巨細胞性動脈炎と目の症状(側頭動脈炎)
概要
巨細胞性動脈炎は、体の中のやや太い血管、とくに頭や首、こめかみのあたりを通る血管に炎症が起こる病気です。「側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)」とも呼ばれます。炎症で血管の内側が狭くなると、血液の流れが悪くなります。目の奥に血液を送る血管が影響を受けると、見えにくさや、まれに急な視力の低下が起こることがあります。50歳以上の方に多く見られる病気で、早く気づいて治療を始めることが、視力を守るうえでとても大切です。
重要な事実
- 頭や首の血管に炎症が起きる病気で、目の血流が悪くなることがあります。
- 50歳以上の方に多く、若い方や子どもにはほとんど見られません。
- 治療を早く始めるほど、視力を守れる可能性が高くなります。
とても多い病気ではありません。日本では欧米に比べて少ないとされていますが、決して珍しいだけの病気ではなく、50歳以上の方の頭痛や目の症状の原因として知っておきたい病気です。
主に50歳以上の方に起こり、70代前後で多いとされています。女性にやや多く見られます。若い方や子どもが発症することはほとんどありません。
症状
- 突然、片方の目が見えなくなった
- 視野の一部が急に欠けた、幕が下りたように見えなくなった
- 急な視力低下が数分以上続き、戻らない
- ⚠目のかすみや一時的な見えにくさが繰り返す
- ⚠ものが二重に見える
- ⚠これまでにない頭痛が続いている、こめかみが痛い
- ⚠食事のたびにあごが痛む、疲れる
- ⚠理由のない微熱や体重減少が続く
一般的な症状
- こめかみや頭の片側が痛む頭痛(数日以上続くことが多い)
- こめかみを触ると痛む、腫れているように感じる
- 食事のときにあごが疲れる、痛む(あごを動かすと痛くなる)
- 肩や腰、太ももの付け根のこわばりや痛み(朝に強いことが多い)
- 微熱、だるさ、食欲が落ちる、体重が減る
- 目のかすみ、ものが二重に見える、一時的に見えにくくなる
子供の症状
- この病気は子どもにはほとんど起こりません。子どもの頭痛や目の症状は、別の原因を考える必要があります。気になる症状があれば小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では、頭痛などの分かりやすい症状が乏しく、だるさや微熱、食欲低下だけのこともあります。
- 目の症状が突然現れることがあり、その場合は緊急の対応が必要です。
- 肩や腰のこわばりが目立つことがあり、年齢のせいと思われて見過ごされることがあります。
原因
主な原因
- 血管に炎症が起こる原因は、はっきりとは分かっていません。体の免疫の仕組みが、自分自身の血管を誤って攻撃してしまうことが関係すると考えられています。
- 感染症などがきっかけになるという説もありますが、人から人へうつる病気ではありません。
リスク要因
- 50歳以上であること(最も大きな要因です)
- 女性であること
- 北欧系の家系であること
- 喫煙や高血圧などの血管に負担をかける習慣があること
- 肩や腰のこわばりを伴う別の炎症性の病気があること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に見えにくくなった、視野が欠けたと感じたら、すぐに救急外来か眼科を受診してください。
- 新しい頭痛が続く、こめかみが痛む、あごが痛むといった症状があるときは、当日中に医療機関に連絡してください。
- 目のかすみや一時的な見えにくさを一度でも経験したら、その日のうちに相談してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 数週間続くだるさ、微熱、体重減少の原因が分からないとき
- 肩や腰のこわばりが続き、日常生活がつらいとき
- 頭痛が繰り返し起こり、市販の鎮痛薬で改善しないとき
診断
診断は、症状の聞き取りと体の診察に加えて、血液検査や画像検査を組み合わせて行います。こめかみの血管の状態を確かめたり、必要に応じて血管の一部を採取して調べる検査(生検)を行ったりすることもあります。目の症状がある場合は、眼科で目の検査も行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:炎症の程度を示す数値(CRPや赤沈など)を調べます
- 超音波検査:こめかみの血管の壁の様子を調べます
- 血管の一部を採取して調べる検査(生検):炎症があるかを確かめます
- 画像検査(MRIやCT、PETなど):血管の炎症や合併症を調べます
- 眼科の検査:視力や目の奥の状態を確認します
診察で予想されること
症状の経過をくわしく聞かれます。「いつからか」「どんなときに痛むか」「目のかすみがあったか」などをメモしておくと役立ちます。検査の結果が出るまでに数日かかることもありますが、目の症状がある場合は、結果を待たずに治療が始まることがあります。
治療
治療の中心は、血管の炎症をできるだけ早く、しっかり抑えることです。目の症状が出ている、あるいは出かかっている場合は、視力を守るためにすぐ治療を始めることが大切です。治療は医師の判断のもとで行い、症状が落ち着いても自己判断で中断しないことが重要です。
自宅でのセルフケア
- 処方された薬は、症状が良くなっても自己判断でやめず、医師の指示どおりに続ける
- 急な見えにくさや視野の変化があれば、その場で医療機関に連絡する
- 頭痛やあごの痛み、目の症状の変化を簡単なメモに残しておく
- 定期受診を欠かさず、検査の予定を守る
- 十分な睡眠と休養をとり、無理な予定を詰め込まない
- 喫煙する場合は、医療機関の支援を受けて禁煙を考える
医療治療
炎症を強く抑える薬を、医師の判断で使用します。多くの場合、最初はしっかりとした量で始め、症状や検査の数値を見ながら、数か月から年単位をかけて少しずつ減らしていきます。治療中は、血圧や血糖、骨の健康など体全体の状態を定期的に確認します。症状や体質に応じて、追加の治療が検討されることもあります。薬の種類や量は必ず主治医の指示に従い、自己判断で調整しないでください。
手術が検討される場合
この病気で手術が必要になることは多くありません。ただし、血管のこぶ(動脈瘤)などの合併症が起きた場合は、外科的な治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
治療が始まると、頭痛やだるさは数日から数週間で楽になることが多いです。一方で、薬は長く続ける必要があるため、通院の予定を生活の一部として組み込んでおくと安心です。体調の変化を記録しておくと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 無理をしすぎず、疲れたら休む習慣をつくる
- 急な予定変更や長時間の移動は、体調と相談して決める
- 周囲の人に病気のことを伝え、サポートをお願いしておく
- 目の変化に気づけるよう、日常生活の中で視界の異変に関心をもつ
食事と運動
特別な食事制限が必要な病気ではありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の散歩などの軽い運動は、体調を保つのに役立ちます。治療の影響で骨や血圧、血糖の状態が変わることもあるため、食事や運動について気になることがあれば主治医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
見えにくさへの不安や、長く続く治療への負担から、気持ちが落ち込むことがあります。それは自然な反応です。一人で抱え込まず、家族やかかりつけ医に気持ちを話してください。つらさが続くときは、自治体の相談窓口や医療機関の相談サービスを利用できます。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談窓口に連絡してください。
予防
この病気を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただし、症状に早く気づいて治療を始めることが、視力低下を防ぐための最も大切なポイントです。50歳以上の方で、これまでにない頭痛や目の症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
ワクチン
この病気を防ぐワクチンはありません。治療中は感染症にかかりやすくなることがあるため、予防接種については主治医に相談してください。
検診プログラム
症状がない段階でこの病気を見つけるための一般的な検診はありません。気になる症状があるときに受診することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 片方の目の視力が失われることがあります(最も心配される合併症です)
- もう片方の目にも症状が及ぶことがあります
- 血管のこぶ(動脈瘤)や血管が狭くなることで、脳や腕などに影響が出ることがあります
- 長く続く炎症により、だるさや体重減少が続くことがあります
長期的な見通し
多くの方は、治療を始めると症状が落ち着き、日常生活を取り戻すことができます。視力についても、早期に治療を始めることで保てる可能性が高くなります。治療は長く続くことがありますが、定期的な通院と主治医との相談を続けることで、落ち着いた状態を保ちながら生活していくことができます。
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最終更新: 2026年10月23日
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