食物アレルギーと食物不耐性(食べ物で体が反応するとき)
概要
食べ物を食べたあとに体に不快な症状が出る原因には、大きく分けて「食物アレルギー」と「食物不耐性」があります。食物アレルギーは、体の免疫(外から入ってくるものを監視する仕組み)が、特定の食べ物を害のあるものと誤って判断し、過剰に反応してしまう状態です。一方、食物不耐性は免疫の反応ではなく、消化の苦手さなどによって症状が出るものです。どちらも「食べると具合が悪くなる」という点は同じですが、体の中で起きていることや、重くなったときの危険度が違います。
重要な事実
- 食物アレルギーは免疫の反応、食物不耐性は主に消化の反応で、原因も対処のしかたも異なります。
- アレルギーの症状は皮膚・口・のど・おなか・呼吸器などに現れ、まれに命に関わる重い反応(アナフィラキシー)を起こすことがあります。
- 子どもに多いのは食物アレルギーで、大人に多いのは乳糖不耐性などの食物不耐性です。大人になって初めてアレルギーが出ることもあります。
- 自己判断で食べるものを極端に減らすと栄養が偏ることがあるため、まずは医師に相談して原因を見極めることが大切です。
子どもの食物アレルギーは珍しいものではなく、日本の調査でも一定数の子どもが診断を受けています。大人では、牛乳や乳製品をとるとおなかが張る・下痢をするといった不耐性がよくみられます。
食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎や喘息のある子どもに多くみられ、成長とともに食べられるようになる場合も少なくありません。食物不耐性は年齢とともに増える傾向があり、大人や高齢者に多くみられます。
症状
- のどがはれて、声が出しにくい・飲み込みにくい
- 息が苦しい、ゼーゼーする、話すのがつらい
- 顔や全身がはれる
- 意識がもうろうとする、ぐったりして立てない
- 強い腹痛とくり返す嘔吐があり、顔色が悪くぐったりしている
- これらの症状があるときは、すぐに119番へ電話して救急車を呼んでください。
- ⚠じんましんが広がっている、かゆみが強い
- ⚠嘔吐や下痢が続いて水分がとれない
- ⚠症状が軽くなったり強くなったりをくり返している
- ⚠初めてはっきりしたアレルギー症状が出た
一般的な症状
- 食べてから数分〜2時間ほどで、口や唇がかゆい・はれる
- じんましん、皮膚のかゆみや赤み
- 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐
- くしゃみ、鼻水、息苦しさ、ゼーゼーする呼吸
- まぶたや顔のはれ
- だるさ、気分が悪くなる
- (不耐性の場合)おなかの張り、ガス、下痢などが中心で、少量なら平気なことも多い
子供の症状
- ミルクや卵、小麦などで症状が出やすい
- 湿疹が長引く、皮膚をかゆがる
- 血が混じった便、くり返す下痢
- 体重が増えにくい、機嫌が悪い、ぐずりが増える
- 言葉で伝えられないぶん、保護者の観察がとても大切です
高齢者の症状
- 大人になってから初めて症状が出ることもある
- 「年のせい」「胃腸が弱っただけ」と思い込み、気づくのが遅れやすい
- 持病の薬や体調の変化で症状が強く出ることがある
- のどのはれや息苦しさは命に関わることがあるため、早めの受診が必要です
原因
主な原因
- 食物アレルギー:体の免疫が特定のたんぱく質を異物とみなし、過剰に反応する
- 花粉症との関連で、果物や野菜を食べたときに口がかゆくなる反応(口腔アレルギー症候群)
- 食物不耐性:乳糖(牛乳に含まれる糖分)を分解する酵素が足りない、など消化のしくみの限界
- 食品に含まれる成分(ヒスタミンなど)や添加物による反応
- 香辛料やカフェインなど刺激の強いものによる胃腸の反応
リスク要因
- アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症などのアレルギー体質
- 家族にアレルギーの人がいる
- 乳幼児期に湿疹が長引いた
- 加齢による消化能力の低下
- 胃や腸の病気、手術のあと
- 妊娠中・授乳中の極端な食事制限(自己判断の制限は避けましょう)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさ、のどのはれ、声のかすれがある(この場合は119番へ)
- 食べたあとに広がるじんましんや、くり返す嘔吐がある
- 子どもがぐったりしている、水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 特定の食べ物でいつもおなかが張る、下痢をする
- 子どもの湿疹が長引く、体重が増えにくい
- 何が原因か自分では判断できない
- 食事を制限したいが、栄養が心配
- 外食や旅行のたびに不安を感じる
診断
診断の中心は問診です。いつ、何を、どれくらい食べて、どのくらいの時間で、どんな症状が出たかを記録しておくと、医師が判断しやすくなります。必要に応じて血液検査や皮膚のテストを行い、場合によっては医療機関の管理のもとで少量ずつ実際に食べて確認する検査を行うことがあります。食物不耐性は、症状の出方と食べた量の関係から判断することが多く、検査は限られています。
行われる可能性のある検査
- 問診と食事日記の確認
- 血液検査(アレルギーに関わる抗体の値を調べる)
- 皮膚プリックテスト(皮膚に少量つけて反応を見る)
- 食物経口負荷試験(医師の管理のもとで少量ずつ食べて確認する)
- 除外試験(疑わしい食品を一定期間やめて症状をみる)※自己判断で長期間行わない
診察で予想されること
検査は一度で終わらないことがあります。子どもは成長とともに結果が変わることがあるため、定期的な見直しが大切です。検査の結果だけで「食べられない」と決めつけず、実際に食べたときの症状と合わせて判断します。
治療
治療の基本は「原因となる食品を正しく知り、必要最小限だけ避けること」と「症状が出たときに正しく対応できるようにしておくこと」です。避けすぎないことも大切なポイントです。
自宅でのセルフケア
- 食べたもの・症状・時間を記録する
- 原因食品は医師の指示に沿って、必要最小限だけ避ける
- 食品表示を確認する習慣をつける
- 外食のときは事前に伝え、安心して食べられる選択肢を増やす
- 緊急時に使う薬を処方されている場合は常に持ち歩き、使い方を家族とも確認しておく
- 除去する食品がある場合は、代わりの食品で栄養を補う
医療治療
症状に応じて、かゆみやじんましんを抑える薬、アレルギー反応を和らげる薬などが使われます。重い反応に備えて、緊急時に自分で使える薬を処方されることがあります。根本的な治療としては、医師の管理のもとで原因食品を少量ずつ食べて体を慣らしていく方法が行われることがあります。不耐性の場合は、原因となる糖分などを含む食品を控えめにすることで対処します。薬の名前や量については、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
食物アレルギーや食物不耐性で手術が必要になることは、通常ありません。
この病気と共に生きる
毎日の食事は「がまん」ではなく「工夫」です。表示の読み方、代わりの食材、外食先への伝え方を身につけると、生活の幅はずっと広がります。
生活習慣のアドバイス
- 食品表示と原材料を確認する習慣をつける
- 安心して食べられる料理のレパートリーを増やす
- 家族や学校・職場と情報を共有しておく
- 緊急時の連絡先と対応のしかたを決めておく
- 外食先には事前に相談する
- 食事日記を続けて、体の反応を把握する
食事と運動
原因食品を除いても栄養が偏らないように、たんぱく質・野菜・主食をバランスよくとりましょう。除く食品がある場合は、代わりの栄養源について医師や管理栄養士に相談すると安心です。運動は制限する必要はありませんが、運動の直後に食べると症状が出やすい場合があるので、気になる場合は医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
食事の制限は、外食や行事のたびに気をつかうため、不安や疲れがたまりやすいものです。子どもは「みんなと同じものが食べられない」と感じて、つらくなることがあります。ひとりで抱え込まず、家族や学校、医療者に話してください。強い不安や落ち込みが続くときは、心の専門家や地域の相談窓口に相談しましょう。つらい気持ちが強いときは、身近な人やかかりつけ医に早めに伝えてください。
予防
食物アレルギーを完全に防ぐ方法はまだ分かっていません。ただし、妊娠中や授乳中に極端な食事制限をしないこと、子どもの湿疹を早めにケアすること、離乳食を遅らせすぎず適切な時期に始めることが大切とされています(厚生労働省の指針など)。食物不耐性は体質による部分が大きく、量や食べ方を調整しながら付き合っていくものです。
ワクチン
食物アレルギーや食物不耐性に直接効くワクチンはありません。ただし、感染症を防ぐための通常の予防接種は、アレルギーのある人にも大切です。接種の前に医師に相談してください。
検診プログラム
症状がない人に一律の検査はすすめられていません。検査は症状がある場合に、医師の判断で行います。
合併症
治療しない場合
- 重いアレルギー反応(アナフィラキシー)による危険
- 極端な食事制限による栄養不足や、子どもの成長への影響
- 食事の質の低下や生活の満足度の低下
- 不安や孤立感が強くなる
- 誤って原因食品を口にしてしまうリスク
長期的な見通し
食物アレルギーの多くは、特に子どもの場合は成長とともに改善することがあります。不耐性も、量や食べ方を工夫すれば無理なく付き合っていけます。正しい知識と周囲の理解があれば、日常は十分に豊かに保つことができます。
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最終更新: 2026年10月23日
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