脳卒中の影響(後遺症)について
概要
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。命が助かったあとも、脳のどの部分がどれだけ傷ついたかによって、体の動き、話すこと、感じ方、考え方などにさまざまな影響(後遺症)が残ることがあります。この記事では、脳卒中のあとに起こりうる影響と、その対処や支援について説明します。
重要な事実
- 脳卒中の影響は人によって大きく異なり、同じ部位でも現れ方に個人差があります。
- 影響の多くは時間とともに良くなっていきますが、回復には週単位・月単位のリハビリと周囲の支えが必要です。
- 早い段階からリハビリを始め、生活の工夫を重ねることが、できることを増やす助けになります。
脳卒中は日本でも多い病気で、厚生労働省の資料でも主要な死因や介護が必要になる原因のひとつとして挙げられています。後遺症とともに生活している方も数多くいます。
高齢の方に多い病気ですが、働き盛りの世代や若い方でも起こります。血圧が高い、糖尿病がある、心臓の不整脈(心房細動)がある、たばこを吸う、といった方はリスクが高めといわれています。
症状
- 顔の片側が急に下がった、腕の片方に急に力が入らない、急に言葉が出ない・ろれつが回らない(この3つは脳卒中のサインとして知られています)
- 突然の激しい頭痛、意識がない・呼びかけに反応しない、けいれんが起きた
- 突然、片目が見えない、ものが二重に見える、立てないほどのふらつきがある
- 自分を傷つけたい気持ちが強いとき(すぐに救急や地域の相談窓口へ連絡してください)
- ⚠新しく手足の麻痺やしびれが出てきた、または今までの症状が明らかに悪化している
- ⚠飲み込みにくくなり、食事や水分がとれない、むせが増えた
- ⚠発熱がある、痰がからんで息苦しい
- ⚠強い頭痛やめまいが続く
- ⚠気分の落ち込みが強く、日常生活が保てない
一般的な症状
- 体の片側の手足が動かしにくい、力が入らない(麻痺)
- 片側の感覚が鈍い、しびれる、触られてもわかりにくい
- 言葉が出てこない、言いたいことが伝わらない、相手の言葉が理解しにくい(失語)
- ろれつが回らない、声が出しにくい(構音障害)
- 顔の片側が下がる、口元から食べ物や飲み物がこぼれる
- 飲み込みにくい、むせやすい(嚥下障害)
- 見えにくい、視野の一部が欠ける、ものが二重に見える
- ふらつく、バランスが取りにくい、歩きにくい
- 疲れやすい、集中が続かない、物忘れが増えたように感じる
- 感情のコントロールが難しい、怒りっぽくなる、涙もろくなる
- 気分の落ち込み、不安、眠りにくさ
- 肩や関節の痛み、こわばり、尿が出にくい・間に合わない
子供の症状
- 小児でも脳卒中は起こります。赤ちゃんや小さな子どもの場合は、けいれん、片側の手足を動かしにくい、ミルクの飲みが悪い、泣き方が弱い、視線が合いにくいなどで気づかれることがあります。
- 言葉で伝えられないぶん、家族が「いつもと違う」と感じたときに早めに医療機関へ相談することが大切です。
- 小児の回復には、小児科やリハビリの専門職、学校や保育園との連携が役立ちます。
高齢者の症状
- 高齢の方では、麻痺に加えて、転びやすさ、飲み込みのトラブル、体力の低下が重なりやすい傾向があります。
- もともとの持病や服薬、認知機能の変化が影響することもあります。
- リハビリの進み方には個人差があり、無理をせず少しずつ進めることが大切です。
原因
主な原因
- 脳梗塞:脳の血管が血栓などで詰まり、先の細胞に酸素が届かなくなる
- 脳出血:脳の細い血管が破れて出血する
- くも膜下出血:脳を包む膜の下で出血が起こる
- 多くは動脈硬化(血管が硬く狭くなる変化)や高血圧による血管の傷みが背景にあります。
リスク要因
- 高血圧(最も大きな要因のひとつです)
- 糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどの異常)
- 心房細動などの心臓の不整脈
- 喫煙、過度の飲酒
- 肥満、運動不足、塩分の多い食事
- 睡眠時無呼吸、強いストレス、過労
- 年齢、家族に脳卒中の人がいること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 新しい麻痺やしびれが出た、症状が急に悪化した
- 飲み込みが悪くなった、水分がとれない、むせが続く
- 発熱、息苦しさ、胸の痛みがある
- 気分の落ち込みが強く、生活が立ち行かない、自分を傷つけたい気持ちがある
定期受診を予約すべき場合:
- リハビリの進め方や目標について相談したい
- 血圧や血糖、脂質の管理について確認したい
- 飲み忘れや副作用が心配で、服薬について整理したい
- 復職、運転の再開、住まいの工夫について相談したい
- 家族の介護負担が大きくなってきた
診断
脳卒中の影響は、医師の診察と神経の検査、画像検査、そしてリハビリの専門職による評価を組み合わせて判断します。発症直後の急性期だけでなく、回復期や在宅での生活期にも、定期的に評価をやり直して、その時々に合った支援を考えていきます。
行われる可能性のある検査
- 頭部のCT検査やMRI検査(脳の画像を撮る検査)
- 心電図やホルター心電図(心臓の不整脈を調べる検査)
- 頸動脈の超音波検査(首の血管の状態を見る検査)
- 血液検査(血糖、脂質、血液の固まりやすさなどを確認)
- 飲み込みの評価(実際に食べたり飲んだりして確認します)
- 運動・言葉・日常生活動作のリハビリ評価
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、短時間で終わります。リハビリの評価では、実際に歩く、物を持つ、話す、食事をするなど、日常生活に近い動きを確認します。「できないこと」を探すためではなく、これから伸ばせる力を一緒に見つけるための時間です。
治療
治療は大きく3つに分かれます。発症直後の急性期の治療、その後のリハビリテーション、そして再発を防ぐための長期的な管理です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどがチームで支えます。
自宅でのセルフケア
- 血圧を測る習慣をつけ、記録しておく
- 処方された薬は自己判断でやめず、飲み忘れがないよう工夫する
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 塩分を控え、バランスの良い食事を心がける
- 主治医に相談しながら、無理のない範囲で体を動かす
- リハビリで習った動きを、日常生活の中でも続ける
- 疲れやすいので、こまめに休憩をとる
- 転倒しないよう、手すりや滑り止めなど住まいを整える
- 体調の変化や困りごとは、家族や医療者と早めに共有する
医療治療
急性期には、詰まった血管を再び通す治療や、出血を抑える治療が行われることがあります。その後の再発予防として、血圧・血糖・脂質の管理や、血液を固まりにくくする薬などが検討されますが、薬の種類や量は医師が一人ひとりの状態に合わせて判断します。ここでは具体的な薬の名前や量はお伝えしません。治療の中心はリハビリテーションで、運動・言葉・日常生活の動作を少しずつ取り戻していきます。
手術が検討される場合
首の血管が狭くなっている場合や、脳の血管にこぶ(動脈瘤)がある場合など、原因によっては手術や血管内の治療が検討されることがあります。適応があるかどうかは、検査の結果と全身の状態をふまえて医師が個別に判断します。
この病気と共に生きる
生活の中のちょっとした工夫が、毎日を楽にします。手すりや滑り止め、ボタンが大きい服、ふちの高いお皿、必要に応じて自助具などを使うと安心です。疲れやすいので、用事は分けて、間に休憩をはさむのがおすすめです。介護保険のサービス(訪問リハビリ、通所介護、ホームヘルプなど)や地域包括支援センターも相談先になります。
生活習慣のアドバイス
- 減塩を意識した食事と、決まった時間の服薬
- 禁煙、節酒
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 定期的な受診と血圧の記録
- 家族や友人と話す時間を意識してつくる
- ストレスを一人で抱えず、相談する
食事と運動
食事は、塩分を控えめにして、野菜・果物・魚・大豆製品などをバランスよくとる形が基本です。運動は、歩行や軽いストレッチなど、主治医と相談しながら無理のない範囲で続けます。麻痺のある側の手や足のリハビリは、専門職に教わった方法を日常の中で少しずつ続けると効果的です。
精神的健康と心の健康
脳卒中のあとは、気分の落ち込み、不安、怒りっぽさ、涙もろさ、感情のコントロールの変化が起こりやすくなります。これは脳の変化によるもので、性格や心の弱さの問題ではありません。つらいときは一人で抱えず、医療者や家族、地域の相談窓口に話してください。自分を傷つけたい気持ちが強くなったときは、ためらわずに救急(119)や地域の相談窓口に連絡してください。あなたの命と気持ちを支えてくれる人が必ずいます。
予防
リスクを減らすことはできます。とくに血圧を適切に保つことが大切です。禁煙、節酒、減塩、適度な運動、睡眠とストレス管理も役立ちます。一度脳卒中を経験した方も、再発を防ぐための管理がとても重要です。
ワクチン
肺炎やインフルエンザなどのワクチンは、脳卒中後の合併症を防ぐ助けになることがあります。接種の適否や時期については、かかりつけ医にご相談ください。
検診プログラム
健康診断や特定健診(厚生労働省が進める健診)で、血圧・血糖・脂質を定期的に確認することが大切です。動悸や脈の乱れが気になる場合は、心房細動(心臓の不整脈)がないかを調べてもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 脳卒中の再発
- 麻痺やこわばりが残り、動きが限られる
- 転倒や骨折
- 飲み込みのトラブルによる誤嚥性肺炎
- 長く寝ていることによる皮膚の傷(褥瘡)
- 気分の落ち込みや不安の長期化
- 記憶や判断力の変化
- 外出や人づきあいが減り、孤立してしまう
長期的な見通し
回復の道のりは人それぞれで、時間がかかることもあります。それでも、リハビリと生活の工夫、周囲の支援によって、できることは少しずつ増えていきます。小さな変化を積み重ねることが力になります。不安や困りごとは、早めに医療者や相談窓口に話してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.