てんかんの発作が起きたときの応急処置と、安全に暮らすための工夫
概要
てんかんは、脳の神経細胞(脳のなかで情報をやりとりする細胞)が一時的にいつもと違うふるまいをして、発作が繰り返し起きる状態をいいます。発作のあらわれ方は人によってさまざまで、体がガクガクとけいれんするものもあれば、数秒ぼんやりするだけのものもあります。この記事では、発作が起きたときの正しい応急処置と、けがを防いで安心して暮らすための工夫について説明します。
重要な事実
- 発作の多くは数十秒から数分で自然におさまります。まわりにいる人ができる一番大切なことは、その人を安全に守り、時間をはかることです。
- 発作中に口のなかに物を入れたり、体を押さえつけたりするのは逆効果で危険です。してはいけないこととして、よく知られています。
- 発作が5分以上続くとき、または短い発作が繰り返して意識が戻らないときは、緊急の対応が必要です。すぐに119番通報してください。
てんかんは決してめずらしい病気ではありません。日本にはおよそ100万人の患者さんがいるとされ、およそ100人に1人程度が人生のどこかで経験するといわれています。けがの応急処置と同じように、発作への対応は多くの人が知っておくと役立つ知識です。
こどもから高齢者まで、どの年齢でも起こります。こどもの時期に始まることが多く、成長とともに発作が落ち着くことも少なくありません。高齢者では、脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりする病気)のあとや、脳の変化にともなって発症することが増えてきます。
症状
- 発作が5分以上続いている
- 発作がおさまったと思ったら、またすぐに始まり繰り返す
- 発作のあと、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、意識が戻らない
- 水のなか、階段、高い場所など危険な場所で発作が起きた
- 頭を強く打ったあとの発作、または発作でけがをした
- その人にとって初めての発作と思われる
- 妊娠中の人に発作が起きた
- 発作がおさまっても、胸の痛みや息苦しさなど体の異常が続く
- ⚠ふだんより発作の回数が増えた、間隔が短くなった
- ⚠発作のあとの回復に、いつもより時間がかかるようになった
- ⚠新しいタイプの発作が出てきた
- ⚠薬を飲み忘れが続いている、または体調不良で薬を飲めていない
- ⚠めまい、強い眠気、発疹など、薬によると思われる不調がある
一般的な症状
- 全身がガクガクとけいれんし、意識がなくなる発作(数分でおさまることが多い)
- 体が急に硬直して倒れる発作
- 数秒から十数秒、動きが止まってぼんやりする発作(呼びかけへの反応が一時的に鈍くなる)
- 手でもみあうように動かす、口をパクパクさせるなど、自動的に体が動く発作
- 急に不安や恐怖を感じる、変なにおいや味がする、胃のあたりがムカムカするなど、発作の前に感じる前兆
- 発作のあとに強い眠気、頭痛、だるさ、混乱が続くことがある
子供の症状
- 数を数えるのが止まる、話の途中でぼんやりするなど、一瞬の「空白」に見える発作
- 熱性けいれん(発熱にともなうけいれん)はてんかんとは別のものですが、初めて起きたときは医療機関の診察が必要です
- 夜中や眠りはじめに起きやすい発作がある
- 授乳や睡眠のリズムの変化で発作が増えることがある
高齢者の症状
- 脳卒中や脳の血管の変化のあとに発症することがある
- もの忘れや混乱として見え、認知症と間違われやすい
- 発作による転倒でけがや骨折をしやすい
- 複数の病気の薬を飲んでいることが多く、体調の変化に注意が必要
原因
主な原因
- はっきりした原因が見つからない場合が最も多いといわれています
- 生まれつきの脳のつくりの違いや、遺伝的な体質
- 脳のけがのあとに残る傷あと(頭部のけが、脳卒中、脳の感染症など)
- 脳の腫瘍や、脳の血管の病気
- 高熱、極端な睡眠不足、強いストレス、アルコールの急な中断などが、発作のきっかけになることがある
リスク要因
- 頭を強く打った経験がある
- 脳卒中や脳の感染症の既往がある
- 家族にてんかんの人がいる
- 睡眠不足、過労、強いストレスが続いている
- 飲酒量が多い、または急に飲酒をやめた
- 発熱や脱水など、体調を大きく崩す出来事
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発作の回数や種類が変わってきた
- 発作によるけがをした、または転倒が増えた
- 薬を飲めていない日が続いている
- 気分の落ち込みや強い不安が続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 発作が初めて起きた、または起きたかもしれないと思ったとき
- 診断を受けたあと、定期的な診察の時期が来た
- 運転や仕事、妊娠など生活の変化について相談したい
- 発作の記録をつけていて、傾向を知りたい
診断
てんかんかどうかは、発作のときの様子をくわしく聞くことから診断が始まります。本人は発作の間のことを覚えていないことが多いため、その場にいた人の話がとても役に立ちます。発作のビデオや、起きた時刻・続いた時間・体の様子のメモがあると診断の助けになります。
行われる可能性のある検査
- 問診(発作の様子、起きた状況、これまでの病歴、家族歴を聞く)
- 脳波検査(頭に電極をつけて、脳の電気の動きを調べる)
- 画像検査(MRIやCTで脳の形や血管の状態を調べる)
- 血液検査(血糖や電解質など、別の原因がないかを調べる)
- 必要に応じて、長時間の脳波記録や睡眠中の検査
診察で予想されること
検査は痛みが少ないものがほとんどで、日帰りでできることも多いです。一度の検査で結論が出ないこともあり、診察を重ねながら判断していきます。診断がつくまでの間も、発作の記録をつけておくと役に立ちます。
治療
治療の目的は、発作をできるだけ減らして、けがや不安の少ない毎日を送れるようにすることです。多くの場合、発作を抑える飲み薬と、生活のリズムを整える工夫を組み合わせます。治療法は人によって異なるため、必ず主治医と相談しながら進めます。
自宅でのセルフケア
- 睡眠時間を確保し、毎日ほぼ同じ時刻に寝起きする
- 飲み忘れを防ぐために、服薬を日々の習慣とセットにする(主治医や薬剤師に相談)
- 発作の記録をつける(日時、長さ、様子、その日の体調)
- 発作のきっかけになりやすいものを知っておく(寝不足、強い飲酒、過度の疲労など)
- 入浴はぬるめのお湯で、長湯を避け、家族に声をかけておく
- 水泳や入浴など水まわりでは、必ず誰かと一緒にする
- 自転車や高い場所での作業など、けがの危険が大きい活動は主治医に相談する
医療治療
治療の中心は、発作を起こしにくくする飲み薬です。薬の種類や組み合わせは発作のタイプや年齢、生活背景によって選ばれ、効果と副作用のバランスを見ながら少しずつ調整します。薬は自己判断で量を変えたり急にやめたりせず、必ず主治医の指示に従ってください。飲み忘れや副作用が心配なときは、薬剤師や主治医に相談しましょう。薬で発作が抑えにくい場合には、食事療法や、専門医による他の治療法が検討されることがあります。
手術が検討される場合
薬を試しても発作が抑えにくい場合に、専門の医療機関で外科的な治療が検討されることがあります。発作の原因となる脳の部分がはっきりしている場合などが対象となり、くわしい検査を重ねて適切かどうかを判断します。すべての人に当てはまる治療ではありません。
この病気と共に生きる
発作はいつ起きるかわからない面がありますが、生活のなかで工夫できることはたくさんあります。周囲の人に自分の発作の特徴を伝えておくと、もしものときに落ち着いて助けてもらいやすくなります。学校や職場には、必要な範囲で理解を求めておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠をとり、生活のリズムを整える
- 飲酒は控えめに。急にたくさん飲む、急にやめるは避ける
- 発熱や脱水を防ぐ(水分補給、体調管理)
- 強いストレスが続くときは、早めに休む、誰かに話す
- スマートフォンの長時間使用や夜更かしを避ける
- 入浴はぬるめ・短めに。施錠せず、家族に一声かける
- 水泳、登山、高所作業などは、主治医と相談して安全策を決める
- 運転については、日本の道路交通法で定めがあり、主治医の判断と届け出が必要です。必ず主治医に相談してください
食事と運動
特別な食事制限が必要な人は多くありません。バランスのよい食事と、決まった時間の食事を心がけましょう。運動は体にも心にもよく、多くの人にとって勧められます。ウォーキングや軽いジョギングなどから始め、水分と休憩を忘れずに。水泳やマラソンなど負荷の高い運動、高所や水中での活動は、主治医と相談してからにしましょう。
精神的健康と心の健康
発作への不安、仕事や学校への影響、まわりにどう思われるかという心配など、気持ちの負担が大きくなることがあります。それは弱さではなく、誰にでも起こりうることです。眠れない、気分が晴れない、不安が強い状態が続くときは、ひとりで抱えずに主治医や相談窓口に話してください。気持ちがとてもつらいとき、自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、すぐに地域の救急(日本では119番)や医療機関、信頼できる人に助けを求めてください。
予防
てんかんそのものを完全に防ぐ方法はまだわかっていません。ただ、頭を守ること(自転車やスポーツ時のヘルメット、シートベルト)、脳卒中や脳の感染症の予防、十分な睡眠と節度ある飲酒は、発作のきっかけを減らす助けになります。発作が起きたときの正しい応急処置を知っておくことも、けがを防ぐ大切な「予防」です。
検診プログラム
症状がない人にてんかんの検査を行うことは一般的ではありません。発作が疑われる出来事があったときは、早めに医療機関を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 発作による転倒やけが、骨折、頭部のけが
- 発作が長く続いたり繰り返したりする危険な状態(緊急の対応が必要)
- 水のなかや運転中など、危険な場面での事故
- 睡眠や気分への影響、学校や仕事での制限
- 発作への不安による生活の縮小
長期的な見通し
てんかんは、多くの人にとって上手に付き合っていける状態です。適切な治療と生活の工夫で発作が落ち着く人は少なくありません。こどもの時期に始まった場合、成長とともに発作がおさまることもあります。発作の対応を知り、必要な支援につながることで、安心して毎日を送れる道はひらけていきます。
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最終更新: 2026年10月23日
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