立ちくらみ ― 立ったときのふらつき・めまい
概要
立ちくらみは、座っていたり寝ていたりする状態から急に立ち上がったときに、頭がふらふらする、目の前が暗くなる、気が遠くなるような感覚のことです。英語では「オルソスタティック・ヒポテンション」、日本語では「起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)」などと呼ばれます。立ち上がると、体は血液を下に集めないように血管を細めたり心臓の動きを調整したりして、脳に届く血液の量を保とうとします。この調整がうまくいかないと、脳に届く血液が一瞬減って、ふらつきが起こります。多くは数秒から数十秒で落ち着きますが、転倒につながることもあるので、くり返すときは医療機関に相談しましょう。
重要な事実
- 立ち上がった瞬間や、長時間立ったあと、食事のあとなどに起こりやすい症状です。
- 脱水(体の水分が足りない状態)、疲れ、睡眠不足、薬の影響、加齢など、さまざまな理由で起こります。
- 大部分は命に関わるものではありませんが、転んでけがをしないように注意することが大切です。
とてもよくある症状です。健康な人でも、暑い日、長時間の立ちっぱなし、食事のあと、湯船から急に立ち上がったときなどに一時的に経験することがあります。特に思春期の子どもや高齢者ではよく見られます。
年齢を問わず起こりますが、特に多いのは次のような方です。成長期の子ども・思春期の若者、高齢者、妊娠中の方、体調を崩して水分が足りない方、血圧や心臓の病気で治療中の方、糖尿病などの慢性的な病気がある方、長時間の立ち仕事をする方。
症状
- 意識を失って倒れた、または意識が戻りにくい(すぐに119番へ)
- 倒れたときに頭を打った、けがをして動けない
- 胸の痛み、強い息苦しさ、冷や汗を伴う
- 脈がとても速い、または不規則で、ふらつきが続く
- ろれつが回らない、体の片側が動かない、視界が急に片側だけ見えにくい(脳卒中のサインの可能性)
- 黒い便や血の混じった便があった、大量に出血した
- ⚠立ちくらみで倒れることが何度かあった
- ⚠ふらつきが長時間続き、横になっても良くならない
- ⚠動悸や息切れ、だるさが続く
- ⚠食事がとれない、水分がとれない状態が続いている
- ⚠新しい薬を始めてから立ちくらみが出るようになった
一般的な症状
- 立ち上がった直後に頭がふらふらする、ふわふわする
- 目の前が暗くなる、視界が狭くなる、ものが見えにくくなる
- めまい、気が遠くなる感じ
- 生あくびが出る、耳鳴りがする
- 吐き気、冷や汗
- 脈が速くなる、動悸がする
- 顔色が悪くなったと言われる
- ひどいときは一瞬意識を失って倒れる(失神)
子供の症状
- 朝礼や集会で長時間立っているときに気分が悪くなる、倒れる
- 朝なかなか起きられない、立ちくらみで学校に行きづらい(起立性調節障害=立ち姿勢で血圧や脈の調整がうまくいかない状態と考えられることがあります)
- 少し動いただけで疲れやすい、頭痛や食欲低下を伴うことがある
- 成長期に一時的に見られることが多く、多くは大人になるにつれて落ち着きます
高齢者の症状
- 転びやすくなる、転倒して骨折することがある
- 食後のだるさやふらつき(食事のあとに血圧が下がることがあります)
- 夜中にトイレに起きたときのふらつき・転倒
- 血圧の薬やそのほかの薬の影響で起こりやすくなることがある
- 水分をあまりとらない、のどの渇きを感じにくいことで脱水になりやすい
原因
主な原因
- 脱水や水分不足(汗をかく、発熱、下痢、嘔吐など)
- 長時間の立ちっぱなし、急な立ち上がり、長時間の入浴
- 食事のあとに血圧が下がる(食後低血圧)
- 貧血(血液中の酸素を運ぶ成分が足りない状態)
- 血圧の薬や利尿薬など、薬の影響
- 自律神経(体温や血圧を自動で調整する神経)の乱れ。思春期や高齢者で見られます
- 心臓や血管の病気、不整脈
- 糖尿病などによる神経の障害
- 妊娠中の体の変化
- 長期間のベッド上での安静や、体力の低下
リスク要因
- 高齢であること
- 暑い環境での作業や運動
- 水分・塩分をとる量が少ない
- 長時間の立ち仕事
- 睡眠不足や疲労、飲酒
- 血圧を下げる薬や抗うつ薬などを服用している
- 糖尿病、パーキンソン病などの慢性的な病気がある
- 過去に失神したことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識を失って倒れた、倒れてけがをした
- 胸の痛みや息苦しさ、動悸を伴う
- 片側の手足が動かない、言葉が出にくいなどの症状がある(すぐに119番)
- 黒い便・血便・大量の出血があった
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみが週に何度もくり返す
- 日常生活や仕事、学校生活に支障が出ている
- 新しい薬を始めてから症状が出るようになった
- 高齢の方で、ふらつきや転倒が心配
- めまいと一緒にだるさや息切れが続く
診断
まずは問診で、どんなときに、どんなふうにふらつくのか、どのくらい続くのか、飲んでいる薬や持病、生活の様子を聞きます。そのうえで、座ったときと立ったときの血圧を測って比べます。立ったときに血圧が大きく下がっていれば、起立性低血圧が疑われます。必要に応じて血液検査や心電図などで、貧血や心臓の病気、脱水がないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定(座った姿勢と立ち上がったあとの血圧を比べます)
- 脈拍の測定
- 血液検査(貧血、脱水、血糖、甲状腺の働きなどを確認)
- 心電図(不整脈や心臓の異常を確認)
- 必要に応じて24時間心電図や心臓超音波検査
- 起立試験(台の上で体を傾けて血圧と脈の変化を調べる検査)
- 薬の内容の確認(薬が原因でないかを確認します)
診察で予想されること
診察は痛みのないものがほとんどです。血圧を何回か測ったり、数分間立ったままの姿勢で測ったりすることがあります。ふらついて気分が悪くなりそうなときは、遠慮なく「つらいです」と伝えてください。椅子に座るなど、検査を中止したり休んだりできます。
治療
治療は「原因をさがして、それを取り除く」ことが中心です。脱水なら水分をとる、薬が原因なら薬の調整を医師が考える、貧血や心臓の病気があればその治療を優先する、といった形です。多くの場合は生活の工夫でかなり良くなります。
自宅でのセルフケア
- 立ち上がるときは、ゆっくり。ベッドで一度上半身を起こし、足を動かしてから立つ
- 水分をこまめにとる。暑い日や運動のあとは特に意識して
- 長時間の立ちっぱなしを避け、ときどき足を動かしたり、つま先立ちをしたりする
- 食事は一度にたくさん食べず、少しずつ。食後はすぐに動かず少し休む
- 寝るときは頭を少し高くして寝るとよいと言われています
- アルコールは控えめに。睡眠を十分にとる
- ふらついたら、すぐにしゃがむ・座る・壁にもたれるなどして転倒を防ぐ
- 弾性ストッキング(脚を締めつけて血液の流れを助ける靴下)が役立つことがあります。かかりつけ医に相談してください
医療治療
医師は、まず原因を確認し、その原因に合わせた対応を考えます。たとえば、血圧を調整する薬や、体に水分と塩分を保ちやすくする薬が使われることがあります。また、症状を悪くしている可能性のある薬を減らしたり、別の種類に変えたりすることもあります。薬の種類や量は、必ず医師が一人ひとりの状態に合わせて決めます。自己判断で薬をやめたり始めたりせず、気になることは医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
ふらつきそのものに対する手術が必要になることはほとんどありません。ただし、心臓の病気や不整脈などが原因で、治療のために手技や手術が必要と判断される場合があります。その場合は主治医から詳しい説明があります。
この病気と共に生きる
ふらつきは、ちょっとした工夫でぐっと楽になることが多い症状です。朝はゆっくり起きる、外出時は水分を持ち歩く、電車では座れるときは座る、などの小さな工夫を重ねてみてください。症状とつきあいながら、自分のペースを見つけていくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 起床時はゆっくり。布団の中で手足を動かしてから起きる
- こまめな水分補給を習慣にする
- 長時間の立ち仕事では、足踏みやつま先立ちをこまめに
- 暑い日の屋外での作業は、涼しい場所で休みながら
- 食事は少量ずつ、よくかんで。食後は少し休む
- 十分な睡眠と、無理のない範囲の運動
- 飲んでいる薬は、お薬手帳などで一覧にしておき、受診時に見せる
- 入浴は長湯を避け、湯船から出るときはゆっくり
食事と運動
食事は、水分と適度な塩分をとることが基本です。ただし塩分の量は、高血圧や心臓・腎臓の病気がある方では医師の指示が必要です。自己判断で大きく増やさず、まずは相談してください。食事は一度にたくさん食べると食後のふらつきが出やすいので、分けて食べるのも一案です。運動は、ウォーキングや軽い筋力運動、脚の運動が血液の巡りを助けます。立ちっぱなしの運動より、無理のない範囲で続けられるものを選びましょう。運動を始める前に、体調や持病について医師に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
「また倒れたらどうしよう」という不安から、外出を控えたり、人混みを避けたりするようになることがあります。特に思春期のお子さんでは、朝起きられないことや学校に行きづらさが続き、つらさを一人で抱えてしまうことがあります。これは気持ちの問題ではなく、体の調整の乱れからくるものです。不安や落ち込みが強いとき、生活に支障が出ているときは、医療機関に相談してください。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や、かかりつけ医に早めに話してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、水分をこまめにとる、ゆっくり立ち上がる、長時間の立ちっぱなしを避ける、睡眠を十分にとるといった工夫で、かなりの部分が予防できます。飲んでいる薬が関係していることもあるので、気になる症状は受診時に伝えましょう。
検診プログラム
健康診断での血圧測定は、自分の血圧の傾向を知るよい機会です。高齢の方や、血圧の薬を飲んでいる方は、座ったときだけでなく立ったときの血圧も測ってもらうと、起立性低血圧が見つかりやすくなります。健診結果を持って、かかりつけ医に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 転倒して、打ちどころが悪いとけがや骨折につながることがあります
- 意識を失って倒れると、階段や道路などで思わぬ事故につながる危険があります
- ふらつきへの不安から外出が減り、体力が落ちたり、気分が落ち込んだりすることがあります
- 背景に貧血や心臓の病気、脱水などが隠れている場合、その病気が進んでしまうことがあります
長期的な見通し
立ちくらみの多くは、原因が見つかって生活の工夫や適切な対応をすることで、ずいぶん楽になります。特に思春期の起立性調節障害は、成長とともに落ち着くことが多いと言われています。転倒を防ぐ工夫をしながら、あせらず一歩ずつ。気になることは、遠慮なく医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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