てんかんと学習 — 子どもの学びを支えるために
概要
てんかんは、脳の神経細胞が一時的にいつもと違う活動をすることで、発作(けいれんや意識の変化など)が繰り返し起こる状態です。発作のあらわれ方は人によってさまざまで、学習の進み方に影響することがあります。ただし、てんかんがあるからといって、学ぶ力が低いということではありません。発作を落ち着かせることや、学校と連携して工夫することで、学びを支えていくことができます。
重要な事実
- てんかんは脳の状態のひとつで、発作の種類や頻度は人によって大きく違います。
- 発作そのものだけでなく、眠気や欠席、不安などが学習に影響することがありますが、多くの子どもは支援を受けながら学校生活を続けています。
- 発作の様子を記録し、医師と学校と情報を共有することが、学習支援の第一歩になります。
てんかんは決してめずらしいものではなく、日本にも多くの方がいます。およそ100人に1人程度が生涯に経験するといわれ、子どもから高齢者まで幅広い年齢でみられます。
赤ちゃんから高齢者まで、どの年齢でも起こります。特に小児期に発症することが多く、学齢期のお子さんでは学校生活や学習の面での支援が大切になります。
症状
- けいれんが5分以上続いている
- けいれんが止まっても意識が戻らない
- 短い発作を繰り返し、意識が戻る間がない
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 初めての発作で意識を失った、またはけいれんが起きた
- 水の中での発作、けがを伴う発作
- 妊娠中に発作が起きた
- ⚠発作の回数が増えた、発作の様子が変わった
- ⚠薬の副作用と思われる強い眠気やふらつきがある
- ⚠学習の遅れや学校生活の困りごとが続いている
- ⚠発作への不安で眠れない、気分の落ち込みが続く
- ⚠学校で発作が起き、対応に困っている
一般的な症状
- けいれん(手足がふるえる、体がつっぱる)
- 意識がぼんやりする、呼びかけに反応しないことがある
- 数秒から数十秒ぼんやりして、何かを探すようなしぐさをする
- 発作のあとに眠気や混乱、頭痛がある
- 発作がないときも、集中が続きにくい、覚えたことが定着しにくいと感じることがある
- 読み書きや計算など、特定の学習が苦手に感じられることがある
- 疲れやすく、授業中に集中が切れやすい
子供の症状
- 授業中にぼんやりして、呼びかけに気づかないことがある
- 言葉の発達や読み書きに遅れを感じる
- 宿題に時間がかかる、集中が続かない
- 発作のあと眠そうで、授業に参加しづらい
- 発作への不安から学校に行きたがらないことがある
- 友達との関係や行事への参加に影響することがある
高齢者の症状
- 高齢になって初めて発症することがあり、もの忘れと間違われやすい
- 発作のあとに意識がもうろうとしたり、転倒したりする
- 運転や外出に不安を感じる
- 薬の眠気で日中の活動がしづらくなることがある
原因
主な原因
- 脳の一部に傷や変化がある場合
- 遺伝的な体質が関係する場合
- 生まれつきの脳の形の違い
- 脳の感染症や頭部のけがのあと
- 脳卒中や脳の腫瘍などが原因になる場合
- はっきりした原因が見つからない場合も多い
リスク要因
- 家族にてんかんの人がいる
- 乳幼児期に長時間のけいれんや熱性けいれんを経験した
- 頭部のけがや脳の感染症の経験
- 早産や出産時の低酸素など
- 睡眠不足や強いストレス、発熱などが発作のきっかけになりうる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めてけいれんが起きた、意識を失った
- 発作が5分以上続く、または繰り返す
- 発作のあと意識が戻らない、呼吸が苦しそう
定期受診を予約すべき場合:
- 発作かもしれないと感じる出来事があった
- 学習の遅れや集中の続かなさが気になる
- 発作の記録をまとめて相談したい
- 学校生活での配慮について相談したい
- 薬の眠気や気分の落ち込みが気になる
診断
診断は、発作のときの様子をくわしく聞くことから始まります。目撃した人の話や、スマートフォンで撮った動画がとても役立ちます。脳波検査や画像検査を行い、発作の種類や背景を調べます。学習面については、必要に応じて心理検査や学校での様子の聞き取りを行い、支援の方法を一緒に考えます。
行われる可能性のある検査
- 脳波検査(頭に電極をつけて脳の働きを調べる)
- 睡眠中の脳波検査
- MRI(磁気共鳴画像)検査やCT検査
- 血液検査
- 長時間ビデオ脳波モニタリング
- 心理検査(知能検査・発達検査・学力検査など)
- 学校の先生からの聞き取り
診察で予想されること
検査は痛みを伴うものが多いわけではなく、子どもの場合は眠らせて調べることもあります。診断までに時間がかかることもありますが、その間に発作の様子や困りごとをメモしておくと役立ちます。
治療
治療の目標は、発作をできるだけ抑えて、学校生活や学習を安心して続けられるようにすることです。発作を予防する薬を医師が選び、様子を見ながら調整します。同時に、睡眠や生活リズムを整えること、学校と連携して学習の支援を整えることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 決められた服薬を忘れないよう、飲み忘れ防止の工夫をする
- 十分な睡眠をとり、夜更かしを避ける
- 発作の日時・様子・持続時間を記録する
- 発作のきっかけ(寝不足、強い光、ストレス、発熱など)を把握して避ける
- 学校の先生と、発作時の対応や配慮を共有しておく
- プールや自転車など、必要に応じて安全の工夫をする
- 学習の困りごとは早めに学校や医師に相談する
医療治療
発作を予防する薬物療法が中心になります。薬の種類や量は、発作のタイプや生活に合わせて医師が調整します。薬で発作が抑えられにくい場合には、外科的治療や食事療法などが検討されることがあります。学習面では、通級指導教室や特別支援学級、個別の支援計画など、学校と相談しながら学びやすい環境を整えていきます。
手術が検討される場合
薬で発作が十分に抑えられず、発作の始まる場所が脳のどこか特定できる場合に、外科的治療が検討されることがあります。専門の医療チームが総合的に判断します。
この病気と共に生きる
発作があっても、多くの子どもは学校生活を続けています。発作の記録を家族と学校で共有し、席の配置や休憩、テストの受け方などの配慮を相談すると安心です。「てんかんがあるからできない」と決めつけず、できる工夫を一緒に探していくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 発作の記録を家族と学校で共有する
- 学校での配慮や緊急時の対応をあらかじめ話し合っておく
- スポーツや行事は、安全に配慮しながら参加を楽しむ
- 不安や困りごとをひとりで抱え込まない
食事と運動
特別な食事制限が必要な場合は医師の指示に従います。ふだんはバランスのよい食事と水分補給を心がけ、規則正しい生活を送りましょう。運動は多くの場合楽しめますが、泳ぐときや高所、自転車などは、発作のタイプに応じて大人が見守るなどの安全対策を。激しい疲れや脱水は発作のきっかけになることがあるため、無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
発作への不安、学校での困りごと、友達との関係などから、気持ちが落ち込んだり自信をなくしたりすることがあります。これは本人の努力不足ではなく、支援が必要なサインです。家族や学校、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口やかかりつけ医に相談を。自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や地域の緊急相談窓口に連絡してください。
予防
多くのてんかんは予防が難しいといわれています。ただ、頭部のけがを防ぐこと、乳幼児期の感染症や発熱に適切に対応すること、妊娠中の健康管理を大切にすることは、脳を守るうえで役立ちます。発作のきっかけ(寝不足や強いストレスなど)を避けることも、発作を減らす助けになります。
ワクチン
特定のワクチンでてんかんを防ぐわけではありませんが、乳幼児期の感染症を予防することは脳を守るうえで大切です。予防接種の予定は、かかりつけ医と相談しながら進めましょう。
検診プログラム
てんかんそのものを見つける集団検診はありませんが、乳幼児健診や学校健診、発達相談のなかで気づかれることがあります。気になる様子があれば、健診を待たずに相談してよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 発作によるけがや転倒
- 発作が長く続く状態(発作重積)
- 水の中での事故
- 学習の遅れや不登校につながることがある
- 不安や気分の落ち込みが続く
- 友人関係や行事への参加が減り、孤立しやすくなる
長期的な見通し
てんかんのある子どもの多くは、適切な治療と支援によって発作を落ち着かせ、学校生活や学習を続けています。発作が落ち着く子どもも少なくありません。困ったときは早めに相談し、一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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