丹毒(たんどく)— 皮膚の浅いところの細菌感染症
概要
丹毒は、皮膚のわりと浅い部分に細菌が入りこんで起こる感染症です。皮膚が鮮やかな赤色になり、はれて熱をもち、赤い部分の境目がはっきりしているのが特徴です。顔や脚に出ることが多く、発熱や寒気など体全体の症状をともなうこともあります。菌が広がりやすいので、早めに医療機関に相談することが大切です。
重要な事実
- 主な原因は溶連菌(ようれんきん)という細菌で、皮膚の浅い層とリンパの流れに炎症が起こります。
- 赤い部分が「ここからここまで」とはっきり分かれるように広がるのが典型的なサインです。
- 抗生物質(細菌を退治する薬)による治療が基本で、早く始めるほど回復も早くなります。
- 同じ場所に繰り返すことがあり、脚のむくみや水虫などが背景にあることがあります。
日常的によく見る病気ではありませんが、皮膚科や内科で出会うことのある感染症です。似た病気に蜂窩織炎(ほうかしきえん)があり、こちらは皮膚のより深い層に炎症がおよぶものです。見た目が似ているため、医師が区別して判断します。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い、ぐったりしている → すぐに119番
- 呼吸が苦しい、唇や顔色が青白い → すぐに119番
- 赤い範囲が数時間のうちに一気に広がり、激しい痛みがある → すぐに119番
- 皮膚が黒ずむ、紫色に変わる、水ぶくれが急に増える → すぐに119番
- 高熱とともに、めまい・冷や汗・立ちくらみがあり、血圧が下がったように見える → すぐに119番
- ⚠38℃以上の発熱と皮膚の赤みが同時にある
- ⚠赤い範囲が半日から1日で広がっている
- ⚠痛みが強く、歩くのがつらい、眠れない
- ⚠顔、まぶた、耳の周りが赤くはれている(目の周りのはれは特に急いで受診)
- ⚠糖尿病や免疫を下げる治療中の方で、皮膚の赤みと発熱がある
- ⚠赤い部分を触るととても熱く、範囲がどんどん広がっている
一般的な症状
- 皮膚の一部が鮮やかな赤色になり、はれて少し盛り上がる
- 赤い部分の境目がはっきりしていて、触ると境目がわかる
- 触ると熱く、押すと痛む。歩くと響くこともある
- 38℃前後の発熱、寒気、だるさ、頭痛など体全体の症状
- 赤い部分に近いリンパ節(脚なら足の付け根など)がはれて痛む
- 赤い範囲が少しずつ外へ広がっていく
- 水ぶくれや、小さな赤い点のような出血斑が出ることがある
- 皮膚がつっぱる感じ、ひりひりする感じ
子供の症状
- 子どもでは顔に出ることが比較的多く、急な発熱で始まることもあります
- 機嫌が悪い、母乳やミルクの飲みが悪い、ぐったりしているときは早めに受診してください
- 自分で「痛い」「熱い」と言えないことがあるので、皮膚の赤みと発熱の組み合わせに気づくことが大切です
高齢者の症状
- 高齢者では熱が目立たない、痛みを感じにくいことがあり、元気がない・食欲がない・なんとなく具合が悪いといった変化だけのこともあります
- 糖尿病や腎臓の病気がある方は、症状が重くなりやすいので早めの受診を
- 脚のむくみがある方は、赤みが広がりやすいことに注意してください
原因
主な原因
- 溶連菌(A群レンタ球菌など)をはじめとする細菌が、皮膚の小さな傷や皮膚のすき間から入りこむ
- 水虫などで皮膚の角質が傷んでいるところから菌が入る
- 虫刺され、湿疹、あかぎれ、けが、手術の傷などが入り口になる
- 鼻やのどの菌が、顔の皮膚に広がって起こることもある
リスク要因
- 脚のむくみ(リンパ浮腫)、静脈瘤
- 水虫、あかぎれ、湿疹、乾燥による皮膚のひび割れ
- 糖尿病、肥満
- 免疫力を下げる治療(ステロイド薬、抗がん剤など)や、免疫力が下がる病気
- 以前に丹毒や蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったことがある
- アルコールの飲みすぎ、腎臓の病気などで体がむくみやすい状態
- 高齢であること、乳幼児であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と皮膚の赤みが同時にあり、赤い範囲が広がっている
- 顔、とくに目の周りが赤くはれている
- 痛みが強く日常生活がつらい
- 糖尿病や免疫を下げる治療中で、皮膚の赤みと発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 赤みは軽いが数日続く、または何度も同じ場所に赤みが出る
- 水虫や脚のむくみが気になり、再発を予防したい
- 皮膚の乾燥やあかぎれが繰り返し、感染の入り口になりそうで心配
- 丹毒になったあと、脚のむくみが残っている
診断
ほとんどの場合、皮膚の見た目と症状の聞き取りで診断されます。赤みの境目がはっきりしているか、熱感や痛みはどうか、発熱やリンパ節のはれがあるか、などを確認します。より深い感染症や、膿(うみ)がたまっていないかを確かめるために検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:炎症の程度や、腎臓の働きなどを調べる
- 皮膚や傷の培養検査:原因となっている菌の種類を調べる(結果には数日かかることがある)
- 超音波検査:膿がたまっていないか、より深いところに炎症が及んでいないかを確認
- 必要に応じて、皮膚科の専門医による診察
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、脚の場合は両脚を並べて比べながら観察します。検査の結果を待たずに治療が始まることもあります。赤みの範囲をペンで印をつけておくと、変化がわかりやすくなります。
治療
治療の中心は、原因となる細菌を抗生物質で退治することです。早く始めるほど回復も早くなります。あわせて、患部を休める、脚の場合は高く上げる、冷やす、痛みをやわらげるといったケアを行います。再発を防ぐために、水虫やむくみなど背景にある問題のケアも大切です。
自宅でのセルフケア
- 患部を心臓より高く上げて休む(脚の場合は特に大切)
- 冷たいタオルで冷やす。氷を長時間直接当てるのは避ける
- ゆるめの靴下や靴を選び、締めつけない
- 発熱があるときは安静にし、水分をこまめにとる
- 処方された薬は、医師・薬剤師の指示どおりに最後まで使う(自己判断で途中でやめない)
- 皮膚をかかず、爪を短く切り、保湿して皮膚を守る
- 水虫があれば一緒に治療する
- 赤みの範囲が広がっていないか、毎日同じ時間に確認する
医療治療
抗生物質を一定期間使います。症状が軽ければ飲み薬、重い場合や全身状態が悪い場合は点滴で行うことがあります。期間や方法は、症状の広がりや体の状態を見て医師が決めます。痛みや熱に対しては、痛み止めや解熱のための薬を使うことがあります。再発を繰り返す方では、予防のための長めの治療を検討することもあります。脚のむくみがある方には、弾性ストッキングなどの圧迫療法が勧められることがあります。具体的な薬の名前や量については、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合は手術は不要です。膿がたまってしまった場合(膿瘍)や、より深い感染(壊死性筋膜炎=皮膚の下の組織が急速に壊れる重い感染症)が疑われる場合には、切開して膿を出す処置や手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
治療中は無理をせず、脚の場合は少し高く上げて休む時間を作りましょう。赤みの範囲にペンで印をつけておくと、広がっているかどうかがわかりやすくなります。入浴や運動の再開については、医師の指示に従ってください。発熱がある間は仕事や学校を休み、しっかり休むことが回復への近道です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の保湿で皮膚を健やかに保ち、ひび割れを作らない
- 水虫を放置せず、きちんと治療する
- 禁煙する(血流や皮膚の回復に良い影響があります)
- 適正体重を保つ
- むくみ対策として、長時間同じ姿勢で立つ・座るを避け、ときどき動かす
- 小さなけがや虫刺されも、洗って清潔に保つ
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスのよい食事を心がけましょう。むくみが気になる方は減塩を意識するとよいです。水分はしっかりとりましょう。運動は、発熱や痛みが落ち着いてから、無理のない範囲で少しずつ再開してください。脚のむくみがある方は、医師や看護師に相談しながら歩く習慣をつけるとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
痛みや発熱でつらい時期は、気持ちも沈みがちです。また「またなるのではないか」という不安を感じるのは自然なことです。症状や再発への心配で眠れない、気分が晴れないときは、一人で抱えこまず、医師や看護師、薬剤師、家族に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や心の健康相談を利用することもできます。
予防
丹毒を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げることはできます。皮膚を傷つけない、水虫を治す、乾燥を防ぐ、脚のむくみを管理する、といった日々のケアが大切です。気になる皮膚のトラブルは早めに相談しましょう。
ワクチン
丹毒に特異的に使えるワクチンは、現在のところありません。季節性インフルエンザなどの一般的な予防接種は別の目的で行われます。
検診プログラム
丹毒そのものを早期に見つけるための決まった検診はありません。ただし、糖尿病やむくみなどの背景がある方は、定期的な受診で状態を確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 膿がたまる(膿瘍)
- 皮膚の下の組織が急速に壊れる重い感染症(壊死性筋膜炎)
- 菌が血液に入って全身に広がる状態(敗血症)
- リンパの流れが滞り、脚のむくみ(リンパ浮腫)が悪化する
- 同じ場所に繰り返し再発する
- まれに腎臓への影響が出ることがある
長期的な見通し
丹毒は、適切な治療を早めに始めれば、多くは数日から2週間ほどで良くなります。再発することもありますが、水虫の治療やむくみの管理などでリスクを下げることができます。心配な症状があれば早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月23日
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