卵管がん(らんかんがん)を知る
概要
卵管(らんかん)は、卵巣のすぐそばから子宮までつながる、細い管です。卵子が子宮へ向かう通り道になっています。卵管がんは、この管の内側をおおっている細胞からできる、めずらしい種類のがんです。卵管がんは、卵巣がんや腹膜(ふくまく)がんとよく似た性質を持っていて、同じグループのがんとしてまとめて考えられることが多く、治療の進め方も共通する部分がたくさんあります。そのため、検査や治療の説明では「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」として一緒に扱われることもあります。
重要な事実
- 卵管の内側から発生する、比較的めずらしいがんです
- 初期には症状がほとんどなく、見つかりにくいことがあります
- 卵巣がん・腹膜がんと同じグループとして扱われることが多くあります
- 生まれつき持っている遺伝子の変化(BRCA1/BRCA2など)が関係することがあります
- 手術と抗がん剤を組み合わせた治療が中心になります
卵管がんはめずらしいがんで、女性のがん全体の中ではごくわずかな割合です。日本では年間数百人程度ではないかと推定されていますが、卵管がんと卵巣がん・腹膜がんの区別が難しいこともあり、正確な数はわかりにくいのが現状です。めずらしいからといって「自分には関係ない」と決めつけず、気になる症状が続くときは婦人科で相談してみてください。
主に40〜60代以降の女性に見られ、閉経後の方に多いとされています。生まれつきBRCA1/BRCA2という遺伝子に変化がある方、乳がんや卵巣がん、卵管がんの家族歴がある方はリスクが高めといわれます。妊娠・出産の経験がない方も、排卵の回数が多いことと関連してリスクがやや高くなるとされています。
症状
- 突然の激しい下腹部の痛みで、立ったり歩いたりできない
- 大量の性器出血があり、ふらつく、顔色が悪い、意識が遠のく
- 呼吸が苦しい、冷汗が出る、胸が苦しい
- こうした症状があるときは、ためらわずに救急車を呼んでください(119番)
- ⚠数日以内に急に強くなったおなかの張りや痛み
- ⚠発熱をともなう下腹部の痛み
- ⚠出血が止まらない、または繰り返す
- ⚠尿が出にくい、おなかが張って何も食べられない
- ⚠これらの症状は、できるだけ早く(できれば当日〜翌日)医療機関に相談してください
一般的な症状
- おなかが張る、ガスがたまったような膨満感が続く
- 下腹部や骨盤のあたりの痛み、重い感じ、違和感
- 水っぽいおりものが増える、おりものの量やにおいが変わる
- 月経以外の出血、閉経したのに出血がある
- トイレが近い、排尿のときに違和感がある
- 食欲が落ちる、少し食べただけでおなかがいっぱいになる
- 体重が減る、体がだるい、疲れやすい
子供の症状
- 卵管がんは子どもにはほとんど見られない、とてもめずらしい病気です
- 思春期前の女の子で下腹部の痛みやおなかの張りが続くときは、まず小児科で相談してください
- お子さんの症状について心配なときは、自己判断せず医療機関に相談しましょう
高齢者の症状
- 閉経後は症状に気づきにくく、加齢による変化だと思い込んでしまうことがあります
- 閉経後の出血やおりものの変化は、年のせいだと片付けずに婦人科で相談しましょう
- おなかの張りや食欲低下が続くと、食事量が落ちて体力が下がることがあります
- 持病の薬を飲んでいる方は、受診時に服用中の薬を医師・薬剤師に伝えてください
原因
主な原因
- 卵管の内側をおおう細胞の遺伝子に変化が積み重なり、異常な細胞が増えていくことで起こります
- はっきりした原因が一つに決まっているわけではなく、いくつかの要素が関わると考えられています
- 卵管の先端(卵管采)が卵巣の表面に近いため、卵巣がんと同じような仕組みで起こるともいわれています
リスク要因
- 年齢(40〜60代以降、とくに閉経後の方に多い)
- 生まれつきのBRCA1/BRCA2遺伝子の変化
- 乳がん・卵巣がん・卵管がんの家族歴がある
- 妊娠・出産の経験がない(排卵の回数が多いことと関連)
- 肥満や喫煙などの生活習慣が関係する可能性がある
- 子宮内膜症など婦人科の病気にかかったことがある
- リスク要因があるからといって必ず発症するわけではありません。心配なときは婦人科で相談してください
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい下腹部痛、大量の出血、意識が遠のく、呼吸が苦しい(この場合は119番へ)
- 数日で急に強くなるおなかの張りや痛み
- 発熱をともなう下腹部の痛み
- 出血が続く、尿が出にくい、食事がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 1〜2週間以上続くおなかの張りや膨満感
- 繰り返す骨盤の痛みや違和感
- 月経以外の出血、閉経後の出血
- おりものの量や状態の変化が続く
- 食欲低下や体重減少がはっきりしてきた
- このような症状が続くときは、婦人科を受診して相談してください
診断
問診と内診で症状や体の状態を確認し、超音波検査やCT・MRIなどの画像検査、血液検査を組み合わせて調べます。卵管がんかどうかを確かめるには、組織の一部を取って顕微鏡で見る検査(病理検査)が必要で、これは手術のときに行われることが多くなっています。卵管がんは卵巣がんと区別がつきにくいこともあり、「卵巣・卵管・腹膜のがん」として検査が進められることもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の経過、家族歴、既往歴、服用中の薬の確認)
- 内診・婦人科の診察
- 経腟(けいちつ)超音波検査
- CT検査、MRI検査
- 血液検査(腫瘍マーカーとしてCA125などを調べることがあります)
- 組織を取って調べる病理検査(多くの場合、手術のときに行います)
- 必要に応じて遺伝カウンセリングや遺伝子検査の相談
診察で予想されること
検査は一度で終わらず、何回かに分けて行われることがあります。結果が出るまでには数日から数週間かかることもあり、その間は不安な気持ちになるのが自然です。診察の前に、聞きたいことや気になっていることをメモしておくと、限られた時間でも伝えやすくなります。説明がよくわからないときは、遠慮なく「もう一度教えてください」と伝えて大丈夫です。
治療
卵管がんの治療は、手術と抗がん剤(点滴)を組み合わせるのが基本です。がんの広がり(病期)、年齢、体の状態、妊娠を希望するかどうかなどをふまえて、医師や看護師、薬剤師など複数の職種で方針を話し合います。卵管がんは卵巣がんと似た性質を持つため、卵巣がんに準じた治療が選ばれることが多くなっています。
自宅でのセルフケア
- 体調や症状、治療後の変化を簡単なメモに記録しておく
- 休息を意識してとり、無理な予定を詰め込まない
- バランスのよい食事と、こまめな水分補給を心がける
- 治療中は感染予防のため、手洗いや人混みを避ける工夫をする
- 処方された薬は自己判断でやめたり量を変えたりせず、気になることは薬剤師や主治医に相談する
- 体のだるさ、吐き気、しびれなどは我慢せず、早めに治療チームに伝える
医療治療
主な治療は、手術で病変を取り除いたうえで、必要に応じて抗がん剤を点滴で行うという組み合わせです。抗がん剤は、手術のあとに再発を防ぐ目的で行う場合と、手術の前にがんを小さくする目的で行う場合があります。また、遺伝子の変化の有無に応じて、飲み薬の治療が選べることがあります。放射線治療は、この病気ではあまり一般的ではありません。どの治療を選ぶかは、病期や体の状態、生活の事情によって変わるため、具体的な内容は主治医とよく相談して決めてください。
手術が検討される場合
多くの場合、診断を確かめることと治療を兼ねて手術が行われます。早期であれば、子宮、両側の卵管と卵巣、周囲の組織などを取り除く手術が検討されます。妊娠を希望している場合は、その気持ちを早い段階で医師に伝えておくことが大切です。手術の範囲や方法は、がんの広がりや体の状態によって変わります。
この病気と共に生きる
治療の期間は通院が増え、体調に波が出やすくなります。予定を詰め込みすぎず、良い日とつらい日の両方があることを前提に、家族や職場と調整しながら進めると負担が軽くなります。ちょっとした変化を記録しておくと、診察のときに医師へ伝えやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠をしっかりとり、疲れたら休むことを優先する
- 禁煙を心がける(喫煙は体の回復にも影響します)
- 人とのつながりを保ち、話せる相手を持っておく
- 治療中は感染予防のために手洗い・うがいを丁寧に行う
- 通院の付き添いや家事など、頼れることは遠慮なく頼る
食事と運動
特別な食事制限が必要というわけではありませんが、たんぱく質を意識して、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけましょう。治療中は免疫力が下がることがあるため、生ものは避けてよく加熱したものを選ぶと安心です。食事がとりにくいときは、少量を何回かに分ける、飲み物で水分と栄養を補うなどの工夫をしてみてください。運動は、散歩など無理のない範囲から始めるのがおすすめです。体調がすぐれない日は休み、痛みや息切れがある場合は主治医に相談してから行いましょう。
精神的健康と心の健康
「めずらしい病気」と言われるほど、情報が少なくて不安になりやすいものです。診断を受けた直後は、驚きや悲しみ、怒り、将来への心配など、さまざまな気持ちがわいてくるのが自然です。眠れない、気分が重い日が続く、涙が止まらないといった状態が続くときは、がまんせずに医療者に話してください。つらい気持ちを一人で抱え込まないことが大切です。
予防
卵管がんを確実に防ぐ方法は、今のところ見つかっていません。ただし、リスクを下げる工夫や、早期に見つけるための心がけはできます。気になる症状があるときに受診をためらわないこと、婦人科の診察を日ごろから受けておくことが大切です。家族歴が強い方や遺伝子の変化が心配な方は、遺伝カウンセリングについて医療機関に相談してみてください。
ワクチン
卵管がんを防ぐワクチンはありません。なお、子宮頸(けい)がんを防ぐワクチンはありますが、これは卵管がんを防ぐものではありません。ワクチンについて知りたいときは、かかりつけ医や自治体の案内を確認してください。
検診プログラム
卵管がんだけを早期に見つけるための公的な検診は、現在のところありません。婦人科健診や、必要に応じて超音波検査・内診を受けておくと安心です。検診の時期を待たずに、気になる症状があるときは早めに婦人科を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- がんがおなかや骨盤の中に広がっていくことがあります
- 腹水(ふくすい)がたまって、おなかが張り苦しくなることがあります
- 腸が圧迫されて、食べられない、排便がしにくくなることがあります
- リンパ節や肺など、離れた場所に転移することがあります
- 体力が落ちて、日常の活動が難しくなることがあります
長期的な見通し
卵管がんはめずらしい病気ですが、卵巣がんと同じグループとして治療の研究が進んできています。早期に見つかれば、治癒を目指せる場合もあります。進行した状態で見つかった場合でも、手術や抗がん剤、遺伝子の変化に応じた治療を組み合わせて、長く付き合いながら生活できるようになってきています。数字だけで将来を決めつけず、自分の状態について主治医にていねいに聞いてみてください。希望を持ちながら、納得のいく選択を一緒に考えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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