食道カンジダ症(食道にカビが増える病気)
概要
食道カンジダ症は、のどと胃をつなぐ管である「食道」の内側に、カンジダというカビの一種が増えて炎症を起こす病気です。カンジダはもともと口の中や消化管にいる、ごくありふれた微生物で、ふだんは体の防御力によって増えすぎないように抑えられています。ところが、免疫力が下がったり、口の中の環境が変わったりすると、食道の粘膜で増えて、白い苔のような変化や炎症を起こすことがあります。
重要な事実
- 健康な人にはまれで、体の防御力が下がったときに起こりやすい病気です。
- 口の中にできたカンジダ(口腔カンジダ症)が食道に広がって起こることもあります。
- 飲み込むときの痛みや胸の違和感が主な症状ですが、症状がほとんどないこともあります。
- 多くの場合、カビを抑える治療で改善します。ただし、背景にある体の状態を確認することが大切です。
一般の健康な方ではまれな病気です。免疫の働きが低下する病気や治療を受けている方、口のケアが十分でない方などの間では比較的よく見られます。
免疫力が低下する状態にある方(HIV感染症、がんの治療中、臓器移植後の免疫抑制治療中、長期間のステロイド薬の使用など)、糖尿病の方、高齢者、義歯を使っている方や口のケアが難しい方、吸入タイプのステロイド薬を使っている方、栄養状態がよくない方、食道の動きが低下している方などに多く見られます。
症状
- 呼吸が苦しい、息がしにくい
- 唾液も飲み込めないほど、ものが全く通らない
- 胸の激しい痛みが続く
- 血を吐く、コーヒー色のものを吐く
- 黒くてタールのような便が出る(出血のサイン)
- 高熱と激しい胸の痛みが同時にある
- ⚠飲み込む痛みが強く、水分がとれない
- ⚠食事がほとんどとれず、体重が減っている
- ⚠尿の量が減る、口が渇くなど脱水のサインがある
- ⚠発熱がある
- ⚠症状が1週間以上続く、または悪化している
一般的な症状
- 飲み込むときの痛み(ものが通るときにしみる、痛い)
- 胸の中央から奥の方の痛みや違和感、つかえる感じ
- 食べ物や飲み物がしみる、味が感じにくい
- 食欲が落ちる、食事の量が減る
- 胸やけに似た症状
- とくに症状がなく、検査で見つかることもある
子供の症状
- 飲み込みにくそうにする、食べたがらない
- よだれが多くなる、口の周りが汚れる
- 不機嫌、泣き方がいつもと違う
- 口の中に白い苔のようなものが見える
- 発熱やだるさ(免疫の働きが弱いお子さんの場合)
高齢者の症状
- 食欲が落ちる、食事を残すようになる
- 体重が減る、脱水になりやすい
- むせやすい、飲み込みにくい
- 熱やだるさだけが目立つことがある
- 口の中の白い苔や口臭の変化
原因
主な原因
- カンジダというカビの一種が食道の粘膜で増えること
- 体の免疫の働きが低下していること
- 口の中のカンジダが食道に広がること
- 粘膜のバリアが傷ついたり弱ったりしていること
- 食道の動きが低下し、飲み込んだものが滞りやすい状態
リスク要因
- HIV感染症など、免疫の働きが低下する病気
- がんの化学療法や放射線治療を受けている
- 臓器移植後や自己免疫疾患などで免疫を抑える薬を使っている
- 長期間のステロイド薬(飲み薬)の使用
- 吸入タイプのステロイド薬を使った後のうがいが不十分
- 抗菌薬(細菌を退治する薬)の長期間の使用
- 胃酸を抑える薬の長期内服
- 糖尿病の血糖コントロールがよくない
- 高齢、栄養不良、やせすぎ
- 義歯の手入れ不足や、口の乾燥、喫煙
- 食道の動きが悪くなる病気や、食道の手術後
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 水分がとれない、尿が極端に少ないなど脱水が心配されるとき
- 飲み込む痛みが強く、食事ができないとき
- 発熱や胸の強い痛みがあるとき
- 吐血や黒い便があるとき(救急要請を優先してください)
定期受診を予約すべき場合:
- 飲み込むときの違和感や痛みが続いている
- 口の中に白い苔のようなものが繰り返しできる
- 食欲が落ちる、体重が減っている
- 免疫を抑える治療を受けていて、のどの違和感がある
診断
まず問診で、症状の経過や持病、使っている薬、口の中の状態などを確認します。そのうえで、内視鏡(胃カメラ)で食道の中を直接見て、白い苔のような変化や炎症の有無を確かめることが多いです。必要に応じて、粘膜の一部を採取して調べたり、血液検査で体の免疫の状態や血糖値を確認したりします。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(症状、持病、薬の確認、口の中の観察)
- 内視鏡検査(胃カメラ)で食道の粘膜を観察
- 粘膜の組織検査や培養検査(カビの種類を確かめる)
- 血液検査(免疫の状態、栄養状態、血糖値など)
- 必要に応じてHIV検査や免疫機能の検査を提案されることがある
診察で予想されること
内視鏡検査は通常数分から十数分ほどで終わります。希望に応じて鎮静剤を使って楽に受けることもできます。検査前は食事を控える必要があるなど、病院ごとの指示に従ってください。結果の説明や追加検査の有無は、担当の医師に確認しましょう。
治療
治療の中心は、カビの増殖を抑える薬による治療です。同時に、なぜカビが増えたのかという背景(免疫の状態、糖尿病、薬の影響、口のケアなど)を確認し、必要に応じて調整します。症状が強いときや水分がとれないときは、入院して治療を行うことがあります。
自宅でのセルフケア
- 口の中を清潔に保つ(歯みがき、義歯の手入れ、うがい)
- 吸入タイプのステロイド薬を使った後は、必ずうがいをする
- 水分をこまめにとり、脱水を防ぐ
- やわらかく、刺激の少ない食事を少しずつとる
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 糖尿病がある方は血糖コントロールを続ける
- 症状の変化をメモして、通院時に伝える
- 処方された薬は自己判断でやめず、医師の指示に従う
医療治療
カビ(真菌)の増殖を抑える薬が使われます。飲み薬のタイプや、口の中・のどに直接使うタイプなどがあり、症状の強さや背景の状態によって選ばれます。治療の期間も人によって異なります。また、原因になっている可能性のある薬(ステロイド薬や抗菌薬など)の調整は、自己判断で行わず、必ず医師に相談してください。症状が強い場合や、飲み込みが難しい場合は、医療機関での点滴や経過観察が必要になることがあります。
手術が検討される場合
食道カンジダ症そのものに対して手術が必要になることは、通常ありません。ただし、別の病気が疑われる場合や、食道の狭窄(狭くなること)などの合併症がある場合には、専門の医師による評価が行われることがあります。
この病気と共に生きる
治療中は、飲み込みの痛みや食事の取りにくさが続くことがあります。無理をせず、やわらかい食事や少量ずつの食事を心がけ、体調の変化を記録しておくと通院時に役立ちます。口のケアを毎日の習慣にすることも、再発を防ぐうえで大切です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の歯みがきとうがい、義歯の清潔を保つ
- 禁煙し、飲酒はほどほどにする
- 十分な睡眠と休息をとる
- バランスのよい食事で栄養状態を整える
- 糖尿病がある方は血糖値の管理を続ける
- 抗菌薬や市販薬の自己判断での使用を避け、迷ったら薬剤師や医師に相談する
- 免疫を抑える治療を受けている方は、主治医と体調の変化を共有する
食事と運動
食事は、辛いもの・熱すぎるもの・酸っぱいもの・アルコールなど刺激の強いものを控えめにし、おかゆ、スープ、やわらかく煮た野菜、豆腐など、のどごしのよいものを選ぶと食べやすくなります。一度にたくさん食べるより、少量を回数多くとるのがおすすめです。運動は、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。散歩など軽い運動は、食欲や気分の維持にも役立ちます。
精神的健康と心の健康
長く症状が続くと、食べることを楽しめない、人との食事がつらい、治るのだろうかという不安が続くなど、気持ちの面でも負担がかかることがあります。つらさを一人で抱え込まず、かかりつけ医や看護師、地域の相談窓口に話してみてください。強い不安や気持ちの落ち込みが続くときは、早めに医療機関に相談しましょう。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げる工夫はあります。口の中を清潔に保つこと、吸入タイプのステロイド薬の後にうがいをすること、血糖値を良好に保つこと、栄養状態を整えること、抗菌薬を自己判断で長く使わないことが大切です。免疫を抑える治療を受けている方は、主治医と相談しながら定期的に体調を確認しましょう。
ワクチン
カンジダに対する一般的なワクチンはありません。
検診プログラム
食道カンジダ症そのものを対象とした決まったスクリーニング検査はありません。ただし、免疫の働きが低下する病気や治療がある方、糖尿病の方などは、飲み込みの違和感や口の中の白い苔に気づいたら早めに相談してください。
合併症
治療しない場合
- 食道の粘膜に潰瘍ができ、出血することがある
- 飲み込みがつらくなり、水分や食事がとれず脱水や栄養不足になる
- 体重が減る、体力が落ちる
- まれに食道に穴が開いたり、カビが血液の中に広がったりする重い状態になる
- 背景にある免疫の低下などが見過ごされる
長期的な見通し
食道カンジダ症は、適切な治療を受ければ多くの場合改善します。再発を防ぐためには、背景にある体の状態の管理と、口のケアを続けることが大切です。症状が気になるときは早めに相談し、あせらず一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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