家庭の中の暴力(DV)を理解する
概要
家庭内暴力(DV=ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人、親子など、家の中で近しい関係にある人が、力や言葉、お金などを使って相手を傷つけたり、思い通りに動かそうとしたりすることです。たたく・ける・押すといった体への暴力だけでなく、ひどくののしる、無視する、友人づきあいを制限する、お金を渡さない、性的なことを強要する、といった形もすべて暴力に含まれます。どんな理由があっても、暴力は決して受けた側のせいではありません。
重要な事実
- 暴力は「体の傷」だけではありません。心、言葉、お金、性、人とのつながりを使った暴力もあります。
- 妊娠中や、別れ話・離婚の話が出たときなどに、暴力がひどくなることがあります。
- 一人で抱え込まず、誰かに相談することが、安全への第一歩になります。
決して珍しいことではありません。日本でも多くの人が経験しているといわれていますが、恥ずかしさや恐怖、説明したくない気持ちから表に出にくいため、実際はもっと多いと考えられています。あなただけが特別なわけではありません。
年齢、性別、収入、学歴、住んでいる場所に関係なく、誰にでも起こりえます。子ども、高齢者、障がいのある人、妊娠中の人も含まれます。
症状
- 今、暴力を受けていて命の危険を感じる(ためらわず110番、救急が必要なら119番)
- 意識がない、呼吸が苦しい、大量に出血している
- 首を絞められた、頭を強く打った
- 刃物などで脅されている
- 逃げ場がなく、今すぐ助けが必要
- ⚠けがをしていて治療が必要
- ⚠安全な場所に移動したい、今夜泊まるところがない
- ⚠妊娠中に暴力を受けている、おなかを打った、出血がある
- ⚠子どもや高齢者が危険な状態にある
- ⚠死にたい気持ちが浮かぶ
一般的な症状
- あざ、切り傷、やけどなど、説明しづらいけが
- 相手の機嫌をいつも気にして、びくびくしてしまう
- 携帯電話や居場所、付き合いを細かくチェックされる
- 友人や家族と会うことを制限される
- お金を自由に使えない、通帳やカードを取り上げられる
- ひどい言葉でののしられる、無視される、脅される
- 眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが続く
- 「自分が悪いのだ」と思い込んでしまう
子供の症状
- 理由がはっきりしない頭痛や腹痛、体調不良
- 夜泣き、おねしょ、赤ちゃん返り
- 学校に行きたがらない、成績が下がる
- 急に攻撃的になる、または無表情になる
- 家のことを話したがらない、親をかばう
- けがをしても説明が変わる、服で隠す
高齢者の症状
- 説明のつかないあざや骨折、脱水、栄養不足
- 必要な介護や薬を受けられていない
- お金や財産を勝手に使われる、管理を奪われる
- 家族以外との面会を制限される
- 急に元気がなくなる、不安が強くなる、話したがらない
原因
主な原因
- 暴力の奥には「力で相手を支配しようとする」考え方があります。相手を思い通りにしたい、支配したいという気持ちが背景にあります。
- お酒やストレス、育ってきた環境がきっかけとして語られることもありますが、それらは暴力を正当化する理由にはなりません。
- 社会の中で「こうあるべき」とされる役割意識や、相談しにくい環境も、暴力が続きやすくなる要因になります。
- 大切なこと:あなたが何をしたか、何をしなかったかは、暴力の原因ではありません。
リスク要因
- 妊娠中、出産後
- 別れ話や離婚の話が出たとき(危険が高まることがあります)
- 経済的な不安、住まいの不安定さ
- 周囲から孤立している、相談相手がいない
- 家の中にアルコールや薬物の問題がある
- 過去に暴力を受けた経験、または目撃した経験がある
- 子ども、高齢者、障がいのある人がいる家庭
- 相談窓口や支援制度を知らない、使いにくいと感じている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがをしている、痛みが続く
- 首を絞められた、頭を殴られた
- 妊娠中に腹部を打った、出血がある
- 眠れない、食べられない状態が続いている
- 死にたい気持ちが浮かぶ
定期受診を予約すべき場合:
- 家の中のことで悩みが続いている
- 気分の落ち込み、不安、疲れが続く
- 誰かに話を聞いてほしい、相談したい
- 安全に暮らすための方法を知りたい
診断
特別な検査で「診断」するものではありません。医師や看護師が、けがの状態を確認しながら、安心して話せる場所で、暮らしの様子や安全についてたずねます。無理にすべてを話さなくても大丈夫です。話せる範囲で伝えることが、支援につながります。
行われる可能性のある検査
- 身体の診察(けがの状態の確認)
- 必要に応じてレントゲンやCTなどの画像検査
- けがの写真と記録(あとで証拠として使えます)
- 睡眠や気分、心の状態についての聞き取り
- 性的な暴力があった場合、妊娠や感染症についての相談と検査
診察で予想されること
話した内容は秘密にされます。医師はあなたの希望を聞きながら、相談窓口や避難先などの情報を一緒に考えます。子どもへの虐待が疑われるときは、法律に基づいて関係機関に連絡することがあります。それはあなたを責めるためではなく、子どもの安全を守るためです。
治療
何より大切なのは、安全を確保することです。けがの治療と心のケア、そして相談支援・自治体の窓口・警察・民間のシェルターなどが、それぞれの役割で支えます。どの支援を受けるかは、あなたが選べます。
自宅でのセルフケア
- 信頼できる人に、起きていることを伝えておく
- けがや暴力の日時・内容をメモや写真で残しておく
- すぐ持ち出せる小さな袋に、保険証・お金・着替え・薬・大切な書類のコピーを用意しておく
- 逃げる場所、連絡する順番をあらかじめ考えておく
- 携帯電話を手元に置き、充電を欠かさない
- 自分を責めない。暴力はあなたのせいではありません
医療治療
けがの治療に加えて、こころのケア(カウンセリングや、つらい出来事に配慮した支援)が行われます。不眠や強い不安、気分の落ち込みがあるときは、医師が状態を見て、治療の方法を一緒に考えることがあります。薬が必要と判断される場合も、医師があなたの状況をよく聞いたうえで判断します。薬の名前や量はここではお伝えしません。気になることは担当の医師や薬剤師にたずねてください。
手術が検討される場合
けがが重い場合(骨折、内臓の損傷、頭のけがなど)は、手術や入院が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
暴力のある家で暮らすのは、とても消耗することです。毎日を完璧にこなそうとしなくて大丈夫です。今日を安全に過ごすこと、そして少しずつ支援とつながることを目標にしてください。
生活習慣のアドバイス
- 安全な場所(実家、友人宅、シェルターなど)を複数考えておく
- 連絡先を覚えやすい形にして持ち歩く
- 定期的に、信頼できる人と連絡を取り合う
- 医療機関や相談窓口とのつながりを保つ
- 自分を大切にする時間を、少しでも確保する
食事と運動
決まった食事や運動が難しいときでも、水分をとること、食べられるものを少し口にすることから始めてください。短い散歩など体を動かす時間は、気分の安定に役立ちます。ただし、外に出ることが危険な状況なら無理をせず、安全を優先してください。
精神的健康と心の健康
暴力を受けると、不安、恐怖、自分を責める気持ち、眠れない、涙が止まらない、感情がわからない、といった変化が起こることがあります。これは心が限界をこえて頑張っているサインで、弱さではありません。つらい気持ちが続くとき、死にたい気持ちが浮かぶときは、一人で抱えず、医療機関や相談窓口に連絡してください。命を守ることを最優先にしてください。
予防
暴力は、受ける側の努力で防げるものではありません。社会全体で、暴力を許さない意識を育てること、相談しやすい環境を整えること、加害者への支援や教育を進めることが大切です。あなた自身は、防げなかったことを責める必要はありません。
検診プログラム
妊娠中や、けがで受診したときなどに、医療機関が暮らしの安全についてたずねることがあります。これは、つらい状況に早く気づいて支援につなげるための大切な質問です。聞かれたら、話せる範囲で答えてみてください。
合併症
治療しない場合
- けがが治りにくい、繰り返す
- 不安やうつ、PTSD(つらい出来事のあとに続く心の反応)が長引く
- 眠れない、食べられないことによる体調の悪化
- 妊娠中の場合は、母体や赤ちゃんへの影響
- 子どもの心と体、学校生活への影響
- 命に関わる危険
長期的な見通し
暴力のある環境から離れることは、簡単ではないかもしれません。でも、支援とつながることで、安全を取り戻し、少しずつ自分らしい生活を立て直していくことは可能です。回復には時間がかかりますが、あなたにはその力があり、支えてくれる人が必ずいます。
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最終更新: 2026年10月23日
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