女性器切除(FGC)について
概要
女性器切除(FGC)は、医療上の必要がないのに、女性の外から見えるデリケートな部分の一部または全部を切除したり、傷つけたりする行為をまとめた呼び方です。病気ではなく、健康上の利益はありません。強い痛みや出血、感染、排尿の困難、性や出産に関する長期的な問題、心のつらさなどを引き起こすことがあります。人権に関わる問題として、多くの国や国際機関がなくすべき慣行としています。
重要な事実
- FGCは病気ではなく、医療的な必要のない行為です。健康上の利益はありません。
- 日本では、医療上の必要性のない女性器切除は行うべきではないとされ、多くの国では法律で禁止されています。
- FGCを受けた経験があっても、あなたや子どもが責められるべきではありません。必要なケアや支援を受けることができます。
世界では2億人以上の女児・女性がFGCを受けた経験があると推定されています。主にアフリカ、中東、アジアの一部の地域や、そうした地域にルーツを持つ人々の間で行われてきました。日本でどのくらいの人が経験しているかを示す正確な全国調査はありませんが、移住してきた人々の間で相談されることがあります。
FGCは主に女児と女性に影響します。乳幼児から思春期に行われることが多いですが、大人になってから受ける場合もあります。家族や共同体の慣習、社会的な圧力が背景になることがあり、本人の自由な同意がないまま行われることが少なくありません。
症状
- 傷から大量に出血し、止まらない
- 尿がまったく出ず、強い痛みやおなかの張りがある
- 意識がもうろうとしている、ぐったりしている、呼びかけに反応が弱い
- 高熱と寒気が強く、傷の周りが急に赤く広がっている
- 呼吸が苦しい、顔色が青白い、冷汗がひどい
- 自分や子どもを傷つけたい気持ちが強く、危険を感じる
- ⚠発熱、傷の膿、におい、赤みや腫れが悪化している
- ⚠排尿時の痛みが強い、尿が少ししか出ない
- ⚠痛みで眠れない、歩けない、座れない
- ⚠新しいしこりや硬い部分ができた
- ⚠妊娠中で、痛みや出血、尿のトラブルがある
- ⚠強い不安やつらさで日常生活が難しい
一般的な症状
- 切除や傷つけられた部分の強い痛み、腫れ、出血
- 排尿時の痛み、尿が出にくい、尿路感染をくり返す
- 傷の感染、膿、におい、発熱
- 瘢痕(きずあと)や硬くなった組織による不快感
- 月経時の痛みや血が出にくい感じ
- 性交時の痛み、性に関する悩み
- 不安、悲しみ、羞恥心、トラウマを思い出すようなつらさ
- 妊娠・出産に関する不安や合併症
子供の症状
- おむつ替えや排尿時に強く泣く、痛がる
- 外から見える部分の出血、腫れ、赤み、膿
- 歩き方や座り方がいつもと違う、動きたがらない
- 排尿をこわがる、トイレを嫌がる
- 熱がある、元気がない、食欲が落ちる
- 不安が強くなる、夜泣き、眠りの変化、表情が少なくなる
- 学校や友だちとの関わりを避ける、一人でいたがる
高齢者の症状
- 慢性的な痛みや瘢痕による違和感が続く
- 排尿のトラブル、くり返す尿路感染
- 性交時の痛みや性機能に関する悩み
- 月経や更年期の症状と重なってつらさが強まる
- 妊娠・出産の経験による合併症や記憶のつらさ
- PTSD(つらい出来事の記憶がよみがえる状態)、うつ、不安
- 医療機関を受診することへの恐怖やためらい
原因
主な原因
- 慣習や伝統として、家族や共同体の中で行われてきた
- 清潔さ、結婚、出産、女性らしさなどについての誤った考え
- 周囲からの同調圧力や、受けなければならないという社会的な圧力
- 女性と女児の立場が弱く置かれやすい社会的な背景
- 移住や難民などの状況で、支援から孤立しやすいこと
リスク要因
- FGCを行う慣習がある家族や共同体の背景がある
- 女児であること、思春期前後であること
- 家族や周囲から強い同調圧力を受けている
- 教育や保健サービス、相談できる人へのアクセスが限られている
- 移住先で孤立している、言葉や制度の壁がある
- FGCを受けた経験がある人から、同じようにするよう促される
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血、強い痛み、発熱、傷の膿や悪臭がある
- 尿が出ない、排尿がとても痛い
- 妊娠中に痛み、出血、尿のトラブルがある
- 子どもが排尿時に強く泣く、元気がない、歩きたがらない
- つらい記憶がよみがえってパニックになる、眠れない日が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 性や月経、排尿、痛み、瘢痕について相談したい
- 妊娠を考えている、妊娠中である
- FGCを受けた経験について、誰かに話したい
- 自分の子どもや身近な女児が危険にさらされているかもしれないと感じる
- 心のつらさや人間関係の悩みがある
- どの医療機関に相談すればよいかわからない
診断
FGCそのものを調べる特別な血液検査はありません。問診で症状やこれまでの経験を聞き、必要に応じて、同意を得たうえで外から見える部分をやさしく診察します。診察を受けたくない気持ちがあるときは、そのことを伝えてください。無理に行う必要はありません。症状に応じて、排尿や感染、妊娠、心の状態などを確認します。
行われる可能性のある検査
- 問診と、同意を得たうえでの診察
- 血液検査
- 性感染症の検査(本人が希望する場合)
- 妊娠検査
- 超音波検査(必要に応じて)
- 心理面の評価や相談
診察で予想されること
診察は個室で、プライバシーに配慮して行われるべきです。必要なら通訳や付き添いの人に同席してもらえます。写真撮影や不要な診察は、同意なしに行われません。つらい気持ちが強いときは、診察を一時中断してもらうこともできます。わからないことは遠慮なく質問してください。
治療
FGCを受けたことで起きる症状や悩みに対して、体と心の両方のケアを行います。治療の目的は、痛みや感染、排尿の困難、性や出産に関する問題をやわらげ、安心して生活できるようにすることです。必要に応じて、婦人科、泌尿器科、産科、精神科・心療内科などの専門家と連携します。
自宅でのセルフケア
- 外から見える部分は、ぬるま湯か水でやさしく洗い、刺激の強い洗浄剤や香料入りの製品を避ける
- 通気性のよい下着やゆったりした服を選ぶ
- 水分を十分にとり、尿を我慢しすぎない
- 痛みや不安について、信頼できる医療者に相談する
- 月経用品や性交時の痛みについて、自分に合う方法を医療者と一緒に考える
- つらい記憶がよみがえるときは、無理をせず、安全な場所で落ち着ける方法を試す
- 身近な女児の安全が心配なときは、一人で抱えず、自治体の相談窓口や医療機関に相談する
医療治療
症状に応じて、感染症の治療、排尿困難への対応、痛みの管理、性機能や妊娠・出産に関するケア、心理社会的な支援を行います。薬が必要な場合も、医師が症状と安全性をみて判断します。医療者はあなたの話をよく聞き、同意を得ながらケアを進めるべきです。必要に応じて専門医へ紹介します。
手術が検討される場合
閉鎖した組織を開く手術や、瘢痕(きずあと)の治療が必要なことがあります。排尿や性交、出産に強い支障がある場合などに、経験のある医療チームと相談して検討します。手術がすべての人に必要というわけではなく、メリットとリスクを十分に説明を受けたうえで決めます。妊娠・出産の前に計画することもあります。
この病気と共に生きる
FGCによる症状は、適切なケアで軽くなることがあります。体の不調を一人で我慢せず、信頼できる医療者を見つけてください。話すことがつらいときは、まずは「デリケートな悩みがある」と伝えるだけでもかまいません。生活の中で安全だと感じられる場所や、安心できる人との時間を大切にしてください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける。喫煙は傷の治りや血流に悪影響を与えることがある
- 十分な睡眠と休息をとる
- 性感染症を防ぐため、必要に応じて安全な性行動について医療者に相談する
- 定期的な健康診断や婦人科相談を、無理のない範囲で受ける
- つらいときは一人で抱えず、信頼できる人や相談窓口につながる
- 子どもや身近な女児の安全が心配なときは、早めに支援を求める
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と十分な水分をとり、無理のない範囲で体を動かすことが、体調と心の安定に役立ちます。排尿のトラブルがあるときは、水分を減らしすぎず、医療者に相談してください。骨盤底の運動は、産婦人科やリハビリの専門家に相談してから行うと安心です。
精神的健康と心の健康
FGCの経験は、不安、うつ、PTSD(つらい記憶がよみがえる状態)、羞恥心、人間関係や性に関する悩みにつながることがあります。これはあなたの弱さではなく、つらい経験への自然な反応です。心のケアは大切な治療の一部です。つらい気持ちが強いとき、自分や子どもを傷つけたい気持ちがあるとき、危険を感じるときは、ためらわず119番や地域の救急・医療機関、自治体の相談窓口に連絡してください。
予防
FGCは、地域社会への教育、法律や制度、女児を守る仕組み、医療者への研修、相談できる場を増やすことなどで減らせると考えられています。医療者がFGCを行ったり、医療の名の下に行ったりしてはいけません。危険があると感じたら、早めに自治体や医療機関、学校などの相談窓口につながることが大切です。
ワクチン
FGCを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
FGC自体を早期に見つけるための決まったスクリーニング検査はありません。排尿の痛み、月経の悩み、性に関する痛み、心のつらさなどがあるときは、婦人科やかかりつけ医に相談してください。妊娠を考えているときや妊娠中は、事前に医療者に伝えるとケアの計画を立てやすくなります。
合併症
治療しない場合
- 出血や感染症が長引く
- 排尿の痛み、尿が出にくい、くり返す尿路感染
- 慢性的な痛みや瘢痕(きずあと)の違和感
- 性交時の痛みや性に関する悩み
- 月経時の痛みや不快感
- 妊娠・出産時の合併症(長時間の分娩、裂傷、帝王切開が必要になるなど)
- 不安、うつ、PTSD(つらい記憶がよみがえる状態)
- 人間関係や自己肯定感への影響
長期的な見通し
FGCによる症状やつらさは、適切なケアと支援で軽くなることがあります。合併症があっても、治療や相談で生活の質を高めることはできます。あなたのペースで支援につながってよいのです。一人で抱え込まず、信頼できる医療者や相談窓口を頼ってください。
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最終更新: 2026年10月23日
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