18トリソミー(エドワーズ症候群)
概要
18トリソミーは、別名「エドワーズ症候群」とも呼ばれ、体の設計図である染色体の18番目が、通常2本のところ3本になっている状態です。染色体は、細胞の中にあって「体をつくるための設計図」がまとまったものです。18番染色体が1本多いことで、体のさまざまな部分の形や働きに影響が出やすくなります。この状態は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で育ちはじめる、ごく早い時期に決まります。ご両親の育て方や生活のせいで起こるものではありません。
重要な事実
- 18番染色体が1本多いことで起こる、生まれつきの状態です(先天異常)。
- 心臓や消化管などの形の違い、飲み込みや呼吸のむずかしさ、発達の遅れなどが組み合わさってみられることが多くあります。
- 根本的に治す治療はありませんが、呼吸・栄養・心臓などのケアを一人ひとりに合わせて行うことで、その子らしく過ごすことを支えていきます。
とてもよくある状態ではありません。日本では、生まれてくる赤ちゃんおよそ5,000〜6,000人に1人くらいの割合でみられるとされています。ただし、おなかの中で亡くなってしまう場合も多いため、妊娠中に診断される数はこれより多くなります。
どのご家庭にも起こりうる状態で、特定の人だけのものではありません。女の子にやや多くみられます。お母さんの年齢が高いほど頻度は少し上がりますが、若いお母さんでも起こります。ほとんどの場合、ご両親の染色体には異常がなく、次の妊娠でも同じことが起こる可能性は一般に低いとされています。
症状
- 呼吸が苦しそうで、顔色や唇が青白い・紫色になっている
- 息が止まったように見える、または大きく肩で息をしている
- けいれんが続く、意識が戻らない
- ぐったりして反応が弱い、呼びかけても反応がない
- ミルクをまったく飲めず、汗をかいて元気がない(脱水のサイン)
- ⚠ふだんよりミルクの飲みが悪い、飲んでもすぐ吐く
- ⚠尿の回数が減っている、口の中が乾いている
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠体重が増えない、または減っている
- ⚠咳が続く、息がいつもより速い
一般的な症状
- 出生時の体重が小さい(低出生体重)
- 頭が小さめで、後頭部が出ている
- 握った手の指が重なり合う特徴的な形(握りこぶしの指の重なり)
- 足の裏が丸く張り出した形(ロッカーボトムフット)
- 小さいあご、耳の位置が低いなど、顔つきの特徴
- 心臓の形の違い(心室中隔欠損など)
- 飲む力が弱く、体重が増えにくい
- 呼吸が速い、息苦しそうにする
- 筋力が弱く、体がやわらかい
- 発達の遅れ(首のすわり、寝返り、言葉など)
子供の症状
- 成長に合わせた発達の支援が必要になることが多い
- 飲み込みづらさや胃からの逆流があり、食事の工夫や栄養のサポートが必要になることがある
- 感染症(肺炎など)にかかりやすい
- けいれんを起こすことがある
- 聴こえや視力の確認が必要になることがある
- 便秘や腎臓・尿の通り道の問題がみられることがある
高齢者の症状
- この状態は生まれつきのもので、大人になってから新たに発症するものではありません。
- 成人期まで育つ方は多くはありませんが、思春期や成人期を迎える方もいます。その場合は、心臓・呼吸・栄養・発達など、小児期からの継続的なケアを大人の診療科と連携して続けていくことが大切です。
- ご家族が高齢になっていく中で、将来の暮らしや医療・福祉の体制を早めに話し合っておくと安心です。
原因
主な原因
- 18番染色体が1本多くなること(18トリソミー)が原因です。
- 多くは、卵子や精子がつくられる過程で染色体がうまく分かれない「不分離」という偶然の出来事によって起こります。
- ご両親の生活や食事、育て方が原因になるものではありません。
- ごく一部に、ご両親のどちらかが持っている染色体の並び替え(転座)が関係する場合があります。
リスク要因
- お母さんの年齢が高いほど、起こる頻度は少し高くなります(ただし若い方でも起こります)。
- 以前に18トリソミーのお子さんを妊娠・出産した経験がある場合、次の妊娠で起こる可能性は一般よりやや高くなります(多くは数%程度とされています)。
- ご両親のどちらかに染色体の転座がある場合、再発の可能性が高くなることがあります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中に、赤ちゃんの心臓や体の形について指摘を受けたとき(できるだけ早めに専門の医療機関へ相談を)
- 出生後、ミルクの飲みが悪い・体重が増えない・呼吸が速いといった様子が続くとき
- けいれん、ぐったりした様子、顔色の悪さがあるとき(救急へ)
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中の超音波検査で気になる所見を指摘されたとき
- 家族歴があり、次の妊娠について心配があるとき(遺伝カウンセリングの相談を)
- お子さんの発達や飲み込み、成長について心配なことがあるとき
- ご家族の休息や介護体制について相談したいとき
診断
妊娠中に見つかる場合と、生まれてから見つかる場合があります。妊娠中は、超音波検査での体の形の所見や、お母さんの血液検査(母体血清マーカー検査や出生前遺伝学的検査)がきっかけになることがあります。確定するには、羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査といった、赤ちゃんの細胞を調べる検査が必要です。生まれてからは、体の特徴から疑い、血液を採って染色体を調べる検査で確定します。
行われる可能性のある検査
- 妊娠中の超音波(エコー)検査
- 母体血清マーカー検査(お母さんの血液を調べる検査)
- 出生前遺伝学的検査(NIPTなど。検査の意味をよく説明を受けたうえで受けるかどうかを選びます)
- 羊水検査・絨毛検査(確定診断のための検査)
- 出生後の染色体検査(G分染法)、FISH法、染色体マイクロアレイ検査
- 心臓の超音波検査、腹部の超音波検査、レントゲンなど合併症を確認する検査
診察で予想されること
検査の結果が出るまでには数日から2週間ほどかかることがあります。出生前検査は「知るための選択肢」であり、受けるかどうかはご家族が納得して決めてよいものです。検査の前に、どんな結果が返ってくる可能性があるか、その後の選択肢も含めて、遺伝カウンセリングでゆっくり説明を受けることをおすすめします。生まれてからの診断では、小児科医が体の状態を丁寧に確認し、必要な検査を組み合わせて総合的に判断します。
治療
18トリソミーそのものを根本的に治す治療は、今のところありません。治療の中心は、そのお子さんが楽に、その子らしく過ごせるように、呼吸・栄養・心臓・感染症などの一つひとつの問題にていねいに対応していく「支持的ケア」です。赤ちゃんの状態は一人ひとり大きく違うため、医療チームはご家族と相談しながら、何を大切にしたいかを一緒に考えてケアの計画を立てていきます。
自宅でのセルフケア
- 授乳や哺乳びんの飲み方を、飲み込みの専門家(言語聴覚士など)と一緒に工夫する
- 抱っこや体位の工夫で、呼吸が楽になる姿勢を見つける
- 体温・呼吸の様子・飲んだ量・尿の回数を記録しておくと、受診時に役立つ
- 手洗いや換気を心がけ、感染症を防ぐ
- ご家族が交代で休めるように、周囲に助けを求める
- 気持ちがつらいときは、一人で抱えず医療者や相談窓口に話す
医療治療
呼吸を助けるための酸素や人工呼吸器のサポート、飲めない場合の栄養のサポート(管からの栄養など)、心臓の状態に合わせた治療、感染症の治療、けいれんへの対応、発達を支えるリハビリテーション、痛みや苦しさをやわらげる緩和ケア、そして必要に応じて在宅での医療・看護の体制づくりが行われます。治療方針は、お子さんの状態とご家族の希望をすり合わせながら、何度も話し合いながら決めていきます。
手術が検討される場合
心臓の形の違いや消化管の問題などに対して、手術が検討されることがあります。ただし、手術をするかどうかは、お子さんの全身の状態、合併症の程度、ご家族の考えをふまえて、医療チームとじっくり相談して決めます。手術をしないという選択も、その子にとっての最善を考えるうえで大切な選択肢の一つです。
この病気と共に生きる
日々の暮らしでは、飲むこと・呼吸すること・眠ることなど、一つひとつにていねいな工夫が必要になることがあります。小さな変化に気づけるよう、記録をつけたり、かかりつけの医療者と連絡を取りやすい関係をつくっておくと安心です。成長に合わせて必要な支援は変わっていくので、定期的に医療チームと見直しをしていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 家族みんなで無理なく役割を分担し、休息の時間を確保する
- 感染予防のため、手洗い・換気・人混みを避ける工夫をする
- 医療的ケアが必要な場合は、訪問看護や相談支援専門員などのサービスを早めに調べる
- 自治体の障がい福祉サービスや小児慢性特定疾病・指定難病の医療費助成の制度を確認する
- きょうだいへの声かけや、家族で過ごす時間も大切にする
食事と運動
飲み込みの力や消化の状態に合わせて、ミルクの量や回数、とろみの調整などを医療者と相談しながら決めていきます。むりに量を増やすより、その子が無理なく飲める方法を優先します。体を動かすことは呼吸や筋力の維持に役立ちます。ただし、疲れやすいお子さんも多いので、短時間のリハビリやマッサージなど、その子の体力に合わせた関わりを、理学療法士や作業療法士と相談しながら進めましょう。
精神的健康と心の健康
お子さんの状態を知ったとき、ご家族は大きなショックや悲しみ、不安、ときには怒りを感じることがあります。それは自然な気持ちです。診断を受け入れられない日があっても、責める必要はありません。パートナーや家族で気持ちに差が出ることもあります。そうしたときは、医療ソーシャルワーカー、心理士、同じ経験をした家族の集まりなど、話せる場所をぜひ利用してください。つらい気持ちが続き、眠れない・食べられない・涙が止まらないといった状態があるときは、医療者やお住まいの自治体の相談窓口に早めに相談してください。
予防
18トリソミーを確実に防ぐ方法は、今のところありません。起こるかどうかを事前にコントロールすることはできない、偶然によるものだと考えられています。妊娠中に受けられる検査は「防ぐ」ためのものではなく、赤ちゃんの状態を早く知り、準備や選択をするためのものです。受けるかどうかはご家族が納得して決めてよいもので、検査を受けないという選択も尊重されます。
ワクチン
18トリソミーそのものを防ぐワクチンはありません。ただし、肺炎やインフルエンザなどにかかると重症化しやすいお子さんもいるため、年齢や状態に応じた予防接種については、かかりつけの小児科医に相談してください。
検診プログラム
妊娠中には、超音波検査や母体血清マーカー検査、出生前遺伝学的検査(NIPTなど)といった検査の選択肢があります。これらは確定診断ではなく、可能性を示すものです。確定には羊水検査や絨毛検査が必要になります。検査の意味や限界、結果が出たあとの選択肢について、遗传カウンセリングでよく説明を受けたうえで決めることをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 呼吸の苦しさが続き、酸素が足りなくなる状態
- 心臓の働きが弱くなる状態(心不全)
- 感染症(肺炎など)にかかりやすく、重症化しやすい
- 飲めない・消化できないことによる栄養不良や脱水
- 発達の遅れや、けいれんなどの神経の問題
- 尿の通り道や腎臓の問題
長期的な見通し
18トリソミーは、命に関わることが多い状態であることは事実です。生まれてきた赤ちゃんの多くは、1歳までに亡くなることが多いと報告されています。一方で、医療やケアの進歩により、幼少期や学童期、思春期、成人期まで育つお子さんも増えてきています。一人ひとりの状態の差はとても大きく、予後を一律に決めることはできません。大切なのは、その子が今をできるだけ楽に、大切にされていると感じながら過ごせることです。医療チームは、ご家族と一緒に、その子にとっての最善を考え続けます。
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最終更新: 2026年10月23日
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