多形紅斑(たけいこうはん)
概要
多形紅斑は、皮膚に赤い発疹(ほっしん)が出る病気です。発疹は、中央がやや暗い赤色で、そのまわりに赤い輪ができる「標的疹(ひょうてきしん)」と呼ばれる、的(まと)の的な形になるのが特徴です。手のひらや足の裏、腕や脚、ひざやひじなどに、左右ほぼ同じように出ることが多いです。多くは感染症や一部の薬がきっかけで起こる「皮膚の反応」で、数週間で自然に治まることがほとんどです。ただし、口の中や目、陰部の粘膜(ねんまく)にも病変が出るタイプや、皮膚が広くはがれる重症のタイプもあり、その場合は早めの受診が大切です。
重要な事実
- 皮膚に赤い発疹が出て、輪のような形(標的疹)になるのが特徴です。
- 多くは感染症(特に単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマなど)がきっかけで起こります。
- ほとんどの場合は2〜4週間ほどで自然に治まりますが、まれに重症化することがあります。
比較的よくみられる皮膚の病気です。皮膚科を受診する人のなかでも、珍しいものではありません。
20〜40歳代の成人に多いといわれますが、子どもにも起こります。男性にやや多いという報告もあります。以前に同じ症状が出たことがある人は、再び起こりやすいことが知られています。
症状
- 息が苦しい、呼吸が速い、声が出しにくい
- 顔・くちびる・舌・のどが腫れている
- 皮膚が広い範囲でむけてくる、または水ぶくれが大きく広がる
- 高熱とともに全身に発疹が広がり、口・目・陰部の粘膜がただれている
- 意識がもうろうとしている、ぐったりしている
- ⚠発疹が数時間〜1日で急速に広がっている
- ⚠口の中・目・陰部に痛みのあるただれが出ている
- ⚠38度以上の発熱をともなう
- ⚠皮膚に水ぶくれができている
- ⚠口の痛みやのどの痛みで水分がとりにくい
一般的な症状
- 手のひら・足の裏・腕・脚・ひざ・ひじなどに、左右対称に赤い発疹が出る
- 発疹が輪のような形(標的疹)になる
- 発疹の部分がかゆい、あるいはヒリヒリ・灼熱感(やけどしたような感じ)がある
- 軽い発熱、だるさ、倦怠感(けんたいかん)
- 口の中にただれや口内炎のような痛みが出ることがある
- 発疹は数日かけて増え、その後1〜3週間ほどで少しずつ消えていく
原因
主な原因
- 感染症:単純ヘルペスウイルス(口唇ヘルペス)が最も多いきっかけとされています。ほかにマイコプラズマなどのかぜに似た感染症も原因になります。
- 薬:一部の抗菌薬(細菌を退治する薬)、痛み止め・解熱剤、てんかんの治療薬などがきっかけになることがあります。
- はっきりしたきっかけが見つからないこともあります。
リスク要因
- 最近、口唇ヘルペスやかぜのような感染症にかかった
- 現在、新しい薬を飲み始めた(開始後1〜2週間くらいで出ることが多い)
- 以前に多形紅斑を経験したことがある
- 免疫の力が低下している状態(病気や治療の影響など)
- 若年〜中年の成人であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発疹が急速に広がる、水ぶくれや皮膚がむける変化がある
- 口・目・陰部の粘膜に痛みのあるただれがある
- 高い熱が出た、または全身の具合が悪い
- 水分がとれない、尿の量が減っている
- 息苦しさやのどの腫れがある(この場合はためらわず救急へ)
定期受診を予約すべき場合:
- 輪のような赤い発疹ができた
- かゆみやヒリヒリ感が続いている
- 新しい薬を飲み始めてから皮膚の変化が出た
- 以前にも同じような発疹が出たことがある
診断
医師はまず、皮膚の見た目(標的疹の有無や分布)を診察し、最近かかった感染症や飲んでいる薬について詳しく聞きます。それだけでは判断が難しい場合に、いくつかの検査を組み合わせて、似ているほかの皮膚の病気や重症なタイプではないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 視診(皮膚の状態を直接見て観察する)
- 問診(最近の感染症、薬の使用歴、これまでの発疹の既往を確認)
- 血液検査(炎症の程度や体の状態をみる)
- 感染症の検査(ウイルスや細菌が関係しているかの確認)
- 皮膚生検(皮膚の一部をとても細く採取して、顕微鏡で調べる検査。必要な場合に行います)
診察で予想されること
診察は皮膚をよく見るところから始まり、問診で薬や感染症の履歴を確認します。検査が必要な場合も、多くは採血や皮膚の観察で済みます。結果が出るまでに数日かかることもあります。診断がつくまでの間も、症状をやわらげる対応をしながら経過をみていくのが一般的です。
治療
多形紅斑は、多くの場合、時間とともに自然に治まります。治療の中心は、症状をやわらげながら、体が回復するのを支えることです。もし原因になっていそうな薬がある場合は、医師の判断で中止や変更を検討します。自分で勝手に薬をやめたり変えたりせず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
自宅でのセルフケア
- 無理をせず、しっかり休んで体を休める
- 水分をこまめにとる(口の中が痛いときは、ぬるくて刺激の少ない飲み物がおすすめです)
- 発疹の部分を冷たいタオルなどで軽く冷やすと、かゆみやヒリヒリ感が楽になることがあります
- 皮膚を強くこすったり、爪でかいたりしない。刺激の少ない石けんを使い、やさしく洗う
- 口の中がただれているときは、やわらかくて薄味の食事を、少量ずつとる
- 新しい薬や健康食品を自己判断で始めない。飲んでいる薬のリストをメモしておく
- 発疹の広がりや体調の変化を記録しておき、受診時に伝えられるようにする
医療治療
症状に合わせて、かゆみや炎症をやわらげる治療が行われます。皮膚に塗る薬や飲み薬が使われることがありますが、内容や使い方は医師が状態を見て決めます。口の中のただれには、痛みをやわらげるケアやうがいなどの指導が行われることがあります。感染症がきっかけと考えられる場合は、その感染症への対応を検討します。皮膚が広くむけるなど重症のタイプが疑われる場合は、入院して点滴や専門的なケアが必要になることがあります。なお、具体的な薬の名前や量は、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
この病気と共に生きる
発疹が出ている間は、見た目やかゆみで気になることがあるかもしれません。多くは数週間で落ち着くので、無理をせず普段の生活のペースを少しゆるめて過ごしましょう。仕事や学校は、熱や全身の具合、口の中の痛みの程度によって判断してください。判断に迷うときは医師に相談すると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、体の回復を優先する
- 入浴はぬるめのお湯で、長湯を避け、皮膚をこすらない
- 発疹のある部分は直射日光や強い刺激を避ける
- 飲んでいる薬の名前をメモして持ち歩く(受診のたびに伝えられるように)
- 体調の変化(熱、発疹の広がり、口や目の症状)を記録する
食事と運動
特別に制限が必要な食事はありませんが、バランスよく食べて体力を保つことが大切です。口の中が痛いときは、やわらかいもの・薄味のもの・ぬるいくらいの温度のものを選ぶと食べやすくなります。運動は、発熱やだるさがある間は控え、体調が戻ってから少しずつ再開しましょう。
精神的健康と心の健康
皮膚の症状は見た目にも影響するため、不安や恥ずかしさ、落ち込みを感じることがあります。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談することが助けになります。気持ちが追い詰められていると感じたら、ためらわずに身近な人や専門の相談先を頼ってください。
予防
多形紅斑そのものを完全に防ぐ方法はありませんが、きっかけを減らすことはできます。口唇ヘルペスなど再発しやすい感染症がある人は、早めに医療機関に相談しておくとよいでしょう。薬がきっかけと考えられる場合は、医師の指示のもとで薬を見直すことが再発予防につながります。過去に多形紅斑を経験した人は、受診のたびにそのことを伝えてください。
検診プログラム
特定のスクリーニング検査がある病気ではありません。気になる皮膚の変化があれば、早めに皮膚科やかかりつけ医に相談することが一番の備えになります。
合併症
治療しない場合
- 発疹が広範囲に広がり、日常生活がつらくなることがある
- 口の中のただれで食事や水分がとりにくくなる
- まれに皮膚が広くむける重症のタイプに進むことがある(この場合は入院が必要)
- 目や粘膜に病変が及ぶことがある
- 治療の遅れで回復までの期間が長引くことがある
長期的な見通し
多くは2〜4週間ほどで自然に治まり、跡が残りにくいとされています。再発することもありますが、その場合もきっかけを把握しておくことで対応しやすくなります。重症のタイプはまれですが、早めに受診して適切なケアを受けることが大切です。不安な点は医師に相談しながら、あせらず経過を見守りましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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