家族の暴力でこまっている 子ども・若い人へ
概要
家族の暴力とは、家の中で家族から受ける、心や体を傷つける行為のことです。たたく・けるといった体の暴力だけでなく、大声でおどす、無視する、外に出させない、お金をわたさない、人格をけなすなども、すべて暴力です。大切な人からの暴力は、あなたのせいではありません。どんな理由があっても、暴力はゆるされません。
重要な事実
- どんな形の暴力も、あなたのせいではありません。わるいのは暴力をふるう人です。
- 暴力には、なぐる・けるだけでなく、おどす、無視する、自由をうばう、けなすなどもふくまれます。
- だれか信頼できる人に話すだけで、安全への道がひらけることがあります。
- 助けを求めることは弱さではなく、自分と大切な人を守るための行動です。
家族の暴力は、日本でも世界でも、多くの子どもや若い人が経験しています。特別なことではなく、あなただけがおかしいわけでもありません。同じようにこまっている人は、たくさんいます。
年れいや性別にかかわらず、だれにでも起こりえます。小さな子ども、小学生、中学生、高校生、大学生、そして若い大人まで、すべての若い人が対象になります。
症状
- 今、まさに暴力を受けていて、命の危険を感じる
- 首をしめられた、包丁などの武器を見せられた
- けががひどい、出血がとまらない、意識がもうろうとしている
- 「死にたい」と感じるほど追い詰められている
- ⚠あざや痛みが数日たってもよくならない
- ⚠眠れない、食べられない状態が1週間以上続く
- ⚠家に帰ることがこわくて、行く場所がない
- ⚠自分を傷つけたい気持ちがわいてくる
- ⚠パニックになる、息苦しくなる発作がくり返す
一般的な症状
- 不安が強く、いつも紧张しているように見える
- こわい夢を見る、夜よく眠れない
- 学校や勉強に集中できない
- イライラしたり、急に泣いたりすることがふえる
- 「自分が悪いんだ」と自分を責める
- 説明のつかないあざや痛みがある
- 頭痛、腹痛、食欲の変化が続く
- 家に帰るのがこわい、家のことを話したがらない
- 友だちと会うのをさける、人と話すのがこわい
- 大きな音や怒った声に強くおびえる
子供の症状
- 赤ちゃん返り(おねしょ、指しゃぶりなど)が始まる
- 夜泣きがふえる、一人で寝られなくなる
- かんしゃくが強くなる、またはとてもおとなしくなる
- 学校に行きたがらない、登校しぶりがある
- 友だちづくりがうまくいかない、けんかがふえる
- 体にあざやけががあるが、理由をうまく説明できない
- 大人をこわがる、特定の人をさける
- 食べすぎる、または食べなくなる
高齢者の症状
- 高齢の家族が暴力やネグレクト(必要な世話をしないこと)を受けている場合、説明と合わないけがやあざが見られることがあります
- 急に元気がなくなる、口数がへる、人と会うのをさける
- お金や通帳を家族に管理され、自由に使えない
- 病院にかかりたいと言えない、受診をさまたげられている
- 身だしなみや住まいの清潔さが急に保てなくなる
原因
主な原因
- 力や支配で相手を思い通りにしようとする考え方(これが暴力の中心的な原因です)
- 暴力が「家族の中では当たり前」とされてきた環境
- ストレスやお酒・薬物の問題(ただし、これは暴力の言いわけにはなりません)
- 家族がだれにも相談できず、孤立していること
- 助けを求めることが「家族の恥」と考えられ、外に話せないこと
リスク要因
- 家庭の中に強いストレスや争いが続いている
- 経済的に苦しく、生活の余裕がない
- 家族が地域や友人から孤立している
- 親自身が子どものころに暴力を受けた経験がある
- アルコールや薬物の問題がある
- こまっている人が、相談できる大人や窓口を知らない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがをした、痛みが強い、息苦しい
- 眠れない・食べられない状態が続いて、体がつらい
- 気持ちが追い詰められて、自分を傷つけたいと思う
- こわくて家に帰れない、今夜の居場所がない
定期受診を予約すべき場合:
- 落ち着いたときに、かかりつけ医、学校の保健室の先生、スクールカウンセラー、保健師、自治体の相談窓口に話してみる
- 頭痛や腹痛など体の不調が続いている
- 気分の落ちこみや不安が長く続いている
- 友だちや家族との関係がうまくいかない
診断
「診断」というより、医師や相談員があなたの話をよく聞き、今の安全を一緒に考える時間です。無理に全部を話させることはありません。話したくないことは、話さなくて大丈夫です。
行われる可能性のある検査
- けがや体の状態を診る診察
- 必要に応じてレントゲンなどの画像検査
- 睡眠や気分、不安の状態をたずねる質問(問診やチェックシート)
- 生活の様子や安全についての聞き取り
診察で予想されること
相談した内容は、基本的には守られます。ただし、命の危険があるときは、あなたを守るために必要な大人や機関に伝えることがあります。そのことも、はじめに説明してくれます。
治療
いちばん大切なのは、暴力からはなれて安全な場所にいることです。そのうえで、体のけがの手当てと、心のケアを一緒に進めていきます。医師、看護師、心理の専門家、ソーシャルワーカーなどが、チームであなたを支えます。
自宅でのセルフケア
- 安心して行ける場所を、前もって決めておく(親せきの家、友だちの家、学校など)
- 信頼できる大人と「合図」を決めておき、危ないときに知らせられるようにする
- 起きたことを記録しておく(日時、内容、けががあれば写真)
- さいふ、保険証のコピー、着がえなど、すぐ持ち出せる小さな袋を用意しておく
- 自分を責めないこと。「私は悪くない」と何度も自分に言ってあげる
- 深呼吸や、好きな音楽など、小さな息抜きの方法を見つける
医療治療
けがの治療、体調の回復、そして心のケアが中心になります。話を聞いてもらうカウンセリングや、安心できる場所の確保の手伝い、生活の相談などが行われます。つらさが強いときは、医師が治療の必要性を判断することがあります。治療は一人ひとりの状況に合わせて決まります。
手術が検討される場合
けがの程度によっては、手術が必要になることがあります。その場合は医師がくわしく説明します。
この病気と共に生きる
毎日を安全に過ごすために、小さな工夫を重ねることが助けになります。今日一日を乗り切ることを目標にしてみてください。できたことを自分でほめてあげましょう。
生活習慣のアドバイス
- できるだけ決まった時間に寝て、体を休める
- 信頼できる人と、定期的に連絡をとる
- 学校や仕事のことを、相談できる先生や上司に少しだけ伝えておく
- ひとりの時間に、好きなこと(音楽、散歩、絵をかくなど)をする
- ニュースやSNSでつらい気持ちになる情報からは、少し距離をおく
食事と運動
決まった時間に食事をとり、水分をとることを心がけましょう。食欲がないときは、少しずつでも口にできるものを。体を動かすと気持ちが楽になることがあります。短い散歩やストレッチなど、無理のない範囲でかまいません。
精神的健康と心の健康
家族の暴力を経験すると、不安、落ちこみ、いらいら、眠れない、自分を責める気持ちなどが続くことがあります。これは、つらい経験に対する自然な反応です。あなたの心が弱いからではありません。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに信頼できる大人や相談窓口、医療機関に連絡してください。救急の必要があるときは119、今すぐ危険があるときは110に電話してください。
予防
暴力は、暴力をふるう人がやめるべきものです。あなたが防ぐ責任を負う必要はありません。それでも、早めにだれかに話すこと、地域で見守り合うこと、学校で暴力について学ぶことは、被害を小さくする助けになります。
検診プログラム
学校の健康診断や、病院・保健センターでの相談のときに、家庭の様子や安全について聞かれることがあります。聞かれたときは、話せる範囲で正直に伝えてみてください。
合併症
治療しない場合
- 不安や落ちこみ、PTSD(つらい体験のあとに続く心の反応)が長引くことがある
- 眠れない、食べられないなど、体の不調が続く
- 学校や仕事に行きづらくなり、学びや友人関係に影響が出る
- 自分を傷つけたい気持ちが強くなることがある
- 将来の人間関係に不安を感じることがある
長期的な見通し
助けを求めることで、状況は必ず変えられます。暴力からはなれて、安心して過ごせるようになった若い人はたくさんいます。回復には時間がかかることもありますが、あなたにはその力があります。あきらめずに、だれかに話してみてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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