卵子凍結(卵子を凍らせて保存する)について
概要
卵子凍結は、将来自分の子どもを産む選択肢を残しておくために、健康なうちに卵子を取り出して凍らせ、保存しておく方法です。卵子は女性の卵巣の中で作られる、妊娠のもとになる細胞です。ふだんは毎月1個ほど排卵されますが、卵子凍結ではホルモン剤を使って卵巣の中で複数の卵子を育て、細い針で卵巣から卵子を吸い出して採ります(採卵)。採った卵子はマイナス196度の液体窒素の中で凍らせて保管し、将来子どもがほしいと思ったときに溶かして、体外受精に使います。妊娠を約束するものではなく、あくまで「選択肢を増やしておく」ための方法です。
重要な事実
- 卵子凍結は病気の治療ではなく、将来の妊娠に備えるための「準備」です。健康な方でも受けることができます。
- 凍結した卵子から必ず妊娠できるわけではありません。年齢が若いほど、また凍結する卵子の数が多いほど、妊娠につながる可能性は高くなります。
- 採卵までには約2週間ほどの通院と、ご自身で行う注射などが必要になることが多く、費用や保管の期間・費用についても事前に確認しておくことが大切です。
ここ数年で、卵子凍結を考えて相談する方は増えています。日本でも、働く女性やパートナーがいない方などが、将来に備えて情報を集めることが珍しくなくなりました。一方で、実際に凍結まで進む方は一部で、費用や体への負担、仕事との両立などの理由から、まず相談や検査だけを受ける方も多くいます。
卵巣と卵子がある方なら、誰でも検討できます。多いのは、今すぐ妊娠する予定はないけれど将来は子どもがほしいと考えている20〜30代の方、パートナーがいない方、仕事や学業で忙しい方です。また、がんなどの治療で卵巣に影響が出る可能性がある方、子宮内膜症などで卵巣の働きが心配される方が、医療上の理由で検討することもあります。
症状
- 息苦しさ、胸の痛み、尿がほとんど出ない、意識がもうろうとする
- おなかが急に大きく張って苦しい、短期間で体重が急に増えた
- 処置のあと、強いめまいや動悸がして立てない
- ⚠38度以上の発熱
- ⚠止まらない腟からの出血
- ⚠がまんできないほど強い下腹部の痛み
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
一般的な症状
- 卵子凍結そのものには、病気のような症状はありません。ただし、卵子を育てるためのホルモン剤を使っている期間に、おなかの張り、軽い痛み、眠気、気分の変化、注射した部分の赤みや腫れを感じることがあります。
- 採卵のあと、数日間、軽い下腹部の痛みや少量の出血、だるさが出ることがあります。多くは数日で落ち着きます。
- 気持ちの面でも、迷い、不安、イライラ、さみしさを感じることがあります。これは特別なことではなく、よくある気持ちの動きです。
原因
主な原因
- 卵子凍結は「原因があって起こる症状」ではなく、自分で選ぶ準備の方法です。検討する背景には、将来の妊娠に備えたいという気持ちがあります。
- 年齢とともに卵子の数と質は変わっていくため、妊娠を考えたときに選択肢を残しておきたいと考える方が多くいます。
- 今はパートナーがいない、仕事や学業が忙しい、治療を受けているなど、今すぐ妊娠する予定がない状況も背景になります。
- がん治療や卵巣の手術など、卵巣の働きに影響が出る可能性がある治療を控えている場合も、医療上の理由で検討されます。
リスク要因
- 年齢:若いほど採れる卵子の数が多く、妊娠につながる可能性も高い傾向があります。
- 卵巣の予備力(卵子がどのくらい残っているかの目安):生まれつき少なめの方、子宮内膜症や卵巣の手術の経験がある方では少ないことがあります。
- 喫煙:卵子の健康に影響するとされています。
- 体重や生活習慣、睡眠不足、強いストレスも、体調や治療の進み方に影響することがあります。
- 採卵のあとにおなかに水がたまるなど体調が変化するリスク(卵巣過剰刺激といいます)は、若い方や卵巣の反応が強い方で起こりやすいことがあります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさ、胸の痛み、尿が出ない、意識がもうろうとする、おなかが急に大きく張るといった症状があるときは、すぐに119番へ連絡してください。
- 38度以上の発熱、止まらない出血、がまんできない強い下腹部痛、嘔吐が続いて水分がとれないときは、当日中に医療機関へ連絡してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 卵子凍結を少しでも考え始めたら、早めに婦人科や不妊相談の窓口で相談してみてください。年齢が若いほど選べる方法が多いためです。
- 月経が不順、極端に少ない、止まってしまったと感じるとき。
- がん治療や卵巣の手術を受ける予定があり、妊娠の可能性を残したいと考えるとき。
- 妊娠しにくいかもしれないと心配になったとき、パートナーと話し合いたいとき。
診断
卵子凍結は病気の診断ではありません。医療機関では、健康状態や卵巣の働きを確かめるための検査と、ていねいな説明・カウンセリングが行われます。そのうえで、卵子凍結が自分に合っているか、いつ行うかを一緒に考えていきます。
行われる可能性のある検査
- 問診:月経の周期、既往歴、手術の経験、喫煙や生活習慣、家族の病気などを聞きます。
- 超音波検査:卵巣の中で育っている卵胞の数や、子宮・卵巣の状態を確認します。
- 血液検査:卵巣の予備力の目安になる数値やホルモンの値、貧血、感染症の有無などを調べます。
- 必要に応じて、遺伝の相談や、がん治療前の急いだ対応のための検査が行われることがあります。
診察で予想されること
検査は1〜2回の通院で行われることが多く、結果の説明とあわせて、採卵までの流れ、通院の回数、体への負担、費用、保管の期間と費用、妊娠の可能性についての説明があります。説明を聞いてから、家族やパートナーと相談して決めることができます。納得できるまで質問してよい場です。
治療
卵子凍結は、大きく分けると「卵子を育てる」「採る」「凍らせて保管する」の3つの段階に進みます。卵子を育てる段階では、ホルモン剤を注射や点鼻、腟坐薬などで使って、卵巣の中で複数の卵子を育てます。育ったところで、超音波で見ながら細い針を使って卵子を吸い出します(採卵)。採った卵子は特殊な方法で急速に凍らせて保管し、将来必要になったときに溶かして体外受精に使います。
自宅でのセルフケア
- 決まった時間に注射や薬を使う必要があるため、スマートフォンの通知や手帳を使って予定を管理すると安心です。
- バランスのよい食事、十分な睡眠、禁煙を心がけましょう。体調を整えることは治療の進み方にも関わります。
- 採卵の前後は、激しい運動や長時間の入浴、飲酒は控えめにし、医師の指示に従ってください。
- 体調の変化(おなかの張り、痛み、体重の変化、尿の量)をメモしておくと、受診のときに伝えやすくなります。
- 仕事や学校との両立が難しいと感じたら、早めに医療機関の相談窓口に伝えてください。通院の調整方法を一緒に考えてもらえます。
医療治療
医療機関では、卵巣の状態に合わせてホルモン剤の使い方や通院の間隔を調整します。卵子が育ちすぎておなかに水がたまる状態(卵巣過剰刺激)を防ぐため、超音波や血液検査で体の反応をこまめに確認しながら進めます。採卵は鎮痛や鎮静を行いながら、日帰りで行われることが多い処置です。使う薬の種類や量、スケジュールは体の状態によって変わるため、必ず担当の医師から説明を受け、自己判断で量を変えたり中断したりしないでください。
手術が検討される場合
採卵は「手術」というより、針を使って卵子を吸い出す処置で、日帰りで行われることが多いものです。全身麻酔ではなく、鎮静や鎮痛を使って行うことが一般的です。卵巣に大きな腫れや病気がある場合などは、別の対応が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
卵子凍結を決めたあとも、これまでどおりの生活を続けながら通院する方がほとんどです。通院の期間は数週間ほどかかることが多く、注射の時間を決める必要があるため、仕事や学校の予定を早めに調整しておくと負担が軽くなります。凍結したあとは、保管の更新の連絡が届くことがあるので、連絡先を最新にしておきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がけましょう。喫煙は卵子の健康に影響するとされています。
- 睡眠を十分にとり、できるだけ決まった時間に休むようにしましょう。
- カフェインやアルコールはほどほどに。治療中は医師の指示に従ってください。
- パートナーや家族、信頼できる人に、今の気持ちや予定を話しておくと、気持ちが軽くなることがあります。
- 決断したあとで気持ちが揺れることはよくあります。迷ったときは、また相談してよいものです。
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、主食・たんぱく質・野菜をバランスよくとり、極端な食事制限や急な減量は避けましょう。運動はウォーキングなど軽めのものを続けるのがおすすめです。採卵の前後は、おなかが張っているときに激しい運動をすると不快感が強まることがあるため、体調に合わせて加減してください。
精神的健康と心の健康
卵子凍結を考えるときは、「本当に必要か」「費用に見合うか」「年齢的に間に合うか」など、たくさんの迷いが浮かびます。不安や落ち込み、イライラを感じるのは自然なことです。パートナーや家族と考え方が違ってつらくなることもあります。気持ちが重い状態が続くときは、ひとりで抱えず、医療機関の相談員や、お住まいの自治体の相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。
予防
卵子凍結は病気を防ぐものではないため、「予防」という考え方にはなじみません。ただ、将来の選択肢を増やすという意味では、早い段階で情報を集めて相談しておくことが役に立ちます。年齢とともに卵子の数と質は変化するため、妊娠を考えているなら、迷っている段階でも早めに相談することが大切です。禁煙や十分な睡眠など、生活習慣を整えることも卵子の健康を考えるうえで意味があります。
検診プログラム
卵巣の働きの目安を知る検査(超音波検査や血液検査)を受けられます。妊娠を考え始めたときや、月経の変化が気になるときに、婦人科で相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 卵子凍結をしない場合でも、今すぐ何かが起こるわけではありません。ただ、年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなる可能性は高まります。
- 凍結しても妊娠を約束するものではなく、溶かした卵子が受精しなかったり、妊娠に至らなかったりすることはあります。
- 採卵のあと、おなかに水がたまるなど体調が変化する状態(卵巣過剰刺激)が起こることがあります。多くは軽く済みますが、まれに治療が必要になります。
- 保管には期間と費用がかかり、更新の連絡に気づかないと保管が終わってしまうことがあります。凍結した卵子を将来どうするかを決めておく必要もあります。
- 決断や保管期間のことを考えるうちに、気持ちの負担が大きくなることがあります。
長期的な見通し
卵子凍結は、将来自分の人生を選ぶための準備のひとつです。若い年齢で行うほど可能性は高くなりますが、何歳でも相談はでき、決めるのはご自身です。凍結したから安心しきるのではなく、体の状態や気持ちの変化に合わせて、医療機関と一緒に考えていくことが、いちばん現実的で前向きな進み方です。
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最終更新: 2026年10月23日
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