視神経炎(ししんけいえん)— 目と脳をつなぐ神経の炎症
概要
視神経は、目で見た情報を脳へ送る「ケーブル」のような神経です。視神経炎は、このケーブルに炎症が起きて、見えにくさや目の痛みが出る病気です。多くは片方の目に起こりますが、両方の目に起こることもあります。炎症が治まれば見え方は改善することが多いものの、回復には数週間から数か月かかることがあります。
重要な事実
- 視神経は目と脳をつなぐ神経で、ここに炎症が起きると視力が下がったり、色の見え方が変わったりします。
- 眼球を動かしたときの痛みがよくみられる、という特徴があります。
- 治療で多くは回復しますが、回復の速さや程度には個人差があり、時間がかかることがあります。
- 背景に、免疫の働きの異常(多発性硬化症など)が隠れていることがあるため、検査で確認することが大切です。
日常的によくある病気ではありませんが、めったにない病気でもありません。日本では年間で人口10万人あたり数人程度が発症するといわれています。
20〜40歳代の成人、とくに女性に多いとされています。子どもにも起こります。多発性硬化症や視神経脊髄炎(視神経と脊髄に炎症が起きる病気)などの免疫の病気と関連することがあります。
症状
- 急に視力を失った、または見え方が急激に悪くなった(すぐに救急要請を)
- 激しい目の痛みや頭痛に、吐き気・嘔吐を伴う
- ろれつが回らない、体の片側が動かしにくい、意識がもうろうとする(脳の病気の可能性)
- けいれんや意識を失うことがあった
- ⚠眼球を動かすと痛む
- ⚠片方の目が急にぼやける、かすむ
- ⚠視野の一部が欠けた、カーテンが下りたように見える
- ⚠色が急に薄く見えるようになった
- ⚠光が異常にまぶしくて開けていられない
一般的な症状
- 片方の目が見えにくくなる(かすむ、ぼやける、視力が下がる)
- 目の動きに伴う痛み、とくに眼球を動かすと痛む
- 視野の一部が欠ける、中心が見えにくい
- 色の見え方が薄くなる、色がくすんで見える(赤が暗く見えるなど)
- 光が異常にまぶしく感じる
- 暗いところで見えにくい
- 見え方の変化は数時間から数日かけて進むことが多い
子供の症状
- 症状をうまく言葉にできず、目の前のものをじっと見ない、目を細めるなどで気づかれることがあります
- 物にぶつかる、取ろうとして手がずれるなど、見えにくさによる行動の変化
- 頭痛やだるさ、機嫌の変化として現れることがあります
- 子どもの場合は両方の目に起こることもあります
- 学校で黒板が見えにくい、字を書き写すのが遅いなどの気づきから受診につながることがあります
高齢者の症状
- 白内障や緑内障など、加齢に伴う目の病気と区別しにくいことがあります
- 血流の障害による別のタイプの視神経の病気との見分けが大切になります
- 回復に時間がかかることがあり、生活面の工夫が必要になることがあります
- 見えにくさから転倒しやすくなることがあるため、周囲のサポートが大切です
原因
主な原因
- 自分の免疫が自分の体を攻撃してしまう「自己免疫」による炎症(多くははっきりした原因が分からない)
- 多発性硬化症(脳と脊髄の神経に炎症が起きる病気)に関連して起こるもの
- 視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経と脊髄に炎症が起きる免疫の病気)に関連するもの
- ウイルスや細菌の感染症の後に続いて起こるもの
- ビタミンB12の不足や栄養の問題
- まれに、腫瘍や血流の障害、薬剤や中毒が関係することもあります
リスク要因
- 20〜40歳代、とくに女性
- 多発性硬化症や他の自己免疫疾患の診断がある、または家族にいる
- 最近ウイルス感染症にかかった
- ビタミンDやビタミンB12が不足している
- 喫煙習慣がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片方の目が見えにくくなった、視界がぼやける
- 眼球を動かすと痛む
- 色の見え方が変わった、光が異常にまぶしい
- 視野の一部が欠けていると感じる
- これらの症状が数時間〜数日以内に現れた
定期受診を予約すべき場合:
- 視力の変化がゆっくり続いている
- まぶしさや目の疲れが長引いている
- 以前に視神経炎と言われたことがあり、再発を心配している
- 多発性硬化症などの診断があり、定期的な経過観察が必要
- 見えにくさのため生活に不便を感じている(ロービジョン相談を希望する)
診断
まず問診で、いつから、どのように見えにくいか、痛みがあるかを確認します。そのうえで眼科の検査を行い、必要に応じてMRIや血液検査で、背景に別の病気がないかを調べます。眼科と脳神経内科が連携して診断を進めることがあります。
行われる可能性のある検査
- 視力検査、視野検査
- 色覚検査(赤などの見え方の確認)
- 眼底検査(目の奥の状態を見る)
- 光干渉断層計(OCT)という、目の神経の層の厚みを調べる画像検査
- 瞳孔に対光を当てたときの反応の検査
- 頭部・眼窩(目の奥)のMRI(必要に応じて造影剤を使うことがあります)
- 血液検査(炎症の程度、自己抗体、ビタミンB12など)
- 必要に応じて髄液検査や、視野の詳しい検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。MRIは大きな音がしますが痛みはありません。瞳孔を広げる目薬を使うと、数時間まぶしく感じたり近くが見えにくくなったりするので、その日は自分で車や自転車を運転して帰らないようにしてください。検査結果の説明には時間がかかることがあります。
治療
治療の目的は、炎症をしずめて視神経を守ること、そして背景にある病気(多発性硬化症など)を見つけて対応することです。医師の判断で、炎症を抑える治療が点滴や内服で行われます。回復には数週間から数か月かかることがあり、焦らず経過を見ることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示どおりに通院し、処方された治療を続ける
- 目を休め、長時間の画面作業や細かい作業はこまめに休憩をとる
- まぶしいときはサングラスや帽子を使う
- 見えにくい時期は、家具の配置や照明を工夫して転倒やけがを防ぐ
- 視力が安定するまでは運転や危険を伴う作業を控え、医師に相談する
- 禁煙する
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 症状の変化(見え方、痛み)を簡単に記録しておくと診察に役立つ
医療治療
炎症を抑える治療(点滴や内服)が中心になります。痛みが強いときは痛みを和らげる対応も行われます。あわせて、背景に免疫の病気がないかを調べ、見つかった場合はその病気に応じた治療が検討されます。見えにくさが残る場合には、視覚リハビリテーションやロービジョンケア(見えにくさを補う工夫や道具の相談)が役立ちます。治療の方針は医師が症状や検査結果に合わせて決めます。
手術が検討される場合
視神経炎そのものに対して手術が必要になることはほとんどありません。ただし、腫瘍など別の原因が疑われる場合など、まれに外科的な検査や治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
回復には時間がかかるため、見えにくい状態が続く間の生活の工夫が大切です。文字を大きくする、画面の明るさや背景色を変える、音声読み上げ機能を使う、物の置き場所を決めておくなどの工夫で、日常はずいぶん過ごしやすくなります。運転や高所作業など、見え方に左右される活動は、医師と相談しながら再開の時期を決めましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける
- 無理のない範囲で体を動かす(激しい運動を始める前に医師に相談)
- 十分な睡眠と、こまめな休憩
- ストレスをためない工夫をする
- 定期的に眼科や神経内科で経過をみてもらう
- 見え方や体調の変化を記録しておく
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、魚、卵、乳製品、きのこ類などビタミンDやビタミンB12を含む食品を意識するとよいでしょう。運動は、散歩など無理のない範囲から始め、疲れや暑さで症状が悪化しないよう注意してください。新しい運動メニューを始める前には、かかりつけ医に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
見えにくさは、不安や落ち込み、いらいらにつながることがあります。一時的なものと言われても、つらい気持ちは自然なものです。気持ちが重い日が続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口、救急(119)に連絡してください。命に関わる緊急時はすぐに救急要請をしてください。
予防
視神経炎そのものを確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただし、関連する免疫の病気をきちんと管理すること、禁煙、バランスの良い食事、十分な睡眠などで、リスクを下げられる可能性があります。見え方の変化に早く気づいて受診することが、悪化を防ぐ第一歩です。
ワクチン
視神経炎を直接予防できるワクチンはありません。ただし、感染症がきっかけで起こることがあるため、年齢や健康状態に応じた予防接種をかかりつけ医と相談するのはよいことです。予防接種の判断は、主治医と相談したうえで行いましょう。
検診プログラム
一般の人を対象とした視神経炎の検診はありません。多発性硬化症などの診断がある方は、定期的な診察と、見え方の変化への注意が大切です。気になる症状があれば、検診を待たずに眼科を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 見え方の回復が遅れたり、視力や視野の変化が残ったりすることがあります
- 色の見え方の変化が残ることがあります
- 再発することがあります
- 背景にある多発性硬化症や視神経脊髄炎などの病気に気づかれず、対応が遅れることがあります
- 見えにくさによる転倒や事故のリスクが高まることがあります
長期的な見通し
多くの方は、数か月かけて見え方が大きく回復します。完全に元どおりにならないこともありますが、生活の工夫や支援を活用しながら十分に暮らしている方が大勢います。再発を防ぐ治療や、背景にある病気の管理が進んできており、長期的な見通しは以前より良くなっています。心配なことは、遠慮なく医療者に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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