インフルエンザ(流行性感冒)
概要
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが気道(鼻やのど、肺までの空気の通り道)に入って起こる感染症です。ふつうの「かぜ」とはウイルスの種類が違い、急に高い熱が出て、筋肉痛やだるさなど全身の症状が強いのが特徴です。多くの人は1〜2週間ほどで回復しますが、高齢者や小さな子ども、持病のある人では重症になることがあります。
重要な事実
- 日本では毎年冬(およそ12月から3月)に流行します。
- 症状は急に出ることが多く、発熱、寒気、筋肉痛、だるさが目立ちます。
- 手洗い・咳エチケット・換気などの基本的な対策と、毎年のワクチン接種が重症化を防ぐ助けになります。
とてもよくある感染症です。日本では毎年冬に流行し、多くの人が一度はかかった経験があります。流行の規模は年によって変わります。
どの年齢の人もかかります。特に、65歳以上の方、小さな子ども(特に5歳未満)、妊婦の方、喘息・糖尿病・心臓病・腎臓病などの持病がある方、免疫の働きが弱まっている方は、重症化しやすいとされています。
症状
- 呼吸が苦しい、息が速い、顔色や唇が青白い
- 意識がない、または呼びかけへの反応が弱い・ぼんやりしている
- けいれんが続く、または何度も繰り返す
- 水分をまったく飲めない、尿がほとんど出ないなど脱水が強く疑われる
- ぐったりして反応が弱い(特に乳幼児)
- ⚠高い熱が3日以上続く、または一度下がった熱が再び上がる
- ⚠症状が急に悪化する(息苦しさ、胸の痛みなど)
- ⚠持病がある方、妊婦の方、乳幼児、65歳以上の方で症状が出た
- ⚠嘔吐や下痢が続き、水分がとりにくい
- ⚠元気がなく、日常生活の動作が難しい
一般的な症状
- 突然の高い熱(38℃以上になることが多い)
- 寒気・ぞくぞくする感じ
- 筋肉痛や関節の痛み
- 強いだるさ・疲れやすさ
- のどの痛み、咳、鼻水
子供の症状
- 高い熱が出やすく、ぐったりすることがある
- 呕吐(おうと)や下痢を伴うことがある
- 熱性けいれん(発熱に伴うけいれん)が起きることがある
- 中耳炎を合併しやすい
- 声がかすれる、犬が吠えるような咳が出ることがある
- 機嫌が悪い、食欲がない、水分を飲まないなどの変化に注意
高齢者の症状
- 熱がはっきり出ないことがあり、気づきにくい
- 食欲低下や水分不足(脱水)が進みやすい
- 肺炎を合併しやすい
- 持病(心臓病、糖尿病、呼吸器の病気など)が悪化しやすい
- ぼんやりする、反応が鈍いなどの意識の変化が出ることがある
原因
主な原因
- インフルエンザウイルス(主にA型とB型)に感染することで起こります。
- 感染した人の咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことでうつります(飛沫感染)。
- ウイルスがついた手で口や鼻、目を触ることでもうつります(接触感染)。
- 人が多い場所や換気の悪い場所では広がりやすいです。
リスク要因
- 65歳以上の高齢者
- 5歳未満の子ども、特に2歳未満
- 妊娠中の方
- 喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、心臓病、腎臓病、肝臓病などの持病がある方
- 免疫の働きが弱まっている方(治療の影響を含む)
- 医療・介護施設などで働く方、集団生活をしている方
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しい、胸が痛い、意識がぼんやりする
- 高熱が続き、水分もとれない
- 持病が急に悪化したように感じる
- 乳幼児や高齢者で、ぐったりしている・反応が弱い
定期受診を予約すべき場合:
- 熱やだるさが強く、仕事や学校を休む必要がある
- 症状が数日続き、よくならない
- 重症化しやすい条件(高齢、妊娠中、持病、小さな子ども)に当てはまる
- 市販薬を使うかどうか迷っている
診断
医師が症状、発症した時期、周囲の流行状況などを聞いて判断します。必要に応じて、鼻の奥を細い綿棒で軽くぬぐってウイルスの有無を調べる迅速検査(15分前後で結果が出る検査)を行います。発症から時間がたっていないと検査で陰性に出ることもあるため、結果だけでなく症状全体で判断されます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(症状、発症からの時間、持病、妊娠の有無など)
- 鼻咽頭(びえんとう)ぬぐい液による迅速検査
- 必要に応じて血液検査や胸部レントゲン検査(肺炎など合併症が疑われるとき)
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、検査は鼻の奥に綿棒を入れられるため少し違和感がありますが、数秒で終わります。結果を待つ間に、自宅で休む期間や水分のとり方、注意すべき症状について説明を受けられます。
治療
インフルエンザの治療は、安静と水分補給を中心にした「体を休ませるケア」と、必要に応じた医療的な治療を組み合わせます。抗菌薬(細菌をやっつける薬)はウイルスには効きません。症状の重さ、年齢、持病、妊娠の有無などをもとに、医師が治療方針を決めます。
自宅でのセルフケア
- できるだけ安静にし、睡眠をしっかりとる
- こまめに水分をとる(お茶、スープ、経口補水液など)
- 食べやすいものを少量ずつとる
- 部屋を暖かくし、湿度を保ち、換気もときどき行う
- 熱が下がってもしばらくは無理をせず、仕事や学校は医師の指示に従って休む
- 咳や鼻水のケアとして、マスクや加湿が楽なことがある
- 市販の解熱薬や咳止めを使う場合は、年齢や持病に合うかどうかを医師・薬剤師に相談する(子どもには自己判断で使わない)
医療治療
医師の判断で、ウイルスの増殖を抑える治療が検討されることがあります。発症から早い時期(おおむね48時間以内)に始めると効果が期待しやすいとされていますが、症状の重さや背景によって判断は変わります。高熱や痛みへの対応、脱水の補正、合併症のチェックなども行われます。具体的な薬の種類や使い方は、医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
通常、インフルエンザそのものに対する手術はありません。
この病気と共に生きる
発熱がある間は家で休み、学校や仕事は医師の指示に従って休みましょう。日本では「発症した後5日を経過し、かつ熱が下がった後2日を経過するまで」を登校・出勤の目安とする考え方が一般的です(保育園や学校、職場の規則も確認してください)。家族にうつさないよう、タオルや食器は分け、手洗いをこまめに行い、部屋の換気を心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いを丁寧に行い、外出後や食事の前は特に意識する
- 咳エチケット(マスク、ティッシュや袖で口を覆う)を守る
- 人混みや換気の悪い場所は、流行期にはできるだけ避ける
- 十分な睡眠とバランスのよい食事で体調を整える
- 室内の湿度を保ち、ときどき換気する
- 禁煙を心がける(喫煙は呼吸器の感染症を悪化させます)
食事と運動
特別な食事療法はありませんが、水分と栄養をとって体力を保つことが大切です。のどが痛いときは、スープやおかゆ、ゼリーなど食べやすいものを選びましょう。回復してきたら、無理のない範囲で軽い散歩などから体を動かし始め、激しい運動は医師に相談してから再開すると安心です。
精神的健康と心の健康
急に高熱が出て予定が狂うと、不安やいらだちを感じるのは自然なことです。人に会えない期間が長いと、孤独感や気分の落ち込みを感じる方もいます。一人で抱え込まず、電話やオンラインで家族や友人と話すだけでも気持ちが楽になることがあります。つらい気持ちが続くときは、医療機関や自治体の相談窓口に相談してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、感染のリスクを下げ、重症化を防ぐことはできます。手洗い、咳エチケット、換気、人混みを避けること、そして毎年のワクチン接種が基本の対策です。
ワクチン
インフルエンザワクチンは毎年接種します。かかることを完全に防ぐものではありませんが、重症化や入院のリスクを下げることが期待されています。日本では、65歳以上の方など一定の方を対象に定期接種が行われています。接種の時期や対象、費用については、自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。
検診プログラム
インフルエンザに対する一般的な「検診(スクリーニング)」はありません。流行期に症状がある場合は、医療機関で検査を受けることがあります。
合併症
治療しない場合
- 肺炎(ウイルスによるもの、細菌によるもの)
- 気管支炎
- 中耳炎(子どもに多い)
- 熱性けいれん(子ども)
- 脳症などの中枢神経の合併症(まれですが重い)
- 心筋炎(まれ)
- 持病(喘息、糖尿病、心臓病など)の悪化
- 脱水や体力低下(高齢者に多い)
長期的な見通し
多くの方は1〜2週間ほどで回復し、日常生活に戻れます。咳やだるさがしばらく残ることもありますが、少しずつ良くなっていくのがふつうです。重症化しやすい方は、早めに医療機関に相談することで安心につながります。予防接種や基本的な感染対策を続けることが、毎年の流行を穏やかに乗り越える助けになります。
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最終更新: 2026年10月23日
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