インフルエンザとインフルエンザワクチン
概要
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが体に入って起こる感染症です。普通の「かぜ」よりも急に高熱が出て、体全体がつらくなりやすいのが特徴です。せきやくしゃみ、会話のときの飛び散るしぶき(飛沫)や、ウイルスがついた手で口や鼻をさわることでうつります。インフルエンザワクチンは、このウイルスに対する体の備え(免疫)をあらかじめ作っておくための注射で、かかる確率を下げたり、かかっても重症になりにくくしたりする効果が期待されています。
重要な事実
- インフルエンザは毎年、主に冬の時期に流行します。
- ワクチンの効果が出るまで約2週間かかり、効果はおよそ5か月ほど続くといわれています。
- ワクチンは「絶対にかからない」ためのものではありませんが、重症化や入院のリスクを下げることが期待されています。
とてもよくある感染症です。日本では毎年冬に流行し、多くの人が一度はかかった経験があります。流行の大きさは年によって違います。
どの年齢の人もかかりますが、特に5歳未満の子ども、65歳以上の高齢者、妊娠中の人、喘息・心臓病・糖尿病・腎臓病などの持病がある人、体の免疫が弱まっている人は、重症になりやすいといわれています。医療従事者や、学校・施設など人が集まる場所で過ごす人も、感染が広がりやすい立場です。
症状
- 息が苦しい、呼吸が速い、顔色が青白い
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が弱い
- けいれんが長く続く、または何度も繰り返す
- 水分がまったく飲めない、尿がほとんど出ない
- ぐったりして動かない、反応がおかしいと感じる
- ⚠高い熱が続き、どんどん具合が悪くなる
- ⚠せきが強くなり、胸の痛みや息苦しさが出てきた
- ⚠持病がある人で、症状がいつもと違う
- ⚠妊娠中の人で発熱や体調不良がある
- ⚠小さな子どもで、水分がとれず元気がない
一般的な症状
- 突然の高熱(多くの場合38度以上)
- 寒気・ふるえ
- 筋肉痛・関節痛
- 強いだるさ・倦怠感
- のどの痛み
- 鼻水・鼻づまり
子供の症状
- 急な発熱
- ぐったりして元気がない、機嫌が悪い
- 吐き気やおう吐、下痢
- 熱のときに起こるひきつけ(熱性けいれん)
- 母乳やミルクを飲まない、水分をとりたがらない
- せきが強く出る、息が苦しそう
高齢者の症状
- 熱がはっきり高くならないことがある
- 元気がなくなる、ぼんやりする
- 食欲が落ちる、水分をとらない
- 脱水(体の水分が足りなくなること)
- 肺炎を起こしやすい
- 持病(心臓病や糖尿病など)が急に悪くなることがある
原因
主な原因
- インフルエンザウイルスに感染すること(A型・B型などがあります)
- 感染した人のせきやくしゃみのしぶきを吸い込むこと(飛沫感染)
- ウイルスがついた手で口や鼻、目をさわること(接触感染)
- ウイルスがついたドアノブや手すりなどを介して広がること
リスク要因
- 65歳以上の高齢者
- 5歳未満の子ども(特に2歳未満)
- 妊娠中の人
- 喘息・心臓病・糖尿病・腎臓病・肝臓病などの持病がある人
- 免疫の働きが弱まっている人(治療中の人など)
- 肥満のある人
- 医療従事者や介護施設の職員
- 学校・幼稚園・保育園・寮など、人が集まって生活する場所にいる人
- ワクチンを接種していない人
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しい、息が速い、顔色が悪い
- 意識がもうろうとしている、けいれんがある
- 水分がとれず、尿がほとんど出ない
- 症状が急に悪化している
- 持病が急に悪くなったように感じる
- 妊娠中で発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 発熱やせきなど、インフルエンザらしい症状がある
- 重症化しやすい立場の人(高齢者、小さな子ども、妊娠中、持病がある人)で熱が出た
- ワクチンを接種すべきか迷っている、接種の時期を相談したい
- 毎年、流行前にどのように備えればよいか知りたい
診断
医師が症状や経過を聞き、その時期に地域でインフルエンザが流行しているかどうかも合わせて判断します。必要に応じて、鼻の奥を細い綿棒で軽くこすってウイルスがいるかを調べる検査(迅速検査)を行います。
行われる可能性のある検査
- インフルエンザ迅速抗原検査(鼻の奥の粘液をとって調べる検査。結果はおよそ10〜15分でわかります)
- 必要に応じて行うPCR検査などのより詳しい検査
- 血液検査(重症度や合併症を確認するため)
- 胸部レントゲン検査(肺炎などを疑うとき)
診察で予想されること
診察では、いつから熱が出たか、どんな症状があるか、持病や妊娠の有無、周りで流行っているかなどを聞かれます。迅速検査は鼻の奥に綿棒を入れるため、少ししみたり痛みを感じたりすることがあります。発症から時間がたつと検査で陰性(ウイルスが検出されない)になることもあり、検査結果だけでなく症状全体で判断されます。
治療
インフルエンザの治療の中心は、しっかり休んで水分をとり、体の力でウイルスと戦うことです。症状に合わせてつらさを和らげる薬を使うことがあり、重症化しやすい人にはウイルスの増殖をおさえる薬(抗ウイルス薬)が検討されることもあります。使うかどうか、どの薬を使うかは医師がその人の状態を見て決めます。
自宅でのセルフケア
- できるだけ安静にして、仕事や学校を休む
- こまめに水分をとる(お茶、スープ、経口補水液など)
- 部屋を加湿し、換気をこまめに行う
- 熱が下がっても体力は戻っていないので、無理をせず少しずつ動く
- 家族にうつさないよう、マスクの着用、手洗い、タオルの共用を避ける
- 受診するときは、事前に電話で連絡し、マスクを着用する
医療治療
症状に合わせて、熱や痛みをやわらげる薬、せきや鼻の症状を楽にする薬などが使われることがあります。ウイルスの増えるのをおさえる薬は、発症から早い時期に効果が期待できるとされ、重症化しやすい人や症状が強い人に検討されます。ただし、すべての人に必要なわけではありません。細菌による肺炎などを合併した場合には、その治療が行われます。薬の名前や使い方については、必ず医師や薬剤師の説明に従ってください。
この病気と共に生きる
学校保健安全法では、インフルエンザは「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」出席停止とされています。大人も、熱が下がった直後は体力が戻っていないため、仕事を休んで回復を優先しましょう。看病する家族も、手洗い・換気・マスクで感染を防ぐ工夫をしてください。
生活習慣のアドバイス
- 流行期は人混みをできるだけ避ける
- 帰宅時の手洗い、うがい、手指の消毒を習慣にする
- 部屋の湿度を50〜60%くらいに保つ
- 十分な睡眠と栄養で体の抵抗力を保つ
- せきやくしゃみが出るときはマスクをする、ティッシュや袖で口鼻を覆う
食事と運動
食欲がないときは無理に食べず、水分と、おかゆ・スープ・ゼリーなど消化のよいものを少しずつとりましょう。回復してきたら、卵や豆腐、やわらかい肉や魚などでたんぱく質を補うと体力の回復を助けます。運動は、熱が下がって体調が戻るまで控え、回復後は軽い散歩などから少しずつ再開してください。
精神的健康と心の健康
高い熱と強い倦怠感が続くと、不安になったり、イライラしたり、気分が落ち込んだりすることがあります。仕事や学校を休むことへの罪悪感を感じる人も少なくありません。体調が戻れば気持ちも徐々に落ち着くことが多いですが、不安が強いときや気分の落ち込みが続くときは、一人で抱え込まずに家族やかかりつけ医に話してください。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に相談することが大切です。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げる方法はいくつかあります。手洗い・マスク・換気といった基本的な感染対策と、毎年のワクチン接種を組み合わせることが勧められています。
ワクチン
インフルエンザワクチンは、流行する前の秋から冬にかけて接種するのが一般的です。効果が出るまでおよそ2週間かかり、効果は約5か月続くといわれています。13歳未満は2回接種が推奨されています。接種は任意ですが、65歳以上の高齢者などは自治体による公費助成の対象になることがあります(対象や自己負担額は自治体によって異なります)。年齢、回数、時期、費用については、かかりつけ医やお住まいの自治体に確認してください。接種後は、注射した部分の痛みや赤み、軽い発熱などが起きることがあります。重い副反応はまれですが、体調に異変を感じたら医療機関に相談してください。
検診プログラム
インフルエンザには、決まったスクリーニング検査(症状がない人を対象にした検査)はありません。発熱などの症状があるときに、必要に応じて検査が行われます。
合併症
治療しない場合
- 肺炎(ウイルス性・細菌性)
- 気管支炎
- 中耳炎(子どもに多い)
- 脱水(体の水分が足りなくなること)
- 持病(喘息、心臓病、糖尿病など)の悪化
- まれに脳症や心筋炎などの重い合併症
- 高齢者では入院が必要になることがある
長期的な見通し
多くの人は、つらい数日を過ぎると1〜2週間ほどで少しずつ元の生活に戻っていきます。せきやだるさがしばらく残ることもありますが、それも徐々に落ち着くのがふつうです。ワクチンや日ごろの感染対策は、重症化を防ぐ助けになります。不安なことや具合の変化があれば、早めにかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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