女性器切除(FGM)について知っておきたいこと
概要
FGM(女性器切除)は、医療上の必要がないのに、女性の外性器(体の外側にあるデリケートな部分)を切ったり、傷つけたり、別の形に変えたりする行為です。多くは乳幼児期から10代の女の子に行われ、本人が十分に理解し同意できないまま受けてしまうことが少なくありません。世界保健機関(WHO)は、健康に害を及ぼす慣行であり、人権を侵害する行為だとして、やめるよう呼びかけています。日本では、医療上の必要がない目的で人の体を切る行為は法律に反する可能性があり、行われることはほとんどありません。しかし、FGMを行う習慣のある国や地域にルーツを持つ方、これから国際結婚や海外赴任を考える方にとっては、正しい知識が大切です。
重要な事実
- FGMは医療的な必要のない行為で、国際的に人権侵害とされています。WHOは世界で2億人以上の女性と女の子が経験しているとしています。
- 痛み、出血、感染、排尿のトラブル、出産時の合併症など、体への影響は長く続くことがあります。心への影響も小さくありません。
- つらい経験のあとでも、適切なケアとサポートを受けることで、体も心も少しずつ楽になっていくことができます。
世界には、FGMを行う習慣がある国や地域が複数あります。一方、日本国内で行われることはほとんどなく、法律上も認められていません。ただし、日本に住む外国出身の方の中には、過去に経験した方もいます。決して珍しい話題ではないと知っておくことが、支援の第一歩になります。
主に、FGMを行う習慣がある国や地域の出身の女性と女の子です。多くは乳幼児期から15歳ごろまでに行われますが、大人になってから受ける場合もあります。本人だけでなく、家族やパートナー、そしてこれから生まれてくる子どもたちを守るためにも、周りの大人の知識が役立ちます。
症状
- 大量の出血が止まらない、血があふれてくる
- 意識がもうろうとしている、ぐったりしている、顔色が青白い
- おしっこがまったく出ない、おなかが張って激しく痛む
- 高熱と、陰部の強い腫れ・痛みが一緒にある(重い感染の可能性)
- 自分を傷つけたい気持ちが強い、命を絶ちたいと考えている
- ⚠出血が続いている、腫れが広がっている
- ⚠排尿時の強い痛みや、発熱がある
- ⚠傷あとから膿(うみ)が出る、化膿している感じがする
- ⚠性交のあとに激しい痛みがある
- ⚠妊娠中で、痛みや出血がある
- ⚠つらくて眠れない、食べられないなど、日常生活が保てない
一般的な症状
- 切った部分の痛みや、続く慢性的な痛み
- 出血、腫れ、熱感
- おしっこが出にくい、排尿のときの痛み、尿路感染(膀胱炎など)をくり返す
- 月経血が出にくい、生理痛が強い
- 性交(セックス)のときの強い痛み
- 傷あとが硬く盛り上がる、袋状のふくらみ(嚢胞)ができる
- おりものの異常、かゆみ、におい、発熱などの感染のサイン
- 不安、気分の落ち込み、眠れない、つらい記憶がよみがえる(フラッシュバック)
- 妊娠中や出産のときのトラブル
子供の症状
- おしっこのとき痛がる、排尿をこわがる
- おむつや下着に血がつく
- 陰部のかゆみ、腫れ、おりものの異常
- 歩き方や座り方を気にする、股を開きたがらない
- 診察を極端にいやがる、体を見られるのを怖がる
- 夜泣きが増える、急に不安が強くなる、態度が変わる
高齢者の症状
- 閉経後の乾燥や傷あとの硬さで、痛みが強まることがある
- 排尿のトラブルや、くり返す尿路感染
- 過去の出産時のトラブルが、年を重ねてから影響することがある
- 長年だれにも話せなかったことで、孤立感や喪失感、うつ的な気分が続く
- 婦人科の検診を避けてきたことで、別の病気の発見が遅れることがある
原因
主な原因
- 医療上の理由がないのに、慣習や伝統として行われていること
- 「女の子の体を清潔に保つため」「貞節を守るため」といった、誤った考えが伝えられていること
- 結婚の条件として求められるなど、社会的な圧力があること
- 宗教と結びつけて語られることがあるが、主要な宗教の教えとして義務づけられているわけではないこと
- 正しい医療知識や、体について学ぶ機会が少ないこと
リスク要因
- FGMを行う習慣がある地域・国にルーツがある
- 家族や親族の中に、経験した人がいる
- 教育や正しい情報へのアクセスが限られている
- 紛争や移住などで、地域のつながりや支援が途切れている
- 女性と男性の間に、社会的な力の差がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 出血が止まらない、または繰り返す
- おしっこが出ない、排尿がとてもつらい
- 高熱と陰部の強い腫れ・痛みがある
- 妊娠中に痛みや出血がある
- 自分を傷つけたい気持ちがある、生きるのがつらいと感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 慢性的な痛みや生理痛、性交痛がある
- 尿路感染をくり返している
- 妊娠を考えている、または妊娠中である
- 気分の落ち込みや不安、眠れない状態が続いている
- 体のことで相談したい、話を聞いてほしいという気持ちがある
診断
医師はまず、あなたの話を聞くところから始めます。痛みや排尿、月経、性生活、気持ちの状態などを、無理のない範囲で伺います。そのうえで、あなたが同意したときにだけ、体を拝見して状態を確認します。無理に診察する必要はありません。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状やこれまでの経過、生活の状況を聞くこと)
- 同意を得たうえでの視診(外側から状態を確認すること)
- 尿検査(感染や排尿のトラブルを調べる)
- おりものや傷あとの検査(感染の有無を調べる)
- 超音波検査(子宮や卵巣など、体の内側の状態を見る)
- 必要に応じた血液検査
- 気持ちの状態を確認する質問紙や面談
診察で予想されること
診察の前に、何をするのか説明を受けられます。女性の医師を希望することも、付き添いの人と一緒に受けることもできます。言葉が不安なときは、通訳ややさしい日本語での説明を相談してみてください。体の状態だけでなく、生活や気持ちのことを含めて、あなたにとって無理のない形で進めていきます。
治療
治療の目的は、痛みや感染などの症状をやわらげ、体と心の健康を取り戻すことです。必要なケアは人によって異なり、手術が必要な場合もあれば、そうでない場合もあります。あなたの希望と同意を最優先に、いくつかの選択肢の中から一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 陰部は、刺激の少ない石けんとぬるま湯でやさしく洗い、よく乾かす
- 通気性のよい下着を選び、締めつけの少ない服を着る
- 水分をこまめにとり、排尿を我慢しない
- 便秘を防ぐために、食物繊維をとり、無理のない範囲で体を動かす
- 症状が出た日や状況をメモしておくと、診察のときに役立つ
- 信頼できる人に少しずつ話してみる。ひとりで抱えなくて大丈夫です
医療治療
症状に合わせて、痛みのケア、感染がある場合の治療、排尿のトラブルのケア、月経や妊娠・出産に関する相談と計画づくりを行います。心のケアも大切で、カウンセリングや心理療法、トラウマ(心の傷)へのケアが利用できます。骨盤の底の筋肉を整えるリハビリのような支援が役立つこともあります。薬が必要な場合は、医師や薬剤師があなたに合った方法を説明します。
手術が検討される場合
排尿や月経、性交、出産に支障がある場合には、手術が選択肢になることがあります。閉じられた部分を開く手術(除術)や、傷あとの治療、再建のための手術などが検討されます。手術はあくまで選択肢のひとつで、受けるかどうかはあなたが決めることです。妊娠を考えている場合は、出産の前に相談しておくと安心です。
この病気と共に生きる
痛みや不安がある日は、無理をせず休むことも大切です。体の状態に合わせて予定を調整したり、つらいときに頼れる人を決めておいたりすると、毎日が少し楽になります。婦人科の受診が必要なときは、事前に「話しづらいことがある」と伝えておくと、配慮を受けやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と休息を心がける
- 自分を責めない。あなたのせいではないと、何度でも思い出してよい
- 話せる相手を、家族・友人・支援者の中から少しずつ見つける
- SNSや情報に触れてつらくなるときは、距離を置く
- 体の変化を記録しておき、受診のときに活用する
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスよく食べ、水分をとることが基本です。便秘は骨盤のあたりに負担をかけるので、野菜や海藻、豆類などを意識してとりましょう。運動は、ウォーキングやストレッチ、ゆっくりした呼吸など、心地よい範囲で続けるのがおすすめです。痛みが強いときは無理をせず、医師や理学療法士に相談してください。
精神的健康と心の健康
FGMを経験した方の中には、不安、気分の落ち込み、悪夢、つらい記憶のよみがえり、自分への恥や罪悪感、人との関係の難しさを感じる方がいます。これは弱さではなく、つらい経験への自然な反応です。ひとりで抱えず、医療機関や相談窓口を頼ってください。気持ちがとてもつらいとき、自分を傷つけたい気持ちが出てきたときは、すぐに119番に連絡するか、地域の救急相談や医療機関に連絡してください。命を守ることが何よりも大切です。
予防
はい、防ぐことができます。FGMは医療的な必要のない行為なので、正しい知識と地域社会の対話によってなくすことができます。女性と女の子の体と権利を守るための教育、地域のリーダーや宗教者との対話、法律による禁止、医療従事者への啓発、学校や行政による見守りが力を合わせることが大切です。日本では、子どもの心身に危険が及ぶことが疑われる場合、児童虐待防止の仕組みに基づいて関係機関が連携し、子どもを守るための対応が行われます。子どもの安全が心配なときは、ためらわず自治体の窓口や警察に相談してください。
検診プログラム
FGMそのものを早期に見つけるための決まった検診はありませんが、妊娠中や婦人科を受診したときに、体の状態やこれまでの経過を確認することがあります。また、FGMを受けた方でも、子宮頸がん検診や乳がん検診など、ふだんの健康診断は大切です。受診が不安なときは、その気持ちを先に伝えてみてください。
合併症
治療しない場合
- 慢性的な痛みが続く
- 傷あとが硬くなったり、袋状のふくらみ(嚢胞)ができたりする
- 尿路感染や腟の感染をくり返す
- 排尿や月経血の排出がしづらくなる
- 性交のときの痛みが続き、親密な関係に影響することがある
- 妊娠・出産のときに、裂傷や難産などのトラブルが起こりやすくなる
- 不安、うつ、心的外傷後ストレス(PTSD)のような心の不調が続く
- 人に話せないことで孤立し、必要なケアを受けられないままになる
長期的な見通し
症状の多くは、適切なケアによってやわらげることができます。痛みや感染の治療、手術の選択肢、心のケアなど、できることはいくつもあります。今つらくても、相談することで道が開けていくことは少なくありません。あなたの体と心は、大切にされるべきものです。
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最終更新: 2026年10月23日
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