支えが、回復への大きな力になります。
重要な事実
- 摂食障害は心と体の両方に関わる病気で、本人の努力だけでは解決しにくいものです。
- 治るまでには時間がかかることが多く、早く支援につながるほど回復しやすいとされています。
- 家族が責められる病気ではありません。家族が味方でいることが、本人の回復を助けます。
日本でも決してめずらしい病気ではありません。特に10代の女性に多いとされていますが、男性や子ども、大人になってから発症する方もいます。
思春期・青年期の女性に多い一方で、小学生から中年以降まで幅広い年代で起こります。やせている人だけに起こるわけではなく、体型にかかわらず発症します。部活動や習い事などで体重を気にする環境にいる人、完璧主義な人、不安を感じやすい人に多い傾向があります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- けいれんが起きた
- 脈が速い・不規則で、胸の痛みや強い動悸がある
- 吐血した、コーヒー色のものを吐いた
- 尿がほとんど出ない、皮膚が乾いてつまむと戻らない(ひどい脱水)
- 自分を傷つけたい、死にたい気持ちを口にした
- ⚠数週間で体重が急に減った
- ⚠立ちくらみ、めまい、動悸が続く
- ⚠生理が3か月以上来ない
- ⚠吐き気や嘔吐が止まらない、水分がとれない
- ⚠ほとんど食べられない状態が続いている
一般的な症状
- 食事の量が急に減る、または極端に少ない
- 食べることを避ける、家族の前で食べたがらない、一人で食べたがる
- 短時間に大量に食べてしまう様子がある(過食)
- 食後にトイレに長くこもる、吐いた跡がある(自分で吐く行為)
- 体重が短期間で大きく減る、または増減を繰り返す
- 自分の体型や体重への不満が強く、鏡をよく見る、体重計に何度も乗る
- 食べ物やカロリーへのこだわりが強い、献立や食材を細かく気にする
- 冷え、疲れやすさ、肌の乾燥、髪の抜け毛、むくみ
- 生理が止まる、または不順になる
- 気分の落ち込み、イライラ、不安が強い、人との交流を避ける
- 食事を隠す、食べたことをごまかす、うその説明をする
子供の症状
- 身長・体重の成長曲線から外れる、体重が増えない
- 給食を極端に減らす、食べずに持ち帰る、学校で食べない
- 服をだぶだぶに着る、体を隠す
- 「やせたい」という言葉を繰り返す、体型を気にする
- 元気がなくなる、授業に集中しにくい、登校しぶり
- 親の前では食べないのに、夜中に食べている様子がある
高齢者の症状
- 更年期以降の体型変化をきっかけに、極端な食事制限が始まる
- 糖尿病などの食事指導を必要以上に厳しく守ろうとする
- 健康食品やサプリメントへのこだわりが強くなる
- うつや不安、退職や死別などの喪失体験と重なって起こる
- 体重減少が「老化」と思われ、見過ごされやすい
原因
主な原因
- 脳の働きや遺伝など、体質的な要因
- 完璧主義、自己肯定感の低さ、不安の強さなどの心理的な要因
- やせ志向の社会やメディア、ダイエット文化などの環境要因
- 部活動や仕事などで体重を厳しく管理される経験
- 思春期の体型変化、いじめ、対人関係のストレス、進路の不安など
- 家族の育て方や本人の性格だけが原因ではありません。原因は一つではなく、いくつかが重なって起こると考えられています。
リスク要因
- 10代から20代の女性(ただし男性やほかの年代でも起こります)
- ダイエットをした経験がある、体重を気にしすぎる
- 完璧主義、慎重で几帳面、不安やこだわりが強い傾向
- うつ、不安症、強迫症などの経験
- 家族に摂食障害や気分の落ち込みのある人がいる
- 体重を重視する競技や職業(一部のスポーツ、芸能など)
- いじめ、対人関係のトラブル、大きな喪失体験
- 発達の特性(こだわりの強さなど)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 水分がとれない、尿が出ない、意識がぼんやりする
- 吐き気や呕吐が続いて体がだるい、動悸がする
- 急に体重が減り、歩くのもつらい
- 死にたい、消えたい気持ちがある(すぐに救急や医療機関へ)
定期受診を予約すべき場合:
- 食事の量や食べ方が明らかに変わった
- 体重が増えない、成長曲線から外れた
- 体型へのこだわりが強く、日常生活に影響している
- 生理が来ない、体調不良が続く
- 本人が受診を嫌がる場合でも、家族だけでも先に相談してよい
診断
診断は、本人と家族から食事や体重の変化、気持ちの状態、生活の様子をくわしく聞くことから始まります。体重・身長の推移、血圧や脈、血液検査など体の状態も確認し、心と体の両方から総合的に判断します。本人が受診を嫌がるときは、家族だけが先に相談してもかまいません。その場合も、家族がどう関わればよいかを一緒に考えてもらえます。
行われる可能性のある検査
- 体重・身長の測定と、これまでの変化の確認
- 血圧・脈拍の測定
- 血液検査(貧血、栄養状態、電解質、臓器の働きなど)
- 心電図(脈の異常や心臓の状態を確認)
- 骨密度の検査(必要に応じて)
- 心理的な状態を確認するための面談や質問票
診察で予想されること
一度の診察で診断がつくとは限らず、時間をかけて見ていくことが多いです。最初は本人が話したがらないこともありますが、それは珍しいことではありません。家族が情報を伝えることが助けになります。治療は長い道のりになることがありますが、あせらず、ひとつずつ進めていきましょう。
治療
治療は、体の状態を整えることと、心の面を支えることを同時に進めます。医師、看護師、栄養士、心理の専門家などがチームになって関わることが多く、家族も治療の一員として大切な役割を担います。回復は一本道ではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進むことが多いです。
自宅でのセルフケア
- 食事の時間を「戦いの場」にしない。食べないことをその場で問い詰めない
- 体重や体型、カロリーの話をできるだけ持ち出さない
- 本人の気持ちを、否定せずにまず聞く
- 家族自身も休息をとる。一人で抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話す
- 食事の記録や体重の変化をメモしておくと、受診のときに役立つ
- 「あなたが大事だ」というメッセージを、行動で伝え続ける
- きょうだいにも説明し、不安を抱え込ませないようにする
医療治療
治療では、まず栄養を回復することが土台になります。そのうえで、考え方や行動のパターンを見直す心理療法、家族も一緒に参加する家族療法、同じ悩みを持つ人との集団での取り組みなどが行われます。状態によっては入院して体の安全を確保しながら治療することもあります。症状に応じて薬が使われることもありますが、使うかどうかは医師が一人ひとりの状態を見て判断します。
手術が検討される場合
摂食障害は手術で治す病気ではありません。
この病気と共に生きる
毎日の食事や声のかけ方に迷うことが多いと思います。完璧にやろうとしなくて大丈夫です。できたことを数え、できなかった日は「今日はそういう日だった」と受け止めるくらいの気持ちでいることが、長く支え続けるコツです。
生活習慣のアドバイス
- 食事は決まった時間に、無理のない量で、家族も同じものを一緒に食べる
- 体重計を本人の目の届くところに置かないなど、こだわりを減らす工夫をする
- 睡眠をしっかりとる
- 家族で過ごす時間を、食べること以外の話題も交えて持つ
- SNSやメディアの「やせ」情報から距離を置く
- 学校や職場と連携し、理解者を増やす
食事と運動
食事は「何をどれだけ食べたか」を管理することよりも、決まった時間に一緒に食べる習慣を大切にします。運動については、体の状態が安定するまでは激しい運動を控え、医師の指示に従うことが大切です。運動を完全に禁止するのではなく、安全な範囲を一緒に相談していきましょう。
精神的健康と心の健康
摂食障害は、不安やうつ、イライラ、自己否定感と深く結びついています。本人が攻撃的になったり、閉じこもったりするのは、苦しさの表れであることが多いです。家族も、心配や疲れから眠れなくなったり、気分が落ち込んだりすることがあります。家族自身の心の健康も、同じくらい大切にしてください。つらいときは、一人で抱えずに相談してください。
予防
完全に防ぐことは難しい病気ですが、リスクを下げる工夫はできます。体型や体重をからかわない、食事を「よい・悪い」で決めつけない、やせを美化する情報から距離を置く、成長期の体重変化に気を配る、気になる変化があったら早めに相談する。こうしたことが、早期発見・早期支援につながります。
検診プログラム
学校の健康診断や職場の健康診査は、体重変化に気づく大切な機会です。成長曲線から外れる、体重が増えない、生理が来ないなどの変化があれば、健診を待たずに相談してください。
合併症
治療しない場合
- 骨がもろくなる(骨粗しょう症)、骨折しやすくなる
- 生理が止まる、将来の妊娠に影響することがある
- 貧血、栄養不足、体の中の塩分やミネラルのバランスの乱れ
- 心臓や腎臓の働きの低下、不整脈
- 脱水、血糖が下がりすぎること
- 歯や口の中のトラブル(繰り返す嘔吐による)
- うつ、不安、社会的な孤立、学業や仕事の遅れ
長期的な見通し
摂食障害は、時間はかかっても回復できる病気です。早く支援につながるほど、回復しやすいことが知られています。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ前に進んでいきます。家族がそばで味方でいることは、本人にとって何よりの力になります。あせらず、一緒に歩いていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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