全血球計算(FBC・血算)検査
概要
全血球計算(FBC)は「血算」や「末梢血検査」とも呼ばれる、いちばん基本的な血液検査です。腕の静脈から少量の血を採り、血液の中にどんな細胞がどれくらいあるかを数えます。具体的には、酸素を運ぶ赤血球、体を守る白血球、血を止める血小板の3つのグループを調べます。検査そのものは病気を治すためのものではなく、体の中で何が起きているかを知るための「体内の健康診断」のようなものです。
重要な事実
- 腕から少量(数ミリリットル程度)の血液を採るだけで、数分で終わる検査です。
- 赤血球・白血球・血小板の数と大きさ、白血球の種類の内訳などがわかります。
- 結果が基準範囲から外れていても、それだけで病気とは決まりません。体調や年齢、服薬、脱水などでも数値は変わります。
- 健康診断や、発熱・だるさ・出血などの原因を調べるときによく行われます。
とてもよく行われる検査です。日本の健康診断(職場健診や住民健診)にもほぼ必ず含まれていて、多くの人が毎年受けています。外来で風邪や発熱の原因を調べるときにも、最初に調べる検査のひとつです。
赤ちゃんから高齢者まで、どなたでも受ける可能性のある検査です。妊娠中、手術の前、特定の薬を飲み始めるとき、慢性的な病気の経過を見るときなどにも行われます。
症状
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい
- 呼吸が苦しい、息ができない
- 大量の出血が止まらない、吐血や血便が続く
- 胸の痛みが強い、冷汗が出る
- けいれんが起きた、立てないほどのめまい
- ⚠高い熱が数日続き、ぐったりしている
- ⚠少し動いただけで息が切れる、動悸が強い
- ⚠青いあざが急に増えた、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい
- ⚠顔色が明らかに悪く、食思(食欲)が落ちている
- ⚠説明のつかない体重減少が続いている
一般的な症状
- 検査そのものに症状はありません。次のような症状があるときに、原因を調べる目的で行われます。
- 疲れやすい、体がだるい、集中しにくい
- 階段や坂で息切れがする、動悸がする
- 顔色が青白いと言われる、立ちくらみやめまいがする
- 発熱が続く、原因不明の微熱がある
- あざができやすい、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい
- リンパ節(首やわきの下)が腫れている
- 原因のわからない体重減少
子供の症状
- 小児は成長に伴って血液の数値が大人と少し違うため、年齢に応じた基準で判断します。
- 風邪や感染症のときは白血球が一時的に増えることがよくあります。
- 幼い子では、母乳や食事からの鉄不足による貧血が見つかることがあります。
- 元気がない、顔色が悪い、食欲が落ちた、ぐったりしているように見えるときは早めに相談してください。
高齢者の症状
- 加齢に伴い貧血が見つかることが増えます。息切れや疲れを「年のせい」と感じていても、貧血が隠れていることがあります。
- 腎臓の病気や慢性的な炎症、持病の薬の影響で数値が変わることがあります。
- 血液のがん(白血病など)は高齢者で見つかることもあり、原因不明の貧血や白血球の異常は丁寧に調べます。
- 体重減少や長引く発熱など、気になる変化は遠慮せず医師に伝えてください。
原因
主な原因
- 貧血(鉄分・ビタミンB12・葉酸などの不足、出血によるもの)
- 感染症や炎症(白血球数や種類の内訳が変化します)
- 脱水や妊娠など、体の水分バランスの変化
- 腎臓や肝臓、甲状腺など、ほかの臓器の病気の影響
- 骨髄(血液を作る場所)の働きの低下や、血液そのものの病気
- 薬の副作用、飲酒、喫煙などの生活習慣の影響
- 遺伝的な体質(生まれつき赤血球の形が違う、など)
リスク要因
- 偏った食事、鉄分やたんぱく質が少ない食事を長く続けている
- 月経量が多い、妊娠中、出産後
- 慢性的な病気(腎臓病、糖尿病、炎症性の病気など)がある
- 特定の薬を長く飲んでいる
- 家族に血液の病気や貧血の人がいる
- 喫煙、多量の飲酒
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさや動悸が強く、日常生活が難しい
- 出血が止まりにくい、大きいあざが急にできた
- 高熱が続き、ぐったりしている
- 意識がぼんやりする、立っていられないほどのめまいがある
定期受診を予約すべき場合:
- 健診やほかの検査で血液の数値の異常を指摘された
- 疲れやすさ、息切れ、顔色の悪さが数週間以上続いている
- 原因のわからない発熱や体重減少がある
- 妊娠を考えている、または妊娠中で貧血を指摘されたことがある
- 飲んでいる薬が血液に影響することがあると言われた
診断
全血球計算は、診察の一部として採血で行います。医師が症状やこれまでの病歴を聞き、必要と判断したときに検査をします。結果は医療機関によって異なりますが、早ければその日のうちに、遅くても数日以内にわかります。数値が基準範囲から外れている場合は、もう一度検査をしたり、別の検査を組み合わせたりして、本当に体に問題があるのかを丁寧に確認します。
行われる可能性のある検査
- 全血球計算(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球の大きさの指標、白血球数とその内訳、血小板数)
- 血液像(けんびきょうで血球の形を目で確認する検査)
- 網状赤血球(あたらしく作られた赤血球の数を見る検査)
- 鉄分・フェリチン・ビタミンB12・葉酸など、栄養状態を調べる検査
- 腎臓・肝臓の働きや炎症の程度を調べる血液検査
- 必要に応じて尿検査、画像検査、骨髄の検査など
診察で予想されること
採血は、腕の内側の静脈に細い針を刺して行います。チクッとする痛みは一瞬で、数分で終わります。多くの場合、絶食(食べないこと)は必要ありませんが、同時に別の検査をするときは説明があるので、事前の案内に従ってください。採血後に少し出血したり、軽い内出血(あざ)ができることがありますが、通常は数日で消えます。結果は医師から説明を受け、必要であれば再検査や追加検査の予定を立てます。
治療
全血球計算は「調べる検査」なので、それ自体が治療ではありません。大切なのは結果の解釈です。数値の異常には、治療が必要なものと、様子を見てよいものがあります。医師は数値だけでなく、症状・年齢・服薬・生活習慣を合わせて判断します。異常が見つかった場合は、その原因に応じた対応を一緒に考えていくことになります。
自宅でのセルフケア
- バランスの良い食事を心がける(肉・魚・卵・大豆製品・緑黄色野菜など)
- 十分な睡眠と休息をとる
- こまめに水分をとる(脱水は数値に影響します)
- 飲んでいる薬やサプリメントを医師・薬剤師に伝える
- 検査結果の紙を保管し、次回の受診時に持参する
- 喫煙や多量の飲酒を控える
- 気になる症状があれば、次の受診まで待たずに相談する
医療治療
治療は検査結果の原因によって変わります。生活習慣の見直しで改善することも多く、食事や休息のアドバイスだけですむ場合もあります。医師が必要と判断した場合は、不足している栄養素を補う薬を用いたり、原因となっている病気(感染症、腎臓の病気、炎症など)の治療を行ったりします。薬が必要かどうか、どのくらいの期間続けるかは、医師が症状と数値を見ながら判断します。自己判断で市販の薬やサプリメントを増やさず、まずは主治医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのはまれです。全血球計算の異常が、手術で対応できる病気(一部の腫瘍や脾臓の病気など)によるものとわかった場合には、専門医と相談して治療方針を決めます。多くの場合は手術ではなく、経過観察や薬による治療が中心になります。
この病気と共に生きる
血液の数値に異常を指摘された方は、まず「原因をはっきりさせること」を目標にしてください。結果がすぐに深刻な病気を意味するわけではありませんが、気になる症状があれば記録しておくと受診の役に立ちます。定期的な検査が必要な場合は、健診や通院の予定を手帳やスマートフォンで管理すると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 朝昼夕の食事をできるだけ規則的にとる
- 鉄分とたんぱく質を意識した食事を心がける
- 適度な運動(無理のない範囲の散歩など)を続ける
- 睡眠時間を確保し、疲れをためない
- 喫煙を控え、飲酒は適量にとどめる
- 月経量が多いと感じたら、妇(婦)人科にも相談する
- 健診の結果を毎年比較できるように保管する
食事と運動
赤血球のもとになる鉄分は、赤身の肉や魚、ほうれん草、大豆製品などに多く含まれます。ビタミンCと一緒にとると吸収が良いと言われています。また、ビタミンB12は魚や卵、乳製品に、葉酸は緑黄色野菜や豆類に多く含まれます。運動は、貧血で息切れがあるときは無理をせず、体調に合わせて短時間の散歩から始めるとよいでしょう。サプリメントに頼りすぎず、食事全体を整えることが基本です。
精神的健康と心の健康
「血液の数値が異常」と言われると、不安になったり、悪い病気ではないかと考え込んでしまったりするものです。はっきりした説明を受けるまでは落ち着かない気持ちが続くこともあります。そんなときは、一人で抱え込まず、医師に質問を書き出して聞く、家族や信頼できる人に話すなど、気持ちを外に出す方法を試してください。つらい気持ちが長く続く場合は、地域の相談窓口や医療機関に相談することが大切です。命に関わるような気持ちの変化があるときは、ためらわず救急(119)や医療機関に連絡してください。
予防
全血球計算そのものは「検査」なので、受けるかどうかを予防という形で考えるものではありません。ただ、検査で早めに異常を見つけることは、貧血や感染症、血液の病気の早期対応につながります。日ごろからバランスの良い食事、十分な睡眠、禁煙・節酒を心がけることが、血液の健康を保つ基本になります。
検診プログラム
日本では、職場の定期健康診断や自治体の住民健診(特定健診など)に血液検査が含まれていることが多く、全血球計算もそこで行われる場合があります。厚生労働省は定期的な健康診断を受けることを勧めています。健診の案内が届いたら、症状がなくても受けておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進むと、息切れや動悸が強くなり、日常生活がつらくなる
- 感染症にかかりやすくなり、重症化することがある
- 出血しやすくなり、けがや手術のときに危険が増す
- 原因となっている病気の発見が遅れることがある
長期的な見通し
多くの場合、全血球計算の軽い異常は、食事や生活の見直し、原因の治療で改善します。異常が見つかったとしても、それは体の状態を早く知るチャンスでもあります。結果を正しく理解し、必要な検査や通院を続けることで、ほとんどの方は落ち着いて生活を続けられます。不安なことは遠慮なく医師に聞いてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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