片頭痛の新しい予防薬 ― 知っておきたいこと
概要
片頭痛(へんずつう)は、ズキズキと脈打つような痛みが発作的に繰り返し起きる頭痛です。多くは頭の片側に起こりますが、両側に痛むこともあります。痛みは数時間から3日ほど続くことがあり、吐き気や、光・音・においに敏感になるといった症状を伴うのが特徴です。動くと痛みが強くなるため、暗く静かな場所で横になりたくなる人が少なくありません。片頭痛は「頭が痛いだけ」ではなく、生活の質に大きく影響する病気として、世界中で研究と治療の開発が進んでいます。近年、海外の規制当局(米国のFDA=食品医薬品局)が、片頭痛の発作そのものを減らすことを目的とした新しいタイプの予防薬を承認したことが話題になりました。日本でも同様の考え方の予防薬が使えるようになっており、治療の選択肢が広がっています。
重要な事実
- 片頭痛は「発作的に繰り返す」頭痛で、吐き気や光・音への過敏を伴うことが多い
- 予防薬は、痛くなってから飲む痛み止めとは違い、発作の回数や程度を減らすことを目指す薬
- 新しいタイプの予防薬は、片頭痛の発作に関わるとされる体内の物質の働きを抑える仕組みで、注射で投与されるものが多い
- 予防薬はすべての人に適するわけではなく、発作の頻度や体の状態をもとに医師が使うかどうかを判断する
- 薬だけに頼らず、睡眠・食事・ストレス管理などの生活面の工夫を組み合わせることが大切
片頭痛はとても多い病気です。日本でも多くの人が経験しており、世界的には人口の1割前後が片頭痛に悩んでいるとされます。つまり、あなたの周りのクラスや職場にも、同じ悩みを持つ人がいる可能性は十分にあります。「気にしすぎ」ではなく、治療の対象になる病気です。
片頭痛は男性よりも女性に多く、特に10代から40代にかけて多くみられます。月経の周期と関連して発作が起きやすい人もいます。子どもにも起こり、大人と違って両側が痛んだり、腹痛や嘔吐が目立ったりすることがあります。50代以降で初めて片頭痛のような頭痛が始まることは比較的少ないため、その場合はほかの原因を調べることが大切です。
症状
- 突然、数秒から1分ほどの間に経験したことのない激しい頭痛が始まった(雷鳴頭痛=雷が落ちたような突然の激痛)
- 頭痛に加えて、発熱と首の硬さがある
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない
- けいれんが起きた
- ろれつが回らない、手足の片側が動かない、物が二重に見える、視野が欠けるなどの症状が急に出た
- 頭を打ったあとから頭痛が始まった
- 呼吸が苦しい、胸の痛みがある
- ⚠これまでにない強い頭痛が初めて起きた
- ⚠頭痛が数日単位でどんどん強くなっている
- ⚠発熱、体重減少、だるさなど全身の症状を伴う頭痛
- ⚠妊娠中や産後まもなくの激しい頭痛
- ⚠市販の痛み止めを頻繁に使うようになり、頭痛が増えている
- ⚠前兆(しびれや言葉の出にくさ)が初めて出た、または長引く
一般的な症状
- ズキズキ、脈打つような痛みが発作的に起こる
- 頭の片側に痛むことが多い(両側のこともある)
- 吐き気や嘔吐を伴うことがある
- 光や音、においに敏感になり、まぶしく感じる
- 動いたり、階段の上り下りなどで痛みが強くなる
- 発作の前に、視界にチラチラした光やギザギザした線が見える(前兆=発作の前に現れる症状)
- 前兆として、手足のしびれや言葉の出にくさを感じることがある
- 発作が終わったあとに、だるさや集中しにくさが残ることがある
子供の症状
- 大人より両側が痛むことが多い
- 腹痛や嘔吐が目立ち、頭痛そのものを訴えないことがある
- 顔色が悪くなり、遊びや活動を急にやめる
- 痛みが比較的短時間で治まることがある
- 光や音を嫌がり、暗い部屋に行きたがる
- 学校を休みがちになるなど、生活面に影響が出ることがある
高齢者の症状
- 50代以降で初めて片頭痛のような頭痛が始まった場合は、ほかの原因を調べることが大切
- 加齢により痛みを感じにくくなり、吐き気やだるさだけが目立つことがある
- 市販の痛み止めを長く使い続けることで、かえって頭痛が増える「薬の使いすぎによる頭痛」に注意が必要
- ほかの持病の薬との飲み合わせを確認する必要がある
- 頭痛が続いて食事や睡眠が乱れると、体力低下につながりやすい
原因
主な原因
- 脳の血管や神経の働きが一時的に変化し、痛みの信号が出やすくなることで起こると考えられている
- 痛みの信号に関わる体内の物質(神経を刺激する伝達物質)の働きが関係しているとされる
- 遺伝的な体質が関わることがあり、家族に片頭痛の人がいる場合も多い
- 睡眠不足や空腹、気圧の変化、強いストレス(またはストレスから解放されたとき)が引き金になる
- 月経などのホルモンの変化が関係することがある
- 特定の食べ物や飲み物(アルコール、カフェイン、人によってはチーズや加工肉など)がきっかけになることがある
リスク要因
- 女性であること(ホルモンの影響を受けやすい)
- 10代から40代の年齢層
- 家族に片頭痛の人がいる
- 睡眠が不規則、食事を抜きがち
- 強いストレスを抱えている、または生活のリズムが大きく変わった
- カフェインのとりすぎ、または急な中断
- 痛み止めの使いすぎ(かえって頭痛を増やすことがある)
- 喫煙、過度の飲酒
- 肥満や、うつ・不安などの心の状態が関係することもある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい頭痛、または今までに経験したことのない頭痛
- 発熱、首の硬さ、意識の変化、けいれんを伴う頭痛
- ろれつが回らない、手足の麻痺、視野の異常などが急に現れた
- 頭を打ったあとの頭痛
- 妊娠中・産後の強い頭痛
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛の発作が月に数回以上あり、生活や仕事、学業に支障が出ている
- 市販の痛み止めを使う回数が増えている
- 頭痛のたびに吐き気や光・音への過敏があり、横にならないと過ごせない
- 予防薬の選択肢について相談したい
- 頭痛ダイアリーをつけていて、発作のパターンが見えてきたので治療を見直したい
診断
片頭痛の診断は、まずていねいな問診から始まります。痛み方、続く時間、吐き気や光への過敏の有無、前兆の有無、月に何回起きるか、どんなときに起きやすいかなどを伺い、国際的な診断の基準にあてはまるかを確認します。同時に、ほかの病気(二次性頭痛=別の原因による頭痛)ではないかを確認するために、必要に応じて検査を行います。新しい予防薬を使うかどうかも、この診断の流れの中で医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の詳しい聞き取り)と頭痛ダイアリーの確認
- 血圧測定や身体診察、神経の診察
- 必要に応じて頭部のMRIやCT検査(危険な頭痛ではないかを確認するため)
- 血液検査(ほかの原因がないかの確認)
- 目や耳の症状が強い場合の専門的な検査
診察で予想されること
診察では、頭痛について多くの質問があります。「いつ始まったか」「どんな痛みか」「何分・何時間続くか」「吐き気や光のまぶしさはあるか」「市販薬を月に何回使うか」などをメモしておくと役立ちます。診断がつくまでに通院を重ねることもあります。すぐに結論が出ない場合もありますが、記録を続けることで治療方針が定まりやすくなります。
治療
片頭痛の治療は大きく2つに分かれます。ひとつは「発作が起きたときの治療」、もうひとつは「発作を起こりにくくする予防の治療」です。予防の治療は、発作の回数や痛みの程度を減らし、日常生活への影響を小さくすることを目指します。近年、この予防の治療に新しい選択肢が加わりました。米国で承認された新しいタイプの予防薬は、片頭痛の発作に関わるとされる体内の物質の働きを抑える仕組みで、発作の回数を減らすことが報告されています。日本でも同じ考え方の予防薬が使えるようになっています。ただし、すべての人に合うわけではなく、発作の頻度や持病、妊娠の可能性などをもとに、医師が使うかどうかを判断します。
自宅でのセルフケア
- 発作が始まったら、暗く静かな場所で休む
- 冷やすか温めるか、自分に合う方法を試す(冷やすと楽な人が多い)
- 睡眠を十分にとり、休日も大きく生活リズムを崩さない
- 食事を抜かさない(空腹は発作の引き金になる)
- 水分をこまめにとる
- カフェインは適量に。急にやめると頭痛が増えることがある
- 頭痛ダイアリーをつけ、発作のきっかけ(気圧、睡眠、食べ物、ストレス)を探る
- ストレスをためないように、自分なりの息抜きの時間をつくる
- 市販の痛み止めの使いすぎに注意する(月に10日以上が目安になる場合は医師に相談)
医療治療
治療には、発作が起きたときの痛みを和らげる薬と、発作を予防する薬があります。予防薬には、毎日内服するタイプと、一定の間隔で注射するタイプがあります。新しいタイプの予防薬は、片頭痛の発作に関わる体内の物質の働きを抑えることで、発作の回数を減らすことを目指すものです。どの治療を選ぶかは、発作の頻度、生活への影響、持病や併用している薬、妊娠の可能性などをふまえて医師と相談して決めます。薬は自己判断で量を変えたり中止したりせず、気になる症状があれば必ず医師や薬剤師に伝えてください。なお、本記事では特定の薬の名前や量はお伝えしません。具体的な内容は医療機関でご確認ください。
手術が検討される場合
片頭痛は通常、手術で治療する病気ではありません。治療の中心は薬と生活の工夫です。
この病気と共に生きる
片頭痛とつきあっていくうえで大切なのは、「発作が来たときにどうするか」をあらかじめ決めておくことです。仕事や学校で具合が悪くなったときの休める場所、連絡先、持ち歩く薬などを決めておくと安心です。また、発作の記録を続けることで、自分のパターンが見えてきます。予定を詰め込みすぎず、休息の時間をあらかじめ確保するのも立派な対処法です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の睡眠時間と起床時間をできるだけ一定にする
- 朝食を抜かず、3食を規則的にとる
- 適度な運動を習慣にする(激しすぎる運動が引き金になる人は調整する)
- ストレス対処の方法をいくつか持っておく(散歩、呼吸法、趣味の時間など)
- 喫煙を避け、飲酒はほどほどにする
- 気圧の変化が影響する人は、天気予報を参考に予定を調整する
- 長時間の画面注視を避け、こまめに休憩する
- 頭痛ダイアリーを活用して、自分に合う生活リズムを見つける
食事と運動
食事は、決まった時間に、抜かさずにとることが基本です。空腹は片頭痛の引き金になります。特定の食べ物(アルコール、カフェインのとりすぎ、人によってはチーズや加工肉など)で発作が起きる場合は、記録をとって自分の傾向を知るとよいでしょう。ただし、極端な食事制限は栄養の偏りにつながるので、自己判断で行わず、必要なら医師や管理栄養士に相談してください。運動は、ウォーキングや軽いストレッチなど、無理なく続けられるものがおすすめです。運動中や運動後に頭痛が出る場合は、強度を下げたり、水分補給をこまめにしたりして調整しましょう。
精神的健康と心の健康
片頭痛は、痛みそのものだけでなく、「いつ発作が来るかわからない」という不安や、仕事・学業・家事が思うように進まないことによるストレスを伴いやすい病気です。片頭痛と、うつや不安の状態には関係があるといわれており、心の負担が大きいときは、それは弱さではなく治療の対象です。ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や心の相談窓口に話してみてください。気持ちがつらくて自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときや、生きるのがつらいと感じたときは、ためらわずに地域の救急(119)や医療機関、お住まいの自治体の相談窓口に連絡してください。あなたはひとりではありません。
予防
片頭痛を完全に防ぐことは難しいですが、発作の回数やつらさを減らすことはできます。睡眠・食事・ストレス管理などの生活の工夫に加え、発作が多い人では予防薬が検討されます。新しいタイプの予防薬は、発作の頻度を減らす選択肢のひとつとして注目されています。自分に合う方法を医師と一緒に見つけていくことが大切です。
検診プログラム
片頭痛に決まったスクリーニング検査はありません。ただし、頭痛が増えている、薬の使用回数が増えているといった変化があれば、早めに受診して相談してください。
合併症
治療しない場合
- 発作のたびに仕事・学業・家事が中断し、生活の質が下がる
- 痛み止めを使う回数が増え、かえって頭痛が増える「薬の使いすぎによる頭痛」を招くことがある
- 睡眠や食欲が乱れ、体力や気分の落ち込みにつながることがある
- 不安やうつの状態を併存しやすくなる
- 人づきあいや外出を控えるようになり、社会とのつながりが減ることがある
- まれですが、前兆のある片頭痛では、喫煙や一部のホルモン剤の使用と組み合わさったときに脳卒中のリスクが高まると報告されている
長期的な見通し
片頭痛は長くつきあうことのある病気ですが、治療の選択肢は年々広がっています。生活の工夫と適切な治療を組み合わせることで、発作の回数を減らし、日常生活を取り戻している人はたくさんいます。新しい予防薬はその選択肢のひとつです。焦らず、かかりつけ医と一緒に自分に合う方法を探していきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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