妊娠中の胆のうトラブル
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
胆のうは、肝臓の下にある小さな袋のような臓器で、消化を助ける「胆汁」という液体をためています。妊娠中はホルモンの変化で胆汁の流れが悪くなり、胆のうに石(胆石)ができたり、胆のうが炎症を起こしたりすることがあります。これをまとめて「妊娠中の胆のうトラブル」と呼びます。
重要な事実
- 妊娠中のホルモン変化が胆のうの働きに影響します。
- 多くの場合、症状は食事の後(特に脂っこい食事の後)に出やすいです。
- 軽い症状なら食事や生活の見直しで改善することが多いです。
- 重症の場合は、妊娠中でも安全な治療法があります。
妊娠中の女性の約1〜2割に胆石ができるといわれていますが、そのうち症状が出る人は一部です。妊娠中は胆のうのトラブルが起こりやすくなるため、妊婦健診で相談する方が多いテーマです。
妊娠中の女性全員に起こりうるものですが、特に「肥満気味の方」「過去に胆石があった方」「40歳以上の方」はリスクが高くなります。妊娠中の体重増加が大きい方も注意が必要です。
症状
- 激しい腹痛でじっとしていられない
- 吐き続けて水分が取れない
- 顔色が青白くなる、冷や汗が出る
- 意識がもうろうとする
- このような症状がある場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- ⚠熱(38度以上)があり、腹痛がある
- ⚠白目や皮膚が黄色い(黄疸)
- ⚠尿が濃い、便の色が白っぽい
- ⚠妊娠中なので、産科と消化器科の両方の診察が必要です。当日中に医療機関へ連絡してください。
一般的な症状
- みぞおちや右のわき腹の痛み(特に食事の後や夜間に起こりやすい)
- 右の肩や背中に響く痛み
- 吐き気やおう吐
- げっぷ、おなかの張り
- 脂っこい食事の後に気分が悪くなる
子供の症状
- この記事は妊娠中の方が対象です。小児の胆のうトラブルはまれですが、子どもに同じような症状が出た場合は、小児科を受診してください。
高齢者の症状
- この記事は妊娠中の方が対象です。妊娠中の高齢出産(35歳以上)の方は、胆石ができやすい傾向があります。症状が軽くても自己判断せず、産科の医師に相談しましょう。
原因
主な原因
- 妊娠中は「プロゲステロン」というホルモンが増え、胆のうの動きがゆっくりになります。胆汁がたまりやすくなるため、胆石ができやすくなります。
- 妊娠後期になると大きくなった子宮が胆のうを圧迫し、胆汁の流れが悪くなることがあります。
- エストロゲンの増加により、胆汁の中のコレステロールが増え、固まりやすくなります。
リスク要因
- 妊娠中の体重増加が大きい
- もともと胆石や胆のうの病気があった
- 家族に胆石の人がいる
- 35歳以上の妊娠
- 妊娠前に肥満だった
- 高コレステロール血症がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 腹痛がひどくなってきた
- 熱がある
- 皮膚や白目が黄色い
- 吐き気がひどく食事や水分が取れない
定期受診を予約すべき場合:
- 軽い腹痛が続く
- 脂っこい食事の後に胃もたれや気持ち悪さがある
- おなかの張りがある
- 妊娠中の体調変化について不安がある
診断
妊婦健診の問診で症状を伝え、腹部の超音波(エコー)検査を行います。超音波検査は赤ちゃんにも母体にも安全で、妊娠中の胆石や胆のうの炎症を調べるのに役立ちます。
行われる可能性のある検査
- 腹部超音波(エコー)検査:おなかの上から超音波を当てて胆のうの状態を画像で確認します。
- 血液検査:肝臓や胆のうの炎症を示す数値(肝酵素など)を調べます。
- 必要に応じて、MRIなどの安全な画像検査を行うこともあります。
診察で予想されること
まずは産科の医師が症状を確認し、必要に応じて消化器科の医師と連携します。診察と検査で、痛みの原因が胆のうなのか、他の臓器の問題なのかをやさしく見極めていきます。検査はおなかの上から行うことがほとんどで、赤ちゃんへの負担はほとんどありません。
治療
治療は、症状の重さと妊娠週数によって異なります。多くの場合、まずは食事や生活の調整で様子をみます。症状が重い場合は、妊娠中でも安全な薬を使った治療や、場合によっては入院しての治療を検討します。必ず産科と消化器科の医師が相談して方針を決めます。
自宅でのセルフケア
- 脂っこい食事を控え、野菜や魚、豆腐など消化のよいものを中心にする。
- 一度にたくさん食べず、1日5〜6回に分けて少量ずつ食べる。
- 水分をこまめに取り、便秘を防ぐ。
- 腹痛が出たときは、無理をせず横になって休む。
- 妊娠中の運動は医師に相談してから行う。
医療治療
医師が症状や妊娠経過を見ながら、胆汁の流れを助ける薬や炎症を抑える薬など、妊娠中でも使えるものを選択します。薬は種類や量に注意が必要なので、必ず医師の指示に従って使用します。
手術が検討される場合
強い痛みが続いたり、胆のうの炎症が治らなかったり、胆管に石が詰まった場合は、妊娠中でも手術や内視鏡的な治療が必要になることがあります。妊娠週数とおなかの中の赤ちゃんの状態を確認しながら、安全に配慮して行われます。
この病気と共に生きる
日常生活では、痛みを感じたら無理をせず、ゆっくり休むことを大切にしてください。症状が出やすい食事のあとは、急に動かず、安静にして過ごすと楽になることがあります。また、妊娠中の服薬は自己判断せず、何か気になることがあれば医師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 食事は規則正しく、脂っこいものや甘いものの取りすぎに注意する。
- 十分な睡眠と休息をとり、ストレスをためない。
- 適度な運動(医師の許可のある範囲で)を心がける。
- 体重の増えすぎに注意し、妊婦健診での指導を守る。
- 痛みの記録をつけておくと、医師に症状を伝えやすくなります。
食事と運動
食事は、青魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこなどコレステロールの少ないものをバランスよくとりましょう。調理は油の少ない蒸す・煮る・焼くの方法がおすすめです。運動は、産科医に相談のうえで、ウォーキングなど軽めのものを無理のない範囲で行ってください。
精神的健康と心の健康
妊娠中に体調がすぐれないと、「赤ちゃんに影響があるのでは」と心配になる方も多いです。痛みや不安を一人で抱え込まず、パートナーや家族、助産師、医師に気持ちを話しましょう。症状があっても、きちんと治療すれば多くの場合は母子ともに安全に経過します。
予防
妊娠中の胆のうトラブルは、完全に予防することは難しいですが、生活習慣の見直しでリスクを減らせることがあります。特に、脂っこい食事を控え、バランスのよい食事と適度な運動、体重管理がポイントです。
検診プログラム
妊婦健診の際に、腹部エコーで胆のうの状態を確認できることがあります。気になる症状があれば、我慢せずに産科医に伝えましょう。
合併症
治療しない場合
- 胆のうの炎症が重症化して、強い痛みや熱が続く。
- 胆石が胆管に詰まって、黄疸や感染症を引き起こすと、母体に負担がかかる。
- まれに、膵炎(すい炎)と呼ばれるおなかの中の臓器の炎症を起こすことがある。
- 激しい痛みや感染が続くと、早産のリスクが高まる可能性がある。
長期的な見通し
妊娠中の胆のうトラブルは、多くの場合、食事の調整や安静などの治療で症状が落ち着きます。きちんと医師の指導を受けて治療すれば、赤ちゃんへの影響はほとんどなく、出産まで安全に過ごせる方がほとんどです。出産後はホルモンの変化が戻るため、症状が軽くなることも少なくありません。不安なことがあれば、いつでも医療者に相談してくださいね。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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