フレイル(高齢者の虚弱)とは — 心と体の活力が落ちてきたら
概要
フレイルとは、年をとるにつれて体と心の力が弱くなり、日常生活が少しずつ大変になりやすくなった状態のことです。病気そのものではありませんが、健康な状態と「介護が必要な状態」のちょうど間くらいにあたります。大切なのは、フレイルは元に戻せる(改善が期待できる)状態だということです。早めに気づいて、運動・食事・人とのつながりを整えることで、また元気に近づけることがあります。
重要な事実
- フレイルは「年齢とともに心身の活力が低下した状態」で、介護が必要になる手前の段階と考えられています。
- 体重が減った、疲れやすい、歩くのが遅くなった、外出が減った、握力が弱くなった、といった変化が手がかりになります。
- 早めに気づいて、運動・栄養・人とのつながりを見直すことで、進行を遅らせたり、元に戻したりできる可能性があります。
はい、とてもよく見られる状態です。日本では65歳以上の方のおよそ1割前後、75歳以上の方では2割以上の方がフレイルにあてはまるという報告があります。年齢が上がるほど増えていきますが、その分だけ早めの対策が役に立ちます。
主に高齢の方、とくに75歳以上の方に多く見られます。一人暮らしの方、食事量が少ない方、痛みや息切れで動きにくい方、入院や手術のあとの方、飲んでいる薬が多い方、人と会う機会が少ない方などはとくに注意が必要です。
症状
- 意識がない、または呼びかけても反応が鈍い
- 息苦しい、胸が痛い、冷汗が出ている
- 突然のろれつ困難、片側の手足の麻痺、顔のゆがみ、見えにくさ(脳卒中の疑い)
- 転倒して頭を打ったあと、吐き気・嘔吐・意識の変化がある
- 高熱が出てぐったりしている、顔色が悪く呼吸が苦しそう
- 大量の出血がある、けいれんが止まらない
- ⚠食事や水分がほとんどとれない日が続いている
- ⚠急に体重が減っている、脱水のサイン(口の渇き、尿が少ない、皮膚がかさつく)がある
- ⚠転倒して痛みが強く、足をつけない、歩けない
- ⚠尿が出ない、便が出ない状態が数日続いている
- ⚠急にぼんやりしている、話がかみ合わない、昼夜逆転が急に始まった(せん妄の疑い)
- ⚠発熱が続いている、咳や痰が増えて息苦しそう
一般的な症状
- 意図していないのに体重が減った(半年で2〜3kgくらい、または5%以上の減少)
- 疲れやすい、何をするにもおっくうに感じる
- 歩く速さが遅くなった、横断歩道を渡りきるのが不安になった
- 外出や運動の機会が減った、ほとんど家の中で過ごすようになった
- 握力が弱くなった(ペットボトルのふたが開けにくい、重いものが持てない)
- 段差でつまずく、転びやすくなった
- 食が細くなった、のみこみにくい、むせやすくなった
- 忘れっぽくなった、気分が落ち込みやすい、興味がわきにくい
- 疲れが取れにくい、朝起きるのがつらい
子供の症状
- フレイルは主に高齢者の状態を指す言葉で、子どもには通常あてはまりません。
- ただし、長い入院や病気で動けない状態が続くと、子どもでも筋力や体力が落ちることがあります。
- 子どもの体力低下や食欲のなさが気になる場合は、小児科の先生に相談してください。
高齢者の症状
- 転びやすくなった、外出を控えるようになった
- 食事量が減り、体重が落ちていく
- 服を着替える、入浴する、買い物に行くなどの日常動作がおっくうになった
- 人と会うのが減って、一日中テレビの前で過ごすことが増えた
- 複数の病院にかかり、薬の数が増えた
- 涙もろくなった、気分の落ち込みが続いている
- 部屋が散らかってきた、身だしなみに気を配れなくなった
原因
主な原因
- 加齢に伴う筋肉量と筋力の低下(サルコペニア:筋肉が減って弱くなること)
- 栄養不足(食べる量が減る、たんぱく質が足りない)
- 活動量の低下(痛みや入院・安静で動く機会が減る)
- いくつかの病気が重なっていること(心臓病、糖尿病、腎臓病、関節の痛み、呼吸器の病気など)
- 薬をたくさん飲んでいることによる副作用や、飲みにくさ・食欲低下
- 人とのつながりの減少(一人暮らし、外出機会の減少、地域との交流が薄れる)
- 気分の落ち込み(うつ)や認知機能の低下
- 歯や口の状態が悪く、食べにくい・のみこみにくい
リスク要因
- 75歳以上である
- 一人暮らし、または家族や友人と会う機会が少ない
- 経済的なゆとりが少ない、食費を削っている
- 入れ歯が合わない、歯が痛い、のみこみにくい
- 痛みや息切れのため、動くのがおっくう
- 入院や手術を受けたあと、または最近退院した
- 飲んでいる薬の数が多い
- 睡眠不足、喫煙、飲みすぎ
- 以前から痩せている、食が細い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 食事や水分がとれず、ぐったりしている
- 転倒して痛みが強く、歩けない
- 急に意識がぼんやりした、話がかみ合わない
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 発熱が続き、咳や痰が増えている
- 尿が出ない状態が続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 半年の間に体重が2〜3kg以上減った、または服がゆるくなった
- 疲れやすさや歩く速さの低下を自分でも感じる
- 外出や人と会う機会が減った
- 健康診断で血圧・血糖・腎機能などを指摘された
- 薬の数が増えて、飲み方や副作用が心配
- 気分の落ち込みや眠りにくさが続いている
- 家族が「元気がない」「痩せた」と感じている
診断
フレイルかどうかは、問診と簡単なチェックを組み合わせて判断します。特別に大きな検査が必要というわけではなく、体重の変化、握力、歩く速さ、ふだんの活動量、気分やもの忘れの具合などを、いくつか合わせて見ていきます。厚生労働省が紹介している「基本チェックリスト」という25項目の質問票が使われることもあります。あわせて、フレイルの背景にある病気や栄養状態、薬の影響がないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 問診(生活の様子、食事、外出、睡眠、気分、困りごとを聞く)
- 体重の変化とBMI(体格の指標)の確認
- 握力の測定
- 歩行速度の測定(決まった距離を歩く時間を測る)
- 基本チェックリスト(厚生労働省の25項目の質問票)
- 血液検査(貧血、栄養状態、腎機能、甲状腺の働きなどを確認)
- 血圧・脈拍の測定、必要に応じて心電図や画像検査
- 認知機能や気分の簡単なスクリーニング
- 飲んでいる薬の確認(薬剤師と連携することもあります)
- 歯や口の中の状態、のみこみの確認
診察で予想されること
診察は10〜20分程度で、痛みの少ない検査がほとんどです。1回で全てが決まるわけではなく、体重の変化や生活の様子を数か月かけて見ていくこともあります。診察の前に、体重の記録、飲んでいる薬のリスト、最近気になっていることをメモしておくと話がしやすくなります。
治療
フレイルは、薬で「治す」というより、生活全体を整えて筋力と活力を取り戻していくことが中心になります。目標は、できることを少しずつ増やし、転倒や介護が必要な状態を防ぐことです。一度に全部を変える必要はなく、できそうなことから始めていきます。
自宅でのセルフケア
- 毎日少しずつ体を動かす(散歩、いすからの立ち上がり、かかと上げなど)
- 3食をなるべく決まった時間にとり、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を意識してとる
- のどが渇いていなくても、こまめに水分をとる
- 歯みがきや入れ歯の手入れを続け、口の中を清潔に保つ
- 睡眠時間をなるべく決まったリズムに整える
- 人と話す機会をつくる(電話でも、あいさつでも構いません)
- 家の中の段差・コード・敷物を整理し、手すりや夜間の明かりを工夫して転びにくくする
- 体重を週に1回ほど記録して、変化に気づけるようにする
医療治療
治療は、フレイルの背景にある病気(心臓病、糖尿病、腎臓病、関節の痛みなど)をきちんと管理することから始まります。そのうえで、リハビリテーション(体力や筋力を保つための運動指導)、栄養の相談、歯科や口腔ケア、福祉用具の利用、介護保険サービスの活用などを組み合わせます。飲んでいる薬が多すぎる場合は、医師や薬剤師と相談して整理することもあります。薬を自己判断でやめたり、サプリメントを勝手に始めたりせず、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
フレイルそのものを手術で治すということはありません。ただし、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症など、痛みのために動けず体力が落ちている原因となる病気がある場合には、手術が検討されることがあります。手術を受ける前後に体力を整えておくことが、回復のために大切だとされています。
この病気と共に生きる
フレイルとつきあううえで大切なのは、「今日はこれができた」という小さな積み重ねです。朝起きてカーテンを開ける、近所を5分歩く、家族や友人に電話する、といった小さな行動が力になります。できないことを数えるより、できたことを見つけるほうが、気持ちも体も前向きになりやすいです。
生活習慣のアドバイス
- 起きる時間・寝る時間をなるべくそろえる
- 買い物や通院など、外出の予定を意識してつくる
- 地域の通いの場(公民館の体操、サロン、デイサービスなど)に参加してみる
- 家事の一部を自分で担当するなど、体を動かす役割を持つ
- 喫煙を控え、飲酒はほどほどにする
- 困ったときに頼れる人を、家族だけでなく地域にもつくっておく
食事と運動
食事は、量を増やすことよりも「たんぱく質を毎食少しずつ」とることが大切です。肉・魚・卵・豆腐や納豆・牛乳やヨーグルトなどを、朝食にも取り入れてみてください。食欲がないときは、少量でエネルギーがとれるものを利用するのも一つの方法です。運動は、ウォーキングやいすからの立ち座り、かかと上げなどの軽い筋力運動を、無理のない範囲で毎日少しずつ続けるのがおすすめです。痛みや息苦しさがある場合は、無理をせず、医師や理学療法士に相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
体が動きにくくなると、外出が減り、人と会う機会も減って、孤独や不安、気分の落ち込みを感じることがあります。フレイルと気分の落ち込みは互いに影響し合うといわれており、心のケアも体のケアと同じくらい大切です。つらい気持ちが続くときや、死にたいほどつらいと感じるときは、一人で抱えず、かかりつけ医、お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センター、地域包括支援センターなどの相談窓口に連絡してください。緊急の危険があるときは、ためらわず救急(119番)を呼んでください。
予防
完全に防ぐことは難しくても、リスクを減らし、進行を遅らせ、場合によっては改善することは十分に期待できます。若いうちからの運動習慣と十分な栄養、そして人とのつながりが、将来のフレイル予防につながります。高齢になってからでも、始めるのに遅すぎることはありません。
ワクチン
肺炎やインフルエンザ、帯状疱疹などのワクチンは、感染症にかかって体力が大きく落ちることを防ぐ助けになります。年齢や持病によっておすすめが変わるので、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
健康診断(特定健康診査、後期高齢者の健康診査)や歯科健診、がん検診を受けておくと、フレイルの背景にある病気に早く気づけます。市区町村が行っている介護予防のチェックや通いの場も活用してみてください。
合併症
治療しない場合
- 転倒や骨折のリスクが高くなる
- 要介護の状態に進みやすくなる
- 入院が長引いたり、退院後に元の生活に戻りにくくなったりする
- 誤嚥性肺炎(飲みこみがうまくいかず、肺炎を起こすこと)などの感染症にかかりやすくなる
- 認知症やうつのリスクが高まるといわれている
- 食事量や活動量が減ることで、さらに体力が落ちる悪循環に入りやすくなる
長期的な見通し
フレイルは、決して「もう終わり」という状態ではありません。早い段階で気づいて、運動・食事・人とのつながりを整えることで、改善したり、進行をゆるやかにしたりできる可能性があります。小さな一歩から始めて、続けていくことが何より力になります。
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最終更新: 2026年10月23日
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