脳瘤(のうりゅう)— 頭の骨のすき間から脳の一部が出てくる生まれつきの状態
概要
脳瘤(のうりゅう)は、赤ちゃんがおなかの中にいるときに頭の骨(頭蓋骨・ずがいこつ)がきちんと閉じず、そのすき間から脳の一部や、脳を包んでいる膜・髄液(ずいえき=脳と脊髄を守っている透明な液体)が外に出てしまった状態です。生まれつきの状態(先天異常)で、多くは頭の後ろ側(後頭部)に見られますが、鼻の付け根や額のあたりにできることもあります。出てきた部分は皮膚でおおわれていることもあれば、おおわれていないこともあります。脳瘤は「脳が外に出ている」という見た目から驚かれるかもしれませんが、赤ちゃんの状態に合わせた治療と支援の道筋はあります。
重要な事実
- 生まれつきの状態で、胎児期に頭の骨や脳のもとが作られる過程で起こります。保護者の育て方や妊娠中の過ごし方が原因になるものではありません。
- 多くの場合、妊娠中の超音波(エコー)検査で見つかります。
- 治療の中心は手術で、生まれてから比較的早い時期に行われることが多いです。
- 部位や大きさ、脳の発達の状態によって見通しは大きく異なります。専門の医療チームが一人ひとりに合わせて方針を立てます。
とてもまれな状態です。報告によって幅がありますが、数千〜1万人に1人程度の頻度といわれています。日本では神経管閉鎖障害(脳や脊髄が作られる過程の生まれつきの異常)の一つとして、厚生労働省の研究班などが発生状況を調べてきました。
生まれてくる赤ちゃんに起こる状態で、性別による大きな違いはないといわれています。妊娠中の葉酸(ようさん=ビタミンB群の一つ)の摂取不足、妊娠前からの糖尿病、一部の遺伝性の症候群などが関係することがありますが、はっきりした原因がわからないことも少なくありません。
症状
- ふくらみの部分が破れ、透明な液体(髄液)が流れ出ている、または出血している
- けいれんが数分以上続く、または何度も繰り返す
- 意識がぼんやりしている、呼びかけに反応しにくい
- 呼吸が苦しそう、顔色が青白い
- 生後3か月未満の赤ちゃんが38度以上の熱を出し、ぐったりしている
- ⚠ふくらみが急に大きくなった、張ってきた
- ⚠頭囲が急に大きくなった、頭の張りが強い
- ⚠噴き出すような嘔吐(おうと)を繰り返す
- ⚠泣き止まない、不機嫌が続く、哺乳が急に減った
- ⚠発熱があり、いつもと様子が違う
一般的な症状
- 頭の後ろや鼻の付け根、額などに、ふくらみ(腫瘤・しゅりゅう)が見られる
- ふくらみが皮膚でおおわれている場合と、おおわれずに膜や脳の組織が見えている場合がある
- 頭の大きさ(頭囲)が通常より大きい、または増え方が早い
- 皮膚でおおわれていない場合、髄液が少しずつ漏れることがある
子供の症状
- 発達の遅れ(首のすわり、寝返り、歩き始めなどがゆっくり)
- けいれん(ひきつけ)
- 水頭症(すいとうしょう=脳の中に髄液がたまり、頭が大きくなる状態)
- 目の動きや見え方の問題、手足の動きにくさ
- 哺乳(飲み方)がうまくいかない、体重が増えにくい
- 知的発達の個人差が大きい(まったく問題がないお子さんもいます)
高齢者の症状
- 脳瘤は生まれつきの状態のため、大人になってから新たに現れるものではありません。
- ごく小さく皮膚でおおわれたタイプ(隠れた脳瘤)が、大人になって鼻づまりや繰り返す髄液の漏れ、頭痛などをきっかけに見つかることがあります。
原因
主な原因
- 胎児の脳と脊髄のもと(神経管)が作られる過程で、頭の側が完全に閉じないことによって起こります。
- 多くは原因を一つに特定できず、遺伝的な要因と環境的な要因が重なって起こると考えられています。
- 一部は、メッケル・グルーバー症候群などの遺伝性の症候群の一部として起こることがあります。
リスク要因
- 妊娠中の葉酸の摂取不足(神経管閉鎖障害のリスクと関連することが知られています)
- 妊娠前から糖尿病があること、または妊娠中の血糖のコントロールが不十分なこと
- 妊娠初期の高い熱や感染症
- 一部の薬(てんかんの治療薬など)を妊娠中に使用している場合。自己判断で中止せず、必ず主治医に相談してください。
- 家族に同じような状態の人がいる場合
- 肥満や、妊娠初期の栄養状態の偏り
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- ふくらみが破れた、液体が漏れている、出血している(この場合は救急要請を優先してください)
- けいれん、意識の変化、呼吸の異常がある(救急要請を優先してください)
- 頭囲が急に大きくなった、嘔吐を繰り返す、哺乳が急に減った
- 発熱があり、ぐったりしている、いつもと明らかに様子が違う
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中に赤ちゃんの頭や背中に気になる所見を指摘された
- 頭や顔にふくらみがあり、大きさや硬さが気になる
- 発達の遅れや目の動き、手足の動きが気になる
- 手術後の経過で気になることがある、健診で相談したいことがある
診断
多くは妊娠中の超音波検査で見つかります。出生後は、見た目と触診、頭の大きさの測定に加えて、画像検査で脳や骨の状態を詳しく調べます。どの検査が必要かは、赤ちゃんの状態に合わせて医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 妊娠中の超音波(エコー)検査
- 胎児MRI(必要に応じて)
- 出生後の診察と頭囲の測定
- 頭部CT検査、頭部MRI検査
- 血液検査(感染の有無や全身の状態を確認)
- 必要に応じて遺伝カウンセリングや遺伝子の検査
診察で予想されること
診断の場では、医師から脳や骨の状態、今後必要になりそうな治療の流れについて説明があります。一度にすべてを理解するのは難しいので、家族で一緒に聞くこと、質問をメモしておくこと、説明を録音させてもらうことが助けになります。セカンドオピニオン(別の医師の意見)を求めることもできます。
治療
治療の中心は手術です。出ている脳や膜を頭の中に戻し、頭の骨と皮膚を閉じることで、感染を防ぎ、脳を守ります。手術の時期や方法は、ふくらみの場所・大きさ、皮膚でおおわれているかどうか、脳や全身の状態によって変わります。手術の前後には、呼吸や栄養、発達を支えるケアも合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- ふくらみを強く押さない、こすらない。やさしく扱う。
- 皮膚でおおわれていない場合は、指示に従って清潔を保ち、感染のサイン(赤み、腫れ、におい、液体の漏れ)に気をつける。
- 入浴や沐浴の方法、おむつ替えや抱っこのしかたは、退院前に看護師に具体的に確認しておく。
- 授乳やミルクの飲み方で困ったら、早めに助産師や栄養士に相談する。
- 通院日を守り、頭囲や体重、発達の記録をつけておくと診察がスムーズになる。
- 予防接種は、主治医と相談しながら予定どおり進める。
医療治療
手術が基本になります。あわせて、水頭症がある場合は余分な髄液を体の別の場所に逃がす処置を行うことがあります。けいれんがある場合は、専門医のもとでその対処が行われます。成長に合わせて、リハビリ(運動・言葉・作業療法など)、発達支援、眼科や耳鼻科などの診療を組み合わせていくことが一般的です。治療方針は赤ちゃんごとに異なるため、具体的な内容は担当の専門医に確認してください。
手術が検討される場合
皮膚でおおわれていない場合や、髄液が漏れている場合は感染の危険があるため、できるだけ早い時期に手術が検討されます。皮膚でおおわれている場合も、生後数日から数か月のうちに計画して行われることが多いです。水頭症やけいれんなどがある場合は、その治療を優先することもあります。
この病気と共に生きる
退院後は、頭囲の測定、通院、発達の確認などが日常の一部になります。ふくらみがあった場所のケアや抱っこのしかたなど、生活の中で気をつけることは医師や看護師から具体的に伝えられます。発達の遅れがある場合は、地域の療育センターや保健センターとつながっておくと、幼稚園・保育園・学校への移行がスムーズになります。
生活習慣のアドバイス
- 家族で情報を共有し、通院や服药(医師から処方されたもの)の予定を一か所にまとめておく。
- 頭をぶつける心配がある遊びは、主治医の指示に従って調整する。
- 睡眠や生活リズムを整え、家族も休息をとる。
- 自治体の母子保健サービス(保健師の訪問、相談窓口)を活用する。
- きょうだい児の気持ちにも目を向け、家族全体で支え合う。
食事と運動
食事は年齢に応じた普通の食事で問題ないことが多いですが、飲み込みや哺乳に課題がある場合は、医師や栄養士の指示に従って形態や量を調整します。運動については、首がすわる前や手術後しばらくは、頭を支える抱っこのしかたなど注意点があります。運動の発達を促す遊びは、リハビリの担当者から具体的な方法を教えてもらえます。妊娠中の方は、葉酸を含む食事(緑黄色野菜、豆類、卵など)を意識し、サプリメントの必要性はかかりつけ医や薬剤師に相談してください。
精神的健康と心の健康
「自分のせいではないか」「この先どうなるのだろう」と、保護者の方が強い不安や自責の念を抱えるのは自然なことです。妊娠中に告げられた場合、気持ちの整理には時間がかかります。眠れない、涙が止まらない、日常生活が回らないといった状態が続くときは、一人で抱えず、産婦人科・小児科の医師、助産師、保健師、または心の相談窓口に話してください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず地域の救急・相談窓口や医療機関に連絡してください。あなたと家族の気持ちが守られることも、赤ちゃんのケアと同じくらい大切です。
予防
脳瘤を完全に防ぐ方法はまだわかっていません。ただし、妊娠を計画している段階から十分な葉酸をとることが、神経管閉鎖障害のリスクを下げるといわれています。厚生労働省も、妊娠を計画している女性と妊娠の可能性がある女性に対して葉酸摂取を勧めています。食事からの摂取に加え、サプリメントを使う場合は、量や種類についてかかりつけ医や薬剤師に相談してください。また、妊娠前からの糖尿病の管理、妊娠初期の高熱を避ける工夫、薬の使用について事前に医師へ相談することも大切です。
ワクチン
脳瘤そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、生まれた後の赤ちゃんにとって定期予防接種は感染症から身を守る大切な手段です。接種の時期や順番は主治医と相談しながら進めてください。
検診プログラム
妊娠中の超音波検査が、脳瘤を含む赤ちゃんの状態を早期に見つける助けになります。出生前の検査について迷ったときは、産婦人科の医師や遺伝カウンセラーに相談し、わかること・わからないことを十分に説明してもらったうえで考えてください。
合併症
治療しない場合
- 皮膚でおおわれていない部分から細菌が入り、髄膜炎(ずいまくえん=脳と脊髄を包む膜の感染症)を起こす危険
- 髄液が漏れ続けることによる感染や頭痛
- 水頭症により頭の中の圧が高まる
- 脳や神経の発達への影響(発達の遅れ、けいれん、運動や視覚の問題)
- 状態によっては命に関わることがある
長期的な見通し
見通しは、脳瘤の場所や大きさ、脳がどの程度出ているか、ほかに異常があるかどうかで大きく変わります。手術でふくらみを閉じ、その後のケアやリハビリを続けることで、多くの子どもが成長していきます。発達に遅れがある場合も、支援の方法は年々広がっています。「どうなるかわからない」不安は大きいと思いますが、専門チームと一緒に一歩ずつ進んでいくことができます。気になることは、遠慮なく主治医にたずねてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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