肺気腫(はいきしゅ)ってどんな病気?
概要
肺気腫は、肺の中にある小さな袋「肺胞(はいほう)」の壁が少しずつ壊れて、袋が風船のように伸びきってしまった状態です。肺胞は酸素を取り込み、二酸化炭素を体の外に出す大切な場所なので、壊れてしまうとガス交換がうまくできなくなります。また、息を吐くときに空気がうまく出て行かず、肺にたまりやすくなるため、息苦しさを感じるようになります。肺気腫は「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」とよばれる病気のグループに含まれ、たばこの煙などによって起こることが多い病気です。ゆっくり進むことが多く、早めに気づいて工夫を重ねることで、ふだんの生活を続けやすくなります。
重要な事実
- 主な原因は長年の喫煙とされ、受動喫煙(まわりの人のたばこの煙を吸うこと)も risk になります。
- 初期は「階段や坂道で息が切れる」など、歳のせいと思われがちな症状から始まることがあります。
- 禁煙と呼吸リハビリを続けることで、息苦しさの悪化をゆるやかにできる可能性があります。
- かぜや感染をきっかけに急に息苦しくなる「増悪(ぞうあく)」を防ぐことが、生活の安定につながります。
肺気腫を含むCOPDは、日本でも決してめずらしくない病気です。長い喫煙歴のある方の中に、気づかれないまま経過している方が少なくないと考えられています。息切れを「年のせい」と我慢してしまい、受診が遅れることも多い病気です。
40代以降、特に長年たばこを吸ってきた方に多くみられます。受動喫煙の多い環境で育った方、粉じんや化学物質を扱う仕事をしてきた方にも起こります。まれに、生まれつきの体質(遺伝的な要因)が関係する場合もあります。
症状
- 急に息苦しくなり、話すのもつらい、横になれない
- 唇や爪が青紫色になっている
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい
- 胸に強い痛みがある、息が吸えない感じがする
- 呼吸が止まりそう、または止まっている
- ⚠いつもより息切れが強くなり、休んでも楽にならない
- ⚠発熱があり、たんの色が黄色や緑色に変わった、量が増えた
- ⚠足やすねがむくんできた
- ⚠薬を使ってもふだんの状態に戻らない
- ⚠よく眠れない、夜中に息苦しさで目が覚める
一般的な症状
- 階段や坂道、買い物の荷物を持ったときなどに息が切れる
- 息を吐くのに時間がかかる、口すぼめで息を吐きたくなる
- 長く続くせき、特に朝のせき
- たんがからむ、たんが切りにくい
- ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音
- 体がだるい、疲れやすい
- 体重が少しずつ減る、食欲が落ちる
- 胸の形が変わる(胸がふくらんだようになる)
子供の症状
- 肺気腫は子どもにはほとんどみられない病気です。
- ごくまれに、生まれつきの体質(遺伝的な要因)が関係して若い年齢で発症することがあります。
- 子どもが繰り返し息苦しそうにしているときは、まず小児科で相談してください。
高齢者の症状
- 加齢による筋力低下や体力の低下と重なり、息切れが日常生活に強く影響しやすくなります。
- 「年のせい」と思わず、以前より動きにくくなったら相談してください。
- 食事量が減ってやせてしまう、体重が落ちることに注意が必要です。
- 転びやすくなる、外出が減るなど、生活全体の変化として現れることがあります。
原因
主な原因
- 喫煙:最も大きな原因とされています。長く吸っているほどリスクが高くなります。
- 受動喫煙:まわりの人のたばこの煙を吸い続けることも原因になります。
- 粉じんや化学物質:仕事などで長年吸い込むことで起こることがあります。
- 大気汚染:汚れた空気を長く吸うことも影響します。
- 遺伝的な体質:まれですが、生まれつきの要因で発症することがあります。
リスク要因
- 長年の喫煙歴、または現在も吸っている
- 家族や職場などでの受動喫煙
- 粉じん・化学物質を扱う仕事(鉱山、建設、溶接、塗装など)
- 子どもの頃の呼吸器の感染症や、喘息(ぜんそく)の経験
- 加齢(40代以降で増えていきます)
- 家族に同じような病気の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが急にひどくなり、休んでもよくならない
- 発熱があり、たんの色や量がいつもと違う
- 足のむくみが急に出てきた
- ふだん使っている薬でいつもの状態に戻らない
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で息が切れるようになった、以前より動きにくい
- せきやたんが長く続いている(数週間以上)
- たばこを長く吸ってきたので、一度肺の検査を受けてみたい
- 体重が減ってきた、食欲が落ちてきた
- 夜中に息苦しさで目が覚めることがある
診断
まず問診で、症状の始まり方、喫煙歴、仕事の環境などをうかがいます。そのうえで身体診察と、息を強く吐き出してもらう肺機能検査(スパイロメトリー)を行い、肺の働きを調べます。必要に応じて画像検査や血液検査を組み合わせて、総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- スパイロメトリー:息を深く吸って、強く長く吐き出し、肺の働きを調べる検査
- 胸部レントゲン(X線):肺の形や大きさをみる検査
- 胸部CT:肺の状態をよりくわしく調べる検査
- パルスオキシメーター:指先に機器をはさんで、血液中の酸素の量をみる検査
- 血液検査:炎症の有無や体の状態を調べる検査
- 必要に応じて運動負荷試験や、より詳しい呼吸機能の検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。スパイロメトリーでは、何回か息を吐き直すことがあります。結果の説明では、肺の働きの数値だけでなく、ふだんの生活でどんな工夫ができるかも一緒に相談できます。疑問はその場でメモしておき、遠慮なく質問してください。
治療
肺気腫は、壊れた肺の組織を元に戻す治療は今のところありませんが、病気の進み方をゆるやかにし、息苦しさを和らげて生活しやすくする治療はあります。治療の中心は「禁煙」と「呼吸リハビリ」、そして必要な吸入薬などによる症状のコントロールです。悪化を防ぐために、感染症の予防や栄養・運動の工夫も大切になります。治療はひとつではなく、いくつかを組み合わせて続けていくイメージです。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する:これが最も大切で、進行をゆるやかにする近道です。禁煙外来やニコチン依存の相談を利用できます。
- 呼吸リハビリを続ける:口をすぼめて息を吐く「口すぼめ呼吸」や、おなかを使って息をする練習など。
- かぜ・感染症を防ぐ:手洗い、人混みを避ける、季節の変わり目に無理をしない。
- 体力づくり:無理のない範囲で散歩などを続け、筋力を保つ。
- 栄養をとる:やせすぎないように、たんぱく質を意識して食事をとる。
- 急な悪化のサインを家族と共有し、早めに連絡できるようにしておく。
医療治療
治療の内容は、症状や検査の結果に合わせて医師が組み立てます。気管支を広げて息をしやすくする吸入薬や、たんを出しやすくするお薬が使われることがあります。息苦しさが強い場合には、酸素を家で使う在宅酸素療法が検討されることもあります。かぜや感染をきっかけに急に悪化したときは、医師の判断で炎症や感染を抑えるお薬を短期間使うことがあります。どの治療も、自己判断で中止したり量を変えたりせず、気になる点は医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、症状や肺の状態によってごく限られた場合です。肺の一部を小さくする手術や、重症の場合の肺移植などがありますが、すべての方に当てはまるものではありません。適応があるかどうかは、専門の医療機関で詳しく評価されます。
この病気と共に生きる
肺気腫とともに暮らすうえで大切なのは、無理をしないことと、生活のリズムを整えることです。動作の順番を少し変える(ゆっくり動く、途中で休む、荷物は小分けにする)だけでも、息苦しさは軽くなることがあります。家の中の動線を整える、椅子を置いて休める場所をつくるなどの工夫も役立ちます。調子のよい日と悪い日の波があることを知っておくと、気持ちが楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(家族にも協力してもらう)
- 寒さ・乾燥・ほこりを避け、室内の空気を整える
- かぜが流行る時期は人混みを避け、手洗いを徹底する
- 決まった時間に休むなど、睡眠のリズムを整える
- 急な悪化のサイン(息切れの強まり、たんの変化、発熱)を家族と共有する
- お酒はほどほどに、医師の指示があればそれに従う
食事と運動
食事は、やせすぎを防ぐことが大切です。一度にたくさん食べると苦しくなるときは、少量を回数多くとる、食事の前にひと休みするなどの工夫をしてみてください。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を意識してとると、筋肉を保ちやすくなります。運動は、無理のない範囲で歩くなどの有酸素運動と、軽い筋力運動を組み合わせると効果的です。息苦しさが強い日は休み、体調に合わせて調整してください。内容は、かかりつけ医やリハビリの担当者に相談しながら決めると安心です。
精神的健康と心の健康
息苦しさが続くと、不安になったり、外出を控えて気分が落ち込んだりすることがあります。これは決して珍しいことではなく、病気とは別にケアが必要なサインです。ひとりで抱え込まず、家族や医療者に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが長く続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口(保健所・精神保健福祉センターなど)に相談を。自分を傷つけたい気持ちが強くなったときは、ひとりで悩まず、すぐに救急要請(119番)やお住まいの地域の救急相談窓口に連絡してください。
予防
肺気腫の多くは、たばこの煙を避けることでリスクを大きく下げられると考えられています。禁煙は、まだ吸っている方にも、まわりの方にも大切です。粉じんや化学物質を扱う仕事では、防じんマスクを使うなどの対策をしましょう。受動喫煙を避けることも、自分と家族の肺を守ります。
ワクチン
かぜや肺炎などの感染症は、肺気腫を急に悪化させるきっかけになります。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて、かかりつけ医に相談してみてください。接種の時期や回数は、年齢や体の状態によって異なります。
検診プログラム
長年の喫煙歴がある方は、症状がなくても一度肺機能検査を受けてみると、早めに気づけることがあります。健診の内容や受けられる検査は自治体によって異なるため、お住まいの地域の健診案内や、かかりつけ医に確認してください。
合併症
治療しない場合
- 息苦しさが強くなり、日常生活が制限される
- 感染などで急に悪化する「増悪」をくり返す
- 血液中の酸素が不足する状態(呼吸不全)になり、在宅酸素療法が必要になることがある
- 肺に穴が開いて空気がもれる「気胸」を起こすことがある
- 心臓に負担がかかる状態になることがある
- 体重減少や筋力低下が進み、体力が落ちる
- 不安や気分の落ち込みが強くなることがある
長期的な見通し
肺気腫はゆっくり進む病気ですが、禁煙を続け、呼吸リハビリや治療を重ねることで、息苦しさをやわらげながら生活を続けている方はたくさんいます。悪化のサインを早めに見つけて対応できるようになると、安定した毎日を送りやすくなります。心配なことは、ひとりで抱えず、かかりつけ医と一緒に少しずつ整えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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