フェルティ症候群(Felty症候群)
概要
フェルティ症候群は、慢性の関節リウマチ(免疫の働きが乱れて関節に炎症が続く病気)を持っている人のごく一部に起こる、まれな状態です。大きく3つの特徴がそろったときに考えられます。①関節リウマチがあること、②脾臓(おなかの左側にある、血液をろ過する臓器)が大きくなること、③好中球(白血球の一種で、細菌などの感染と戦う細胞)が血液中で減っていること、の3つです。好中球が減ると感染症にかかりやすくなりますが、適切な管理で多くの方は安定した生活を送れます。
重要な事実
- 関節リウマチのある人の1%未満に起こるとされる、まれな合併症です。
- 主な特徴は、関節リウマチ・脾臓の腫れ・好中球(感染と戦う白血球)の減少の3つです。
- いちばん気をつけたいのは感染症です。発熱などのサインを早めに見つけることが大切です。
- 関節リウマチの治療をしっかり続けることが、状態を安定させる中心になります。
とてもまれです。関節リウマチの患者さんの1%未満に起こるとされ、近年は関節リウマチの治療が進歩したことで、さらに少なくなってきていると考えられています。
関節リウマチを長く患っている方、とくに中年から高齢の方に多く見られます。女性に多いとされています。関節リウマチの病気の活動性が高い時期に起こりやすいとされます。
症状
- 高熱とともに意識がもうろうとする、会話がかみ合わない
- 息苦しさが強く、呼吸が速い、唇や顔色が青白い
- 急激で激しいおなかの痛み、立てないほどの痛み
- 皮膚が冷たく汗が出て、血圧が下がっているように見える(ショックの疑い)
- けいれんや、呼びかけに反応しない状態
- ⚠38度以上の発熱、または寒気を伴う発熱
- ⚠のどの痛み、せき、尿の痛みなど、感染症を思わせる症状
- ⚠皮膚の赤み・腫れ・痛みが広がっている、傷が治らない
- ⚠いつもより強いだるさ、食欲不振が数日続く
- ⚠おなかの左側の張りや痛みが新しく出てきた
一般的な症状
- 関節の腫れや痛み、こわばり(もともとの関節リウマチの症状)
- 発熱や微熱が続く、だるさ・疲れやすさ
- 脾臓が大きくなることによる、おなかの左側の張り感や重い感じ
- 感染症にかかりやすい(のどの痛み、せき、皮膚の赤みなどが長引く)
- 皮膚の潰瘍(治りにくい傷)が脚などにできる
- リンパ節の腫れ、体重が減る、食欲が落ちる
- 目や口の乾燥感(別の自己免疫的な症状を伴うことがある)
子供の症状
- 小児では非常にまれで、ほとんど報告されていません。
- 小児で関節リウマチに似た症状がある場合は、小児リウマチ専門の医療機関への相談が勧められます。
高齢者の症状
- 高齢の方は感染症が重症化しやすいため、発熱やだるさを軽視せず早めに相談することが大切です。
- 体力低下や食欲低下として現れ、加齢による変化と見分けがつきにくいことがあります。
- 持病のお薬が複数ある場合は、かかりつけ医と薬剤師に全体を確認してもらいましょう。
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ完全には分かっていません。
- 関節リウマチによる免疫の乱れが長く続くことが背景にあると考えられています。
- 免疫の異常な働きによって、脾臓が大きくなり、好中球(感染と戦う白血球)が減ったり働きが落ちたりすると考えられています。
- 好中球に対する抗体が関わっているという説や、脾臓で好中球が壊されたり蓄えられたりするという説があります。
リスク要因
- 関節リウマチを長期間患っている
- 関節リウマチの病気の活動性が高い
- 関節リウマチに関連する血液検査の値(自己抗体)が陽性
- 中年〜高齢である、女性である
- 関節の変形や結節(皮下のしこり)がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38度以上の発熱がある、または寒気を伴う発熱がある
- のどの痛み、せき、息苦しさ、尿の痛みなど感染症を思わせる症状がある
- 皮膚の赤みや腫れが広がっている、傷が治らず膿が出ている
- 急な強いだるさ、立ちくらみ、動悸がある
- おなかの左側に新しい痛みや張りが出た
定期受診を予約すべき場合:
- 関節リウマチの治療中で、だるさや微熱が続く
- 体重が減っている、食欲が落ちている
- 脚などに治りにくい傷ができた
- リンパ節の腫れに気づいた
- 血液検査で白血球や好中球の値について指摘を受けたことがある
診断
診断は、問診と診察、血液検査、画像検査を組み合わせて行います。関節リウマチがあることに加えて、脾臓が大きくなっていること、好中球が減っていることが確認できたときに、フェルティ症候群が疑われます。ただし、似た症状を起こす他の病気(感染症、血液の病気、肝臓の病気、薬の影響など)がないかを確かめることがとても大切で、時間がかかることがあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:白血球の数とその内訳(とくに好中球の数)を調べます。
- 血液検査:炎症の程度や、関節リウマチに関連する自己抗体の値を調べます。
- 腹部の超音波検査やCT検査:脾臓の大きさを確認します。
- 肝臓や腎臓の働き、感染症の有無を調べる検査。
- 必要に応じて骨髄検査:血液を作る場所に異常がないかを調べます。
- いま飲んでいるお薬の影響を確認するための情報整理。
診察で予想されること
診断には複数回の通院と検査が必要になることが多く、結果が出るまでに時間がかかる場合があります。症状の経過や発熱の記録、お薬の一覧を持参すると診察がスムーズになります。確定するまで不安な気持ちになるかもしれませんが、担当医と一緒に一つずつ確認していくことが大切です。
治療
治療の中心は、もとになっている関節リウマチをしっかりコントロールすることと、感染症を予防・早期発見することです。好中球が大きく減っている場合や感染症を繰り返す場合には、好中球を増やす方向の治療や、脾臓の腫れに対する対応などが検討されます。治療方針は症状の強さや感染症の頻度によって一人ひとり異なります。
自宅でのセルフケア
- 発熱や体調の変化を毎日メモし、早めに医療機関に伝える
- 手洗い、うがい、人混みを避けるなど感染予防を心がける
- 傷ができたら清潔に保ち、治りが悪いときは受診する
- 禁煙を心がける(感染症や関節リウマチに良くない影響があります)
- 十分な睡眠と休養をとる
- 自己判断でお薬を中止したり量を変えたりしない
- ワクチン接種について担当医に相談する
医療治療
関節リウマチの炎症を抑える治療を続けることが基本になります。関節リウマチの治療薬は、免疫の働きを調整して病気の活動性を下げるものを中心に、担当医が状態に合わせて選びます。好中球が減っている場合には、好中球を増やす方向の治療が使われることがあります。感染症を繰り返す場合には、脾臓を摘出する手術が検討されることもあります。どの治療も、効果と感染症のリスクのバランスを見ながら、リウマチ専門医と相談して決めていきます。なお、具体的な薬の名前や量については、必ず担当医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
感染症を何度も繰り返したり、好中球の減少が重く治療で改善しない場合に、脾臓を摘出する手術が検討されることがあります。ただし近年は薬物治療の選択肢が増え、手術が選ばれる機会は少なくなっています。手術の利点と注意点(感染症への備えが必要になることなど)を、担当医とよく話し合って決めることが大切です。
この病気と共に生きる
フェルティ症候群とともに生活するうえで大切なのは、感染症のサインに早く気づくことと、関節リウマチの治療を途切れさせないことです。体調の記録をつけておくと、受診のときに役立ちます。日常生活で無理をしない範囲で活動を続け、疲れを感じたら休むというリズムを作りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の体温と体調を簡単に記録する習慣をつける
- 手洗い・うがい・換気を習慣にする
- 人混みや、感染症が流行している時期の外出には気を配る
- 口腔ケアを丁寧に行う(口の中の感染予防)
- 禁煙し、過度の飲酒を避ける
- ストレスをためず、リラックスする時間を確保する
- かかりつけ医、リウマチ専門医、薬剤師と情報を共有する
食事と運動
特別な食事療法が確立しているわけではありませんが、バランスのよい食事で体力と免疫力を支えることが大切です。たんぱく質や野菜を意識し、極端な食事制限は避けましょう。運動は、関節に負担をかけすぎない範囲で、散歩やストレッチなど無理のない活動から始めます。痛みや疲れが強い日は休むなど、体の声に合わせて調整してください。運動や食事について迷ったら、担当医やリハビリの専門家に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
長く続く病気と付き合うなかで、不安や落ち込み、疲れを感じることは自然なことです。とくに感染症への不安や、通院が続くことへの負担は大きなものがあります。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを話してみてください。気分の落ち込みが続くときは、担当医に相談することが大切です。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず地域の相談窓口や医療機関、救急窓口(日本では119番)に連絡してください。
予防
フェルティ症候群そのものを確実に防ぐ方法は、現在のところ分かっていません。ただ、関節リウマチの治療を継続して病気の活動性を抑えること、感染症を予防することが、状態を悪化させないために大切です。
ワクチン
感染症を防ぐために、ワクチン接種が勧められることがあります。ただし、関節リウマチの治療内容によっては接種の時期や種類に注意が必要です。自己判断で受けず、必ず担当医に相談してから接種してください。
検診プログラム
関節リウマチの定期通院のなかで行われる血液検査が、好中球の減少や体の変化に気づく助けになります。決められた通院と検査を続けることが、実質的な早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 細菌などの感染症にかかりやすくなり、繰り返すことがあります。
- 感染症が重くなり、入院が必要になることがあります。
- 皮膚の潰瘍(治りにくい傷)ができることがあります。
- 関節リウマチの炎症が続くことで、関節の変形が進むことがあります。
- ごくまれに、血液のがん(リンパ腫など)のリスクがわずかに高まるという報告があります。
- 脾臓が大きくなることで、おなかの不快感や、血液の細胞が減ることがあります。
長期的な見通し
フェルティ症候群はまれで、聞き慣れない名前におどろかれるかもしれません。しかし、関節リウマチの治療を続けながら感染症のサインに気を配ることで、多くの方は状態を落ち着かせて生活を続けられています。治療の選択肢は年々広がっており、担当医と一緒に一つずつ対応していくことができます。不安なことがあれば、遠慮なく医療者に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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