転倒(ころんでしまうこと)について
概要
転倒とは、歩いているときや立ち上がるとき、階段の上り下りなどでバランスを失い、自分の意思とは関係なく倒れてしまうことをいいます。ぶつけたところが少し痛むだけで済むこともありますが、骨折や頭を打つけがにつながることもあります。特に高齢の方では、転んだことがきっかけで「また転んだらどうしよう」という不安が生まれ、外出や活動が減ってしまうことがあるため、けがだけでなく生活全体を考えることが大切です。
重要な事実
- 転倒は特別なことではなく、誰にでも起こりうることです。加齢による筋力やバランス力の変化、病気、薬の影響、住まいの環境など、いくつもの要因が重なって起こります。
- 高齢の方の転倒は、脚の付け根の骨や手首の骨折、頭を打ったことによるけがの原因になりやすいといわれています。
- 多くの転倒は、運動習慣、住まいのちょっとした工夫、視力や薬の見直しなどで減らせると考えられています。できることから始めるのがおすすめです。
はい、とてもよくあることです。特に65歳以上の方では、1年のうちに何人かに1人が転倒を経験するといわれています。決して珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません。
年齢を問わず誰にでも起こります。子どもは走る・登るなど活発に動く中で転びやすく、高齢の方では筋力やバランス力、視力の変化に加えて、病気や薬の影響、住まいの段差や暗さなどが関係してきます。
症状
- 意識がない、呼びかけても反応が弱い、けいれんしている
- 頭を打ったあとに、繰り返す嘔吐、ますます強くなる頭痛、ろれつが回らない、手足の動きの左右差、ぼんやりして会話がかみ合わない
- 呼吸が苦しい、胸の強い痛みがある
- 手足が変形している、動かすと激しく痛む、骨折が疑われる大きなけがをした
- 出血が多く、押さえても止まらない
- 高いところから落ちた、頭を強く打った直後から様子がおかしい
- ⚠頭を打った(特に血液をサラサラにする薬を飲んでいる方、高齢の方)
- ⚠転倒したあと、痛みが続く、腫れが増してきた、体重をかけられない
- ⚠立ちくらみやふらつきが繰り返し起きる
- ⚠短期間に何度も転んでいる
- ⚠転んだときの記憶があいまい、気がついたら倒れていた
一般的な症状
- つまずく、すべる、バランスを崩して倒れる
- 歩くときに足が上がりにくい、すり足になる、歩幅が小さくなる
- 立ち上がったときや、急に振り向いたときのふらつき・立ちくらみ
- 転んだあとの手足の痛み、腫れ、動かしにくさ
- 頭を打った、たんこぶができた
- 転んだときのことを覚えていない、一瞬意識が遠のいた気がする
- 転ぶのが怖くなり、外出や動作を控えるようになる
子供の症状
- 走る・飛び跳ねる・高いところに登るなど、活発に動く中での転倒がほとんどです。多くは軽いけがで済みます。
- 頭を打ったあとは、機嫌、眠り方、食欲、嘔吐の有無などをしばらく観察しましょう。
- 高いところからの転落、頭を強く打った、繰り返し吐く、ぼんやりして呼びかけへの反応が弱い、といった場合はすぐに受診してください。
高齢者の症状
- ほんの小さな段差や敷居、カーペットの端でもつまずくようになる
- 歩く速度が遅くなる、杖を使い始める、手すりがないと不安になる
- 夜間のトイレの途中で転ぶ、入浴中に転ぶ
- 転倒をきっかけに「また転んだら…」と外出を控えるようになる
- けがが治ったあとも、痛みや不安で動く量が減ってしまう
原因
主な原因
- 脚や体幹の筋力、バランス力の低下
- 視力や聴力の変化(見えにくさ、暗い場所での見づらさ)
- 病気の影響(パーキンソン病、脳卒中の後遺症、関節の痛み、認知症、不整脈、血糖の乱れなど)
- 薬の影響(眠気が出る、ふらつく、血圧が下がるなど)— 飲み合わせによることもあります
- 急に立ち上がったときの血圧の低下(立ちくらみ)
- 住まいの環境(段差、滑りやすい床、暗さ、手すりがない、コードや物の置き方)
- 靴や履き物が合っていない、サイズが大きすぎる、かかとが不安定
- 飲酒、疲れ、睡眠不足
リスク要因
- 65歳以上である
- 過去1年の間に転んだことがある
- 筋力の低下や骨粗しょう症がある
- 複数の薬を飲んでいる、眠気が出る種類の薬を使っている
- 視力の低下、白内障などがある
- 認知症、パーキンソン病、脳卒中の後遺症、関節の痛みがある
- 歩行器や杖が体に合っていない、使っていない
- 家の中に段差が多い、夜間の照明が暗い、手すりがない
- 外出や運動の機会が少なく、家にこもりがちである
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭を打った、特に血液をサラサラにする薬を飲んでいる方
- 転倒後に体重をかけられない、手足が変形している、腫れや痛みが強い
- 立ちくらみやふらつきが繰り返し起きる、意識が一瞬遠のいた
- 短期間に何度も転んでいる
- 転んだあとから、なんとなく様子がいつもと違う
定期受診を予約すべき場合:
- つまずくことが増えた、歩くのが以前より遅くなった気がする
- 転ぶのが怖くて外出を控えるようになった
- 飲んでいる薬が増えてから、ふらつく気がする
- 家の中の段差や手すりのことが心配になったとき(住まいの相談もできます)
- 健診のときに転倒のことを相談したい
診断
まず、いつ・どこで・どのように転んだのか、気を失ったかどうか、そのとき何をしていたかをくわしく聞きます。そのうえで、けがの有無を診察で確認し、必要に応じて画像の検査を行います。転びやすい原因が疑われる場合は、歩き方やバランス、血圧、視力、飲んでいる薬、住まいの様子などを総合的に確かめていきます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(転んだときの状況、持病、飲んでいる薬、生活の様子)
- レントゲン検査(骨折の確認)
- 必要に応じてCTやMRI(頭を打った場合など)
- 血液検査
- 心電図(不整脈などの確認)
- 寝たまま・座ったまま・立ったときの血圧測定
- 視力の確認
- 歩き方やバランスの評価(ふらつきの確認など)
- お薬手帳の確認、必要に応じて住まいの環境の確認
診察で予想されること
診察は痛みを伴うものではなく、話を聞いて体の動きを確かめるものが中心です。お薬手帳、健診の結果、転んだときのメモ(いつ・どこで・どうなったか)を持っていくと話がスムーズです。原因は一つとは限らず、いくつかが重なっていることが多いため、時間をかけて整理していくことがあります。
治療
治療は二つの柱があります。一つは、転んだことでできたけがを治すこと。もう一つは、なぜ転んだのかという原因に対応し、次の転倒を防ぐことです。けがが軽くても、原因への対応を一緒に進めることで安心につながります。
自宅でのセルフケア
- 家の中の段差、敷居、コード、カーペットの端など、つまずきやすいものを整理する
- 夜間のトイレの通り道に足元灯をつけ、手すりを設置する
- 浴室や階段に滑り止めや手すりを付ける
- かかとが安定した、サイズの合う靴を選ぶ(室内でも靴下だけで歩かない工夫を)
- 立ち上がるときは、ゆっくり・声を出しながら・何かにつかまって
- 無理のない範囲で、毎日少しずつ体を動かす習慣をつくる
- 水分と食事をしっかりとる(脱水や栄養不足はふらつきの原因になります)
- お薬手帳を持って、薬局やかかりつけ医に飲み合わせやふらつきについて相談する
医療治療
けががある場合は、その治療(安静、固定、必要なら手術など)を行います。同時に、転倒の原因に合わせた対応を進めます。たとえば、ふらつきの原因になっている薬の見直しや調整、血圧の管理、視力の矯正や目の病気の治療、リハビリテーションによる筋力・バランスの訓練、体に合った杖や歩行器の選定、骨粗しょう症の評価と治疗、住まいの環境整備(手すりなどの福祉用具の活用)などです。治療の内容は、年齢や持病、生活の状況によって変わります。具体的な薬の名前や量については、必ず医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
骨折した場合には、骨の状態によって手術が必要になることがあります。また、白内障や股関節の病気など、転びやすさに関係する病気が背景にある場合に、手術が検討されることがあります。必要性は検査結果と体の状態をふまえて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
転倒をきっかけに、動く量が減ってしまうことが一番もったいないことです。動かないと筋力が落ち、さらに転びやすくなるという悪循環になりがちです。家の中の動線を整え、手すりなど安心できる道具を使いながら、できるだけ今までどおりの生活を続けましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の生活の中に、無理のない運動を取り入れる
- 夜間のトイレは、明かりをつけ、ゆっくり動く
- 定期的に視力の確認をする
- 飲んでいる薬を整理し、お薬手帳を一つにまとめる
- 地域の転倒予防教室や体操の集まりに参加してみる
- 家族や周りの人に、家の中の気になる場所を相談する
食事と運動
食事は、たんぱく質を意識してとり、骨と筋肉を支えるもとになります。塩分や水分のとり方も、血圧や立ちくらみに関わることがあります。運動は、椅子から立ち上がる練習、かかとを上げる運動、片足で少し立つ練習など、転びにくい体づくりを目指すものがおすすめです。無理をせず、痛みがあるときは中止して相談してください。
精神的健康と心の健康
転んだあとに「また転んだらどうしよう」という不安が続くことがあります。これは自然な気持ちで、決して弱さではありません。ただ、不安から外出を控えると筋力が落ち、かえって転びやすくなることがあります。不安が強いとき、気分が落ち込むとき、眠れないときは、一人で抱えずにかかりつけ医や地域の保健相談の窓口に話してください。気持ちがとてもつらいときは、迷わず周りの人や専門の相談先を頼ってください。
予防
はい、多くの転倒は予防できると考えられています。運動、住まいの工夫、視力や薬の見直し、栄養など、いくつかの対策を組み合わせることが効果的とされています。厚生労働省も、高齢者の転倒・骨折予防の取り組みを推进しています。一度に全部を変える必要はありません。できることから一つずつ始めましょう。
検診プログラム
自治体の健康診査や後期高齢者の健診の機会に、筋力や歩行、転倒の不安について相談できます。骨粗しょう症の検診、視力の確認も役立ちます。お住まいの地域の転倒予防教室や介護予防事業についても、自治体の窓口で尋ねてみてください。
合併症
治療しない場合
- 骨折(脚の付け根の骨、手首、背骨、肋骨など)
- 頭を打ったことによる頭の中の出血(特に血液をサラサラにする薬を飲んでいる方)
- けがをきっかけに動く量が減り、筋力がさらに低下する
- 入院が長引く、生活の範囲が狭くなる
- 「また転ぶかも」という不安から外出を控え、人とのつながりが減る
- 転倒を繰り返すようになる
長期的な見通し
多くの方は、けがの治療と原因への対応を進めることで、また安心して動けるようになります。転倒は「年だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。今からできる工夫はたくさんあり、一つ一つ積み重ねることで未来の転倒を減らせます。不安なことがあれば、早めにかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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