赤血球増多症(せきけっきゅうぞうたしょう)ってどんなもの?
概要
赤血球増多症は、血液の中の「赤血球」がふえる状態のことです。赤血球は、肺で取り込んだ酸素を体のすみずみまで運ぶ、血液の中心的な細胞です。赤血球がふえると、血液の中の水分に対する細胞の割合(ヘマトクリット)や、酸素を運ぶたんぱく質(ヘモグロビン)の数値が高くなります。血液がドロッとして流れが悪くなり、頭痛やだるさ、血栓(血のかたまり)ができやすくなるなどの心配が出てきます。ただし、数値が少し高いだけでも心配ないことが多く、原因を調べながら落ち着いて対処していくことができます。
重要な事実
- 赤血球がふえると血液が濃くなり、流れが悪くなることがあります。
- 喫煙、睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる病気)、高い山の生活など、体の外の原因で起こることも多いです。
- 健康診断の血液検査で見つかることが多く、多くは原因への対処や経過観察で落ち着きます。
赤血球増多症そのものは、それほど多い病気ではありません。ただ、健康診断で「赤血球が多い」「ヘマトクリットが高い」と言われる人は少なくなく、その多くは軽い変化で、生活習慣や体の状態が関係していることがあります。
成人では男性にやや多く見られます。喫煙する人、いびきが強い人や睡眠時無呼吸のある人、高い場所に住んでいる人、腎臓の病気がある人、肥満のある人などで見つかりやすいです。子どもではまれですが、生まれつきの体質や心臓・肺の病気が関係することもあります。
症状
- 胸が強く痛む、締めつけられる(心筋梗塞の可能性)
- 息が苦しくて横になれない、急に呼吸が荒くなった
- 顔や手足の片側が動かない、しびれる(脳卒中の可能性)
- ろれつが回らない、言葉が出ない、人の話が理解できない
- 突然、片方の目が見えなくなる、視野が欠ける
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が弱い
- ⚠がまんできないほどの頭痛
- ⚠強いめまいで立っていられない
- ⚠足や腕の腫れと痛みが急に出た(血栓の可能性)
- ⚠息切れが急に強くなった
- ⚠出血がなかなか止まらない
一般的な症状
- 疲れやすい、だるさが続く
- 頭痛、めまい、ふらつき
- 顔や首、手のひらが赤く見える(顔面紅潮)
- お風呂上がりなどに皮膚がかゆくなる
- 目のかすみ、耳鳴り
- 手足のしびれや冷たさ
- 歯ぐきや鼻からの出血が止まりにくい、あざができやすい
- 足の関節が腫れて痛む(痛風のような症状)
子供の症状
- 多くの場合は症状がなく、血液検査で初めて気づかれることがあります
- 頭痛やだるさ、機嫌が悪い、食欲が落ちる
- 顔色が赤っぽく見える
- 赤ちゃんでは、ミルクの飲みが悪い、息が荒いように見えることがあります
高齢者の症状
- 疲れやすさや息切れを、年のせいだと思ってしまいがちです
- 頭痛やめまい、耳鳴りが続く
- 皮膚のかゆみ(特にお風呂の後)が目立つ
- 手足のしびれ、力が入りにくい
- 血栓(脳梗塞や心筋梗塞など)の症状で気づかれることがあります
- あざや出血が増えることがあります
原因
主な原因
- 体の中の酸素が足りない状態への反応:喫煙、睡眠時無呼吸、慢性の肺や心臓の病気、高い場所での生活など
- 腎臓からの「赤血球をつくりなさい」という指令(ホルモン)がふえる:腎臓の病気や、まれに腎臓のできものなど
- 血液をつくる骨髄そのものの異常:骨髄が赤血球をつくりすぎてしまう病気(骨髄増殖性腫瘍のひとつ)
- 血液中の水分が減って濃く見えるだけの場合:脱水、下痢・嘔吐、利尿薬の使用など(相対的な増多)
- ホルモン剤など、医薬品の影響による場合
リスク要因
- いびきが強い、睡眠時無呼吸がある
- 高い場所(高地)での生活
- 慢性の肺の病気(COPDなど)や心臓の病気
- 腎臓の病気
- 脱水になりやすい状態
- 家族に似た血液の異常がある人がいる
- 男性であること、年齢が上がること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛み、強い息苦しさがある
- 顔や手足の片側のまひ、言葉の出にくさがある
- 急な視力の低下や視野の欠けがある
- 足や腕が片側だけ腫れて痛む
- 出血が止まりにくい、あざが急に増えた
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や人間ドックで「赤血球が多い」「ヘマトクリットが高い」と言われた
- 頭痛、めまい、だるさが続いている
- お風呂上がりの皮膚のかゆみがつらい
- いびきを指摘された、日中に強い眠気がある
- 喫煙していて、血液の数値が高いと言われた
- 家族に血液の病気の人がいる
診断
まずは血液検査で、赤血球の数やヘマトクリット、ヘモグロビンの値を確認します。そのうえで、体の中の酸素が足りていないのか、赤血球をつくる指令がふえているのか、骨髄そのものに異常があるのかを、いくつかの検査を組み合わせて見分けていきます。診断は「あなたはこの病気です」と決めつけるものではなく、原因を一つずつ確認していく作業です。
行われる可能性のある検査
- 血算(血液中の細胞の数を調べる検査)とヘマトクリット・ヘモグロビンの測定
- 網状赤血球(新しくつくられた赤血球)の数
- エリスロポエチン(赤血球をつくるよう指示するホルモン)の値
- 血液中の酸素の量(酸素飽和度)を調べる検査
- 睡眠時無呼吸を調べる検査(自宅での装置や、施設での検査)
- 腹部の超音波検査(腎臓や脾臓の状態を見る)
- 遺伝子の検査(骨髄の病気かどうかを見分けるために行うことがあります)
- 必要に応じて骨髄の検査
診察で予想されること
検査は外来で少しずつ進めていきます。採血が中心で、結果が出るまでに数日から数週間かかることがあります。はっきりした原因が見つからないこともあり、その場合は数か月ごとの血液検査で様子を見ていくことが多いです。検査の意味や次に何をするのかは、その都度医師にたずねてください。
治療
治療の考え方は、まず「なぜ赤血球がふえているのか」という原因に向き合うことです。喫煙や睡眠時無呼吸、脱水などが関係していれば、それを整えるだけで数値が落ち着くことがあります。血液が濃すぎて症状や血栓の心配があるときは、血液の量を減らす処置や、血が固まりにくくなる薬を使うことがあります。どの方法が合うかは、年齢や持病、数値の高さによって変わるため、医師と相談して決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(汗をかく日や運動のときは特に意識する)
- 禁煙する。難しい場合は禁煙外来や相談窓口を利用する
- いびきや日中の眠気があれば、睡眠の検査について医師に相談する
- 適度な運動を続け、長時間同じ姿勢で動かないようにする
- 飲酒はほどほどにする
- 処方された薬は自己判断でやめたり量を変えたりしない
- かゆみが強いときは、ぬるめのお湯で短時間の入浴にする
医療治療
治療にはいくつかの選択肢があります。原因となっている病気(睡眠時無呼吸や肺・心臓の病気など)の治療を優先すること、血液の量を減らして濃さを下げる処置(瀉血)を行うこと、血が固まりにくくなる薬を医師の判断で使うこと、皮膚のかゆみをやわらげる治療などです。骨髄の異常が背景にある場合は、赤血球がふえすぎないようにする薬を検討することもあります。いずれも医師が状態を見ながら判断するもので、自己判断で始めたりやめたりしないでください。
手術が検討される場合
通常、赤血球増多症そのもののために手術を行うことはありません。脾臓(ひぞう)がとても大きくなって困る場合など、まれな状況で手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
数値が安定していれば、ふだんどおりの生活を続けられます。通院で血液検査を受け、数値の変化を記録しておくと、体調の変化に気づきやすくなります。脱水を避け、長時間のフライトや車の移動では水分をとって足を動かすなど、血液が滞らない工夫を心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(受動喫煙も避ける)
- 水分補給を習慣にする
- 睡眠を十分にとり、いびきや無呼吸があれば治療につなげる
- 適度な有酸素運動を無理のない範囲で続ける
- 長時間の同じ姿勢を避け、ときどき体を動かす
- ストレスをためこまず、休息の時間を確保する
- 定期的な通院と検査を欠かさない
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。バランスのよい食事を心がけ、塩分や脂肪のとりすぎに気をつけましょう。水分はのどが渇く前に少しずつとるのがおすすめです。運動は、ウォーキングなど息が少し上がる程度のものを、無理のない範囲で続けるとよいでしょう。激しい運動や高山への旅行などは、体調や数値の状態を医師に相談してから決めると安心です。
精神的健康と心の健康
「血液が多い」と言われると、重い病気ではないかと不安になるものです。検査の結果がはっきりしない時期は、特に気持ちが落ち着かないことがあります。不安や眠りにくさが続くときは、一人で抱えずに医師や看護師、家族に話してみてください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに地域の救急窓口や医療機関に連絡してください。
予防
骨髄そのものの異常による赤血球増多症は、今のところ確実に防ぐ方法は知られていません。一方で、喫煙や睡眠時無呼吸、脱水などが関係するタイプは、生活習慣を整えることで数値の上昇を抑えられることがあります。
ワクチン
赤血球増多症そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、感染症にかかると体調を崩しやすいため、季節に応じた予防接種についてはかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
検診プログラム
健康診断の血液検査(血算)で見つかることが多い病気です。喫煙習慣がある、いびきを指摘された、高い場所に住んでいるなど、気になる点がある人は、健診結果を医師に見てもらい、必要なら再検査を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 血液が濃くなって血栓(血のかたまり)ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞、肺の血管の詰まりなどを起こすことがあります
- 出血しやすくなる、あざが増える
- 脾臓が大きくなる
- 皮膚のかゆみが強くなり、眠りを妨げることがある
- 関節の痛み(痛風のような症状)
- ごくまれに、骨髄の病気へ進むことがあります
長期的な見通し
多くのかたは、原因に応じた対処と定期的な通院で、ふだんどおりの生活を続けられています。数値が落ち着いている人も多く、心配しすぎる必要はありません。一方で、血栓のサインを見逃さないことと、通院を続けることが大切です。気になる症状があれば早めに相談しましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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