食物アレルギーについて
概要
食物アレルギーは、食べ物に含まれるたんぱく質に対して、体の免疫(ばい菌やウイルスから体を守るしくみ)が強く反応しすぎてしまう状態です。ふつうは体に害のない食べ物を、体が「敵だ」と勘違いしてしまい、かゆみ・じんましん・おなかの不調・息苦しさなどが起こります。食べてすぐ(多くは2時間以内)に症状が出ることが多いですが、出方や重さは人によって大きく違います。
重要な事実
- 食物アレルギーは「食べ物が体に合わない」という意味の food intolerance(乳糖不耐症など)とはしくみが違います。食物アレルギーは免疫が関係します。
- 日本では、卵・牛乳・小麦・落花生(ピーナッツ)・ナッツ類・魚介類・そばなどが原因としてよく知られています。
- 軽い症状のこともありますが、息が苦しくなるなど命に関わる重い症状(アナフィラキシー)が出ることもあります。早めの対応が大切です。
乳幼児(0〜3歳ごろ)に多く、子どものおよそ5〜10人に1人が何らかの食物アレルギーがあるといわれています。成長とともに多くの子どもは食べられるようになりますが、大人でも食物アレルギーは起こります。
赤ちゃんや小さな子どもに多いですが、大人になってから初めて発症する人もいます。アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎などがある人、家族にアレルギーのある人が多い傾向があります。
症状
- 息が苦しい、ゼーゼーする、声が出しにくい、のどが腫れた感じがする(すぐに119番へ)
- 顔やのどが大きく腫れている
- 意識がもうろうとする、ぼんやりする、返事がおかしい
- めまい、ふらつき、立てない、顔色が青白い(血圧が下がっているサイン)
- 全身のじんましんに、おう吐・腹痛・息苦しさなど複数の症状が重なっている(アナフィラキシーの疑い)
- ⚠顔やまぶたの腫れ、広がるじんましん
- ⚠何度もおう吐する、強いおなかの痛みが続く
- ⚠症状が良くならず、悪くなっていくように感じる
- ⚠軽い症状でも、前回と同じ食べ物で今回は強く出た
一般的な症状
- 皮膚のかゆみ、じんましん、赤み、湿疹
- 口の中・唇・のどのかゆみや違和感(口がイガイガする)
- 吐き気、おう吐、おなかの痛み、下痢
- くしゃみ、鼻水、鼻づまり、せき
- 目のかゆみ、充血、涙目
子供の症状
- 顔や全身に広がる湿疹、かゆくてぐずる、夜眠れない
- 繰り返すおう吐、下痢、体重が増えにくい(食べても成長しにくい)
- 機嫌が悪い、ぐったりする、元気がない
- ミルクや離乳食を飲み食べたがらない、嫌がる
- ゼーゼーする息づかい、声がかすれる、顔色が悪い
高齢者の症状
- 大人になってから初めて発症することがある(成人発症)
- 花粉症のある人は、生の果物や野菜で口がイガイガするタイプ(口腔アレルギー症候群)が起こることがある
- もともとの持病や体調によって、症状が強く出ることがある
- のどや呼吸器の症状が出ると重くなりやすいので、早めの受診が大切
原因
主な原因
- 食べ物の中のたんぱく質に対する免疫の過剰な反応(多くはIgE抗体という物質が関係します)
- 加熱が不十分な卵・牛乳・小麦などで症状が出やすいことがある(よく加熱したものは食べられる場合もあります)
- 皮膚のバリアが弱い状態(湿疹など)から、食べ物が皮膚にふれて免疫が反応してしまうこと
- 花粉症と関係した、生の果物・野菜による口の中の違和感(口腔アレルギー症候群)
- 食べたあとに運動することで症状が強く出るタイプ(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)
- 食後数時間してからおう吐や下痢が続くタイプ(遅れて出るタイプ)
リスク要因
- アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎などのアレルギー体質
- 家族にアレルギーの人がいる
- 乳幼児期に湿疹が長く続いた
- 初めて食べる食品、普段あまり食べない食品を食べたとき(大人でも起こります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさ、のどの腫れ、声のかすれ、意識の変化がある(119番を呼ぶ)
- 顔の腫れやじんましんが広がっている
- おう吐や腹痛が続き、水分がとれない
- 食べたあとに具合が悪くなり、どんどん悪くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 食べたあとに毎回のようにかゆみや湿疹が出る
- 原因かもしれない食べ物の見当がつかない
- 子どもが離乳食を嫌がる、体重が増えにくい
- 食事の制限で栄養が心配、何を食べてよいか分からない
- 外食や旅行、学校行事が不安
診断
診断では、どんな食べ物を、どれくらい食べて、どのくらいで、どんな症状が出たかを聞く「問診」がとても大切です。そのうえで、必要に応じて検査を行います。検査の結果だけで自己判断せず、症状とあわせて医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と食物日誌(食べたもの・量・時間・症状を記録する)
- 血液検査(食物に対するIgE抗体という物質を調べる)
- 皮膚プリックテスト(皮膚に少量の食品エキスをつけて反応を見る)
- 除去試験(原因かもしれない食べ物を一定期間やめて、症状が変わるかを見る)
- 食物経口負荷試験(専門の医療機関で、少量から実際に食べて確認する、最も確実な方法)
診察で予想されること
診断には時間がかかることがあります。負荷試験は、万が一に備えた設備のある医療機関で、医師の管理のもと行われます。検査の前後で食事の制限が変わることがあるため、指示にしたがってください。
治療
治療の中心は、原因の食べ物を避けることと、症状が出たときに正しく対応することです。そして、重い症状に備えて準備をしておくことです。原因の食べ物をすべて一生やめなければならないとは限らず、医師の判断で「食べられる範囲」を広げていくこともあります。
自宅でのセルフケア
- 原因の食べ物と、それが入った加工品を避ける。食品表示は毎回確認する(日本の表示制度では、特定原材料として表示が義務づけられています)
- 外食のときは事前に店に伝える。自分のアレルギーを伝えるカードを用意すると安心です
- 医師と「緊急時の行動計画」を作り、家族・学校・職場・保育園と共有する
- 医師に指示された薬や、緊急時に使う注射薬があれば、いつも持ち歩き、使い方を練習しておく
- 食べたものと症状をメモしておくと、診察のときに役立ちます
- 食事を制限すると栄養がかたよりやすいので、管理栄養士に相談する
医療治療
症状が出たときは、かゆみやじんましんなどをやわらげる薬が使われることがあります。重い症状に備えて、緊急時に自分で使える注射薬が処方される場合がありますが、使うタイミングと使い方を医師からよく教わってください。専門の医療機関では、ごく少量から少しずつ食べて慣らしていく治療が行われることもあります。これは必ず専門医のもとで行うもので、自分だけで試すのは危険です。薬の名前や量については、必ず処方した医師・薬剤師の説明にしたがってください。
手術が検討される場合
食物アレルギーは、手術で治すものではありません。
この病気と共に生きる
食物アレルギーとの生活でいちばん大切なのは、「避ける」「備える」「伝える」の3つです。買い物のたびに表示を見る、外食ではお店に伝える、緊急時の対応を家族で決めておく。この積み重ねが安心につながります。
生活習慣のアドバイス
- 買い物では、原材料表示と「特定原材料」の表示を確認する習慣をつける
- 外食・給食・お菓子の交換など、食べ物が関わる場面をあらかじめ家族で話し合っておく
- 緊急時の連絡先(119番、かかりつけ医、家族)を決めて、子どもにも伝える
- 子どもが自分で説明できるように、年齢に合わせて少しずつ練習する
- 新しい食品を試すときは、医師の指示があればそれに従い、自宅で一人のときに試さない
- 定期的に受診し、食べられる範囲が変わっていないか確認する
食事と運動
除去する食品があると、たんぱく質・カルシウム・鉄などが不足しやすくなります。代わりの食品や工夫を管理栄養士と一緒に考えると安心です。運動そのものは制限されませんが、食べたあとに運動すると症状が出るタイプの人は、食後しばらく激しい運動を控えるなどの工夫を医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
食事のたびに不安になる、外食や旅行を楽しめない、子どもがいじめやからかいを受けるなど、心の負担は少なくありません。不安や落ち込みが続くときは、一人で抱えずに医師や周りの人に話してください。つらさを話すことは、治療の一部でもあります。
予防
食物アレルギーを100%防ぐ方法はまだ分かっていません。ただし、赤ちゃんの皮膚の湿疹をしっかり保湿などでケアして整えておくこと、離乳食を必要以上に遅らせないことが大切だといわれています。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」など、国の考え方をもとに、かかりつけの医師や保健師と相談しながら進めてください。自己判断で食べ物を極端に制限しないようにしましょう。
ワクチン
食物アレルギーを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
症状がないのに血液検査などで食物アレルギーを調べることは、一般的にはすすめられていません。検査の結果だけで食べるのをやめてしまうと、かえって生活の質が下がったり、本当は食べられる食品を避けてしまったりすることがあるためです。気になる症状があるときは、検査の必要性を医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- アナフィラキシー(複数の臓器に症状が出る重い反応)を起こし、命に関わることがある
- 誤って食べてしまうことを繰り返し、不安が強くなる
- 食事の制限で栄養が不足し、子どもの成長に影響することがある
- 外食や旅行を避けるなど、生活の幅が狭くなる
- 食べたあとの運動で症状が出るタイプに気づかず、重い症状を起こす
長期的な見通し
食物アレルギーは、多くの子どもが成長とともに食べられるようになります。卵・牛乳・小麦などは改善しやすいといわれ、落花生・ナッツ・魚介類などは続きやすい傾向があります。大人になって発症した場合は長く続くこともありますが、正しい知識と準備があれば、ふつうの生活を送ることができます。定期的に受診し、食べられる範囲を確認していくことが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月23日
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