エリトラスマ(わきの下や股のつけ根にできる細菌性の皮膚の変化)
概要
エリトラスマは、皮膚の表面で特定の細菌が増えることで起こる、軽い皮膚の感染症です。わきの下、股(また)のつけ根、足の指の間など、皮膚と皮膚がふれ合って湿りやすい場所に、茶色っぽい、または赤みを帯びた、境目のはっきりした斑点が出ます。かゆみは軽く、痛みはほとんどありません。水虫の一種である「いんきんたむし」などのカビ(真菌)による皮膚の病気と見た目がよく似ていて、間違われやすいのが特徴です。
重要な事実
- 皮膚のいちばん外側だけで起きる、軽い細菌感染症です
- わきの下、股のつけ根、足の指の間など、蒸れやすい場所に多く出ます
- カビによる皮膚の病気と見た目が似ていて、間違われやすいです
- 皮膚を清潔で乾かした状態に保つことと、適切な治療で改善しやすいです
めずらしい病気ではなく、皮膚科や一般の診療所でもよく見られます。汗をかきやすくなる季節や、湿気の多い環境で多くみられます。ただし、どのくらいの頻度で起こるかを正確に示すデータは十分ではありません。
成人に多く、男性にやや多いとされています。皮膚と皮膚がこすれ合う部分に起こるため、体重が多い方、糖尿病のある方、汗をかきやすい方、高温多湿の環境で過ごす方に多くみられます。子どもには比較的少ないものの、起こることはあります。
症状
- 皮膚の赤みが急速に広がり、強い痛みや腫れがあって、発熱(38℃以上)を伴うとき(別の細菌による重い皮膚の感染症の可能性があります)
- 赤みの範囲がみるみる広がり、皮膚が熱を持ち、水ぶくれや膿が出て、痛みがどんどん強くなるとき
- 意識がぼんやりする、息苦しい、顔色が悪いなど、全身の具合が悪いとき
- ⚠赤みやかゆみが数日で急速に広がっているとき
- ⚠膿が出る、強い痛みがある、皮膚が腫れているとき
- ⚠糖尿病があり、皮膚の変化がどんどん悪化しているとき
- ⚠市販の薬を2週間ほど使っても良くならないとき
一般的な症状
- わきの下、股のつけ根、足の指の間、おしりの周りなどに、茶色っぽい、または赤みを帯びた斑点が出る
- 斑点の境目は比較的はっきりしている
- 表面に、細かい粉のような皮むけが見られることがある
- 軽いかゆみを感じることはあるが、ほとんど気にならないことも多い
- 患部がこすれたような赤みや、うっすらとした茶色いくすみ(色素沈着)が残ることがある
- 足の指の間では、白くふやけて皮がむけたように見えることがある
子供の症状
- 子どもでは比較的少ないですが、起こることはあります
- おむつが当たる部分や、わきの下などに赤みや茶色っぽい変化が出ることがあります
- かゆみが軽いため、本人も気づかず、見過ごされやすいです
- お風呂のときなどに、保護者の方が皮膚の色の変化に気づいて受診されることが多いです
高齢者の症状
- 高齢者では皮膚が乾燥しやすく、変化に気づきにくいことがあります
- 寝たきりに近い状態の方では、股のつけ根など皮膚と皮膚がふれ合う部分に起こりやすいです
- 糖尿病のある方は、皮膚の感染を繰り返しやすいので注意が必要です
- かゆみが少なくても、広がっていないか時々観察しましょう
原因
主な原因
- コリネバクテリウム・ミヌティシマムという細菌が、皮膚の表面で増えることで起こります
- この細菌はもともと人の皮膚に住みついている常在菌の一種で、皮膚が蒸れて湿った状態が続くと増えやすくなります
- 皮膚と皮膚がこすれ合う部分(間擦部)で起こりやすいです
- 人から人へうつる力は非常に弱く、うつることはほとんどありません
リスク要因
- 高温多湿の環境、汗をかきやすいこと
- 体重が多く、皮膚と皮膚がふれ合う面積が広いこと
- 糖尿病(血糖値が高い状態が続くと、皮膚の感染が起こりやすくなります)
- 皮膚を清潔に保ちにくい状況や、寝たきりなどで蒸れやすいこと
- 病気や治療などで体の抵抗力(免疫)が弱っていること
- 足の指の間に多い場合は、靴を長時間履く、汗をかきやすいといった要因も関係します
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚の赤みが急速に広がり、強い痛みや発熱がある
- 膿が出る、腫れが強い
- 糖尿病があり、足や股の皮膚の変化がどんどん悪化している
定期受診を予約すべき場合:
- わきの下や股のつけ根に、茶色っぽい、または赤みのある斑点ができた
- かゆみが続く、見た目が気になる
- 「いんきんたむし」と言われて薬を使ったが、良くならない
- 同じ場所に繰り返しできる
- 足の指の間の皮むけや白くふやけた状態が続く
診断
診察で皮膚の見た目を観察して、判断することが多いです。紫外線を当てる特殊なライト(ウッド灯)を当てると、エリトラスマではさんご色(コーラルレッド)の蛍光が見えることがあり、診断の助けになります。カビによる皮膚の病気との区別のために、皮膚の表面を少しこすって顕微鏡で調べることがあります。
行われる可能性のある検査
- 診察(皮膚の見た目の観察)
- ウッド灯検査(紫外線ライトを当てて蛍光の色を確認する)
- 皮膚の掻爬(かいそう)検査・顕微鏡検査(カビによる病気との区別のため)
- 必要に応じて、糖尿病などの背景にある病気の検査
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、ほとんど痛みはありません。ライトを当てる検査は痛くありません。皮膚を少しこすって調べる検査では、軽く引っかかれるような感覚がありますが、すぐに終わります。結果によっては、別の皮膚の病気が見つかることもあります。
治療
治療の中心は、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことと、細菌が増えるのを抑えることです。多くの場合は塗り薬で改善します。蒸れやすい環境を整えることは、再発を防ぐのにも役立ちます。
自宅でのセルフケア
- 患部をやさしく洗い、よく乾かす(タオルでこすらず、押さえるように拭く)
- 汗をかいたら早めに拭き取る、またはシャワーで流す
- 通気性のよい、ゆったりした下着や衣服を選ぶ
- わきの下や股のつけ根を、こまめに乾かす
- 汗を抑える製品を使う場合は、かぶれに注意しながら適切に使う
- 爪を短く切り、患部をかきむしらないようにする
医療治療
医師の診察のうえで、細菌が増えるのを抑える塗り薬が使われることが多いです。広い範囲に広がっている場合や、なかなか良くならない場合は、飲み薬が検討されることもあります。具体的な薬の種類や使い方は、症状や体の状態に合わせて医師が判断します。カビによる皮膚の病気と勘違いして自己判断で市販薬を使い続けると、良くなるまで時間がかかることがあるため、まずは診察を受けることが大切です。
手術が検討される場合
エリトラスマに対して手術が必要になることは、通常ありません。
この病気と共に生きる
皮膚を乾かして清潔に保つことが、毎日のいちばんのケアです。症状が良くなったあとも、同じ場所が蒸れやすい状態が続くと再発することがあります。日々の習慣を少し見直すことで、繰り返しを減らせます。
生活習慣のアドバイス
- 毎日シャワーを浴び、皮膚のしわの部分までしっかり乾かす
- 汗をかきやすい日は、着替えや汗拭きシートを活用する
- 通気性のよい素材の衣服や下着を選ぶ
- 無理のない範囲で体重の管理を心がける
- 糖尿病がある方は、血糖値のコントロールを主治医と相談する
- 睡眠不足や強いストレスは体の抵抗力を下げることがあるので、無理のない生活を心がける
食事と運動
特定の食べ物がエリトラスマを直接良くしたり悪くしたりするという証拠はありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、体重管理や血糖値のコントロールを通じて、皮膚の健康を保つ助けになります。運動や入浴で汗をかいたあとは、早めに拭き取って乾かすようにしましょう。
精神的健康と心の健康
見た目が気になったり、かゆみが続いたりして、不安やストレスを感じることがあるかもしれません。人に相談しにくい場所の症状でも、恥ずかしいことではありません。皮膚科の医師は日常的に診ている症状です。気持ちがつらい日が続くときは、ひとりで抱え込まず、医師や身近な人に話してみてください。つらさが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に相談することも大切です。
予防
ある程度は予防できます。皮膚を清潔で乾いた状態に保つことがもっとも大切です。蒸れを減らす工夫を続けることで、再発のリスクを下げられます。
検診プログラム
エリトラスマに特定のスクリーニング検査(症状がないうちに行う検査)があるわけではありません。ただし、繰り返す場合や、糖尿病を指摘されたことがない方は、一度血糖値の検査を受けてみることも選択肢になります。気になる場合は医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 症状が長引いたり、範囲が広がったりすることがあります
- 皮膚の色が茶色く残ることがあります(色素沈着)
- かきむしることで、別の細菌による二次感染を起こすことがあります
- 糖尿病のある方では、皮膚の感染が悪化しやすく、足のトラブルにつながることがあります
長期的な見通し
エリトラスマは皮膚の表面だけに起きる軽い感染症で、命に関わることはほとんどありません。治療と日常のケアで改善しやすく、多くの方は数週間で良くなります。再発することはありますが、その都度きちんと対応すれば心配はいりません。気になる症状があれば、早めに医師に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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