洪水・水害のときの健康ガイド
概要
洪水(こうずい)とは、大雨や台風などで川の水があふれたり、地面に水がたまりすぎたりして、住んでいる場所が水につかることです。水そのものだけでなく、けが、冷え、感染症、電気やガスによる事故、心の疲れなど、いろいろな健康の危険が一度に起こりやすくなります。この記事では、水害のときと水が引いた後に気をつけたいことをまとめます。
重要な事実
- 洪水の最中は、おぼれる・けが・感電・低体温(体が冷えすぎること)などの危険がすぐに起こります。
- 水が引いた後も、感染症、カビ、一酸化炭素中毒(においのないガスで体がおかしくなること)、熱中症などの危険が続きます。
- 避難の前に「どこへ行くか・どの道を通るか・何を持って出るか」を決めておくと、安全がぐっと高まります。
日本は雨が多く、毎年のように大雨による水害が起きています。特別なことではなく、どこの地域でも起こりうることとして備えておくことが大切です。
誰にでも起こります。とくに高齢の方、乳幼児、妊婦、持病のある人、障害のある人、一人で避難するのが難しい人、情報が届きにくい人は影響を受けやすくなります。まわりの人が声をかけることが大きな支えになります。
症状
- 意識がない、呼吸がない、呼びかけに反応がない(すぐに119番)
- 水におぼれた、またはおぼれた直後で息が苦しい
- 頭・胸・おなかを強く打った、大きなけがで血が止まらない
- 頭痛・吐き気・めまい・意識がぼんやりする(発電機やコンロを屋内・車内で使ったときの一酸化炭素中毒の疑い)
- 胸の痛み、息ができない、けいれんがある
- 感電した、切れた電線に触れた、水の中の電気器具に触れた
- 倒れた家屋や家具の下敷きになっている
- ⚠傷が赤くはれて膿んでいる、熱がある
- ⚠下痢や嘔吐が続いて水分がとれない、尿がほとんど出ない
- ⚠震えが止まらない、体が冷えて元気がない
- ⚠皮膚が赤くはれて痛む、水ぶくれがある
- ⚠持病の薬を流されて飲めていない
- ⚠息苦しさやぜんそくの発作が悪くなっている
一般的な症状
- 切り傷、打ち身、ねんざ、転んだときの痛み
- 体が冷えて震える、手足の感覚がにぶい
- 疲れやすさ、のどの渇き、尿が少なくなる(脱水のサイン)
- 皮膚のかゆみ・赤み・湿疹(水に浸かった後によく起こります)
- 下痢、腹痛、吐き気
- せき、鼻水、のどの違和感
- 眠れない、落ち着かない、不安が続く
子供の症状
- 泣き止まない、ぐずる、元気がない
- 体が冷たい、唇の色が悪い
- 下痢や嘔吐、食欲がない
- 皮膚の赤みやかゆみ
- 息が苦しそう、ぜんそくのようなせき
- 夜泣き、不安が強い、甘えが増える
高齢者の症状
- 体力が急に落ちた、動くのがつらい
- 脱水(のどの渇きを感じにくいことがあります)
- 低体温(体が冷えすぎる)でのぼんやりする、震え
- 持病(血圧、心臓、糖尿病など)の悪化
- 薬を流されて飲めていない、薬の管理ができない
- 認知症のある人の混乱、不安、転倒
原因
主な原因
- 大雨、台風、線状降水帯(同じ場所に雨雲が次々と流れ込む現象)
- 川の水があふれる氾濫(はんらん)
- 下水や側溝から水があふれる内水氾濫(ないすい・はんらん)
- 海の水位が上がる高潮(たかしお)
- 土砂災害(がけくずれ、土石流)
- 水害時の健康被害は、水、がれき、電気、冷え、汚れた水、カビ、強いストレスなどから起こります
リスク要因
- 川の近く、低い土地、がけの近くに住んでいる
- 高齢、乳幼児、妊娠中、持病がある
- 歩くことや車での移動が難しい
- 一人暮らし、またはまわりに助けを求めにくい環境
- 避難情報が届きにくい、言葉の壁がある
- 屋外での片付けや復旧作業を長時間行う
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷が赤くはれて熱が出た、膿んでいる
- 下痢・嘔吐が続き、水が飲めない、尿が極端に少ない
- 体が冷えて震えが止まらない、反応がぼんやりしている
- 持病の薬が手元になく、飲めていない日が続いている
- 息苦しさ、胸の痛み、動悸が続く
- 気分の落ち込みや不安が強く、眠れない日が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 水に浸かった後に皮膚のかゆみや湿疹が続く
- 避難所での生活が長引き、体調がすぐれない
- 復旧作業の後の疲れが抜けない、腰や肩が痛い
- 水害時のけがに関するワクチンについて相談したい
- 住まいのカビが気になり、せきや鼻の症状が続く
診断
医師は、今の症状に加えて「どんな水に、どのくらい浸かったか」「けがをしたときの状況」「避難所や車での生活がどのくらい続いているか」「持病の薬を飲めているか」などを聞き、体の状態を診ます。状況を伝えることが、正確な判断につながります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(脱水、感染、腎臓の働きなどを調べる)
- レントゲン、超音波、CTなどの画像検査(けがや肺の状態を調べる)
- 傷の汚れや細菌を調べる検査
- 心電図(動悸や胸の痛みがあるとき)
診察で予想されること
診察では、症状と一緒に「水害の状況」をできるだけ具体的に話すと役に立ちます。避難所では調べられる検査が限られることもあります。息苦しさや強い痛みなどがあるときは、無理をせず医療機関を受診してください。
治療
水害時の医療では、けがの手当て、体を温めること、水分と塩分の補給、感染症が疑われる場合の評価、持病の治療を途切れさせないこと、そして心のケアを組み合わせて行います。症状の重さに応じて、避難所での対応か病院での治療かを選びます。
自宅でのセルフケア
- 飲み水と食事は、安全だと確認できるものを使う
- 石けんと流水で手をよく洗う。手指用の消毒液も活用する
- 傷はきれいな水で洗い、清潔なガーゼなどで覆う
- 片付けは長袖・長ズボン、滑りにくい長靴、手袋で行う
- 蚊に刺されないよう、肌を出さない、虫よけを使う
- こまめに休憩し、水分と塩分をとる(熱中症予防)
- 発電機や炭火、コンロは必ず屋外で使う(一酸化炭素中毒予防)
- 持病の薬は、お薬手帳やリストと一緒に持ち歩く
- 眠れないときは、無理に頑張らず、短い昼寝や軽い運動を取り入れる
医療治療
医師は、けがの洗浄と処置、脱水に対する点滴、体が冷えすぎている場合の温め、感染症が疑われる場合の評価と適切な治療、持病の薬が続けられるようにする調整などを行います。どのような治療が必要かは、症状と検査結果をもとに医師が判断します。薬についての疑問は、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
大きなけが、骨折、内臓の損傷、やけどの範囲が広い場合などは、手術が必要になることがあります。判断は医師が検査結果をもとに行います。
この病気と共に生きる
水が引いた後も、片付け、書類の手続き、住まいの修理などが続き、疲れがたまりやすい時期です。一日のやることを絞り、休む時間を先に予定に入れておくと、体と心を守りやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 住まいの換気と乾燥を心がけ、カビを取り除く
- 片付けは短時間ずつ、複数人で分担する
- 睡眠時間をできるだけ確保する
- ニュースやSNSを見る時間を決め、情報に疲れないようにする
- 家族や友人、避難所の人と声をかけ合う
- 持病の薬と通院の予定を、水害後も途切れないようにする
食事と運動
食事は、安全な水で調理したものをとり、塩分と水分を適度に補いましょう。食欲がないときは、少量ずつ回数を分けて食べるのがおすすめです。運動は、片付けの合間に軽いストレッチや散歩を取り入れる程度で十分です。体調がすぐれないときは無理をしないでください。
精神的健康と心の健康
水害の後は、眠れない、涙が出る、いらいらする、記憶がよみがえる、といった反応が起こりやすくなります。多くは時間とともに軽くなりますが、つらい状態が続くときは、一人で抱え込まずに相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときや、命の危険を感じたときは、すぐに119番、またはお住まいの地域の緊急の相談窓口に連絡してください。
予防
洪水そのものを止めることはできませんが、備えによって健康への被害は大きく減らせます。日ごろからハザードマップ(災害の危険を示した地図)を見て、避難場所と経路を家族で確認しておきましょう。非常持ち出し袋には、水、食料、薬、お薬手帳、モバイルバッテリー、懐中電灯、現金、靴、タオルを入れておくと安心です。気象庁や厚生労働省、自治体の避難情報を早めに確認し、明るいうちに、早めに避難することが大切です。
ワクチン
水害時のけがに関係するワクチン(破傷風など)について気になる場合は、かかりつけ医に相談してください。必要かどうかは、けがの状況やこれまでの接種歴で変わります。
検診プログラム
水害に特有の「決まった検診」はありません。ただし、持病のある方は、水害の前後でも定期受診と薬の確認を続けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 傷からの感染が広がる
- 脱水や低体温が進み、意識がぼんやりする
- 熱中症や一酸化炭素中毒が重くなる
- 持病(心臓、血圧、糖尿病、呼吸器の病気など)が悪化する
- 汚れた水による下痢や胃腸炎
- カビによるせきや喘息(ぜんそく)の悪化
- 不眠、不安、うつ的な状態が長引く
長期的な見通し
水害は大きな出来事ですが、多くの人は時間とともに体調も気持ちも回復していきます。体の変化に早めに気づいて相談すること、まわりの人と助け合うことが、回復への近道です。あせらず、一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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