リステリア食中毒(リステリア症)
概要
リステリア食中毒は、リステリアという細菌が食べ物に付いていて、それを食べることで起こる感染症です。リステリアは土や水の中など、身のまわりの自然の中にいる細菌で、肉や魚、乳製品、野菜などいろいろな食品をとおして体に入ることがあります。ふつうの食中毒の原因菌に比べて、冷蔵庫の中のような低温でもゆっくり増え続けるのが特徴です。多くの健康な人は、食べても症状が出ないか、軽いかぜのような症状ですむことが多いですが、妊娠中の方、65歳以上の高齢の方、免疫(体を守る力)が弱っている方は、重症になることがあるため注意が必要です。
重要な事実
- リステリアは冷蔵庫の中でも増えるため、冷やしておけば安心というわけではありません。
- 健康な人の多くは軽い症状か無症状ですが、妊娠中の方・高齢の方・免疫が弱い方では重症化することがあります。
- 食べてから症状が出るまで数日から数週間かかることがあり、原因の食べ物に気づきにくいのが特徴です。
日本で報告される食中毒のなかでは、リステリアによるものは多くありません。ただし、軽い症状の人は検査を受けないことが多く、実際の患者数は報告数より多いと考えられています。
誰でもかかる可能性はありますが、特に注意が必要なのは、妊娠中の方、生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)、65歳以上の高齢の方、がんの治療中や免疫を抑える薬を使っている方など、体を守る力が弱っている方です。妊娠中の方は、ご本人の症状が軽くても、おなかの赤ちゃんに影響することがあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が弱い
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 発熱に加えて、首が硬い・激しい頭痛・光がまぶしい(髄膜炎の可能性)
- 息が苦しい、顔色が青白い、ぐったりしている
- ⚠妊娠中の方で38度以上の発熱がある
- ⚠妊娠中の方で、強いだるさや体の痛みが続く
- ⚠65歳以上の方や免疫が弱い方で発熱がある
- ⚠血便が出る、水分がとれず尿が極端に少ない、などの強い脱水のサイン
一般的な症状
- 発熱(37〜38度くらい)
- 肌肉痛・体の痛み
- だるさ・倦怠感
- 吐き気、下痢、腹痛
原因
主な原因
- 加熱が不十分な肉類(ローストビーフ、生ハム、パテ、ソーセージなど)
- 加熱していない乳製品(生乳、ナチュラルチーズ、非加熱のアイスクリームなど)
- 加熱していない魚介類(スモークサーモン、刺身、生牡蠣など)
- 生の野菜や果物、カット野菜、スプラウト(もやしの仲間)
- 加熱済み食品への二次汚染(まな板や包丁、手をとおして菌がうつる)
- 冷蔵庫内での菌の増殖(長期保存や、作り置きを長く置いておくこと)
リスク要因
- 妊娠中であること
- 65歳以上の高齢であること
- 免疫が弱っている(がん治療中、臓器移植後、免疫を抑える薬を使っている、HIV感染など)
- 生まれたばかりの赤ちゃん
- 肝臓や腎臓に慢性的な病気があること
- 加熱しない食品を多く食べる習慣があること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中で発熱や強いだるさがあるときは、症状が軽くても早めに医療機関へ相談してください。
- 65歳以上の方、免疫が弱い方で発熱があるとき
- 意識がぼんやりする、首が硬い、けいれんなどの症状があるとき(救急要請を)
- 血便がある、水が飲めない、尿がほとんど出ないとき
定期受診を予約すべき場合:
- 数日続く発熱や下痢があるとき
- 食後に体調がすぐれない状態が続くとき
- 妊娠中でなくても、高熱や強い頭痛が続くとき
- 何を食べたか心当たりがあり、同じものを食べた家族にも症状が出ているとき
診断
リステリア症かどうかは、症状と、最近食べたものの話をもとに、血液や便などの検査で菌を調べることで判断します。ふつうの食中毒と症状が似ているため、妊娠中かどうか、免疫が弱っていないかといった背景も大切な手がかりになります。
行われる可能性のある検査
- 血液培養(血液の中に菌がいるかを調べる検査)
- 便培養(便の中の菌を調べる検査)
- 髄液検査(首の硬さや意識の変化があるとき、髄膜炎を調べるために行うことがあります)
- 血液検査(炎症の程度や体の状態をみる)
診察で予想されること
検査結果が出るまでには数日かかることがあります。その間、医師は症状や食べたものの履歴から判断して、必要に応じて治療を始めることがあります。いつ、どんなものを食べたかを思い出せるよう、メモしておくと診察の助けになります。
治療
多くの健康な方は、特別な治療をしなくても数日のうちに自然に良くなります。一方、妊娠中の方、高齢の方、免疫が弱い方、症状が重い方は、医療機関での治療が必要になります。脱水を防ぐための水分補給も大切です。
自宅でのセルフケア
- 少量ずつこまめに水分をとる(経口補水液やスープなども役立ちます)
- 食べられる範囲で、消化のよいものを少しずつとる
- 十分に休む
- 下痢や嘔吐が続く間は、家族の食事づくりは避けて、うつさないようにする
- 手洗いをこまめに行う(石けんと流水で)
- 症状が良くなったと思っても、しばらくは無理をしない
医療治療
症状が重い場合や、妊娠中・高齢・免疫が弱いなど重症化しやすい方には、抗菌薬(細菌をやっつける薬)による治療が行われます。水分や栄養がとれないときは点滴を行うことがあり、状態によっては入院して経過をみることもあります。どの治療が適切かは、症状や体の状態、妊娠の有無などによって変わるため、医師とよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
症状がある間は、無理をせず家でゆっくり過ごしましょう。トイレのあとや食事の前の手洗いをていねいに行い、タオルは家族と分けると安心です。症状が落ち着くまでは、生ものや加熱していない食品は避け、よく加熱したものを食べるようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 食品は買ったら早めに食べ、冷蔵庫でも長く置かない(目安として2〜3日以内)
- 冷蔵庫の温度をこまめに確認する
- まな板や包丁は、肉・魚と野菜で使い分けるか、使うたびに洗う
- 残り物は食べる前にしっかり温め直す
- 妊娠中・免疫が弱い時期は、生ものや非加熱の乳製品を控える
食事と運動
回復してきたら、消化のよい食事から少しずつ戻していきましょう。激しい運動は、症状が完全に落ち着いてからにし、まずは軽い散歩などから始めると安心です。
精神的健康と心の健康
食中毒になると、「おなかの赤ちゃんに影響があったらどうしよう」「家族にうつしてしまったかも」と不安になることがあります。妊娠中の方にとっては特に心配が大きいかもしれません。一人で抱え込まず、医師や助産師、保健師に気持ちも含めて話してみてください。
予防
はい、ふだんの食べ物の扱い方で予防できます。リステリアは加熱すると死ぬため、食品の中心部までしっかり加熱することがもっとも効果的です(厚生労働省は、中心部を75度以上で1分以上加熱することを目安として示しています)。また、冷蔵庫でも増えるため、買った食品は早めに食べ、長く保存しないことも大切です。
ワクチン
リステリアを予防するワクチンは、現在ありません。
検診プログラム
ふつう、症状がない人がリステリアの検査を受ける必要はありません。妊娠中の方は、食事の注意点について健診のときに医師や助産師に相談するとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 菌が血液に入り、全身に広がる(菌血症・敗血症)
- 髄膜炎(脳と脊髄を包む膜の炎症)を起こし、頭痛や意識の変化が出る
- 妊娠中の方は、流産や死産、早産につながることがある
- 生まれたばかりの赤ちゃんが重い感染症を起こすことがある
長期的な見通し
多くの健康な方は、数日で自然に回復します。重症化しやすい方でも、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることで、回復が期待できます。不安があるときは、ためらわずに医療機関や地域の相談窓口に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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