エボラウイルス病(エボラ出血熱)を知る
概要
エボラウイルス病(以前はエボラ出血熱と呼ばれていました)は、エボラウイルスというウイルスによって起こる感染症です。急な高熱、強いだるさ、嘔吐や下痢、ときに出血などが起こります。このウイルスは、感染した人の血液や嘔吐物、下痢便、汗などの「体液」に直接触れることでうつります。空気を吸うだけではうつらないと考えられています。日本では日常的に見られる病気ではなく、主にアフリカ中部・西部の一部の地域で発生してきました。
重要な事実
- うつる経路は、感染した人の体液(血液・嘔吐物・下痢便・汗・唾液など)に直接触れることです。話したり一緒にいるだけではうつりません。
- ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの期間(潜伏期間)は2〜21日で、多くは8〜10日ほどです。症状が出る前は人にうつしにくいと考えられています。
- 早く医療につながり、水分や電解質を整えるケアを受けることが、回復のためにとても大切です。
- 日本国内で感染が広がる心配は非常に小さいですが、海外から持ち込まれる場合に備えて、国が検疫や医療体制を整えています。
世界全体で見ても、発生する地域と件数は限られています。日本で暮らしている人が日常的に感染する病気ではありません。流行地域への渡航歴がある方や、そうした方の看病をした方など、特定の状況で感染の心配が出てきます。
アフリカ中部・西部の流行地域に住んでいる方、流行地域を訪れた方、感染した方の看病をするご家族や医療従事者、野生動物に触れる仕事をしている方などが主な対象です。年齢や性別を問わず感染する可能性はありますが、看病や医療の現場で長く体液に触れた人が感染しやすいとされています。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- 呼吸が苦しい、息が荒い
- けいれんが起きた
- 出血が激しく、自分で止められない
- ほとんど水分がとれず、おしっこが半日以上出ていない
- ⚠38度以上の熱があり、流行地域への渡航から21日以内、または感染が疑われる方の体液に触れた心配がある(受診の前に、まず電話で医療機関や保健所に相談してください)
- ⚠吐き気・嘔吐・下痢が続き、水分がとりにくい
- ⚠強いだるさで起き上がれない
一般的な症状
- 突然の高い熱
- 強いだるさ、筋肉の痛み、頭の痛み
- のどの痛み
- 吐き気、嘔吐、下痢、おなかの痛み
- 目の充血
- 発疹(皮膚に赤いぶつぶつが出る)
- 歯ぐきや鼻からの出血、皮下の出血(あざのようになる)
- しゃっくりが続く
原因
主な原因
- エボラウイルスが体に入ることで起こります。感染した人の血液、嘔吐物、下痢便、汗、唾液、母乳、精液などの体液に直接触れることが主な経路です。
- 目や口、傷口など、体の粘膜や皮膚の傷にウイルスが付着すると感染します。
- 汚れた手で目や口を触ることも経路になり得ます。
- 野生動物(コウモリやサルなど)の体液に触れることで感染することがあります。
- 回復した方の精液を介して、しばらくの間うつる可能性が指摘されています。
リスク要因
- 流行地域に滞在した、またはそこで生活している
- 感染が疑われる方を看病した、あるいはその体液に触れた
- 医療や葬儀の場で、感染対策が不十分なまま体液に触れた
- 消毒されていない針を使い回した
- 野生動物の肉の扱いや調理に携わった
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 流行地域への渡航から21日以内に発熱が出た
- 感染が疑われる方の体液に触れた心配があり、体調がすぐれない
- 高熱に加えて、嘔吐・下痢・出血などがある
定期受診を予約すべき場合:
- 流行地域へ行く予定があり、予防や持ち物について相談したい
- 流行地域から帰国したあと、熱はないが体調に不安がある
- 帰国後しばらく、だるさや関節の痛みが続いている
診断
まず、症状の経過と、流行地域への渡航歴や感染が疑われる方との接触歴をくわしく聞きます。そのうえで、血液を調べてウイルスの遺伝子が含まれていないかを確認します。日本では、保健所と連携しながら、国の検査機関で確定の検査が行われます。発熱があっても、多くの場合は別のよくある感染症(マラリアや腸の感染症など)であることも多く、それらとの区別も同時に進めます。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、渡航歴、接触歴の確認)
- 血液検査でウイルスの遺伝子を調べる検査
- 抗体(ウイルスに対する体の防御反応)を調べる検査
- 肝臓や腎臓の働き、電解質、血球の数を見る一般的な血液検査
- 脱水の程度や合併症を確認するための検査
診察で予想されること
検査結果が出るまでには数時間から数日かかることがあります。感染が疑われる場合には、専用の個室で待っていただいたり、入院して検査を進めたりすることがあります。待っている間は不安な気持ちになると思いますが、医師や看護師に疑問を遠慮なく尋ねてください。家族への連絡や、仕事の調整などについても、相談すれば支援を受けられます。
治療
エボラウイルス病の治療の中心は「支持療法」です。これは、ウイルスそのものを直接やっつけるだけでなく、体が自分で回復できるように、水分・電解質・酸素・血圧などを整え、つらい症状や合併症を一つひとつ和らげるケアのことです。早期に適切なケアを受けるほど、回復する可能性は高くなります。国や地域によっては、承認された治療薬やワクチンが使われることもありますが、使うかどうかは医師が状況を見て判断します。
自宅でのセルフケア
- 医療機関の指示を守り、許可なく外出や人との接触をしない
- 水分をこまめにとり、脱水を防ぐ(飲めないときは医療者に伝える)
- 家族は体液に直接触れず、手洗いを徹底する
- 体温や症状の変化をメモしておき、診察のときに伝える
- 回復期は無理をせず、少しずつ体を慣らしていく
医療治療
専門の医療機関で、感染対策を徹底しながら治療が行われます。点滴で水分と電解質を補い、酸素や血圧の管理を行い、出血や細菌感染などの合併症に応じたケアをします。必要に応じて、承認されている治療薬やワクチンが医師の判断で使われることがあります。治療の内容は病状や地域のガイドラインによって変わるため、担当の医師に直接確認してください。
手術が検討される場合
通常、エボラウイルス病そのものに対して手術が行われることはありません。合併症の状態によっては、外科的な処置が必要になる場合があります。
この病気と共に生きる
回復までには時間がかかります。熱が下がったあとも、疲れやすさ、関節や筋肉の痛み、目の違和感、耳鳴り、眠りにくさなどが続くことがあります。これは体が回復の途中であるためで、多くは少しずつ良くなっていきます。急がず、その日の体調に合わせて過ごしてください。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 手指の衛生を丁寧に続ける
- 回復期は人混みを避け、体调を優先する
- 飲酒は控えめにし、体に負担をかけない
- 気になる症状はメモして、診察のときに伝える
食事と運動
食事は、消化のよいものを少量ずつ、回数を分けてとると負担が少なくてすみます。食欲が戻らないときは無理をせず、水分と塩分を意識しながら、食べられるものを選びましょう。運動は、回復の具合を見ながら散歩など軽いものから始め、息が上がるほどの運動は医師に相談してからにしてください。
精神的健康と心の健康
強い不安、眠れない日々、ひとりぼっちに感じる孤立感、まわりの人からの視線によるつらさ(スティグマ)が起こることがあります。これは弱さではなく、誰にでも起こりうる反応です。気持ちを話せる相手を持つこと、そして必要なら心のケアの専門家に相談することが助けになります。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まないでください。
予防
はい、防ぐことができます。鍵になるのは「体液に直接触れない」ことです。流行地域では、患者さんの看病をするときに手袋やマスク、防護衣を使う、手洗いを徹底する、亡くなった方の葬儀の際に直接体液に触れないようにする、といった対策がとられています。流行地域への渡航を考えている方は、出発前に検疫所や医療機関で最新の情報と注意事項を確認してください。
ワクチン
一部の国では、エボラウイルス病を予防するワクチンが承認され、流行地域の方や感染のリスクが高い方に使われることがあります。日本では、一般の方が定期接種として受けるワクチンとしては提供されていません。渡航を予定している方は、事前に検疫所や渡航外来に相談してください。
検診プログラム
日本では、空港や港の検疫で、流行地域からの入国者に対する健康状態の確認が行われています。帰国時に熱や体調の変化があれば、税関・検疫の窓口で必ず申し出てください。帰国後21日間は体温を測り、体調の変化に気を配ると安心です。
合併症
治療しない場合
- 脱水と電解質の乱れ(体の中の水分とミネラルのバランスが崩れる)
- 肝臓や腎臓など複数の臓器の働きが低下する状態
- 出血が続くことによる貧血やショック
- 細菌による二次感染
- 妊娠中の方では、流産などのリスクが高まることがある
- 回復後も、目の炎症や関節痛などが続くことがある
長期的な見通し
エボラウイルス病は重い病気ですが、希望はあります。早期に医療につながり、水分や電解質を整えるケアを受けることで、回復する方は少なくありません。医療の届く速さが回復に大きく影響するため、少しでも心当たりがあれば早めに相談することが何より大切です。回復した方は、そのウイルスに対する免疫(体の防御力)がしばらく続くと考えられています。
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最終更新: 2026年10月23日
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