線維性骨異形成症(せんいせいこついけいせいしょう)
概要
線維性骨異形成症は、骨の中の一部が、本来の丈夫な骨のかわりに、線維のようなやわらかい組織に置きかわってしまう病気です。英語では「ファイブロース・ディスプラシア(Fibrous Dysplasia)」と呼ばれます。多くは良性(悪性のがんではない)で、ゆっくり進みます。骨がもろくなって曲がったり折れやすくなったりすることがありますが、症状がほとんどないまま、ふつうに生活している方も少なくありません。
重要な事実
- 骨にできる良性の変化で、がんでありません。
- 遺伝する病気ではなく、家族やお子さんにうつることもありません。
- 子どものうちに見つかることが多く、成長が終わると落ち着いてくることが多いです。
- 症状の強さや骨の場所によって、経過を見るだけでよい場合から治療を行う場合までさまざまです。
比較的まれな病気で、正確な頻度はわかっていません。街を歩いていて何人も出会うような、よくある病気ではありません。
子どもから若い成人の時期に見つかることが多く、男女どちらにも起こります。食べ物や生活習慣、けがが原因で起こるものではありません。
症状
- 骨が皮膚を突き破っている、または明らかに曲がって動かせないほどの激痛がある
- けいれん、意識がぼんやりする、いつもと違う激しい頭痛がある
- 急に見えにくくなる、ものが二重に見える、急に聞こえにくくなる
- ⚠同じ場所の痛みが数日で急に強くなってきた
- ⚠腫れや熱感が急に増した、触ると強い痛みがある
- ⚠視力や聴力の変化に気づいた
- ⚠歩くときに強い痛みがあり、日常生活がつらい
一般的な症状
- 骨のあたりの、ずきずきしない鈍い痛み
- 骨が膨らんだり、腫れたりする
- 骨が曲がる、左右で形が違って見える
- 少しのことで折れやすい(病的骨折)
- 脚に起こると、歩き方にくせが出たり、脚の長さが違ったりする
- 顔の骨に起こると、顔の左右が非対称に見えることがある
- 痛みのないまま、レントゲンで偶然見つかることも多い
子供の症状
- 成長にともなって骨の曲がりが進みやすい
- 脚の長さの違いや、歩き方のくせが出ることがある
- 皮膚に茶色っぽいあざ(カフェオレ斑)が見られることがある
- 思春期が早く来ることがある(ホルモンの変化によるもの)
- 学校生活や体育で、痛みや疲れやすさを訴えることがある
高齢者の症状
- 成人になってから、別の理由の検査で偶然見つかることもある
- 年齢を重ねると、痛みや変形の進み方はゆっくりになることが多い
- 閉経後の骨の弱りと重なって、骨折の心配が出てくることがある
- ごくまれですが、長く続いた病変に変化が起こることがあるため、定期的な確認が大切
原因
主な原因
- 胎児の時期に、骨をつくる細胞のなかで偶然起こる遺伝子の変化(GNAS遺伝子の体細胞変異)が原因と考えられています。
- この変化は体の一部の細胞にだけ起こるため、全身に伝わることはなく、親から子へ遺伝することはありません。
- けが、食事、運動などの生活習慣が原因で起こるものではありません。
リスク要因
- 生まれつきの偶然の変化によるもので、生活で気をつけて防げる危険因子は知られていません。
- 複数の骨に変化がある場合や、皮膚のあざ・ホルモンの変化を伴う場合(マッキューン・オールブライト症候群と呼ばれます)は、症状が広がりやすいことがあります。
- 子どもの成長期は骨の変化が進みやすい時期です。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に強くなる痛みや、増え続ける腫れがある
- けがをしていないのに、骨が折れたり曲がったりした
- 見え方や聞こえ方の変化に気づいた
- 歩行が難しくなった、日常生活に支障が出ている
定期受診を予約すべき場合:
- 体のどこかに、気になる膨らみや左右差がある
- 同じ場所の痛みが何週間も続いている
- 健康診断やレントゲンで「骨に異常がある」と言われた
- お子さんの歩き方や脚の形が気になる
- 思春期が早く来たように感じる
診断
まず問診と診察で、痛みの場所や気になる症状、これまでの経過をうかがいます。そのうえで、骨の状態を写す画像検査を行い、必要に応じて血液検査や、骨の一部を調べる検査(生検)を組み合わせて診断します。
行われる可能性のある検査
- レントゲン検査:骨の形や変化の様子を写します。
- CT検査:骨の詳しい形や、周りの組織との関係を調べます。
- MRI検査:骨の中ややわらかい部分の状態を調べます。
- 骨シンチグラフィ:体のどこに変化があるかを確認します。
- 血液検査:骨の代謝やホルモンの状態を確認します。
- 生検(病理検査):必要に応じて、骨のごく一部を採取して詳しく調べます。
診察で予想されること
レントゲンやCT、MRIは痛みがなく、短時間で終わります。生検を行う場合は、局部麻酔や全身麻酔を使うことがあり、結果が出るまで1〜2週間ほどかかることがあります。診断がつくまで不安な気持ちになるかもしれません。聞きたいことをメモしておき、担当医に一つずつ確認すると気持ちが整理しやすくなります。
治療
治療の目標は、痛みをやわらげ、骨の変形や骨折を防ぎ、ふだんの生活をできるだけ保つことです。症状の強さや骨の場所によって、経過を見るだけですむ場合から、薬や手術を組み合わせる場合までさまざまです。
自宅でのセルフケア
- 転びにくい環境を整える(照明、手すり、滑りにくい床、敷物の見直しなど)
- 痛みのある日は無理をせず、活動と休養のバランスをとる
- 杖や装具など、動きを助ける道具を必要に応じて使う
- 体重を適正に保ち、骨や関節への負担を減らす
- 禁煙する(骨の健康にもよい影響があります)
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- サプリメントなどを自己判断で始める前に、医師や薬剤師に相談する
医療治療
痛みには、痛み止めが使われることがあります。また、骨の痛みや骨の弱りに対して、骨の吸収を抑える種類の薬が検討されることもあります。どの薬を、どのくらいの期間使うかは、年齢や症状、骨の状態をみて医師が一人ひとり判断します。自分で判断して薬を始めたり中止したりせず、処方されたとおりに使いましょう。リハビリ(理学療法)や装具も、動きやすさを保つのに役立ちます。骨の状態に合わせた運動の指導を受けることもあります。
手術が検討される場合
骨の曲がりが強い、骨折をくり返す、痛みが強い、神経や血管を圧迫している、見た目の悩みが大きい、といった場合に手術が検討されます。方法は骨の場所や状態によって異なり、担当医とよく相談して決めます。すべての方に必要なわけではありません。
この病気と共に生きる
定期的な通院で骨の状態を確認しながら、できるだけふだんどおりに過ごすことが大切です。痛みや疲れが出た日は予定を詰め込みすぎず、体調に合わせて調整しましょう。学校や職場には、必要な範囲で状況を伝えておくと過ごしやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- ウォーキングや水泳など、無理なく続けられる運動を選ぶ
- ジャンプやぶつかり合うスポーツなど、骨に強い衝撃がかかる活動は控えめにする
- 自転車や車の移動時など、けがを防ぐ工夫をする
- 服装や靴は、歩きやすさを優先する
- 飲酒や喫煙は控えめにする
- 必要に応じて、学校・職場・スポーツの指導者に事情を伝えておく
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事を心がけ、カルシウム(乳製品、小魚、大豆製品、青菜など)とビタミンD(魚、きのこ類、適度な日光浴)をとりましょう。運動は、骨に強い負担をかけるものは控えめにし、ウォーキングや水泳など、続けやすいものを選ぶとよいでしょう。どの程度の運動が安全かは骨の状態によって変わるので、医師や理学療法士に相談してください。
精神的健康と心の健康
見た目の変化や痛み、通院の負担から、不安や落ち込みを感じることがあります。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、精神科・心療内科や、お住まいの自治体のこころの健康相談窓口に相談できます。自分や周りの人の命が危ぶまれると感じたら、ためらわず救急(119番)を呼んでください。
予防
線維性骨異形成症は、胎児の時期に偶然起こる遺伝子の変化が原因で、生活習慣で防ぐことはできません。遺伝する病気ではないので、ご家族やお子さんに受け継がれる心配はありません。
検診プログラム
症状のない人を対象にした決まった検診はありません。骨の異常を指摘されたことがある方や、気になる症状がある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 骨がもろくなり、骨折しやすくなる
- 骨の曲がりや変形が進み、関節に負担がかかる
- 変形による痛みが続き、歩行や日常生活がつらくなる
- 顔や頭の骨に変化がある場合、神経を圧迫して視力や聴力に影響することがある
- ホルモンのバランスが乱れることがある(思春期早発など)
- ごくまれですが、長く続いた病変に悪性の変化が起こることがある(1%未満といわれています)
長期的な見通し
多くのかたは、治療や生活の工夫をしながらふつうの生活を送っています。成長が終わると病気の動きが落ち着くことが多く、症状が軽い場合は大きな問題にならないこともあります。定期的に経過を見ていくことで、変化に早く気づけます。不安なことがあれば、そのつど担当医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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