運動不耐症(運動すると息苦しい・すぐ疲れる)
概要
運動不耐症(うんどうふたいしょう)とは、ふだんなら問題なくできる程度の運動や動作をしたときに、息苦しさ、動悸(心臓がドキドキする感じ)、強いだるさ、すぐ疲れるといった症状が出て、運動を続けられなくなる状態のことです。病名ではなく、体が発しているサインのひとつです。心臓、肺、血液、筋肉、睡眠、こころの状態など、いろいろな理由で起こります。
重要な事実
- 運動不耐症は「病気の名前」ではなく、体からのサインです。背景にある原因を調べることが大切です。
- 坂道や階段、買い物の荷物、入浴や家事など、日常のちょっとした動作で気づかれることがよくあります。
- 原因は心臓や肺の病気、貧血、体力低下、睡眠不足、こころの不調などさまざまです。多くは適切な検査と対応で改善が期待できます。
とてもよくある症状です。外来を受診する人のなかでも「最近すぐ息切れする」「疲れやすい」という訴えは珍しくありません。年齢を問わずみられます。
年齢を問わず起こりますが、特に高齢者、心臓や肺に持病がある人、運動不足の人、貧血のある人に多くみられます。子どもでは、走るとすぐ疲れる、体育の授業についていけないなどで気づかれることがあります。妊娠中や産後の方、感染症のあと回復途中の方にもみられます。
症状
- 突然の強い胸の痛み、胸を締めつけられる感じが続く
- 急に息が苦しくなり、話すのもつらい
- 意識が遠のく、気を失った(失神した)
- 唇や爪、顔色が青紫色になっている
- 片方の手足が動かない、ろれつが回らない、顔がゆがむ(脳卒中のサイン)
- 激しい動悸が続いて治まらない
- このような症状があるときは、ためらわずに119番へ電話してください。
- ⚠安静にしていても息苦しい
- ⚠足のむくみが急に強くなった、体重が数日で急に増えた
- ⚠発熱や咳をともなう息切れ
- ⚠動悸が長時間続いている
- ⚠横になると息苦しく、座らないと楽にならない
- ⚠当日のうちに医療機関に相談してください。迷うときは、地域の救急相談窓口(#7119が使える地域もあります)やかかりつけ医に電話で相談しましょう。
一般的な症状
- 少し動いただけで息が切れる、息苦しい
- 動悸がする、心臓がドキドキする感じが続く
- すぐに疲れる、体が重い、力が出ない
- 立ちくらみ、めまい
- 顔色が悪い、唇の色が薄いと言われる
- 足や顔のむくみ
- 息切れのため、話すのがつらいことがある
- 運動したあと、息が整うまで時間がかかる
- 動くと汗が異常に出る、冷や汗が出る
子供の症状
- 走るとすぐ座り込む、遊びを続けられない
- 体育の授業や階段の上り下りについていけない
- 顔色が青白い、ぐったりしていることが多い
- 乳幼児では、授乳や食事の途中で疲れてやめてしまう
- 体重が増えにくい、成長がゆっくりに感じる
- 泣き方が弱い、泣き止みにくい
- 子どもは「疲れた」とうまく言えないことがあります。いつもと違う様子に気づいてあげてください。
高齢者の症状
- 以前より歩くのが遅くなった、坂道で休む回数が増えた
- 買い物の荷物を持つのがつらくなった
- 入浴や着替えのあとに息が上がる
- 夜中に息苦しくて目が覚める、枕を高くしないと眠れない
- 足のむくみ、数日で体重が急に増える
- 食欲が落ちた、元気がない
- 高齢では「息切れ」だけが唯一の症状ということもあります
原因
主な原因
- 心臓の病気(心不全、狭心症や心筋梗塞、不整脈、弁膜症など)
- 肺・呼吸器の病気(COPD、喘息、肺炎、間質性肺炎など)
- 貧血(血液が酸素を運びにくくなる状態)
- 甲状腺の病気(甲状腺の働きが低下する状態など)
- 体力・筋力の低下(運動不足、加齢、病気やけがのあとの回復途中)
- 感染症のあとの疲労が長く続く状態
- 睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群(寝ている間に呼吸が止まる状態)
- こころの不調(不安、うつ、強いストレス)
- 飲んでいる薬の影響
- 脱水、栄養不足
- 強い疲労が長期間続く状態
リスク要因
- 高齢であること
- 喫煙、受動喫煙
- 肥満、運動不足
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病
- 心臓や肺の病気の既往や家族歴
- 貧血がある、月経の出血が多い
- 妊娠中・産後
- 強いストレス、慢性的な睡眠不足
- 入院やけがなどで長く安静にしていた
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息苦しい
- 胸の痛みや締めつけられる感じがある
- 気を失った、意識が遠のいた
- 唇や爪の色が青紫色になっている
- 足のむくみが急に強くなった、体重が急に増えた
- 片方の手足が動かない、ろれつが回らない
- これらがあるときは119番へ。迷う場合は地域の救急相談窓口やかかりつけ医へ電話してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 以前より息切れや疲れを感じるようになった
- 階段や坂道で休むことが増えた
- 動悸やめまいがときどきある
- 顔色が悪いと言われる
- 体重が減った、食欲がない
- 症状が数週間続いている、少しずつ悪くなっている
- 家族に心臓や肺の病気の人がいる
診断
まず問診で、どんな動作のときに、どれくらいの時間で、どんな症状が出るのかを伺います。生活の様子、持病、飲んでいる薬、睡眠や気分の状態も確認します。そのうえで、原因を探すために体の検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 血圧・脈・酸素の量(SpO2)の測定
- 血液検査(貧血、甲状腺、心臓の負担、栄養状態などを調べる)
- 胸部X線検査
- 心臓超音波検査(エコー)
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー:息の出しやすさを調べる検査)
- 必要に応じて運動負荷検査(歩行試験や自転車こぎ)
- 睡眠時無呼吸が疑われる場合の睡眠検査
- 24時間心電図(ホルター心電図)
診察で予想されること
検査は痛みの少ないものがほとんどで、外来でできることも多いです。結果が出るまで数日かかることもあります。「いつ、どんな動作で、どれくらい続いたか」をメモしておくと、診断の大きな助けになります。持病や飲んでいる薬の一覧も持参するとよいでしょう。
治療
治療の中心は、背景にある原因を見つけて、それに合わせた対応をすることです。原因によって方法はまったく変わります。同時に、無理のない範囲で体を動かし、体力を取り戻していくことも大切です。
自宅でのセルフケア
- 症状が出たときの動作と時間を記録する
- 息が上がる前にこまめに休む(会話ができる程度のペースを目安に)
- 睡眠を十分にとる
- 水分をこまめにとる
- 急に激しい運動を始めず、少しずつ量を増やす
- 階段や重い荷物は無理をせず、台車やエレベーターを使う
- むくみがあるときは塩分を控えめにする
- 禁煙する
- 飲んでいる薬を自己判断でやめたり減らしたりしない
- 毎日決まった時間に体重を測る(急な増加はサイン)
医療治療
原因に応じて治療の方針が決まります。心臓や肺の病気が見つかればその治療を、貧血ならその原因に応じた対応を、甲状腺の異常ならその治療を行います。薬が必要な場合もありますが、種類や量は医師が一人ひとりの状態に合わせて決めます。むくみがある場合は、生活の工夫と合わせて調整します。こころの不調が関係しているときは、話を聞いてもらうことや専門家のサポートが役立ちます。治療の内容は必ず主治医の説明を確認し、わからないことは薬剤師にも相談してください。
手術が検討される場合
多くは手術を必要としませんが、心臓の弁や血管の病気、重い不整脈などが見つかった場合は、手術やカテーテル治療が検討されることがあります。必要かどうかは検査結果をもとに主治医と相談して決めます。
この病気と共に生きる
「今日はどこまで動けるか」を自分で知っておくと、生活がぐっと楽になります。動いて息が上がる前に休む、というリズムをつかむことが大切です。体調には波があります。できない日があっても自分を責めず、できたことを数えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない範囲で毎日少しずつ体を動かす(散歩など)
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- バランスのよい食事をとり、たんぱく質をしっかりとる
- 塩分を控えめにする(むくみや心臓の病気がある場合)
- 禁煙し、受動喫煙を避ける
- アルコールはほどほどにする
- ストレスをためず、息抜きの時間をつくる
- 暑さ・寒さの激しい日は無理をしない
- 周りの人に症状を伝え、手を借りる
食事と運動
食事は、主食・たんぱく質・野菜をそろえたバランスのよい内容を心がけましょう。むくみや心臓の病気がある場合は塩分を控えめにします。運動は「会話ができるくらい」の強さから始め、5〜10分の散歩を1日に数回に分けても構いません。調子のよい日に少しずつ増やし、翌日に強い疲れが残るようなら減らしましょう。始める前に主治医に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
「前はできたのに」という悔しさや、周りに迷惑をかけてしまうという気持ちは自然なものです。体力の変化は気持ちにも影響します。不安や落ち込みが続くとき、眠れない日が続くときは、ひとりで抱えずに医療機関や地域の相談窓口に話してください。つらい気持ちが強いとき、消えたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口、緊急時は119番に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、できることはあります。禁煙、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠、持病(高血圧・糖尿病など)のコントロールは、心臓と肺を守り、息切れしにくい体づくりに役立ちます。体調の変化に早く気づいて相談することも大切な予防です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンは、肺や心臓に持病がある人にとって、感染症が重症化するのを防ぐ助けになります。対象や時期については、かかりつけ医やお住まいの自治体の案内を確認してください。
検診プログラム
健診(特定健診など)で血圧・血糖・脂質・貧血などを定期的に確認しましょう。日本では会社や自治体の健診を受ける仕組みがあります。動悸や息切れが気になるときは、健診を待たずに医療機関へ相談してください。
合併症
治療しない場合
- 原因となっている病気の発見が遅れることがある
- 体力がさらに低下し、日常の動作がつらくなる
- 転倒やけがのリスクが上がる
- 心不全や呼吸器の病気が悪化することがある
- 外出や人づきあいが減り、気分の落ち込みにつながる
- 仕事や家事が思うように進まない
長期的な見通し
運動不耐症は「体からのサイン」であり、多くは原因がわかれば対応できます。心臓や肺の病気、貧血、甲状腺の異常など、治療できる原因はたくさんあります。時間はかかっても、治療と生活の工夫で少しずつ動けるようになる方は多くいます。あせらず、主治医と一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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