依存症から抜け出すための5つの行動ステップ
概要
依存症(いぞんしょう)とは、お酒・たばこ・薬物・ギャンブル・ゲームなど、ある物質や行動に強く引き寄せられ、やめたいと思ってもやめられなくなり、健康や生活、人間関係に支障が出ている状態をいいます。脳の「心地よい」「報酬」と感じる仕組みが変化してしまうことで起こり、意志が弱いからなるものではありません。依存症は治療と支援で回復できる状態です。この記事では、やめたいと感じたときに役立つ5つの行動ステップを紹介します。
重要な事実
- 依存症は脳の働きの変化によって起こるもので、性格や意志の弱さが原因ではありません。
- 治療・心理的な支援・仲間の支えを組み合わせることで、回復への道はあります。
- 早めに誰かに相談するほど、選べる支援の方法が広がります。
依存症は決して特別な人の問題ではありません。日本でもお酒やたばこ、薬物、ギャンブル、インターネットなどさまざまな形で多くの人が経験しており、厚生労働省も依存症を重要な健康課題として対策を進めています。
年齢や性別を問わず、誰にでも起こりえます。若い頃から始まることもあれば、仕事や家庭のストレス、孤立、うつや不安といったこころの不調をきっかけに始まることもあります。本人だけでなく、家族や周りの人も影響を受けるのが特徴です。
症状
- 意識がない、またはもうろうとしている
- 呼吸が浅い、息が止まりそう、唇の色が悪い
- けいれんが起きている
- 大量に飲んだ・使った可能性がある
- 激しい離脱症状(体の震え、汗、幻覚、けいれん)が出ている
- 自分を傷つけたい、または人を傷つけるかもしれないと考えている
- ⚠離脱症状が強く、日常生活が難しい
- ⚠水分や食事がとれない、嘔吐が続く
- ⚠強い不安・不眠・動悸が続く
- ⚠転倒やけがをした
- ⚠気分の落ち込みが強く、ひとりでいるのがつらい
一般的な症状
- やめたい、減らしたいと思っているのに、思うようにやめられない
- 使う量や時間、回数がだんだん増えていく
- 使えないとイライラする、不安になる、眠れなくなる、落ち着かない
- 健康を害したり、お金が足りなくなったりしても続けてしまう
- 仕事・学業・家事など、やるべきことに支障が出ている
- 家族や周りに隠したり、本当のことを言わなかったりする
- そのことばかり考えてしまい、他の楽しみが減っていく
- 人間関係のトラブルや、お金の問題が起きている
子供の症状
- ゲームやインターネット、スマートフォンの使用をやめられず、時間がどんどん増える
- 使用を制限されると、ひどく怒る・不機嫌になる
- 学校を休みがちになる、成績が下がる
- 睡眠や食事のリズムが乱れる
- 友人関係が変わったり、外で遊ばなくなったりする
高齢者の症状
- 定年や家族の死などをきっかけにお酒が増える
- 眠れない・痛いなどのために薬を使いすぎてしまう
- 孤独感や喪失感から、依存を抱え込みやすい
- 体の病気や転びやすさ、物忘れと重なりやすい
- 家族に隠れて使うことがあり、周りが気づきにくい
原因
主な原因
- 脳の報酬の仕組みが変化し、その物質や行動を強く求めるようになる
- もともとの体質や遺伝的な傾向
- うつ病や不安症など、こころの不調との関わり
- 強いストレスやつらい経験、孤独感
- 身近に手に入りやすい環境や、周囲の習慣
- 若い年齢で使い始めること
リスク要因
- 家族に依存症の人がいる
- こころの病気を抱えている
- 社会的に孤立している、相談相手がいない
- 経済的な困難や仕事のストレスが大きい
- 痛み止めなどを長期間使っている
- ゲームやSNS、買い物などにいつでもアクセスできる環境にある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 離脱症状が強く出て、自分では対処できない
- 意識がもうろうとしている、けいれんがある
- 自分を傷つけたい気持ちが強くなっている
- 急にやめたことで体調が大きく崩れた
定期受診を予約すべき場合:
- やめたいのにやめられないと感じている
- 使う量や時間が増えている
- 健康診断や病院で指摘された
- 家族や友人から心配された、指摘された
- 仕事・学業・家事や、お金の管理に支障が出ている
診断
診断は、ふだんの使用の状況や生活への影響についての問診をもとに、決められた診断の目安に当てはまるかを確認して行います。同時に、体とこころの状態も丁寧に確認します。話しづらい内容もあるかもしれませんが、正直に話すほど、あなたに合った支援につながりやすくなります。
行われる可能性のある検査
- 問診(使用の量・頻度・きっかけ・生活への影響について)
- 血液検査(肝臓や栄養状態などを確認)
- 血圧・脈拍などの基本的な体のチェック
- こころの状態をみる質問票(気分や不安など)
- 必要に応じて心電図や画像検査
診察で予想されること
診察では責められたり、怒られたりすることはありません。守秘義務があり、話した内容はあなたの同意なく外に伝わることはありません。一緒に目標を決め、無理のないペースで進めていきます。
治療
依存症は治療できる状態です。体の安全を守るための支援、こころのケア、そして人とのつながりを組み合わせて進めていきます。一度で終わるものではなく、時間をかけて少しずつ取り戻していくイメージです。再発しても、それは失敗ではなく回復の途中の出来事として扱われます。
自宅でのセルフケア
- ステップ1:今の状況を正直に見つめる。使った日時や量、そのときの気持ちをメモに残してみましょう。責めるためではなく、パターンを知るためです。
- ステップ2:ひとりで抱えず、信頼できる人か専門家に話す。家族、友人、かかりつけ医、保健所、精神保健福祉センター、自助グループのどれでもかまいません。
- ステップ3:具体的な目標と「やめる日」を決める。いきなり完全にやめるのが難しければ、減らす目標から始めても構いません。小さく具体的に決めるのがコツです。
- ステップ4:引き金(トリガー)を遠ざけ、代わりの行動を用意する。お酒を家に置かない、スマホの使用時間を決める、渇望が来たときに散歩や連絡をするなど、あらかじめ決めておきます。
- ステップ5:支えを続ける。定期的に相談する、仲間の集まりに参加する、家族にも支援を受けてもらう。調子がよいときこそ支えを保つことが、再発を防ぐ助けになります。
- 睡眠をしっかりとる、決まった時間に食べる、軽い運動をするなど、体のリズムを整えることも土台になります。
医療治療
治療は、医師の見守りのもとで安全に体を整えることから始まることがあります。急にやめると体調が大きく崩れる場合があるため、自分だけで判断せず相談することが大切です。あわせて、考え方や行動のパターンを見直す心理療法(話し合いによる治療)、グループでの支援、家族への支援などが組み合わされます。必要に応じて、渇望やこころの不調を和らげるための薬が使われることもありますが、内容は医師があなたの状態に合わせて判断します。状態によっては入院して集中的に治療することもあります。日本では医療機関のほか、精神保健福祉センターや保健所、自助グループなどが連携して支えます。
手術が検討される場合
依存症は手術で治すものではありません。治療の中心は、医療的な支援と心理社会的なサポート、そして人とのつながりです。
この病気と共に生きる
回復は一直線ではありません。調子のよい日もあれば、つらい日もあります。再発してしまっても、そこで終わりではなく、何がきっかけだったかを知る手がかりになります。その日の小さな積み重ねを大切にしてください。お金の管理や付き合い方の見直しなど、暮らしの環境を整えることも助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠・食事・活動の時間をできるだけ一定にする
- 使うきっかけになる場所や人との付き合い方を、無理のない範囲で見直す
- 新しい趣味や、体を動かす習慣を一つつくる
- スマートフォンやゲームの使用時間をあらかじめ決めておく
- 家族や友人と、率直に話せる時間をつくる
- 家計を見える化し、使いすぎを防ぐ仕組みをつくる
食事と運動
バランスのよい食事と決まった時間の食事は、体と気分の安定を助けます。脱水や栄養不足になりやすいので、こまめな水分と食事を心がけましょう。ウォーキングなどの軽い運動は、気分を整え、睡眠を深め、強い渇望がわいたときの気をそらすのにも役立ちます。無理のない範囲から始めてください。
精神的健康と心の健康
依存症とこころの不調は深く関わります。自己嫌悪や孤立、うつ的な気分、強い不安が生じることがあります。それはあなたの弱さではなく、抱えているものが大きいというサインです。誰かに話すこと、専門家に相談することが助けになります。もし自分を傷つけたい気持ちが強くなったら、ひとりで抱えず、すぐに119番に連絡するか、地域の緊急の相談窓口を頼ってください。命を守ることが何よりも優先です。
予防
依存症を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げることはできます。こころの不調に早めに対処すること、ストレスとの付き合い方を身につけること、困ったときに相談できる関係をつくっておくことが大切です。若い時期からの予防教育も、厚生労働省が力を入れている分野です。
検診プログラム
健康診断などで飲酒や喫煙について聞かれることがあります。自分では気づきにくいこともあるので、量や頻度について聞かれたら正直に答えましょう。「もしかして」と感じたら、自治体の相談窓口やかかりつけ医に早めに相談することが、予防にもつながります。
合併症
治療しない場合
- 肝臓・心臓・脳など体の病気のリスクが高まる
- うつや不安が強くなり、孤立しやすくなる
- 仕事や学業を続けることが難しくなる
- 家庭や人間関係が壊れていく
- 借金や法律上の問題が生じることがある
- 使いすぎによる救急搬送や、命に関わる事態のリスクが高まる
長期的な見通し
依存症は回復できる状態です。支援を受けて、生活や健康、人間関係を取り戻していく人はたくさんいます。再発しても、そこからまた一歩を踏み出せます。焦らずに、専門家や信頼できる人と一緒に進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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