てんかんと仕事〜働きながら治療を続けるために
概要
てんかんは、脳の神経細胞の電気的な活動に乱れが起きて、発作(けいれんや意識の変化など、いつもと違う状態が突然起こること)が繰り返し起きる状態をいいます。発作の見え方は人によってさまざまで、数秒ぼんやりするだけの人もいれば、倒れて体がけいれんする人もいます。てんかんは「脳の病気」であり、本人の性格や育ち方、やる気の問題ではありません。治療を続けながら、多くの人が仕事や学業を続けています。
重要な事実
- てんかんは脳の電気的な活動の乱れによる発作が繰り返し起きる状態で、本人の性格や努力不足が原因ではありません。
- 適切な治療を続けることで発作が起きにくくなる人が多く、働きながら治療を続けている人も大勢います。
- 職場には、障害者雇用促進法にもとづき、差別をしないことや必要な配慮(合理的配慮)をすることが事業主に求められています。
てんかんは決してめずらしい病気ではありません。国内にはおよそ100万人の患者がいると言われ、100人に1人弱の割合にあたります。職場や学校など、ふだんの生活の場にも当事者がいる可能性が十分にあります。
年齢を問わず、赤ちゃんから子ども、働く世代、高齢者まで幅広くみられます。仕事をしている人、これから就職する人、復職を考えている人など、さまざまな立場の人が関係します。
症状
- けいれんが5分以上続いている、または続けて何度も起きて意識が戻らない
- 発作のあと呼吸が苦しそう、顔色が悪い、意識が戻らない
- 水の中、火の近く、高い場所、機械の近くで発作が起きて、けがや事故のおそれがある
- 初めての発作で倒れ、意識が戻らない
- 発作中に頭を強く打った、出血がある
- ⚠ふだんより発作の回数が明らかに増えた
- ⚠今までにない新しいタイプの発作が出た
- ⚠妊娠中に発作が起きた
- ⚠服薬を続けられない状態(嘔吐が続く、薬を切らしたなど)が続いている
- ⚠発作でできたけがの処置が必要そう
一般的な症状
- 意識を失って倒れ、体が硬くなってからけいれんする発作
- 数秒から数十秒、ぼんやりして反応がなくなる発作(あとから自分では覚えていないことが多い)
- 手や足、顔の一部がぴくぴくする、または突然力が抜ける発作
- 変なにおいや味、めまい、体のしびれなどの前兆のような感覚が起こる発作
- 口をもぐもぐさせる、服をさわるなど、目的のない動きが自動的に出る発作
- 夜間や眠っているときだけ起きる発作
子供の症状
- 小児では発作の見え方が大人と異なることがあり、急に止まってぼんやりする、言葉が出にくくなるなど、目立たない形のこともあります。
- 熱が出たときのけいれん(熱性けいれん)は多くの子どもにみられますが、てんかんとは区別されます。気になる場合は小児科に相談してください。
- 学校生活では、体育やプール、遠足などの活動について、主治医と学校の先生とで事前に相談しておくと安心です。
高齢者の症状
- 高齢者では、脳卒中(脳の血管の病気)のあとや、脳の加齢変化に関係して発作が起きることがあります。
- 発作による転倒や骨折のリスクが高くなるため、住まいや職場の環境を整えることが大切です。
- 高齢者は他の病気の薬を飲んでいることが多く、薬の組み合わせについて主治医や薬剤師に確認しておくと安心です。
原因
主な原因
- はっきりした原因が見つからない場合が最も多いと言われています
- 生まれつきの脳の形の違いや、遺伝的な体質が関係する場合
- 頭を強く打ったケガのあと
- 脳卒中(脳の血管の病気)や脳の腫瘍、脳の感染症のあと
- 高熱や極端な睡眠不足などが引き金になって発作が起きる場合
リスク要因
- 家族にてんかんの人がいる
- 頭部のケガや脳の病気の経験がある
- 睡眠不足、強いストレス、飲酒、発熱
- 点滅する光や、長時間の画面注視で発作が誘発されやすい体質(一部の人)
- 服薬を自己判断で中断してしまうこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんが5分以上続く、または意識が戻らない
- 発作の回数が急に増えた、新しいタイプの発作が出た
- 妊娠中に発作が起きた
- 仕事中や通勤中に発作が起きて、けがや事故につながりそうだった
定期受診を予約すべき場合:
- 発作が起きた日時や様子を記録して、主治医に相談したいとき
- 仕事への復帰や勤務内容の調整について相談したいとき
- 薬の副作用が気になる、飲み忘れが増えている
- 運転免許や車の運転について確認したいとき
診断
診断は、発作のときの様子をくわしく聞くことから始まります。本人の記憶があいまいなことが多いため、家族や同僚など、その場を見た人の話がとても役に立ちます。そのうえで脳波検査や画像検査を行い、他の原因(失神や低血糖など)ではないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 問診(発作の起こり方、時間、前兆、起きたときの状況を聞く)
- 脳波検査(脳の電気的な活動を調べる)
- MRIやCTなどの画像検査(脳の形や病気の有無を調べる)
- 血液検査(血糖や電解質など、他の原因を調べる)
- 必要に応じて長時間の脳波記録や睡眠中の検査
診察で予想されること
一度の受診で診断がつかないこともあり、何度か通院しながら様子をみることがあります。発作日記(日時、状況、持续时间、本人の様子、仕事への影響)をつけておくと、診断や治療の調整に役立ちます。
治療
治療の中心は、発作を起こしにくくする薬を続けることです。薬が合えば発作がほとんど起きなくなる人も多く、そのまま仕事を続けられます。治療は「発作を抑える」だけでなく、仕事や生活の質を保つことを目指して調整されます。
自宅でのセルフケア
- 薬は自己判断でやめたり量を変えたりせず、決められたとおりに続ける
- 睡眠をしっかりとり、徹夜や極端な寝不足を避ける
- 飲酒は控えめにする、または主治医に相談する
- 発作の記録をつけ、受診のときに見せる
- 仕事中に発作が起きたときの対応を、あらかじめ同僚や上司と共有しておく
- てんかん情報カードなど、緊急時に役立つ情報を持ち歩く
医療治療
治療は主に薬で行います。発作のタイプや生活スタイルに合わせて、医師が薬の種類や組み合わせを選びます。薬が効きにくい場合には、別の治療法を検討することがあります。治療の内容や変更は必ず主治医と相談して決めてください。なお、この記事では特定の薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
薬を続けても発作が抑えられない場合に、外科的な治療が検討されることがあります。発作の原因となる脳の部分がはっきりしているときなどが対象になります。適応があるかどうかは、専門の医療機関で詳しい検査を受けて判断します。
この病気と共に生きる
働きながら治療を続けるうえで大切なのは、①発作の記録をつける、②職場の必要な人に必要な範囲で伝える、③緊急時の対応を共有しておく、の3つです。すべてをオープンにする必要はありません。どこまで伝えるかは自分で決めてよく、迷うときは主治医や産業医、支援機関に相談できます。就職・転職の面接では、業務に支障があるかどうかを正直に伝えることが、お互いにとって安心につながります。
生活習慣のアドバイス
- 生活リズムを整え、睡眠時間を確保する
- 発作の引き金になりやすいものを知っておく(寝不足、強い光、過度の飲酒など)
- 高所作業、火気、水回り、大きな機械のそばなどは、発作のタイプに応じて配置や工夫を相談する
- 車の運転については、道路交通法の決まりや主治医の指示を確認する
- 入浴は長時間のお湯につかるのを避け、シャワーを中心にするなど工夫する
- 水泳や登山などは一人で行わず、誰かと一緒にする
食事と運動
特別な食事制限は必要ありませんが、バランスのよい食事と水分補給を心がけましょう。運動は体にも心にもよく、多くの人が続けられます。ただし水泳やダイビング、高所での運動などは発作のリスクを考えて主治医に相談してください。食事療法が治療の選択肢になる場合もありますが、自己判断では行わず、必ず医師の管理のもとで行います。
精神的健康と心の健康
「職場にどう伝えよう」「発作が起きたらどうしよう」という不安や、まわりの理解が得られないつらさから、気分が落ち込むことがあります。これは珍しいことではありません。一人で抱え込まず、主治医や産業医、職場の相談窓口、患者会などに話してみてください。気持ちが強く落ち込む、眠れない、何をしても楽しくないといった状態が続くときは、医療機関に相談を。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関、緊急時は119番につながる窓口を頼ってください。
予防
てんかんそのものを完全に防ぐ方法はありませんが、発作が起きるのを減らすことはできます。睡眠をしっかりとる、飲酒を控える、ストレスをためない、薬を続ける、といったことが大切です。頭のケガを防ぐことも、発作のリスクを下げる意味で役立ちます。
ワクチン
てんかんを防ぐワクチンはありません。ただし、発熱が発作の引き金になることがあるため、年齢や体調に応じた予防接種について主治医に相談しておくと安心です。
検診プログラム
決まったスクリーニング検査はありません。発作の記録をつけ、定期的に受診して治療を調整することが、いちばんの「予防」になります。
合併症
治療しない場合
- 発作による転倒やケガ、やけど
- 運転中の事故や、水回りでの事故
- 発作が長く続いたり繰り返したりする危険な状態
- 仕事や学業の中断、就職・復職の困難
- 不安や気分の落ち込みが続くこと
長期的な見通し
てんかんは、治療を続けることで発作がよく抑えられる人が多い病気です。多くの人が仕事を続け、家族を持ち、ふだんと変わらない生活を送っています。職場の理解と必要な配慮があれば、働き続けることは十分に可能です。あせらず、主治医と一緒に自分に合ったペースを見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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